【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

396 / 448
第406話【グロリア編スタート】

 仄かに身体が暖かい。

 グロリアは全身に感じる熱と、瞼を越して通る光に意識を覚醒させられた。

 

「ん……」

 

 目を覚ますとそこは……

 

「……。……っ!? ……え!? は、花畑!?」

 

 彩りの美しい花畑だった。

 蒼天の太陽に照らされているそこは、風に揺らされ花びらが豪快に舞った。

 

 目が覚める光景だった。

 あまりに綺麗で、あまりに現実味がなかった。

 

 ……あれ?

 アタシもしかして、死んだ?

 ここ天国?

 

 シエルグリスに居たはずなのに、なんでこんなところに?

 なんか空に現れた黒い渦に吸い込まれた記憶はあるけど。

 

『目が覚めたか』

 

「ひゃっ!?」

 

 突如として声を掛けられたグロリアは思わずビクついた。

 声の方に振り返ると、そこには人型の漆黒のドラゴンが立っていた。

 

「……あ、ナイト! あ〜ビックリした〜」

 

 敵のドラゴンかと焦ってしまったが、よかった。

 知り合いで味方だ。

 ドラゴンを味方というのも変な感じだが。

 

「あれ? アンタこんなところで何してんの?」

 

『お前が勝手に落ちてきたんだろ』

 

「落ちてきた? 空から?」

 

『ああ』

 

 ぁぁ、やっぱりあの黒い渦に吸い込まれて、そこからどこかに吐き出されたって感じなのかしら?

 てかココどこ? みんなは? あれ? 武器もない!

 

「最悪……」

 

『何がだ?』

 

「あぁいや、なにも……。ねぇナイト。ここはどこ?」

 

『ここは前に言ったリイスの故郷だ』

 

「故郷……ってことは、別の大陸!?」

 

『ああ』

 

「嘘でしょ!? アタシどんだけ飛ばされてんの!?」

 

『飛ばされた?』

 

「そうなのよ! なんか空にデッカイ黒い渦が出てきてソレに吸い込まれたらこんなところに居たのよ!」

 

『そうか』

 

「いや、そうかって……反応薄いわね」

 

『どう反応しろと言うんだ?』

 

「それは……」

 

 もうちょいこう……『大変だったな』とか『怖かったな』とか?

 なんか言いようはあるでしょうに……

 共感してほしいっていうか何ていうか……

 

「……ところでリィは?」

 

 息苦しくなってきたので話題を変えた。

 

『リイなら――――』

 

『わぁグロリア! 目が覚めたんだね! グロリアー!』

 

 緑の鱗を纏った小さな子ドラゴンが花畑の奥から現れた。

 両手には花をたくさん積んでいる。

 彼女は嬉しそうにグロリアに飛び込んできた。

 それをグロリアは優しく受け止める。

 

「っと! 久しぶりねリィ! アンタちょっと大きくなった? いい女になってきたじゃない」

 

『オンナって?』

 

「あ、間違えたわ。いいメスになってきたじゃない」

 

『えへへ〜そう? ありがとう〜』

 

 前よりは確かに大きくなってるリィ。

 子ドラゴンの成長はなかなかに早いらしい。

 丸みのある靭やかな肉体はオスのナイトと比べるとやはり女性っぽい。

 

 ナイトはゴツゴツしてるし。

 ここはドラゴンも人間も似てるのね。

 性別による身体的特徴が。

 

「あ、そうだ。ねぇ二人とも。アタシ以外の人間を見なかった? 何人か一緒に吸い込まれたの」

 

『見てないな。見ていたら殺していた』

 

「サラッと怖いこと言わないでよ……」

 

『降ってきたのがお前だから手を出さなかっただけだ。他なら当然殺してる』

 

「……まぁいいわ。とりあえずアタシ自分の大陸に帰りたいんだけど、どう行けばいいか分かる?」

 

『ここから西に海を渡ればいい。そうすればいずれ着く』

 

「渡ればいいって……どうやって?」

 

『? 泳ぐに決まってるだろ』

 

「いやいやいやいや泳ぐって何日泳ぐのよ?」

 

『忘れたな……3日ぐらいか?』

 

『4日だよパパ』

 

『……だそうだ』

 

「泳げるか! じゃあアタシが筏を作るからナイトが引っ張って泳いでくれる?」

 

『ふざけるな。なんでまた戻らなきゃいけないんだ。一人で行け』

 

「なによケチ! アンタとアタシの仲でしょ!」

 

『………………何がだ?』

 

 ナイトが本当に分からないと言った顔をした。

 グロリアは腰に手を当てて睨む。

 

「セレンと一緒に戦った仲でしょ! 共通の敵!」

 

『ああ……そう言えばそんなこともあったな。だが俺たちはまだこの大陸を回っている最中だ。悪いがお前に付き合ってる暇はない』

 

「じゃあ回り終えたら一緒に来てくれる?」

 

『そんなわけないだろ』

 

 なによコイツ……

 

『パパ。わたしグロリアと一緒に行きたい』

 

『お前は黙っていろ』

 

『……』

 

 ナイトに意見を一蹴され、リィはしゅんとなって黙り込んだ。

 

「ナイト。アンタそんな言い方しなくても……」

 

『お前には関係ないだろ。とにかくここから南西に向かえば人間の居た場所がある。そこに行ってみたらどうだ? リィ。行くぞ』

 

「あ、ちょっと!」

 

 ナイトはリィを連れて花畑を去って行った。

 その時見えたリィの寂しそうな横顔だけが妙に記憶に残った。

 

 

 結局グロリアは一人で人間の居た場所へ向かうことになった。

 武器はサバイバルナイフのみ。

 しかも一人ぼっち。

 

 グロリアは孤独に無限とも思えるほど広い草原をひたすら歩いていた。もちろん文句を言いながら。

 

「なによアイツ。ほんっと冷たいんだから。ちょっとくらい付き合ってくれてもいいじゃないのよ」

 

 ナイトに対して愚痴をこぼすグロリアは空を見上げた。

 そこには無責任に綺麗な青が広がっている。

 その下には広大の緑。

 そこに佇むのはグロリアが一人。

 

「はぁ……一人って寂しいわね……」

 

 って、何言ってんだろアタシ。

 もともとそのつもりだったのに……

 こんな身体になったから一人で世界を旅しようと思ってたのに……

 

 はぁ……アタシってホント……口ばっかりで覚悟もなにもできてないのよね……

 

 それにしてもリィは随分と寂しそうだったわね。

 ナイトも言い方がキツイのよ。

 娘に向かってあんな言い方しなくてもいいのに。

 

 あー言うところはうちのお父さんを見習った方がいいと思うわ。絶対に空気読んであんな冷たいこと言わないもん。

 

 そんなことを考えていると、草原の奥から何かが走ってくるのが見えた。

 それは見慣れた赤い鱗のA級ドラゴンだった。

 

「げっ! 勘弁してよ武器ないのに!」

 

 あっちはとっくにグロリアを補足しており、まっすぐ突っ込んでくる。

 間合いに入ったと見るやグロリアに飛びかかる!

 噛みつき! 噛みつき! 噛みつき! の連続。

 

「わ! ちょ! あぶな!」

 

 武器がなくてもグロリアはSS級騎士の端くれ。

 A級ドラゴン如きのスピードに遅れを取ることはない。

 すべての噛みつきを回避していく。 

 

「ああもう! こうなったら!」

 

 グロリアは拳をしっかりと握り締めた!

【竜斬り・轟】を応用した咄嗟の打撃技!

 

「【轟拳】! おらぁああああっ!」

 

【気】を込められたグロリアの鉄拳はA級ドラゴンの頭部に直撃し、身体を浮かせて吹き飛ばした。

 

『ぶっふぉあああああ!』

 

 草原を何度か回転したA級ドラゴンはそのまま動かなくなった。

 

「……。……? ……あれ? やったの?」

 

 駆け寄ってA級ドラゴンを見た。

 ひん曲がったドラゴンの顔と、ピクリともしない身体。

 それらが草原に倒れていた。

 

「死んでる……アタシってば凄いじゃーん! 素手でドラゴン倒したのってアタシが初めてなんじゃない?」

 

 意気揚々に言っても誰もいない。

 あくまでグロリアは孤独だった。

 

「……はぁ」

 

 自分が思ってるより遥かに孤独の寒さは辛そうだ。

 

 こんなので大丈夫かなアタシ……

 っていうかドラゴンの悲鳴が聞こえるのもなんかやりづらいわね。

 

 自分の精神的弱さを痛感していると、空から2つの影が現れてグロリアの前に着地した。

 

「あらあら〜。なんの騒ぎかと思ったら」

「んふ! いい獲物がいるじゃない」

 

「あ! アンタたちは!」

 

 見覚えのある女騎士だった。

 青い髪の女騎士オルテンシアと、赤いツインテールの女騎士レジーナだ。

 

 こいつらも一緒に飛ばされたのね。

 てっきりお母さん達と戦って死んだと思ってたのに。

 決着か付く前に黒い渦に吸い込まれたみたい。

 最悪だわ。

 

「あら? どこかで会ったかしら?」

 

「!」

 

 忘れられてる?

 ああそう……アタシは眼中になかったってことね。

 

「どうでもいいわ。オルテンシアは下がってなさい。アタシの獲物よ」

「あらレジーナ。あれは私が先に見つけたんですよ?」

 

 レジーナとオルテンシアが睨み合う。

 ソレを見たグロリアは(お? ここで喧嘩して同士討ちとかしないかな?)と淡い期待をした。

 

「じゃあ早い者勝ちね!」

「それしかないですね!」

 

「いっ!?」

 

 レジーナとオルテンシアは同時に攻めてきた!

 

 

 一方でナイトとリィは二人っきりで草原を移動していた。

 しかし二人に会話はない。 

 

『……ねぇパパ』

 

『なんだ』

 

『グロリアのとこに行こうよ』

 

『ダメだ』

 

『どうして? パパだって――――』

 

『住む世界が違うんだ。アイツは血がドラゴンなだけで中身は人間だ。関わるべきじゃない』

 

『パパだって……楽しそうに喋ってたじゃん』

 

『なんだと?』

 

『パパって何も喋ってくれないじゃん。いつもムスッとしてて、私が話し掛けても『ああ』しか言わないし……』

 

『……何が言いたい?』

 

『『おいリィ。行くぞ』とか『さっさと寝ろ』とか、そんなことしか喋らないよね』

 

『言いたいことがあるならハッキリ言え』

 

『っ! パパと二人っきりだとつまんない! グロリアと三人なら楽しかったよ!』

 

『! 生意気な口をきくな! 楽しいだの楽しくないだの! そんなものは生きていくのに必要ないものだ!』

 

 言ってしまってからナイトはハッとなった。

 リィの眼が光を失っていく様を見てしまったのだ。

 怒る場面ではなかったのかもしれない。

 

 だがどうすれば良かったのだろう?

 リィが言いたいのはもっと会話をしたいということなのだろうが、そんなもの……どうやればいいんだ……

 

『……もういいよ』

 

『リィ……』

 

『はやく行こう……』

 

『……リィ……俺は――――』

 

「きゃあああああああああああ!」

 

 聞き覚えのある女の声が空に響いた。

 

『!』

 

 この声は……まさか!

 

『グロリアの声だ! 何かあったんだ!』

 

『おい! 待て! リィ!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。