【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
今のアタシに武器はない。
けどそれは相手も同じ。
酷いのは2対1ということ。
オルテンシアとレジーナ。
連携こそしてこない。
我先にと攻撃してくる。
だから隙がある……というわけでもない!
「逃さないわよ!」
走って逃げるグロリアに対し、レジーナはフレイムを連発。
火球の弾雨がグロリアの背に迫る!
「くっ!」
加速し、速度を上げたグロリアは火球を回避していく。
回避しつつ、直撃しそうなフレイムを裏拳で弾いていく。
弾くのに使った手の甲が火傷するが、そんなものはすぐに回復する。一瞬死ぬほど熱いのが難点だが。
「そんなに急いでどこへ逃げようと?」
「!」
疾走するグロリアの目の前にオルテンシアが現れた。
先回りされていたようだ。
コイツら……足も恐ろしく速い。
こんなの逃げられないじゃない。
ちくしょう!
「どきなさいよ!」
グロリアの放ったストレートパンチ。
それは寸でのところで躱され、みぞおちにオルテンシアの拳がめり込んだ!
「……かっ!」
激痛と、そして呼吸がままならなくなりグロリアは倒れた。
「は……ぁ! か……は……ぁ……ぁ!」
い、息が……できない……!
なんなのよコイツら……強すぎ……!
もがき苦しむグロリアの元にオルテンシアが微笑みながら歩み寄ってくる。
するとオルテンシアはあろうことかグロリアの腹に座ってきた。
逃げられないようにするためだろうか?
「ふぐっ!」
「ふふ、ちょっと失礼するわね」
オルテンシアはグロリアの手を握ってきた。
何をするつもりなのかと思えば、次の瞬間!
ガリッ!
「ひぎっ! あああああああああああ!」
グロリアの人差し指を噛み千切ってきた!
ボリボリと骨を噛み砕きながらオルテンシアはグロリアの指を味わう。
「ん〜美味し〜」
「アタシにもちょうだいよ」
言って追いついてきたレジーナもグロリアの中指を噛み千切ってきた!
「痛い! 痛い! いやあああああああ! やめてええええ!」
泣き叫ぶグロリアを無視しながらレジーナは指を噛みしめる。
「あらホント。美味しいわ」
「でしょう? 生き返る感じだわ。それにこの匂い。私たちと同じドラゴンね」
オルテンシアが言うと、その間にグロリアの指が再生した。
息もできるようになり、すぐに反撃しようとしたが、左手を踏まれ、右手を掴まれ、腹にはオルテンシアの尻がどっしりと乗っている。どのみち動けなかった。
「あら! すぐに再生したわ! すごい回復力ね!」
「アタシたちより高い再生能力だわ。これは便利だわ。アンタを食い続ければアタシたちは死ぬことはないわね」
食い続ければ?
アタシたちは死ぬことはない?
何を言ってるのコイツら?
怪訝な顔をしたグロリアにオルテンシアが口を開く。
「ふふ……分からないって顔ね。教えてあげる。私とレジーナはね。心臓がないのよ」
「!?」
「レグ様に血を分けてもらって生き長らえた。いわば死に損ないのドラゴンよ」
レグ様って……たしかディアマード家の……
いや、心臓がないって、どうやって動いてんのコイツら!?
アタシよりよっぽど化け物じゃない!
「血で生きてるだけだから、こうして定期的に強いドラゴンの血を補充しないとすぐに死んじゃうのよ私たち。だからあなたみたいな食料に有りつけるのは奇跡だわ。ねぇレジーナ」
「ええ。でも本当はみんなでセレンを捕まえるつもりだったんだけどね」
お婆ちゃんを!?
そうか……コイツらセレンの事は知ってるから。
くそ! なんとかしないとマズイわ。
永遠に食われ続けるなんてごめんだもの。
「ふふふ……身体が疼くわぁ……この子の身体……凄くいい匂い」
オルテンシアが頬を赤くしてグロリアの胸や頭などを撫でてくる。
な、なんなのコイツ!?
気持ち悪い!
「母体としても優秀そうね……私の赤ちゃんを生んでもらおうかしら」
……は?
何言ってんのコイツ!?
「なに意味の分からないこと言ってんのよアンタ! 冗談はそのケツだけにして! さっさとどきなさいよ!」
グロリアに怒鳴られ、オルテンシアの顔に影が掛かった。
「あら? 冗談に聞こえる?」
「……!?」
正直、ゾッとした。
女同士のはずなのに。
身体があのオルテンシアを恐怖している。
なにか、本当に、犯されそうな……おぞましい感覚が胸の奥から沸き起こる。
なんで……なんで怖がってんのアタシ!?
相手は女よ?
赤ちゃんを生ませようなんて、そんなこと不可能じゃ……
「ふふ……じゃあここで、孕ませてあげるわ」
「え!?」
「レジーナ。抑えてて。脱がせるわ」
「ちょ……ちょっと冗談でしょ!? 本気なの!? やめて!」
しかしオルテンシアの眼は冗談の色をしていなかった。
いやらしい笑みを浮かべ、グロリアの胸を覆うプロテクターを外そうとしてきた。
「や! やだ! やめて! いやあああああああ! 助けてナイト! ナイトぉおおおおおおおおおおお!」
『グロリア!』
草原のド真ん中で響いたグロリアの叫びは、漆黒の竜人を呼び寄せた。
茂みを爆ぜさせるほどの速度で駆けつけたナイトはグロリアを取り押さえるオルテンシアとレジーナをまとめて蹴り飛ばした!
「きゃあ!?」
「ああっ!?」
蹴り飛ばされた女騎士二人は遠くにある大岩にぶち当たって土煙に包まれた。
グロリアはハッとなり、外されかけていた胸のプロテクターを両手で押さえながら上半身を上げた。
そこには先程会った人型ドラゴンのナイトが立っていた。
黒く刺々しい背中が、グロリアを守るように立っていた。
その背中を見ただけで何とも言えない安心感さえ生まれた。
「ナイト……」
『大丈夫か?』
チラッと顔だけ振り向いて聞いてくれた。
それだけの事が、今のグロリアにはとても嬉しかった。
涙が出てきて、グロリアは思わずナイトに抱きついた。
「ありがとう……怖かった……本気で怖かった……」
『戦闘中だ離れろ』
泣きっ面の女だろうがそこはナイト。
構わずグロリアを引き剥がして押し退けた。
「いたっ! ちょ、ちょっと! 少しは優しくしてくれてもいいじゃない!」
しかしナイトは無視!
土煙に飲まれたオルテンシアとレジーナを見据えている。
まったく油断しないその姿勢はさすがだが、今の場合はちょっと悲しい。
『グロリア大丈夫!?』
「リィ!」
癒やしのリィが来てくれて、グロリアはたまらず彼女を抱きしめた。
もう誰かを抱きしめたくて堪らなかった。
『ふぎゅ!?』
「ああリィ! 来てくれてありがとう!」
『えへへ……パパが急いで来てくれたんだよ』
「! ナイトが……」
何というか、凄く嬉しかった。
なんだろう。この気持ちは。
絶望から救われた心境って、こんなにも大袈裟に感じるものなのね。
ナイトの頼もしい背中を見つめていると、奥の方でオルテンシアとレジーナが復帰してきた。
「イケない人ね。人の子作りを邪魔するなんて」
「いいじゃないオルテンシア。獲物が増えたわ」
二人はナイトを睨みながら迫ってくる。
「気をつけてナイト! アイツらメッチャクチャ強いわよ!」
『誰に言ってるんだ? お前はリィを連れて下がっていろ。すぐに終わらせる』