【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第417話【セレンVSオルテンシア】

 洞窟内は血だらけの死体置き場と化していた。

 セレンを守ろうと戦ってくれた騎士たちは全滅している。

 それだけじゃない。

 

 身を隠していたであろう女子供……さらには年寄りまで一人残らず殺されていた。

 赤ん坊もだ。

 母親の腕の中でいっしょに死んでしまっている。

 爪で引き裂かれた傷跡だった。

 

「ぁ……ぁぁ……そんな……」

 

 吐き気が込み上がってくるより先に、自分のせいでこうなった罪悪感がセレンを押しつぶしそうになった。

 

 わたしが、ここに逃げ込んだせいで……こんな……

 

「あラあら。無事ダったんですね?」

 

「!?」

 

 振り返った先にはオルテンシアが立っていた。

 彼女の腕は竜のものと化しており、その爪には大量の血がこびりついていた。

 それを見たセレンは先程の母と赤ん坊の死体を思い出した。

 逃げようという思考はもはやなく、セレンは怒りに身を震わせる。

 

「あなたが……やったのね……」

 

「んん? ああ、彼ラのこと? 目障りダッたから殺したダケよ?」

 

「だったらなんでこんな赤ちゃんまで!」

 

「レジーナに置いてかレて、あなタを先に取られたト思ってたの。だからイライラ解消にチょっと、ね?」

 

 ぶちん! 

 

 セレンは生まれて初めて思考がキレた。

 怒りのままに竜人形態へと変身したセレンは吼える!

 

「許さない!」

 

 セレンが駆ける!

 自分の爪を立て、オルテンシアに向かって振り下ろした。

 しかしそれはあっさり腕を掴まれて止められ、オルテンシアはセレンをそのまま片手で投げ飛ばす。

 

「きゃあああああああああ!?」

 

 洞窟の天井にぶち当たってバウンドし、地面に叩きつけられた。

 セレンがすぐに起き上がろうとするが、その前にオルテンシアに尻尾を掴まれ壁に投げつけられた。

  

「かはっ! ぐっ! こ、のぉっ!」

 

 やられてもセレンはすぐに立ち上がった。

 痛みはまったくなかったからだ。

 竜人形態のセレンは甲殻が凄まじく堅い。

 あのゼクードとカーティスの斬撃にさえ耐えうるのだから。

 

 だからと言って事態は好転しない。

 素人同然のセレンの攻撃はオルテンシアに軽くあしらわれてしまう。 

 

「やメなさい。あナたじゃ私には勝てナいわ」

 

 セレンは顔を掴まれて地面に叩きつけられ背中を思いっきり踏まれた。

 

「うぐっ!」

 

 踏まれたセレンを中心に地面に亀裂が走る。

 さらにベコンと音を立てて地面がヘコんだ。

 本当に凄まじくパワーで踏まれたようだった。

 しかしセレンにはまったくダメージになっていない。

 

「ふフ、頑丈ナ身体ね。強イ赤ちゃんヲ生んでくれそう……」

 

「誰が、あなたなんかの!」

 

 背を踏まれながらもセレンはオルテンシアを睨み返した。

 そこには女とは思えない下卑た笑みを浮かべる顔があった。

 本当にセレンの身体だけを狙っているかのような、身の毛もよだつ恐ろしい感情が沸いてくる。

 

 なんなの?

 この人はいったい?

 前に会った時とは雰囲気も違う。

 

 見た目は女だけど、中身は男みたいな……

 いや……これは……オス?

 

 匂いでなんとなくだがセレンは察した。

 オルテンシアという女の匂いともう一つ……これは別の血の匂い。

 この匂い……まさか……レグ?

 

 違和感の正体に気づいたが、それがこの事態を好転させることはない。

 洞窟の奥ではまだ凄まじい戦闘音が聞こえる。

 ミオンとレジーナが戦っているのだ。

 

 自分は早くここから逃げなきゃいけないのに。

 怒りに任せて反撃して、こんなところで捕まってしまった。

 せっかく助けてもらったのに。

 こんなにもたくさんの命を巻き込んでしまったのに。

 

 ちくしょう!

 

 セレンは内心で悔しさを吐露した。

 この背中を踏んづける足さえ払い除けられない自分の無力さが悔しい。

 

「ほら抵抗しナイで諦めなさい。今からアナたに種付けするから大人しくしてイテくれる?」

 

 種……付け!?

 

 本当に女から発せられた言葉なのかとセレンは耳を疑った。

 

「種付けって……」

 

「んふ……私たちノ役目はね? 生き残るコトじゃないの。私の体内に宿る【竜子】をあなたのヨウな優秀な母体に植え付けること。それが私たチの役目。それガ終わったらモウ死んでもいいのよ。私は」

 

 やはり繁殖が目的か!

 この女はもう心身ともにドラゴンと化している!

 だからこんなことを!

 

「ねぇセレン……お願いダカら大人しくシテ? そうすれば、セメて優しくしてあげるから……ネ?」

 

「ふざけないで! 誰があなたの子供なんか!」

 

 言い返した刹那!

 竜人形態のセレンは尻尾でオルテンシアを叩いた!

 

「っ!?」

 

 セレンの思わぬ反撃に遭いオルテンシアは態勢を崩され倒れかけた。

 その隙に立ち上がったセレンは洞窟の出口へ向かって走り出した。

 

「コノ……クソガキがぁあああアアアああああアアアアアア!」

 

 完全にキレたオルテンシアが変身した。

 青い長髪はそのままに。

 全身が青の竜鱗に覆われていき、背中からムカデの脚が無数に生えてきた。

 顔はドラゴンのように大口になり、鼻が大きく前に出る。

 

 一瞬の間に竜人形態へ移行したオルテンシアは最初の踏み込みで一気に加速した。

 ドラゴンのパワーをフルに使っての加速は凄まじく。

 セレンとの距離をあっという間に詰めてくる。

 

「もゥいい! 優しくなんてシない! 無理矢理ブチ込んで! たっぷり流し込んでアゲるわ!」

 

「このゲス女!」

 

 セレンが叫びながら首だけ振り向くと、そこには飛び掛かってくるオルテンシアがすでに目前まで!

 

 嘘!?

 もうこんなに迫って!?

 つ、捕まる!

 

 オルテンシアの爪がセレンに触れるその瞬間に別の一閃が走った!

 それは乱入者の一閃!

 オルテンシアの腕が吹き飛び、同時に彼女は乱入者に蹴られ吹き飛んだ。

 

「うあああアアアアああああ!」

 

 切断部から血を蒔き散らしながらオルテンシアは洞窟の壁に激突した。

 そのまま片膝をついて怒りのままに顔を上げる。

 セレンも突然の乱入者に驚き声が出なかった。

 しかしその乱入者は見覚えのある女騎士で……

 

「レ、レィナさん!」

 

 黒いポニーテールとライトブルーの瞳。

 銀の鎧と氷の双剣を装備したレィナがセレンを守るように立っていた。

 

「セレンさん! 無事で良かった! ここは私に任せて早く外へ!」

 

「……っ! お願いします!」

 

 レィナほどの手練れならば大丈夫だろうと思い、セレンは足手まといにならないよう外へ急いだ。

 あと少しというところで邪魔されたオルテンシアは怒りのあまりに全身の血管を浮かせながらレィナを睨む。

 

「よクも邪魔ヲ!」

 

「なんで生きてるのよあなた。相変わらず気持ち悪い見た目ね」

 

「ぁあ……? アラ……ドコかで会ったカシら?」

 

「っ! トボけてんじゃないわよ! 今度こそ殺してやる!」

 

 レィナは氷の双剣を構えて走った!

 

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