【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「セレン。残念だけど生き残りは一人もいなかったわ」
レジーナとオルテンシアを倒し、洞窟内から出てきたミオンが淡々とセレンに報告した。
あまりに残酷な報告にセレンは耳を塞ぎたくなる。
「そう……ですか……」
セレンはそれだけ返すのが精一杯だった。
自分を守ろうとして死んで行った騎士たち。
自分が洞窟内へ逃げ込んだせいで巻き込まれた女子供たち。
我が子を守ろうとして、その子ごと斬られて死んでいた女性。
まだ始まってすらいない赤子の人生を巻き込んで終わらせてしまった罪に、人外のセレンが報いられる道理はない。
涙を流したセレンはただひたすらに謝るしかできなかった。
心の中で。
ドラゴンにやられ、ここへ避難して、すでに瀕死だった王国にトドメを刺す形になってしまった。
【ハーティシオ】でも自分のブレスに焼かれて死んでいく人々の光景を見た。
どれもこれも自分のせいで、どうしてこんな……
チュンチュン、チュン……
あれだけの虐殺があったのに、外は小鳥のさえずりが聞こえるほど穏やかだった。
いつもなら耳を澄ませて楽しむこの音色も、今はただただ虚しく、苛立ちさえ覚えてしまう。
「セレンさん……事情を説明してくれますか?」
泣いたセレンの背を擦りながらレィナが聞いてきた。
涙で潤んだ目を手の甲で拭いながらセレンは重い口を開いて、成り行きを説明した。
彼らがドラゴンに襲われ国を無くしていたこと。
そこに自分が乱入してドラゴンを撃退し、そこから竜人様と誤解されたこと。
「竜人様ねぇ……そんなものに縋り付くほど弱ってたのね。可哀想に……」
ミオンがそう言ってレィナも口を開く。
「藁にでも縋る思いだったんでしょう。……気持ちは分かります」
レィナの言葉はどこか重く妙に感情がこもっていた。
理由は分からないが似たような経験をしたのかもしれない。
「……とりあえず死んだ人たちを弔ってあげましょう」
こちらの気を察してくれたのかミオンがそう切り出してきた。
しかしセレンは首を振る。
「そ、それは私がやります。お二人はどうかここから東にある【ヒュンペリアの森】に向かってくれませんか!」
「ヒュンペリア?」
「どうしたんですか急に?」
「実はグロリアがそこに向かっていて、その【ヒュンペリアの森】には何千とA級ドラゴンがいるらしくて……」
グロリアが無事だったことに驚きレィナは目を大きくした。
そして同時に焦り出した。
「あ、あの子が!? 一人でですか!? どうしてそんな場所に!」
「ここの人たちに頼まれて【ヒュンペリアの森】にいる【歌のドラゴン】の討伐に向かったんです。どうかお願いです! お二人の力でグロリアを助けてください!」
レジーナ・オルテンシア戦の後で疲れているであろうレィナとミオンに頼むのは心苦しかったが、他に頼れる人もいなかった。
「わかりました! ミオンさん付き合ってください!」
「いいけどそれならセレンで飛んだ方が速いわ。セレン変身して早く!」
「は、はい!」
ミオンに急かされそのままドラゴン形態に変身した。
桃色の竜鱗に覆われた巨体と翼が展開し、レィナとミオンはすぐさまセレンの背中に飛び乗った。
翼を広げ、セレンは空へと上昇し【ヒュンペリアの森】がある東へ飛んだ。
「弔いはグロリアを助けてからにしましょう」
ミオンの言葉にセレンは『はい』と返した。
『お二人も疲れているのに、すみません……』
「べつに疲れてないわよ? そんなに強くなかったし。ね、レィナ?」
「そうですね。以前戦ったときより数段弱かった気がします。……というより最初からかなり弱ってた感じでした。『あのドラゴンにやられなければ』とか言ってたので、私たちと戦う前にどこかのドラゴンと戦って消耗していたんでしょう」
飛行する風にポニーテールを靡かせながらレィナが言った。
あの洞窟を守っていた騎士たちが成す術もなくやられていた相手だったのに、それを弱かったと言い切るのはこの二人の力量ゆえか。
もう少しこの二人の到着が早ければあんな殺戮は防げたかもしれない。
そう思わずにはいられなかったが、思えば思うほど胸の奥が重くなるのでやめた。
「ところでグロリアって誰?」
突然のミオンの言葉にレィナが驚いた
「いやいやいやいやミオンさん!【ドラグーンキラー隊】の時に一緒にいたじゃないですか! ほらあの金髪の!」
「あ、ローエのこと?」
「違います! そのローエさんの娘さんですよ! ほら金髪のツインテールの!」
「え……そんなヤツいた?」
「なんでローエさんは覚えててグロリアは覚えてないんですか! グロリアはあのゼクードさんの娘さんですよ! このセレンさんのお孫さんでもあるんです」
「へぇ……じゃあレイゼちゃんの姪でもあるのね?」
「そうです! だから一刻も早く助けないと……あの子はレミーが居ないとすぐムチャするから……」
「そうみたいね。たった一人で何千のドラゴンがいる場所に向かうなんて無謀だわ。持ち堪えていればいいけど……」
『一人ではないです。強い味方も連れてます。それに……あの子は私の血を輸血して身体の回復力が上がっていますから、そんな簡単には死なないと思います』
セレンの発言に虚を突かれ、絶句したミオンの気配が背中から伝わった。
内情を知っているレィナは表情を曇らせる。
「輸血って……どうして?」
『そうせざるを得ない事態があったんです。あの時、あの子を助けるには……輸血しか……』
「そう……まぁ、深くは聞かないわ」
そこで会話がいったん途切れた。
空を飛ぶ風の音と、翼を羽ばたかせる音だけが響く。
なんとも言えない沈黙の間にミオンがいきなり口を開いてきた。
「あ、そういえばセレン」
『はい?』
「セレンにもやっぱり付いてるの?」
『え?』
「レジーナには付いてたのよ」
『何が付いてたんですか?』
「チ○コ」
『んなぁああ!?』
「んなぁああ!?」
まったく同じ声を上げて驚くセレンとレィナ。
慌てたレィナがセレンを見る。
「セレンさん付いてるんですか!?」
「付いてないですよ! もう! いきなり変なこと聞かないでくださいよミオンさん!」
「そうですよ! いきなりそんな卑猥な言葉使ってこないでください!」
プンスカ怒る二人にミオンは溜め息を吐いた。
まったく……子供かこの二人は。
チン○にここまで反応するなんて。
旦那のなら見たことあるでしょうに。