【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第421話【メルなんとかさん】

 メルセーヌがブレスで狙撃され墜落した。

 落ちた先は【歌のドラゴン】によって強化されたA級ドラゴンが何千と蔓延る【ヒュンペリアの森】。

 

 一つ一つの巨木が100メートルに達しているその森は深く、まさに樹木の海。

 そこに落ちたグロリア・ナイト・メルセーヌ。

 そしてリィ。

 

 翼を持つリィは誰よりも先に空中で態勢を立て直し、辺りを見渡した。

 近くを落下していったのはグロリアだった。

 彼女は巨木に激突し、さらに枝が目に刺さって貫かれ、その枝が折れてまた落下し、あちこち身体を強打して地面に落ちた。

 

 リィは慌ててグロリアの元へ飛んだ。

 身体のあちこちから血を出し、手足が変な方向へ曲がっているグロリアは意識を失っていた。

 

『グロリア! グロリア! ねぇグロリア! しっかりして! グロリア!』

 

 グロリアの身体をゆすっても目を覚まさない。

 目に刺さっている枝のせいかと思い、無造作に引き抜くとグロリアの潰れた眼球から血がドバっと吹き出た。

 しかしそれはすぐさま止まり、ゆっくりと傷が治っていくのが見えた。

 

 グロリアの身体はまだ死んでない。

 そう確信したリィはいつかフォルス家に歌った【母の子守唄】を歌い始めた。

 

『〜♪ 〜♪ ♪♪ ♪〜♪』

 

 リィがまだ卵の中にいる時に聴こえていた母リイスの子守唄。

 何度も母が歌ってくれていたので覚えている。

 心安らぐ母の美声。

 それと共に奏でられるこの歌は【治癒の歌】でもあった。

 

 リィが歌える唯一の歌だ。

 グロリアの回復を助けるためにリィは必死になって歌った。

 するとグロリアの持ち前の再生力に加えてリィの歌の効果により、グロリアの身体は一気に回復していった。

 

 変な方向に曲がっていた手足も、バキバキと音を立てながら元に戻る。

 潰れた眼球も治り身体の傷は全て癒えた。

 しかし当のグロリアは目を覚まさなかった。

 

『グロリア! ねぇグロリアってば! 起きてよ!』

 

 グロリアの頬をペチペチと叩くが効果はない。

 急がないと他のドラゴンたちに見つかってしまう。

 そう思った矢先に二匹のA級ドラゴンが巨木の影から顔を出した。

 

『ひゃっ!』

 

 見つかってしまった!

 に、逃げないと!

 

 二匹のA級ドラゴンの視線はグロリアに向けられている。

 リィは眼中にないらしく見向きもされない。

 しかしリィはグロリアの腕を掴んで引っ張り、ありったけの力を込めて両翼をバタつかせた。

 

 小柄でもリィはドラゴン。

 人間一人を引っ張るだけの力はある。

 過去に落下したカーティスを引っ張り、翼で落下速度を軽減して助けたこともある。

 

 あのカーティスより軽いグロリアならリィでも運んで飛ぶことはできた。

 しかし遅い。

 運べるだけで速度が出るというわけではない。

 

 獲物を横取りされたと勘違いしたらしいA級ドラゴンたちがリィに向かって火球を発射してきた。

 

『うわぁああ!』

 

 なんとかリィは火球を避けた。

 その火球は近くの巨木に直撃し爆音を響かせ炎上。

 爆音に釣られて他のA級ドラゴンも現れ、ついにリィは周囲を囲まれてしまった。

 

『ぁ、ちょ、あ……ま、待って……その……』

 

 あっちを向いてもこっちを向いても敵。

 何十体のドラゴンに包囲されたリィはどこかに父ナイトがいないかキョロキョロした。

 

 頼れるパパはどこにもいない。

 周囲から向けられる殺気に冷や汗を流しながらリィは口を開いた。

 

『ま、待って! 食べないで! この人間美味しくないよ!』

 

 グロリアが食べる価値のない人間だと訴える。

 実際ドラゴンの間では人間のメスは脂肪が多すぎて不味いと言われている。

 人間のオスは筋肉が豊富で美味なのだ。

 人間はどうにも筋肉が美味しいらしい。

 

 だから人間のメスで、しかもかなり脂肪が多そうなグロリアは不味いはず。

 だから食べる価値がないと思ってくれれば……

 

 ……しかし相手からの返事はない。

 これだけの数がいるのに一匹たりとて喋らない。

 どうなっているんだろう?

 

 リィを囲むA級ドラゴンたちはみんな目を赤く光らせてグルルと唸っているのみ。

 言葉を発してこない。

 いや、喋れないのかも?

 

 そう思った瞬間に周囲のA級ドラゴンがついに飛び掛かって来た!

 食べられる! っとリィは目を瞑ったその時!

 

「わたしの母体に触るなぁああああ!」

 

 メルセーヌが颯爽と現れ、手にした斧をブン回して周囲のドラゴンを薙ぎ払った。

 リィは思わぬ援軍に目を丸くした。

 

『あ……メ、メルなんとかさん!』

 

「メルセーヌよ。ごめんね落としちゃって」

 

 メルセーヌがリィにウインクした。

 リィは反応に困りながらも安堵した。

 助かった、と。

 

 だがすぐに他のA級ドラゴンたちが嗅ぎつけてやってきた。

 それに対しメルセーヌは右手に斧を握り、左手を竜の腕に変化させて構えた。

 

「守ってあげるから離れないでね」

 

『う、うん!』

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