【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第423話【グロリアキック!】

 リイスに似た外見で瞳はオレンジ色。

 大きさはメスのリイスよりも大きい20メートルほど。

 上位のドラゴンというだけあってナイトを圧倒する巨体だった。

 

 こいつはまさか……

 

『お前がリザークか?』

 

『ああ? オレのことを知ってんのか?』

 

 どうやら本当にリイスの兄であるリザークだったようだ。

 匂いは分からないか、外見は確かに似ている。

 リイスを大きくした感じだ。

 

『知っている。リイスから聞いた』

 

『リイス……だと?』

 

『悪いが後にしてくれ。連れが助けを待っている』

 

『おおっと! そうはいかねぇな。オレの縄張りに勝手に侵入したんだ。ただで済むわけねぇよなぁ?』

 

『二度も言わせるな。後にしろ。リイスの娘が襲われているんだ』

 

『テメェ誰に向かって口を聞い………………リイスの娘?』

 

 露骨に怪訝な顔をしたリザークは食い入るようにナイトを睨んできた。

 

『あいつに娘なんていたか? ガナーとかなら知ってるが……』

 

 ガナーか。

 リイスの息子たちの名前だな。

 人間の巣窟を襲撃した際に帰ってこなかった三体のドラゴンの内の一体だ。

 

 ガナー・ブレイド・ゲイル。

 リイスの愛息子たち。

 ナイトにとって彼らは常に険悪な目で見てくる鬱陶しい奴ら程度の認識だったが、リイスにとってはやはり愛しい子供たちだったのだろう。

 リイスのあまりの悲しみっぷりに辟易したのを覚えている。

 

 母親とは子供のことでここまで涙を流すものなのかと思い知ったほどだ。

 

『俺とリイスの娘だ』

 

『! お前との娘だと!? じゃあお前はリイスの番(つがい)か!』

 

『そうだ。わかったなら早く退いてくれ。リィがこの森の――――』

 

『わかった。待ってな』

 

 いきなり敵意を無くしたリザークが遠吠えをした。

 それは【ヒュンペリアの森】に響き渡る。

 何をしたのか分からなかったが、すぐに遠吠えを終えたリザークがナイトに言う。

 

『これで大丈夫だ』

 

『……何をした?』

 

『下僕どもに指示を出しただけだ。もう攻撃するなってな。これでそのリィって子は大丈夫だぜ』

 

『本当か?』

 

『ああ。それと知らなかったとはいえ狙撃して悪かったな。あいつの娘がいるなら攻撃なんてしなかったのに……本当にすまん』

 

『ぁ……ああ』

 

 なんだコイツは?

 急に高圧的な態度が鳴りを潜めた。

 しかも狙撃したことを謝ってくるとは。

 

 あれは正直に言うとリザークは何も悪くない。

 彼はただ自分の縄張りに侵入してきた外敵を迎撃したに過ぎないから、謝る必要性なんてないのだが……

 

『あんた名前は?』

 

『ナイトだ』

 

『ナイトさんか。けっこうカッコいい名前だな。なぁナイトさん。リイスは元気にしてるか? そのリィって子に会わせてくれよ。リイスの娘なら一目会いてぇ』

 

『? ……? っ?』

 

 ……正直、この返しは意外だった。

 リイスとリザークの兄妹関係は不仲と聞いていた。

 どうなっているんだこれは?

 なんか意外と礼儀正しい気もする。

 

 返事に困っていると、リザークがなにやら鼻をクンクンさせた。

 すると顔が一気に険しくなる。

 

『焦げ臭ぇ! さては火球撃ちやがったなあのバカども!』

 

 焦げ臭い、ということはやはり森の奥で爆音が聞こえたあれが原因だろうか。

 ナイトには分からないが、どうやら森が炎上しているらしい。

 

『おいゴルァアアアア! どこのどいつだ火球を撃ちやがったのはあああ! 人の庭を全焼させる気かコノヤロウ!』

 

 怒鳴りながら爆走を始めたリザークにナイトはとりあえず付いて行った。

 リィとグロリアが襲われていたであろう森の奥に辿り着くと、そこはもはや炎の森と化していた。

 

『ぬわあああああああああ! オレの縄張りがああああああ! お前らなにボサッとしてんだ! 火を消せ! 土をかけろおおおおおお!』

 

 リザークの指示で大人しくなっていたA級ドラゴンたちが言われたままに消火作業を始めた。

 あるヤツは土をかけ、あるヤツは息を吹き掛ける。

 

『バカヤロウ! 息吹き掛けんな! よけい燃えるだろうが!』

 

 てんわやんわの大騒ぎになっているリザークをよそにナイトはリィとグロリアを探していた。

 ついでにあのメルなんとかという人間みたいなヤツも。

 

『パパ!』

 

『っ!? リィか!』

 

『パパァァァァァァ!』

 

 巨木の影からニョキと出てきたリィがナイトの胸に飛び込んできた。

 それを抱き止めたナイトは優しく抱擁する。

 

『無事で良かった……』

 

『パパこそ……』

 

『グロリアはどうした?』

 

『グロリア気絶してるの! でもメルなんとかかが抱っこして先に逃げてたから大丈夫だと思う』

 

『そうか。ならいいが……』

 

 大丈夫だろうか?

 あのメルとか言う奴は前にグロリアを襲ってきた二人と臭いが同じとリィが言っていた。

 急にグロリアを狙ったりはしないだろうか?

 

 それにメルはこのリザークも狙っていたな。

 美味しそうとか言っていた。

 しかし当のリザークはどうにも敵対する気配がない。

 あまりに予想外過ぎて逆に面倒なことになってきた気がする。

 

『ナ、ナイトさんすまねぇ! ちょっと手を貸してくれ! 森が燃え尽きちまう!』

 

 リザークが泣きついてきた。

 リィは巨大なリザークにビックリして目を丸くし、ナイトは想像していたリザークとは違いすぎて困惑する。

 

『あ、ああ。火を消すんだな? わかった手伝おう』

 

『すまねぇ! 恩に着るぜ!』

 

 言ってリザークはすぐさま火消しに戻って行った。

 リィにまったく気づかないところを見るに相当に焦っているようだ。

 

 確かに森の火は勢いを増している。

 このままでは全焼も本当に有り得る。

 リザークと敵対する理由が無くなったナイトはリィを地面に置いた。

 

『リィ。ここで大人しくしていろ。火消しを手伝ってくる』

 

『うん。あの匂い……さっきのドラゴンもしかしてリザーク?』

 

『そうだ。お前のお母さんのお兄さんだ。次からはオジさんと呼べ』

 

『わかった! わたしグロリア探して来ていい?』

 

 ……確かにこの森での脅威はもうない。

 リィが単独で動いても大丈夫だろう。

 

『そうだな。探してここへ誘導してやってくれ。今後の話し合いも必要だ』

 

『わかった!』

 

 元気よく返事したリィはグロリアの匂いを辿って奥へ飛んだ。

 見送ったナイトはリザークの火消しの手伝いを開始した。

 

 

 グロリアを抱えたまま低空飛行してきたメルセーヌは、周囲に蔓延していた敵意が無くなるのを感じた。

 

「……!? 急に静かになった?」

 

 あれだけしつこかった下級ドラゴンたちの追撃が止んだ。

 なぜ?

 もしかして先ほど聞こえた謎の遠吠えだろうか?

 

 なんにせよコレは幸運だ。

 これなら森を出るまでもなくグロリアに種付けできる。

 彼女が目を覚ます前に済ませようか。

 

『ん……』

 

 グロリアの呻きが聞こえた。

 メルセーヌの腕の中でもぞりと動く。

 

 あ、やば!

 目ぇ覚ましちゃった!

 どうしよう?

 上手くいかないもんだねどうにも。

 こうなったら……

 

 

 温かいゴツゴツしたものに抱かれている。

 意識が覚醒し始めたグロリアはそう知覚した。

 激しい風に打たれていることにも気づいてようやく目を開けた。

 

 大きな木の根っこや草などの景色が凄い速さで流れて行っている。

 

「あれ……アタシ……」

 

 ボケっとした意識が回復し終えて、グロリアは見覚えのある竜腕に抱かれていることに気づいた。

 

『おはよ〜。よく眠れた?』

 

 その声の主はドラゴン形態になったメルセーヌだった。

 

「な!? ちょ、何すんのよ! 離して!」

 

 嫌な悪寒がしてグロリアはたまらず暴れた。

 いきなり暴れ出したグロリアに慌てふためくメルセーヌは口を開いた。

 

『コラ暴れないでよ! ワタシはアンタを助けてあげたの!』

 

「え?」

 

『落下して気絶してたアンタを助けてあげたの! ワタシが助けなかったらアンタ食べられてたんだから!』

 

「そ……そうなの?」

 

『そうなの。さっきまでドラゴンたちに襲われててやっと逃げ切れたところなんだから』

 

 そういえばメルセーヌから落下して、その先の記憶がない。

 やはりその間は気絶していたようだ。

 まさか一番警戒していた奴に助けられるとは。

 

「……ぁ、ありがとう」

 

 グロリアは自分の身体を狙っているかもしれない相手に不本意ながら礼を言った。

 助けてもらったのが事実ならば仕方ないからだ。

 

『どういたしまして〜。お礼なら身体で払ってくれると嬉しいなぁ〜』

 

「! アンタやっぱり!」

 

『冗談だって〜』

 

 冗談には見えないイヤらしい笑みを浮かべるメルセーヌ。

 そんな彼女になんとも言えない不快感を覚えながら睨む。

 

「早く下ろして!」

 

『しょうがないなぁ……』

 

 意外にもあっさり承諾してきたメルセーヌは速度を落とし、抱えていたグロリアを掴んでそのまま……勢いをつけて地面に叩きつけた!

 

「!?」

 

 顔面から地面に叩きつけられたグロリアは鼻が折れ、鼻血が出て、目に砂が入って閉じた。

 

「ぁ……っ」

 

『なぁ〜んて。ただで下ろすわけないじゃんバーカ』

 

「ぐ、ァ、アンタ……っ!」

 

 顔が血だらけになったグロリアに対し、メルセーヌは彼女を掴んだまま近くの巨木にまた顔面から叩きつけた。

 全身の骨をバラバラにする勢いで何度も何度も巨木にぶち当てる。

 

『あっはっはっはっはっはっ!』

 

 弱者をいたぶる快感故かメルセーヌは笑っていた。

 果たして、気が済んだメルセーヌはグロリアを見た。

 力なく垂れる手足に、クタッと傾く首。

 

 瀕死の重傷だった。

 グロリアの母体を狙っているメルセーヌにとってはこれくらい弱らせるのが好都合だった。

 

『ねぇねぇワタシさぁ……赤ちゃんを残さないといけないのよぉ。だから貸してよアンタの子宮をさぁっ!』

 

 トドメと言わんばかりに地面にグロリアを投げ飛ばした。

 グロリアは大の字になって雑草の上に倒れた。

 そして動かなくなる。

 

『あれ? また気絶しちゃった? んふふ! んじゃ今のうちに種付けしちゃおうかな〜』

 

 メルセーヌは人間の姿に戻り、倒れたグロリアに近づいて跨がろうとした。

 

 その時!

 

「オラァッ!」

 

 開眼したグロリアの蹴りがメルセーヌの股間に炸裂した!

 

「っっっっ!!?!!?!?!?!!!」

 

 不意打ちには不意打ちで返したグロリアの金的。

 その威力はメルセーヌの身体が浮かぶほど!

 

「ひきゃあああああアアアあああアアアああああああああア!」

 

「どいつもこいつも気持ち悪いのよ! この変態野郎っ!」

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