【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
――――話には聞いていた。
グロリアがセレンから輸血され一命を取り留めたことを。
その後遺症でグロリアの瞳がエメラルドグリーンからピンクに変色したことを。
さらにはグロリアがドラゴンの言葉を理解できるようになったことも……レィナは聞いていた。
正直ドラゴンの言葉が分かるというのは半信半疑なところがあった。
だが、いま目の前でグロリアが森からやってきたナイトという人型ドラゴンと会話をしている。
それを見せつけられたレィナはもはや疑う余地を無くした。
グロリアは本当に人間ではなくなってしまったのだと思い知らされた。
なんだかんだと彼女の面倒を見てきた立場からすると悲しい気持ちが湧いてくる。
見ればセレンもナイトと会話している。
やはり彼女も身体はドラゴンになってしまっている。
知っていたはずなのに、いろんな事を再確認させられたレィナは内心穏やかではいられなかった。
隣のミオンはナイトをジッと見つめている。
あのゼクードとネオが二人掛かりでやっとなほどの強敵ナイト。
それが目の前にいて、グロリアとセレンと普通に会話しているのだから凄まじい光景に見えるのだろう。
しかもナイトはグロリアを殺した元凶でもあるのに。
しかしそれを言ったところでグロリアは元には戻らないし、責任を問わせたところで人外のナイトに届く話でもない。
募る不満を胸の奥に抑えつつ、レィナはグロリアとナイトの成り行きを見守った。
※
『グロリア。無事で何よりだ』
「ナイトこそ」
【ヒュンペリアの森】の出入口付近でグロリアとナイトはお互いの無事を確認し、小さく笑った。
ナイトほどのドラゴンだ。
あれくらいでどうにかなるとは思ってなかったが、なんだかんだ心配だったのは言うまでもない。
『グロリア。リザークの件だが……』
「あ、それはもういいの……アタシたちは別にもうリザークと会う理由もないし、戦う理由もないから……」
『なに? どういうことだ?』
「それが……」
グロリアはナイトに避難所の洞窟にいた人間がみんな殺されたことを伝えた。
レジーナとオルテンシアのことも。
『奴らは確かに殺したはずだ。まさか生きていたとはな……』
さすがのナイトも驚いていた。
それもそうだ。
アタシだってビックリしたんだから。
あそこで死んでくれてれば、こんなことにはならなかったのに。
「そうね……でもアイツらはもう後ろの二人に倒してもらったからいいの。ただ……」
『もう戦う理由がないというのはそういうことか。ならもういい。グロリア。お前は仲間を連れてここから去れ』
「そう言うと思った……」
ナイトはいつもアタシとの距離を線引していた。
冷たい言動もそのためだと知っている。
『リィには俺から言っておく。リザークにもだ。……もう会うこともないだろう』
「ナイト……」
正直……ナイトとリィと離れたくないという気持ちはあった。
ついさっき自分の腕がドラゴンのそれになって、ピンクの炎まで出せるようになったのだから。
もはや人間と呼べる存在ではない自分に、最後まで側に居てくれそうなのはこのナイトとリィくらいしか居ないような気がして……
その時また母ローエの顔が浮かんだ。
アタシに嫌われてもアタシを諦めない母親。
そんなしつこい母親がいたのを思い出した。
母親と呼べる存在はリリーベールやレィナやリーネと3人もいるが、こんなにしつこいのはおそらくローエだけだろう。
そしてそのしつこさに救われている自分がいるのも確かで……
『リザークはお前たちに会いたがっていたが、そんな事態になっているなら無理に会うこともない。俺たちの関係もここまでだグロリア』
「……」
『グロリア……お前には感謝している。リィと少しでも打ち解けられたのはお前のおかげだ』
あのナイトがアタシに礼を言っている。
自分を殺した本人に礼を言われる日が来るなんて、人生は本当に分からないものだ。
「アタシこそナイトには感謝してるわ。あの時助けてくれてありがとう……」
『……いいんだ』
それだけ返したナイトは踵を返し、森へ歩を進めた。
彼の大きな背中を見送るグロリアとセレン。
その光景を見守るミオンとレィナ。
静かに終わるはずだったグロリアとナイトの別れは、なんの前触れもなく空から降ってきた一粒の光によって蹂躙された。
地面に着弾した光は轟音と共に爆発しグロリアたちは飲み込んだ。