【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第428話【何が起こった?】

 光が収まり、爆煙がゆっくりと消えていく。

 周囲は焼け野原と化しており、残り火が草木を焼いて燻っている。

 ナイトは全身に僅かな痛みを感じながらも意識はなんとか保っていた。

 

『く……何が起こった?』

 

 身体を起こしたナイトは黒くなった地面に倒れる人影を見つけた。

 

『!? グロリア!』

 

 駆け寄って抱き起こした。

 グロリアの意識は飛んでおり、全身のあちこちが焦げており、血も出ている。

 

 見ればセレン・ミオン・レィナも遠くで倒れている。

 みんな血だらけで火傷もある。

 セレンとグロリアはともかく、人間のミオンとレィナは死んでいてもおかしくない重傷だった。

 

『おい! しっかりしろ!』

 

 ナイトがみんなに声を掛けるが、返ってきたのは

 

『なんだ……やっぱりテメェは生きてたか』

 

 という聞き覚えのあるオスの声だった。

 その声は空から聞こえ、振り向けばそこには奴がいた。

 

『リザーク!』

 

 空から降臨したその相手に驚きを隠せなかった。

 なぜリザークがここに!?

 リィと待っているはずでは!?

 

『さっきのブレスは……お前が!?』

 

 信じられないと言った声音でナイトが聞いた。

 間違いであってほしかったがリザークは非情だった。

 

『だったらどうした? ああ?』

 

『きさま!』

 

『おっと動くなよ? コイツがどうなってもいいのか?』

 

 地面に着地したリザークが左腕を突き出してきた。

 その巨大な手の中には

 

『パパ! 助けてぇ!』

 

『リィ……!』

 

 ナイトの娘リィが握り締められていた。

 リィは拘束から逃れようと必死に暴れているが効果はない。

 リザークは捕らえたリィをナイトに見せつけながらニヤつく。

 

『ジッとしてろよ? ちょっとでも動いたらコイツの首が飛ぶぜ?』

 

『自分が何をしているのか分かっているのか! その子はお前の姪だぞ!』

 

『そんなことは匂いで分かる。このガキからはあの下品なメスの匂いがプンプンしてたからな』

 

『下品なメス……だと?』

 

『リイスの事に決まってんだろ?』

 

『なんだと!』

 

『動くなって言ったぞ?』

 

 またもリィをグイッと全面に押し出してきた。

 涙ぐむリィの喉元にはリザークの爪先が突き立てられている。

 ほんの少しリザークが力を込めればリィの首にその爪が刺さる。

 

『パ、パパ……』

 

『……最初からこうするつもりだったのか! リザーク!』

 

『当たり前だ。オレの縄張りに入った奴は誰であろうとも許さねぇ。たとえ身内でもな』

 

 とんでもないクズ野郎だった。

 まさか自分の妹の娘をも巻き込むとは。

 これがリイスがリザークを嫌っていた理由か。

 コイツの本性はこれだったから……ん!?

 

 ナイトは周囲に気配を感じて横目で確認した。

 A級ドラゴンどもがナイトたちを完全に包囲していた。

 いつの間にこんな……

 一斉にブレスでも撃たれたら俺はともかく倒れているグロリアたちが無事では済まない。

 くそ! どうする!

 

『あいつらに気づいたか。さすがだな。やっぱりテメェをマークしておいて正解だったぜ。ナイト』

 

『リィを離せ!』

 

『無理な相談だ。テメェが危険な奴だってのは匂いと雰囲気で分かってた。まともにやり合えばオレでもタダでは済まねぇってな』

 

『だからリィを竜質(ひとじち)に取るのか。卑怯者め』

 

『周到と言ってほしいなぁあ!』

 

 リザークがナイトをその巨大な拳で掴んできた!

 

『ぐっ!』

 

『強いと分かっている相手に!』

 

 そのまま地面に叩きつけられたナイト!

 

『おごっ!』

 

『対策もせずに挑むのは!』

 

 巨大な足による踏みつけ!

 

『うがっ!』

 

『バカのやることだ!』

 

 さらに踏みつけ!

 

『がはっ!』

 

 踏みつけ! 踏みつけ! 踏みつけ! 

 怒涛の連続踏みつけ!

 

『うっ! ぐっ! がっ!』

 

『おらおらおらぁあ! どうしたぁあ! 反撃してもいいんだぜ? このガキが死んでもいいんならなぁあ!』

 

『くそ……っ!』

 

『パパ! パパ! もういいよ! リィのことはいいから反撃して!』

 

『ははっ! 反撃していいってよ! 命が惜しくねぇんだとさ! 大したガキだぜ!』

 

『く、バカを言うな! 子供を犠牲にしてまで戦う親がどこにいる!』

 

『なら死んじまえよ! おらおらおらぁあ!』

 

 一方的に踏みつけられ傷を増していくナイト。

 ナイトの竜麟にダメージを与えるリザークのパワーは本物だった。

 無効化し切れない衝撃がナイトの竜骨にさえ響いてくる。

 

 圧倒的な体格差のせいもあるのだろう。

 ナイトはせいぜい二メートル。

 対するリザークは十メートルを優に超える巨体だ。

 

 攻撃力もそれ相応にある。

 なによりナイトを最初から危険視し、リィという人質をとってから仕掛ける頭の良さ。

 これほど質の悪い相手はそう居ない。

 

『ぐ……がはっ!』

 

『パパァアアアアア!』

 

 泣き叫ぶリィ。

 そしてそれを嘲笑うリザーク。

 もはや反撃も許されないナイトには為す術もがなかった。

 

 せめてリィだけは助けねばと、踏みつけを喰らいながら思考するも何も浮かばない。

 これまでか……と諦めかけたその時!

 いきなり現れたレィナがリザークの左腕を切断した!

 

『なにぃ!?』

 

 不意打ちを食らったリザークは驚愕した。

 その間にリィが解放されセレンがキャッチ。

 

「今よ!」

 

 レィナが叫ぶとグロリアとミオンが疾走してリザークの懐に飛び込む!

 

「【轟拳】!」

「【エクスプロード】!」

 

 リザークの胸に二人の鉄拳が撃ち込まれ瞬時に爆発した!

 

『うわあああああああああ!』

 

 グロリアとミオンの同時攻撃はリザークの巨体を浮かして吹き飛ばした。

 

『お前たち……!』

 

 驚くナイトに振り向くグロリア。

 

「ナイト! リィ! 大丈夫!?」

 

『ぁ……ああ、助かった!』

 

『くそったれがぁあああ! 生きてやがったのか!』

 

 吹き飛ばされたリザークが態勢を立て直してきた。

 しかもレィナに切断された腕がもう再生している。

 

「あいつ! もう腕が治ってる!」

 

 驚くグロリアたちに間髪入れずリザークが吼えた!

 

『撃てお前ら!』

 

 それは周囲に展開させていたA級ドラゴンたちへの攻撃指示。

 A級ドラゴンたちは即座にブレスを発射してナイト・グロリア・リィ・ミオン・レィナ・セレンを狙撃させた。

 度重なるブレスは爆煙を上げ、ナイトたちの姿を見えなくした。

 

『はっはっはっはっ! ざまぁみやがれ雑魚どもが! オレの縄張りに入ったのが運の尽きなんだよ! はーっはっはっは…………は?』

 

 リザークは驚いた。

 爆煙の中から何かが聴こえてきたのだ。

 しかもそれはどこか聞き覚えのあるもので……

 

『♪〜♪〜〜♪〜』

 

 これはあのガキの……リィの歌声?

 それにこの歌詞は……まさか!?

 リザークが驚いている間に爆煙が晴れた。

 

「みんな大丈夫?」

 

 言ったのは爆煙の中から現れたドラゴン形態のセレン。

 あれだけのブレスを受けて彼女は無傷だった。

 しかも仲間を翼で包み込んで守っていた。

 ナイトたちもみんな無事だった。

 

「ええ! みんな無事よ! ありがとうお婆ちゃん!」

 

『い、生きてやがった!? それに、あのドラゴンはあの時の!』

 

 いつかのピンクのドラゴンだ。

 前は不意打ちをくらって思わず逃げてしまった相手だ。

 匂いで気づくべきだった!

 

『みんな! 撃って!』

 

 今度はリィが叫んだ。

 すると周囲に展開していたA級ドラゴンがリィの指示に従ってブレスを発射!

 狙いはみんなリザークに絞られていた。

 次々とブレスが撃ち込まれたリザークは怒る。

 

『あのガキ! オレの歌を真似したってのか! 教えた覚えはねぇぞ!』

 

 何発も撃ち込まれるブレスをものともせず怒るリザークはナイトたちに迫りくる。 

 

「来るわ!」

 

『グロリア。みんなを下がらせろ。あとは俺がやる』

 

「ナイト!? 一人でやるの!?」

 

『奴はお前らの敵う相手じゃない。もう充分だ。下がって待っていろ』

 

 このリザークというドラゴンは小賢しいが強い。

 すでに回復したグロリアとセレンはともかく、普通の人間でダメージが回復していないミオンとレィナはこれ以上の戦闘は無理だろう。

 

「……気をつけて!」

 

『ああ』

 

 グロリアたちが下がり、ドシンと大きな足音を立ててナイトの目の前にリザークが立った。

 

『悪運の強ぇの野郎だな。ナイトさんよ』

 

『黙れ。後悔させてやるぞ。リザーク』

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