【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第440話【ギリギリの戦い】

 ゼクードがうまくレグを引き付けてくれた。

 レグはどんどんグリータの館から離れていく。

 これなら見つからずに城へ向かうことができる!

 

 そう思いすぐにグリータは館から出た。

 すると出た先にはロジェール王女がポツンと立っていた。

 

「グリータ団長!」

 

「ロジェール様!? 脱出していたのですか!?」

 

「いいえ。たまたまレグに連れ出されていたところです。おかげで助かりましたが……あれはゼクード様ですか!?」

 

 ロジェールが遠くで巻き起こる戦塵を見ながら言った。

 

「そうです。帰還してくれました。ところで他の方々は?」

 

「あ、ネオやお母様たちはまだ城に捕まっています!」

 

「わかりました。なら城へ急ぎましょう。ロジェール様も付いてきてください」

 

「はい!」

 

 グリータが先行してロジェールがそれに続いた。

 本当なら王族のロジェールは先に地下通路へ案内して逃がすべきなのだが、今はそんな僅かな時間も惜しい。

 

 ゼクードはレグには勝てないとハッキリ言っていた。

 だとするとさすがのゼクードでも長くは持たないはず。

 ならば出来るだけ早くみんなを救出しゼクードが撤退できるようにする。

 そんな時間との戦いだからロジェールには付き合ってもらおう。

 城のどこにみんなが捕まっているかも知っているはずだ。

 

 グリータは城へとまっすぐに走った。

 遠くで轟音が鳴り響き続けている。

 民家の崩れる音。

 何かが爆発する音。

 それが絶え間なく耳朶を打ってくる。

 

「凄い戦い……ゼクード様は大丈夫でしょうか……」

 

 後ろを走るロジェールが心配そうにそう言った。

 グリータは包み隠さず答える。

 

「おそらくゼクードでも長くは持ちません」

 

「え!?」

 

「あのゼクードでさえ囮が精一杯の相手なんです。奴を倒すには何かしらの作戦が必要です。そのためにもまず仲間を救出して戦力を整える。それが今回の目的なんです」

 

「戦力……ネオとカーティス様のことですね」

 

「そうです。ネオとカーティス二人で勝てず、ゼクードでも勝てないなら、あの三人を束にしてぶつける必要があります。もちろんそれ以外の作戦も練る必要があります。力押しだけでは勝てません。なんとかしてレグを弱らせる方法などを考えないと……」

 

 ……とは言え、あんな化け物を弱らせる方法などあるのだろうか?

 先に逃した息子のリイドが何かしらの案があると言っていたが、果たしてどうなるやら。

 

 だが自分には何も思いつかないから息子を頼るしか無いのが現状だ。

 弱体化の方法は息子リイドに任せて、自分は仲間の救出に集中しよう。

 

【南の領地】から走ってようやく城へと近づいてきた。

 しかし近づくにつれ城から破砕音が聞こえるようになった。

 轟音。爆発音。まるでさっきのゼクードたちと同じような音ばかりだ。

 まさか城内で誰かが戦っているのか?

 

「戦闘音? どういうことだ? 誰と誰が戦ってるんだ?」

 

 ゼクードとレグは相変わらず街中で凄まじい戦塵と轟音を響かせながら戦っている。

 しかしこの城から響く音は彼らではない。

 別の戦闘音だ。

 

「わ、わかりません。みんな牢屋に入れられてて戦うどころじゃないはずなのに……」

 

 ロジェールがそう言うと突如として城の正門が開いた。

 中から赤い髪の女騎士が飛び出し、それとロジェールの眼がパッチリと合った。

 

「あ! あいつはあの時の!」

「あ! あの時の王女!」

 

 ロジェールと赤い髪の女騎士が指を差し合う。

 見れば女騎士の装備はディアマード家の黒い鎧。

 てことはこの女騎士はディアマード家の生き残りか。

 

 ここへ来る前にゼクードが言っていたアグリスという女騎士だ。

 ゼクードにはアグリスと遭遇したら逃げろと言われている。

 奴は裏切り者で、奴の側にはドレスという女騎士もいるから危険だ、と。

 しかしアグリスの側に居たのは……

 

「グリータ団長!」

 

 アスレイ陛下だった。しかもカーティスに肩を貸しながら。

 我が国のトップが敵の隣で無防備にいる。

 しかも後からネオに肩を貸すレイゼ女王も現れた。

 さらにレミーベール・オフィーリアも出てきた。

 どうなってる? なんだこの状況は?

 っていうかみんな脱出してる!

 

「へ、陛下!? みんな! よ、良かった無事で!」

 

 戸惑いながらもグリータはみんなに駆け寄った。

 ロジェールがボロボロのネオを見つけて「ネオ!」と慌てて駆け寄る。

 それを見つつアスレイがグリータに言った。

 

「心配を掛けました団長。他のみんなは?」

 

「は! うまく【ヨコアナ】へ避難させました。今はあのゼクード・フォルスがレグを食い止めてくれています」

 

 そう告げるとボロボロのカーティスとネオが目を大きく見開く。

 

「父さんが……」

「たった、一人で……?」

 

 驚愕するカーティスとネオ。

 何故かレイゼとレミーベールも険しい顔をしている。 

 どうしたのだろう?

 

「さすがゼクードさんだ! よし! 我々も早く【ヨコアナ】へ避難しよう! でないとゼクードさんが動けない!」

 

「は! 陛下こちらです!」

 

 グリータは城の庭にある草で隠された地下への通路に案内しようとした。

 するとロジェールがアグリスを指差して慌てる。

 

「ちょっと待って! コイツは敵よ!? なんで一緒に!?」

 

「今は味方だ。いいから急ぐぞ」

 

 レイゼがささっと口でロジェールを制した。

 すると次の瞬間!

 

「うおわあああああああああああああ!」

 

 ゼクードが吹き飛んで来た!

 彼は地面を何度かバウンドしながら正門に押し込まれた。

 

「え……お父さん!」っとレミーベールが驚愕した。

 

「ゼクード!?」

 

 グリータも驚く。 

 そんなに時間は経ってないが、もうゼクードがボロボロだった。

 グリータの中で最強で無敵の存在だったあのゼクードがボロボロに……!

 正直あいつが居れば何とかしてくれると思っていた。

 しかしアイツがこうも早くここまで追い詰められるとは。

 

「おいおいなんだァこりゃあ? ゾロゾロと夜逃げか?」

 

 空から現れたのは、どうやらレグ。

 声が彼のものだ。

 見たこともない竜人形態になっており、漆黒の竜鱗を全身に纏い、赤い血のような燐光を爪や翼など至る部位から発している。

 

 なんだあの姿は!?

 カーティスとネオが戦った時は人間の姿だったのに。

 あんな姿を隠し持っていたのか?

 

 いやそれよりもこれは絶望的な状況になったぞ! 

 よりによってこんな場所でレグに見つかった!

 これじゃ地下への隠し通路が使えない!

 ここで使ったらバレてしまう上に追撃されてみんな殺される。

 殺されて、通路がバレて、そのまま【ヨコアナ】が襲われる!

 

 まずい……カーティスもネオも立っているのがやっとな重傷。

 ゼクードは吹っ飛ばされてしまった。

 いま戦えるのは自分だけだ。

 しかし戦ったところで瞬殺される未来しか見えない。

 一秒の時間さえ稼げないだろう。

 どうすれば……!

 

「どうやって牢から出た? キサマか? アグリス……」

 

 ギョロとドラゴンの顔になったレグがアグリスを睨む。

 その圧倒的な威圧感にアグリスは一気に青ざめ冷や汗をドバドバ流す。

 

「ち……ちが…………」

 

 あまりの恐怖に歯が噛み合わないアグリス。

 彼女だけじゃない。

 カーティスとネオ以外のみんながレグの威圧感に飲まれていた。 

 

 強さに差がありすぎる。

 彼がその気になれば一瞬で殺されると。 

 死が目の前にまで迫っていると分かるのだ。

 

「ふん。まぁいい。お前は貴重な【竜ノ苗床】。仕置きは後回しだ。まずはこの脱走したゴミどもを皆殺しだ!」

 

 レグがアグリスから視線を近くのグリータに変えてきた! 

 刹那!

【ダークマター】がレグの顔に直撃した!

 それは彼の大きな眼球にも入る!

 

「ぐああああアアアアああああああ!」

 

「お前の相手は、俺だろうが!」

 

 それはゼクードの声!

 正門から駆け抜けてきたゼクードが咄嗟に魔法で助けてくれたようだった。

 

「キぃサマあああああああああ!」

 

 怒りのままにグリータからゼクードに狙いを変えたレグが走り出し、そして飛んだ。

 ゼクードも城の中へと逃げて行った。

 

 またゼクードに助けられた。

 やっぱりアイツは凄い男だ。

 ありがとう親友。本当に助かった。

 

「お父さん!」

 

「行くなレミー! オレたちじゃ足手まといだ! みんなこっちだ! 今しかない!」

 

 ゼクードがレグを再び引き付けてる間にグリータはみんなを地下通路へ送った。

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