【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第443話【正式加入】

「ちょ、ちょっと待って! シエルグリスが消し飛んだってどういうこと!? レイゼちゃんは!? リベカちゃんは!?」

 

「姉さんたちはみんな無事です。国だけが消された感じです

 

「良かった……レイゼちゃんたちになにかあったら……」

 

「ええ、ホントに。ですが戦況はよろしくありません。ミオンさん。詳しく説明するのでみんなを集めてくれますか?」

 

「わかったわ」

 

 今の時代を詳しく説明するため、ゼクードはミオンたち全員を集合させた。

 セレン・グロリア・ミオン・レィナ・ドレスの五人。

 そしてとりあえずナイトとリィも混ぜる。

 

「現在の状況だが、今のところ人命被害は少ない。シエルグリスの民も、エルガンディの民も今はみんな【ヨコアナ】へ避難している」

 

「ヨコアナ!? あそこを使うなんて相当じゃないですか!」

 

 レィナの言葉にゼクードは頷く。

 

「ああ。相当な相手なんだよレグは。見ての通り俺はレグに殺されかけた。ネオとカーティスもレグに半殺しにされたらしい」

 

「ネオが!?」っとミオン。

「あの二人が半殺し!?」っとグロリア。

 

「俺も戦ったから分かるけど、レグはとにかく速い。そして堅い。パワーも桁違いだった。爪から繰り出される無数の斬撃は捌くのさえ困難だったよ」

 

「それだけ強くて【ブラックノヴァ】とかいうシエルグリスを吹き飛ばした技を持ってるの?」

 

 セレンの質問にゼクードは頷く。

 

「ああ。うまく戦えたとしても下手に追い詰めるとその【ブラックノヴァ】を撃たれかねない」

 

「厄介な奴ね。勝算はあるの?」

 

 ミオンに聞かれたゼクードは「ありません」と正直に答えた。

 みんながギョッとする気配を見せる中、構わず続ける。

 

「正直……真っ向勝負したら絶対に負けます。だから俺は【エリザの血】を使ってみようと思ったんです」

 

「【エリザの血】?」と知らないミオンは首を傾げる。

 レィナとグロリアは思い出したようにゼクードを見る。

 風が吹き、草木が揺れる中ゼクードはさらに続けた。

 

「【エリザの血】はドラゴンをゾンビ化させる効力を持っています。ゾンビ化したドラゴンの竜鱗は腐り落ちて防御力がかなり落ちていました。これをレグに使えないかと考えたんです」

 

 ミオンに説明し、当の彼女は納得したように頷いた。

 

「なるほど。それでレグの防御力を落とす作戦ってことね」

 

「はい。少なくとも攻撃さえ通れば戦いようはありますからね。奴の防御力が落ちたらこっちの最高戦力を一気にぶつけて畳み掛けます。【ブラックノヴァ】を撃たせる前に倒すにはそれしかない」

 

「最高戦力……あなたとカーティスと、ネオね?」

 

 ミオンの言葉に深く頷くゼクードは「もう一人います」とナイトに視線を送った。

 

「ナイト。もう一度、俺たちに力を貸してくれないか?」

 

『断る』

 

 お手本のような即答だった。

 ナイトの言葉が分かるグロリアとセレンが目を丸くし、ドレスは相変わらず顔色一つ変えなかった。

 

 正直、即答されるとは思っていた。

 このレグとの戦いにナイトが参戦するメリットはない。

 ゼクードたちが勝利してもナイトにはなんの得もないのだ。

 力だけ貸してくれ、というのはあまりに虫の良い話なのだ。 

 

『グロリアにも言ったがな、俺はお前ら人間の味方じゃないんだ。これ以上関わるつもりはない』

 

 ナイトの言葉にゼクードも同意だった。

 所詮は人間とドラゴン。

 水と油のような生存競争の相手だ。

 あまり深く関わるべきじゃないのは正しいと思う。 

 

『俺は俺なりにお前を脅威と認めている。そんなお前がやられるほどの相手だ。そんな危険な奴にリィを近づけるわけにはいかない』

 

 これにも同意せざるを得なかった。

 娘を危険な相手に近づけたくない。

 同じく娘を持つ父としては共感しかなかった。

 

『お前も父親なんだろう? なら俺の言っていることも理解できるはずだ』

 

「ああ……それは分かるよ。凄く……」

 

『ふん……ならもう話すことはないだろう。夜明けと共に俺とリィはここを去る』

 

「……わかった」

 

 話を終えたゼクードは腕を組み小さく息を吐く。

 ナイトは眠そうなリィを抱えて奥の木の根に座り、リィを寝かしつけ始めた。

 

 そんなナイトを眺めて対レグについて策を練っていると、傍らで一部始終を見ていたグロリアが寄って来た。

 

「ねぇお父さん。いいの? ナイトの助力はあった方が……」

 

「いいもなにも……ナイトの言い分が正し過ぎて言い返せないよ。セレンの時とは事情が違う。利害が一致していないんだ」

 

「それは……そうだけど……ナイトは凄く強いし、リィも凄い歌を歌えるのよ」

 

「歌?」

 

「そう。身体を癒やしてくれる歌だったり、ドラゴンを操る歌だったり、身体能力を上げてくれる歌だったり」

 

 そう言えばセレン戦の時にリィが何か歌のようなものを鳴いていたのを見たな。

 あの歌のおかげで戦闘不能になっていたローエたちが復帰した。

 やはりあれはリィの力だったのか。

 

 癒やしの歌と、ドラゴンを操る歌、それと身体能力を上げてくれる歌……か。

 

「ドラゴンを操る歌って凄いな。それでレグを操れないかな?」

 

「ん〜どうかな? リザークには効いてなかったし、格上過ぎるドラゴンには効かないのかも」

 

「そうか……じゃあ最後の身体能力を上げてくれる歌ってなんだ? そのまんまの意味か?」

 

「うん。リザークってドラゴンが歌ってたやつなんだけど、リィがそれを聞いて覚えたみたいなの。リザークはその歌でパワーアップしてナイトを追い詰めてたけど、リィがその歌でナイトをパワーアップさせて逆転したわ。たしか【全能の歌】って名前」

 

「【全能の歌】……」

 

 そんな凄い歌が存在するとは。

 この歌を聞けば俺もパワーアップするんだろうか?

 俺だけでなくカーティスとネオにも聞かせれば3人揃ってパワーアップ出来るだろうか?

 

 出来るなら【エリザの血】で弱体化させたレグに、パワーアップした三人で戦えば勝機があるかもしれない。

 

「その【全能の歌】があればお父さんやナイト。あとカーティスとネオもパワーアップさせて四人でレグを叩けば勝機があると思うの」

 

 グロリアも同じことを思っていたらしくそう言ってきた。

 

「確かに……そうだな」

 

 これはもう一度だけナイトに交渉してみる必要がありそうだ。

 だが、交渉したとして、どうすればいいだろう?

 

 ナイトが俺たちに協力するメリットがまったくない。

 しかもリィが危険な目に合う可能性が出てくるからデメリットしかない。

 

 どうする……

 

 

 

「なによ……これ……」

 

 信じられない、と溢したのはミオンだった。

 夜明けと共に連れて見せた光景はゼクードとドレス以外を絶句させた。

 

 広い草原のド真ん中にポッカリ空いた巨大な穴。

 穴の底に水が溜まり、抉れた地層は青黒く焦げている。

 それはいつか見た【シエルグリス】の成れの果て。

 かつてそこにあったはずの王国が影も形もない。

 

 これから戦う相手の脅威をみんなに知ってもらうために連れてきた。

 ミオン・レィナ・グロリア・セレンはもちろんだが、ゼクードの狙いは主にナイトとリィだった。

 

 ナイトに頼んでここまで同行してもらった。

 ナイトを味方にするにはもうこれしか思いつかなかった。

 レグという化け物を相手にするにはナイトとリィの力は絶対に必要な気がしたから。

 

『……これはヤツがやったのか?』

 

 ナイトの言葉にゼクードは頷く。

 

「ああ……信じ難い力だろ?【ブラックノヴァ】っていうブレスを一発撃ってコレだそうだ」

 

「ちょ、ちょっと待ってよお父さん! レグはこんなバカみたいな火力持ってるの!?」

 

 さすがに青ざめたグロリアにゼクードはまた頷くしかなかった。

 

「そうだ」

 

「勝てないよこんなの! ナイトとリィが一緒に戦ってくれたとしても、こんなの相手にどうしろってのよ!」

 

 さすがに王国を消し飛ばすほどの化け物相手にグロリアが取り乱し始めた。

 誰もグロリアの言葉を否定せず、ただ冷や汗を流し沈黙する。

 

 しかしナイトは顔色一つ変えていない。

 ただ怪訝な顔でゼクードを見てきた。

 

『こんなものを俺に見せてどうするつもりだ?』

 

「それは、その、やっぱり協力してほしくて」

 

『昨日断ったはずだ』

 

「ぁ、ああ。それは、分かってる」

 

『なら話すことはない。悪いがもう行かせてもらうぞ。自分たちでなんとかするんだな』

 

 ナイトに素っ気なく返されたゼクードは頭を掻いて溜息を吐いた。

 

 ああ……やはりダメだった。

 レグの脅威を認識させて協力を煽る作戦だったんだが、無理があったか。

 

 やっぱりナイト側になんのメリットもないもんな。

 聞けばグロリアを助けてくれたみたいだし、巻き込むのはあまりに失礼だろう。

 

 ……まぁ、グロリアがああなったのはそもそもナイトのせいでもあるんだが、そこは戦いの世界だ。仕方ない。

 

「待ってください」

 

 ゼクードがナイトを諦めていたその時、傍らで見ていたドレスが前に出てきた。

 ナイトは前に立ち塞がったドレスをギロリと睨む。

 

『……なんだお前は?』

 

「ナイトさん。あなたはゼクードさんに協力するべきです」

 

『なんだと?』

 

 あのドレスがナイトと当たり前のように会話していることにゼクードは驚いた。

 しかしドレスがドラグーンであることを思い出して成り行きを見守ることにした。

 

「理由はあります。まずあなたがレグ様に捕食対象として狙われます」

 

『捕食対象? この俺をか?』

 

「はい。レグ様は強いドラゴンを捕食することで強くなる体質をお持ちです。あなたほどのドラゴンなら、いずれ必ず狙われるでしょう」

 

『……それだけか?』

 

「いいえ。二つ目はリィさんの存在です。見たところリィさんも特別な力を持ったドラゴン。成長すれば下級ではなく上級レベルのドラゴンになることは間違いありません。ならば彼女も捕食対象にされる可能性があります」

 

『え!? リィ食べられるの!?』

 

 リィが怖がるがドレスは真顔のまま首を振った。

 

「……それなら良い方かもしれません」

 

『どういう意味だ?』っとナイト。

 

「リィさんはメスです。優秀なメスともなればレグ様も捕食せず母体として生かしておく可能性があります」

 

『母体って何?』

 

 リィに聞かれたドレスはまたも無表情のまま説明する。

 

「赤ちゃんを生むための身体、という意味です」

 

『え!? リィって赤ちゃん生めるの!? どうやって?』

 

「それは――――」

 

『黙れ。リィにはまだ早い』

 

 ナイトに怒鳴られドレスは真顔のまま「失礼しました」とお辞儀する。

 するとナイトは腕を組んでそんはドレスを睨む。

 

『お前の言いたいことは分かった。いずれ俺たちにも脅威が及ぶからゼクードに協力しろと言うんだな?』

 

「はい。ゼクードさんが先にやられても、あなたが先にやられても後悔が残ります。協力していれば勝てたかもしれない、なんて後悔は先には立ってくれません」

 

 そんなドレスの言葉にゼクードは同意だった。

 確かに後悔はいつも先には立ってくれない。

 だから打てる手は全部打つべきなのだ。

 それでダメなら諦めもつくが……

 

『ふん……ペラペラとよく喋る。そのレグとやらにゼクードたちがやられても俺の知ったことじゃない。お前らがやり合っている内に遠くへ逃げるさ』

 

「ゼクードさんたちが勝てばそれでいいでしょう。しかしゼクードさんたちが負ければそうも言ってられません。あれほどの力を持った御方がこの大陸だけで満足するはずがない。いずれ勢力を大きくしたら大陸をも跨ぐ支配に切り替わるはずです」

 

「大陸を跨ぐ!?」

 

 声に出して驚いたのはグロリアだった。

 彼女に頷いたドレスは淡々と続ける。

 

「ドラゴンならば容易です。翼があるなら尚更。それにその頃にはもうレグ様は捕食を繰り返し圧倒的な力を得ているはずです」

 

 ドレスの言葉にゼクードは今更ながらレグの本当の脅威を思い出した。

 思わずゼクードはナイトに詰め寄る。

 

「あ、そうだそれ! ナイト! レグは今が一番弱いはずなんだ。叩くなら早い方がいい! 頼む! また力を貸してくれ!」     

 

『気安く近づくな。暑苦しい……』

 

「ぁ、悪い……」

 

「ねぇナイトお願い。お父さんに協力して。それにいずれ大陸を跨ぐならリイスさんの故郷だって荒らされるわ」

 

 グロリアの口添えにナイトは押し黙った。

 かなり悩んでくれている。

 もう一押しな気がするのだが。

 

「ナイトさん。どうかお願いします。リィちゃんは私が身体を張ってでも守りますから」

 

 最後はセレンが言ってくれた。

 まさか母さんがこんなことを言い出すとは驚いた。

 だがセレンのその一言はナイトに大きく響いたらしく。

 

『……しつこい奴らだ。おいリィ。お前はどう思う?』

 

『リィはもっとグロリアとお話ししたいな』

 

『そうか……』

 

 溜息と共にナイトはゼクードに背を向けた。

 こちらを見なくなった。

 

 やはりダメなのか……?

 

「ナイト……」

 

 何度か戦って殺されかけた相手がナイトだ。

 逆に言えば味方になってくれればこれほど心強い味方はいない。

 ナイトさえ来てくれれば、あとはカーティスとネオの回復を待って最強のメンバーでレグに挑める。

 リィの歌の力も合わされば勝率は更に上がる。

 だから是が非でも二人の力を借りたいが、ダメなのか……?

 

『……』

 

 ナイトはゼクードに背を向けたまま喋らない。

 息苦しい沈黙がやたら長く感じる。

 しばらくしてようやくナイトがゼクードに向き直ってきた。

 

『これで本当に最後だ。俺が人間に手を貸すのは』

 

 !

 

 ゼクードは一瞬だけ驚いて止まった。

 ゼクードだけじゃなく、ナイトの言葉が分かるセレン・グロリア・ドレスも止まった。

 

 ほんの少しの間を置いてからようやくナイトの言葉の意味を理解してゼクードは顔をほころばせた。

 

「っ! ナイト! ありがとう!」

 

『ふん……リィに何かあったらお前を殺す。それだけは覚えておけ』

 

「もちろんだ。しばらくよろしく頼む」

 

 ゼクードがナイトに握手を求めて手を差し出すが無視された。

 ガクッとなるゼクードだが、その後ろでグロリアとセレンがハイタッチしながら喜ぶ。

 リィもなんとなく一緒に喜んでいる。

 

 ナイトの言葉が分からないミオンとレィナはポカンとしているが、セレンが説明に向かってくれた。

 

 ドレスのおかけでナイトとリィを仲間に引き込むことができた。

 助かった。

 あとで一応、礼を言っておくか。

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