【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第445話【広がる誤解】

 カレンティアたちの安否を知り、やっと一つの不安がカティアの胸から解消された。

 しかしまだ不安で心配で仕方ないことが残っている。

 

 カーティスの安否。

 ゼクードの安否。

 レィナの安否。

 グロリアやセレンの安否も心配だ。

 ミオン。

 ゼクードと共に残ったグリータも。

 

 今この瞬間でさえゼクードがレグと戦っているはず。

 そう思うと胸騒ぎがして止まない。

 あのゼクードがやられるとは思えない。

 

 しかし、今回ばかりは相手があまりにも化け物だ。

 カーティスとネオを返り討ちにしたレグの戦闘力は高すぎる。

 あのゼクードも自分でレグには勝てないと言っていた。

 

 ならばどうするつもりなのだろうか?

 何も考えていないようでしっかり考えているのがゼクードだ。

 だから……きっと今回も何かしらの作を考えているはずなんだ。

 

 そうであってほしい。

 自分たちを逃がすためだけにゼクードは残ったわけではないはずだ。

 そうなんだろ? ゼクード……

 

 込上がってくる不安を押さえつけるようにカティアは内心で聞いた。

 返ってくるわけでもない問いに、なぜか苛まれそうになる。

 胸騒ぎがどうにも収まらない。

 あのゼクードが殺されてしまうのではないかと不安で仕方ない。

 

「……すまんローエ。フラン。カレンティアを任せていいか?」

 

 考え過ぎて顔色の悪いカティアが言うとローエとフランベールは共に頷いてくれた。

 

「いいですわよ」

「子供たちは見てるから任せて」

 

「すまん」

 

 言ってカティアは装備を壁に立て掛け部屋を後にした。

 見送ってくれたローエとフランベールの顔もやはりどこか影があり、カティアと似た心情なのが見て取れた。

 それでもカティアを見送ってくれたのはカーティスの事を知ってのことだろう。

 

 ローエとフランベールの気遣いに感謝しつつ、カティアは久しぶりのヨコアナの廊下を歩いた。

 廊下には士気を失った騎士たちや、希望を見いだせずに俯く市民たちが至るところにいる。

 

「はぁ……俺たちこれからどうなるんだろうな」

「ねぇ。ずっとここで暮らすの? あたし嫌だよ? こんなカビ臭いところで暮らすなんて」

「おれの両親はここで何年も過ごしたらしいぜ?」

「あのカーティスとネオがやられたんだ。もうどうにもならねぇよ……」

「まだゼクードさんがいるだろ! ゼクードさんさえ帰還してくれれば!」

「またそうやって他人頼みなんだから……」

「んなこと言ったってよぉ……オレたちでどうにかなる相手じゃねぇよ」

「ゼクードさんの奥さんたちならついさっき帰還したらしいぜ。隊長が言ってた」

「あの人達か……たしかに強いらしいけど、あの化け物が相手じゃな……」

 

 そこにカティアが居るのを知ってか知らずか、若い騎士たちは暗い会話をしている。

 彼らに掛ける励ましの言葉も思いつかない。

 もはや自分も戦力的に当てにならないのは、彼らの言葉通り相手が化け物過ぎるから。

 

 こんな自分が彼らを励ましたところで、彼らの心に響くはずもない。

 SS級の壁を超えられなかった自分は、やはり彼らと同じ凡才だから。

 少なくともゼクード・カーティス・ネオから見れば、自分もあの若い騎士たちもそう変わらないはず。

 

 ……父クロイツァーの双剣技を最初から極めていれば、もっと上へいけたのだろうか?

 あの時、意地を張らずに素直に双剣を使っていれば、もしかしたら……

 

 過去を振り返り、女々しく後悔している自分に気づいてカティアは大きく溜息を吐いた。

 後悔ばかりだな。

 カレンティアには自分のようにはなってほしくないな、と思いつつ歩みを進めた。

 

 ヨコアナの廊下を歩きつつ、地下通路に通ずる出入口にまで進んだ。

 その出入口で夫ゼクードと息子カーティスの帰還を待とう。

 それしかできない。 

 

 出入口の扉の前まで来ると、カティアは壁に寄り掛かり腕を組んだ。

 そして一息吐いてから思う。

 先程の若者たちの言葉にはゼクードの存在があった。

 

 やはりみんなまだゼクードの存在に希望を抱いている様子だった。

 だからこの程度で済んでいるのかもしれない。

 もしこの先ゼクードまでやられてしまったら、みんな発狂してしまうかもしれない。

 

 そうなったらもうエルガンディは終わりだ。

 

 重いであろう夫の肩の荷……

 少しでも共に背負ってやりたいのに、それができそうなのがカーティスぐらいだ。

 

 自分の息子が、自分にできなかったことをしてくれるのは親として誇らしい。

 が、夫を支えられない妻としての不甲斐なさも感じてしまう。

 

「はぁ……いかんな。暗いことばかり考えてしまう」

 

 ヨコアナに蔓延する絶望の空気のせいだろうか?

 一人になるべきではなかったか?

 こんなにも落ち込むならローエとフランベールに聞いてもらえば良かったかもしれない。

 あの二人はきっと受け止めてくれるだろうから。

 

 ……なんにせよ今の自分にできることは子供たちを守ること。

 身の程を弁えるしかない。

 

 たから頼むゼクード。

 死なないでくれ。

 負けないでくれ。

 私も……みんなも……お前だけが頼りなんだ。

 

 すると不意にガチャと地下通路への出入口である扉が開いた。

 中から出てきたのはグリータ。

 そしてあとからアスレイ陛下と、彼に肩を担がれた血だらけのカーティスだった。

 

「カ、カーティス!?」

 

 思わず声を出してしまったカティアに、カーティスがパープルの瞳に母を写した。

 

「っ! 母……さん……。良かっ、た……無事で……」

 

「ば、馬鹿者! お前の方が!」

 

 カティアは慌てて駆け寄り、アスレイからカーティスを引き継いだ。

 するとグリータがヨコアナの奥に向かって叫ぶ。

 

「医療班! 来てくれ!」

 

 言いながらグリータはヨコアナの奥へ消えた。

 すると間もなく医療班たちが駆け付け、カティアからカーティスを引き継いでくれた。

 

「代わります」

「頼む。すぐに手当てを」

「はい!」

 

 カーティスと、そしてレイゼに抱えられていたネオも医療班たちに運ばれて行った。

 またあとから出てきたオフィーリアと目が合い、お互いに頷いて彼女はカーティスを追いかけた。

 カティアもカーティスを追い掛けたかったが、それどころではない相手が一人戻ってきたからだ。

 

「アグリス!」

 

 赤い髪の女騎士が当たり前のようにレミーベールたちと一緒に居たのだ。

 カティアに呼ばれたアグリスは露骨に顔を引きつらせた。

 

「ま、また会ったわね……」

 

「この裏切り者が! よく私の前に顔を出せたものだな! お前のようなヤツは!」

 

「待つんだカティア! やめろ!」

 

 レイゼがカティアを手で制してきた。

 

「女王様!? なぜ庇うんです! そいつは裏切り者です! いきなり我々の前から姿を消したんですよ!」

 

「落ち着けってカティアさん」

 

「落ち着けません! おいアグリス! 我々の前から姿を消してどこへ行っていた!」

 

「な、なによ! あのまま一緒にいたらアンタたち私を殺してたでしょう!」

 

「っ! なるほどな。そう考えてレグのもとに逃げて守ってもらおうと思ったんだな? 尻の軽い女だな。なぜ戻ってきた?」

 

 アグリスを睨むカティアに答えたのはまさかのレミーベールだった。

 

「お義母さん待って。彼女は今、お父さんの子供を妊娠してるの」

 

「……………………………………………………なに?」

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