【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
アグリスはドラゴン形態のまま空を飛行し、エルガンディの上空へと辿り着いていた。
目的はレグと戦っているであろうゼクードとドレスの救出。
そうすればヨコアナへ戻れるという算段だ。
しかし城の上空までやってきたが戦塵は立っていない。
よく見れば城の天井に穴が空いており、そこから内部が丸見えになっていた。
城の内部は荒れ果てており、先程までそこでゼクードかドレスかが戦っていたことが予想できた。
アグリスは意を決して城の内部へ降下した。
変身を解いて人間へと戻ると床に着地する。
辺りを見渡すがゼクードとドレスの姿はない。
レグの姿さえない。
「……誰もいないの?」
独り言ちて奥に進もうとした時、アグリスは背後から気配を感じて慌てて振り返った。
そこにはレグの姿が。
「レ……レグッ!」
「オレから逃げたと思えば戻ってきた。お前はいったい何がしたいんだ?」
「ぁ……あの……それ、は……」
レグの威圧感に精神が潰されそうになり、アグリスは全身が震えて声も震えてしまっていた。
なんの気配も感じないからと無防備に降下してしまった。
見つからない高度を維持するべきだった。
まさか、こんなにあっさり見つかるなんて。
どこに潜んでいたのレグは?
「まさか、ドレスが心配で戻ってきたのか?」
「!」
目的とは違うが間違ってもいなかった。
アグリスにとってドレスは唯一の味方。
もう彼女以外にまともな味方はいないのだ。
そんな彼女の安否が心配でないわけなかった。
「図星のようだな。やれやれドレスといい、お前といい、揃ってバカだな」
「わ、悪かったわね! ドレスはどこ!」
バカにされ頭にキタことで全身の震えが消えたアグリスは言い返した。
レグは不敵な笑みを浮かべて告げる。
「死んだよ」
「…………え」
レグの言葉を理解するのに数秒を要した。
あまりに短く、あまりに淡々と告げられたドレスの死。
ドレスが……死んだ?
嘘よ……ドレスは、私を置いて死ぬなんてこと……
心の何処かでこうなる予感はしていた。
しかし目の当たりにすると、それは予想以上に重くのしかかり、胸の奥をドス黒く塗りつぶしていく。
「言っておくが殺したのはゼクードだ」
……ゼクードが?
ゼクードが……ドレスを?
そんな……嘘よ……なんで……
「このオレから逃げるのにドレスを使ったんだ。用済みになった途端、後ろから串刺しにしていた」
「嘘……ゼクードが、そんなこと……」
「安心しろ。仇はオレが取っておいた。ゼクードはオレが殺した」
「ゼクード……まで?」
ゼクードまで死んだの?
ドレスも死んで、ゼクードも死んだの?
じゃあ私……誰に……
私……どうすればいいの……
膝から崩れ落ちたアグリスは涙を流した。
ドレスという唯一の拠り所を失い、ヨコアナへ戻るための希望ゼクードさえも失った。
全てを失い、絶望に落ちたアグリスは嗚咽を発し始めた。
ドレスだけでも側に居てくれたらこうはならなかったのに、と心の奥底で思いながら。
「泣くなよ。お前の居場所はここにある。オレに尽くせアグリス。産んだ子をオレに捧げ続けろ。お前は苗床だ。永遠にな」
レグの冷酷な言葉が耳朶を打つ。
好きだったレグの隣にこんな形で座ることになった。
しかも当のレグはもう昔のレグじゃない。
心臓に意識を乗っ取られた別人だ。アグリスのことも覚えていない。
これは……なんだ?
なんで……こんなことに……?
なんでこんな……
ボタボタボタと大粒の涙が零れた。
ドレスを失ったことが、あまりにも重かった。
「ぅ……う……ドレス……うぅぁあああああああああああ」
声を出して泣き出した。
何も希望を見出だせず、嗚咽は止まらない。
「ああああああああ! ドレス……ドレスぅううァあああああ! うわあああああああああああああああああああああああ!」
アグリスは泣いた。
ドレスがこんなにも自分にとって大きな存在だったことを痛感しつつ、ひたすら泣き喚いた。
★
蒼天の空。
眩しい太陽。
それらを背にしてゼクードたちは空を飛んでいた。
ドラゴン形態になったセレンの背中に乗ってゼクードたちは【ヨコアナ】へ向かう。
セレンと同じくドラゴン形態のドレスも追従している。
二体のドラゴンが空を舞う中、グロリアがヨコアナに近づくにつれ顔を暗くしていくのが見て取れた。
さすがに心配になったゼクードは口を開く。
「大丈夫かグロリア?」
「うん……」
返事にも元気がない。
理由は分かっていた。
グロリアはドラゴン化が進行して腕が変異するようになってしまった。
さらに魔法が使えなかったはずなのにピンクの炎も出せるようになった。
【ヨコアナ】についたらこの事を母ローエに告げなければいけない。
ゼクードが代わりに告げると言ったが、それでも不安は拭い切れないのだろう。
ゼクードも自分がセレンの輸血で生き返ったことを告げねばならない。
ローエたちには畳み掛けてしまうことになるが、隠すわけにもいかないから仕方がない。
「……そういえばお父さんはなんでドレスと一緒にいたの?」
「え?」
「ドレスもなんでレグに襲われてたの? あいつら身内なんじゃ……?」
「あぁそれか。いやなに、別の大陸に落とされた時たまたま同じ場所にいただけだよ。一時的に協力してここまで戻ってきたんだ。レグに襲われてるのは知らん」
嘘はついていないが、実際に同じ大陸に落ちたのはドレスではなくアグリスだ。
しかし説明が面倒だから省いた。
当のアグリスはエルガンディに着いた途端に消え去った。
かと思ったらグリータたちと一緒にいたし、あいつ何がしたいんだろう?
ヨコアナで見つけたら一発ぶん殴ってやろうかな?
女として扱わなくてもいいだろうし。あんなやつ。
「ふーん……何かしてこなかった?」
「え?」
「襲って来なかったの? その……性的に」
「性的に!? いや俺なにも手ぇ出してないからな!?」
「いやいやお父さんからじゃなくてドレスから」
「なんでドレスが俺を襲うんだよ性的に」
「……まぁそうか。お父さん男だもんね」
グロリアの妙な言い草にさすがのゼクードはピンときた。
そして焦る。
「ま、まさか! グロリアお前……襲われたのか!? ドレスに!?」
だったら今すぐドレスをぶった斬ろうかと思ったがグロリアは首を振ってきた。
「ドレスじゃないわよ。アタシのとこにはオルテンシアとレジーナとメルセーヌがいたの」
「まさかソイツらに!?」
「危うく犯されそうになったわ」
「んなっ!」
グロリアの父として頭が爆発したような衝撃を受けた。
あのディアマード家の女騎士たちってみんな同性好きなのか!?
アグリスもドレスと一緒に全裸で寝てたし、オルテンシアたちもグロリアを狙ってたとするならやっぱりそういうことなのかも。
「アイツらみんな揃っておかしかったわ。赤ちゃんを生んでとか、子宮を貸してとか、男みたいなこと言ってくんのよ。本当にアタシの身体を狙ってくるし。もう最悪だったわ」
赤ちゃんを生んで!?
子宮を貸して!?
おいおいおいおい!
男でもなかなか言わないセリフだぞそれ!
どうなってんだ?
同性好きってだけじゃないのか?
「ぉ、お前それ、大丈夫だったのか?」
娘の貞操を心配するとグロリアは「大丈夫」と答えた。
ゼクードは心の底から安堵した。
さすがに娘が望まぬ形で貞操を失うのはキツすぎる。
親としては絶対に好きな人に捧げてほしいと願うばかりだ。
「ナイトが助けてくれたの。彼がいなかったらアタシは今ごろオルテンシアにヤられてたわ」
「そうか……」
ゼクードは後ろの方で座るナイトを見た。
背を向けている彼はリィの相手をしている。
セレンの時だけでなくグロリアまで助けてくれていたとは。
ぼちぼち頭が上がらなくなってきたな。
あとでまた暇を見て礼を言っておこう。ウザがられるだろうけど、言わないと気が済まない。
『ゼクード。わたしもそのオルテンシアとレジーナに襲われそうになったの』
巨大な翼を羽ばたかせながらセレンが言ってきた。
「母さんも!? 大丈夫だったのか!?」
『うん。ミオンさんとレィナさんに助けてもらったから』
「っ! レィナちゃん、ミオンさん……本当にありがとうございます! 母を助けて頂いて……」
預かり知らぬ場所で母を守ってもらっていたゼクードは頭を下げた。
するとレィナは両手を小さく振る。
「いえいえ! 当然のことをしただけですよお義兄様。ね? ミオンさん」
「ええ。でもセレンの救出が間に合って良かったわ。アイツら股間にチ◯コ生えてるから」
ミオンの発言にゼクードとグロリアが凍った。
………………え? なんて? チン◯?