【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「っ! レィナちゃん、ミオンさん……本当にありがとうございます! 母を助けて頂いて……」
預かり知らぬ場所で母を守ってもらっていた事実。
ゼクードは頭を下げずにはいられなかった。
するとレィナは両手を小さく振る。
「いえいえ! 当然のことをしただけですよお義兄様。ね? ミオンさん」
「ええ。でもセレンの救出が間に合って良かったわ。アイツら股間にチ◯コ生えてるから」
ミオンの発言にゼクードとグロリアが凍った。
………………え? なんて? チン◯?
ゼクードが硬直している間にグロリアがミオンを見た。
「え……ちょ、え!? あいつら、ホントに付いてんですか!?」
「付いてた。めくって確認したから」
淡々と恥ずかしげもなくミオンが言うと、グロリアは今になって本当に青ざめた。
「ど、通りでメルセーヌにキックがやたら効いてたんだ……。じ、じゃあ……あの時ナイトが助けてくれなかったらアタシ……本当に……」
「赤ちゃん。孕んでたかもね」っとミオンが言うとグロリアは「ひぃ!」と両手で自分を抱きしめながら震えた。
「ぉ、おいちょっと待ってくれ。みんな普通に話してるけど、どういうことなんだ? なんで女に◯ンコが生えてんの!?」
ゼクードが問うとやたら冷静なミオンは肩を竦める。
「さぁ? 男だったってことじゃない?」
「そんなまさか! あんな女みたいな男がいるわけないですよ! おーいドレス!」
『はい?』
「お前ちょっと変身やめてセレンに乗れ。話がある!」
『わかりました』
果たしてドレスは人間形態に戻ってセレンの背に着地して座った。
やはり人間の姿をしたドレスはどう見ても女だ。
顔もカワイイし、胸だってある。
全身のラインだって女と同じ丸みのある曲線を描いている。
これで男というのは無理がある。
「話とはなんですか? ゼクードさん」
「単刀直入に聞くぞ。ドレスお前……男なのか?」
本当に単刀直入に聞いてみた。
ドレスは目を丸くしてキョトンとする。
しかし間もなく。
「いえ。今の私は男でも女でもないんです」
「え!?」
ドレスのあまりに意外な返事にゼクードだけでなくみんなが視線を向けた。
ドレスはその視線に構わず続ける。
「私は一度死にました。誰に殺されたかも、死ぬ前の自分のことも、思い出せません」
そのドレスの返事にミオンが少しだけ顔を怪訝にした。
記憶がない?
そうだったのか。
心臓でおかしくなっているわけじゃなかったのか。
「一度死んだ私はレグ様に血を与えられ復活しました」
「それは聞いたよ」
「今のわたしはレグ様の血で僅かに生き長らえた死に損ないでもあります」
「死に損ない、ねぇ……」
まぁ確かにその通りだなとゼクードは思った。
するとドレスがゼクードに寄ってくる。
「蘇生された今のわたしには心臓がありません」
「え!?」
「音を聞かせて証明します。少し待ってください」
なんかドレスが鎧を脱ぎ出した!
「わあああ待て! 脱がんでいい! お前の裸なんて見たくない!」
「そうですか?」
「間に合ってるよ。っていうか心臓が無いのにどうやって生きてんだお前?」
「レグ様の血。それから捕食した獲物の血で生き永らえております」
そういえば火山のドラゴンの栄養とか言ってたな。
あれを捕食してたのはやはり命を繋げるためだったのか。
やっぱりコイツ人間辞めてるな完全に。
「そうか……まぁ、捕食してたもんな実際」
「はい」
「うん。まぁ、それよりもだ。……お前って生えてるのか?」
「生えてるとは?」
「言わせんなよ恥ずかしい!」
「え? なんのことですか?」
「だからアレだよ。ほら、男の股間についてるやつ。こうちょっと棒みたいな」
「……? ……! ああ! 生殖器のことですか? それならついてますよ」
飄々と答えたドレスに、その場にいる全員が絶句した。
当のドレスはまったく恥じらってすらいない。
そんな感覚さえないようだ。
グロリアは露骨に嫌悪してドレスから距離を取った。
いや……マジかよ。
女の子に男のアレが?
し、信じられん。
下手なおとぎ話でも聞いたことないぞ。
「ぉ……おま、お前って、もともと男だったのか?」
「わかりません。なにも覚えてなくて」
「そ、そうか……」
オルテンシア・レジーナ・メルセーヌ。
そしてこのドレスにキン◯マがついてるならアグリスも?
ドラグーンはみんな生えてしまうのか?
それとも元から男だった?
でもヴァルドレイクは娘って言ってたし、嫁にどうだ? って俺に進めてきたほどだし……
ドラグーンになってからしばらくして生えたのかな?
竜の血と心臓の後遺症みたいな?
だとしたらセレンとグロリアにもいずれ?
それはマズイな。
セレンはまぁ……もう結婚して子供もいて孫もいて、もうすぐひ孫も生まれるから別にいいだろう。
でもグロリアは可哀想すぎる。
なんとかして早く治してやりたい……。
「……アンタ、アンタもアタシの身体を狙ってるんでしょう! 近づかないでくれる!」
グロリアがドレスを睨みながら言うと、ドレスはニコリと笑った。
「大丈夫ですよ。私はもう種無しですから」
「はぁ?」
「アグリスさんに種をつけたので、もう私の役目は終わってるんです。あとは静かに死を待つのみですので……」
アグリスに……種をつけた?
ゼクードは耳を疑った。
さすがに信じられない言葉だったから。
ゼクードだけじゃない。
グロリアも、セレンも、あのミオンさんでさえ目を大きく開けて驚愕していた。
「種をつけたって……」っとゼクードは呟いてからハッとなった。
集落ハサカでドレスとアグリスが一緒に全裸で寝てたのを思い出した。
まさかあの時に!?
いや、え!?
やることやっちゃったってこと!?
女同士で!?
あ、もう女でも男でもないんだっけ?
アグリスには生えてないってことか?
というかアグリスとドレスが夜を共にしていた事実が信じられない。
「種をつけたというのはあれです。交尾のことです。ゼクードさんもあのとき三人と――――」
「わあああああああああああああああ!」
思わず叫んでドレスの言葉を掻き消した。
「ちょっとお父さんいきなりうるさい! なんなの!」
「ごめん!」
娘のグロリアに怒られたがドレスの言葉は聞こえてなかったみたいなので安心した。
「んん……で、種無しってどういうことだドレス?」
間を取り繕ってゼクードは聞いた。
「そのまんまの意味ですよ。私は一度種を出すと、もう二度と種を出すことはできないんです」
「なんだそのある意味で可哀想な体質……」
「その代わり私の種は必ず母体を妊娠させます。これは絶対です」
「……てことはアグリスはもう妊娠してるってことか?」
「はい。そしてその妊娠状態は永続します」
「永続? どういうことだ?」
「私の種は死ぬことがありません。数億の種は母体が死ぬまで永遠に生存します。そしてそのままアグリスさんが一人目の赤ちゃんを生んだとします。そしたらまた新たな卵子が排出されますよね?」
「おぉ」
「そしたらまた膣で泳いでる精子が卵子と合体します。これが永続するんです。数億の精子がずっとアグリスさんの子宮内で泳いでるってことですね」
精子って言っちゃったよコイツ……
「それ死ぬまで妊娠し続けるってこと? 最悪じゃない……」
さすがのミオンさんもドン引きしていた。
レィナやグロリアもドレスを嫌悪の目で見ている。
女性陣の評判は最悪になったドレスだか、まったく気にしていない様子。無敵だなコイツ。
しかしまさかアグリスが妊娠させられているとはな。
しかも相手がドレスっていう非常識。
信じられないが、このドレスが嘘をついている様にも見えない。
「あのさ。なんでそんなことをするわけ?」
少し苛立ち気味な声音でグロリアがドレスに問う。
「メルセーヌやオルテンシアもそうだったけど、なんでみんなして子供を産ませようとしてんのよ。気持ち悪い」
「それはレグ様のためです」
「レグ様のため? どういうことだ?」っとゼクード。
「私の種はドラゴンの種。アグリスさんはいずれ優秀なドラゴンを出産するでしょう。その出産したドラゴンをレグ様が捕食します。それによりレグ様はさらに強くなるそうです」
「な……っ!」
レグが捕食してパワーアップすることを知っていたゼクードはすぐに事態の重さを察した。
アグリスが子供を生み続けると、それを捕食し続けるレグは無限に強くなっていく。
理解してしまったゼクードはドレスの胸ぐらを掴んだ。
「お前! 自分の言ってること分かってんのか!? レグがこれ以上強くなったら誰も勝てなくなるんだぞ! 今だって俺とお前は殺されかけたばかりだろうが!」
「……申し訳ありません。あの時の私は、それが自分の役目だと、それしか思っていませんでしたから」
「……っ! くそ!」
ゼクードはドレスを離して前を向いた。
「母さん急いでくれ。ヨコアナに着いたらアグリスを監禁する。アイツはグリータたちと一緒にいたからきっと今ごろ図々しくヨコアナにいるはずだ」
『ええ、わかったわ。スピードを上げるわね』
セレンが飛行速度を上げ、ゼクードは態勢を低くして空気抵抗を少なくした。
……ドレスには悪いが、アグリスは監禁ではなく殺した方がいいだろう。
生きかしておく理由がない。
しかしそれをここで言ってしまうとドレスがこの場で敵になる可能性がある。
レグという巨大な敵がいる以上、敵を増やすのは得策ではない。
アグリスは監禁に見せかけて暗殺し、ドレスは戦力として使ってレグを撃破できたら同じく暗殺……という形にするしかないだろう。
胸糞の悪いやり方だが、俺が守らなきゃならないのはアグリスとドレスではない。
家族とエルガンディのみんなだ。
悪いなドレス。
利用できるだけ利用させてもらうぞ。