【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第452話【再会! だが……】

 レィナはグリータ・リーネ・レグナ・リイドらに顔を見せ終えると、今度はゼクードの家庭に報告へ向かった。

 ゼクード家の部屋に入り、姉のカティアと抱き合う。

 そしてゼクードのことを告げた。

 

「ゼクードが帰還した!?」

 

 カティアがカレンティアを抱きながら歓喜にも似た声を出して驚愕した。

 レィナはしっかりと頷いて返す。

 

「はい。今は陛下の元へ報告に行っています」

 

「そうか。無事だったのか。良かった……」

 

 カティアが安堵すると、リィンベールを抱いたフランベールが嬉しそうに顔をほころばせる。

 

「本当に良かった。少しずつ安心できるようになってきたね」

 

「ローエさん。グロリアも無事ですよ」

 

「本当ですの!?」っとオラージュを抱いたローエが

 

「はい。今はナイトとリィのために一緒に外で待機しています。あの二匹のドラゴンは流石にヨコアナへは入れないので」

 

「了解ですわ。あとでわたくしから会いに行きますわね」

 

 ローエが言うと、カティアが満更でもない本当に嬉しそうな顔を浮かべてきた。

 

「それにしても……ふふ。ゼクードも成長したな」

 

「え?」

 

「前のあいつなら誰かに報告を任せてこっちに来てたはずだ。ちゃんと重役としての自覚があるということだ」

 

 正直、レィナ的には意外だった。

 今のゼクードは家族より仕事を優先しているのに、それを歯牙にもかけないなんて。

 

「……怒らないんですかお姉様? まっすぐ家族のもとへ来ないお義兄様を」

 

「怒らんさ。これでいいんだ。あいつは」

 

「うん。ゼクードくんほどの騎士になると、家族だけのためってわけにもいかないからね」

 

「そうですわ。ゼクードはみんなのために戦わなきゃいけない最強の騎士ですもの。これくらいで怒ったりしませんわよ」

 

 そう言い切りローエたちは子供たちに視線を戻した。

 決して子供たちから離れてゼクードに会いに行くわけでもない。

 子供たちを連れてゼクードのもとへ行くわけでもない。

 ドシッと構えて子供たちと共に夫の帰りを待つ。

 

 いつの間にか彼女たちは女騎士から普通の母親になっていた。

 

 

「ネオ!」

 

「……っ! 母さん……!」

 

 ミオンはレイゼやリベカより先にここへ来た。

 息子のネオが治療されているこの小部屋に。

 ネオはあちこち包帯で巻かれており、血が滲んだ箇所も複数あるほど悲惨だった。

 

 その光景にさすがのミオンも心臓が縮むような感覚を覚えてた。

 

「酷い怪我……あんたがここまでやられるなんて」

 

「あんまり見ないでくれ……」

 

「べつに笑いに来たんじゃないんだからいいでしょう?」

 

 言いながらミオンはネオのベッドの横にある椅子に座った。

 レイゼやリベカに帰還を報告したいところだったが、やっぱりどうしてもネオが気になった。

 だから部屋を聞いてまっすぐここへ来た。

 

「……いつ帰還したんだ?」

 

「さっき」

 

「そうか……」

 

 相変わらず無愛想な顔と返事だった。

 それでもどこか愛しく見えるのは、何故なんだろう?

 

「私が生きてて残念だった?」

 

「そんなわけないだろう! 冗談でもそんなことを言うな!」

 

 かなり強い口調でネオが怒ってきた。

 思わぬ返しにビックリしたが、言われたことを理解したら嬉しくなってきて笑ってしまった。

 

「ふふ、それだけ元気なら心配なさそうね」

 

「……やっぱり母さんのことは好きになれそうにないな」

 

「いいじゃない私たちはそれで」

 

「ふん……」

 

 親子の形なんてそれぞれだろう。

 自分とネオはもうこれで良い気がするのだ。

 今さらもう過去には帰れないし、帰れたとしてもそう都合よく自分を変えられる気がしないから。

 

「……ああそれと、ゼクードも帰還したわ」

 

「本当か!」

 

 ネオが目を大きく開けてさっきより元気そうな声を出してきた。

 ゼクードの話題になるとすぐこれだ。

 

「ええ。一緒にここまで来たから」

 

「良かった……あの人さえいれば、もしかしたら何とかなるかもしれない」

 

 どこまでもゼクードを信じている。

 そんな声音だった。

 少し前のネオだと信じられない言葉だ。

 

 天才の自分しか信じてなかったネオなのに。

 今はこうして誰かを信じて前を向けるようになっている。

 これが成長というヤツなのだろうか。

 

「……ほんっと丸くなったわねあんた」

 

「あの人を尊敬しているだけだ。丸くなったとかそんなんじゃない。丸くなったというならそれこそ母さんの方だろ?」

 

「私? どこが?」

 

「どこって…………」

 

 ネオはしばらく考え込んで、本当に難しい顔を浮かべた。

 眉間にアホみたいにシワを寄せて考えているが、ついに口を開けた。

 

「わからん」

 

「なによそれ……自分から言っといて」

 

「……ヒステリーを起こさなくなった」っと小声でネオ。

 

「なんて?」

 

「いや、なんでもない……」

 

 聞こえなかったが絶対に何かムカつくことを言ってた気がする。

 

「……まぁなんでもいいけど、あんたが生きてて良かったわ」

 

 柄にもないと思いつつミオンは本心で言った。

 ネオは目を丸くしていた。

 それが妙に可愛く見えてしまい、つい彼の頭を撫でてしまった。

 

 なでなで……

 

「な! おい! やめろ!」

 

「撫でたの何年振りかしら?」

 

 なでなでなでなで……

 

「やめろって!」

 

 ガシッと手を掴まれて撫でるのを中断された。

 

「……そんなに恥ずかしい?」

 

「当たり前だろ! 何歳だと思ってんだ!」

 

「はいはいごめんごめん……」

 

「ったく……………」

 

 溜息を吐くネオだが、何を思ったのか彼はミオンの手を見てそれをフニフニと触り出したのだ。

 まるで柔らかさを確かめるように。

 

「……なにしてんの?」

 

「いや……まさか……嘘だろ!?」

 

「え……なに?」

 

「母さん……あんた女だったのか!?」

 

「は?」

 

 

 ミオンが息子に女だと思われてなかった一方で、ゼクードはリイドを訪ねようとヨコアナの武器庫へ来ていた。

 そこには親友のグリータの姿があった。

 

「グリータ!」

 

 真っ先にゼクードは声を弾ませた。

 呼ばれたグリータはバッと勢いよく振り返り顔を歓喜に染めた。

 

「おおゼクード! お前無事……え!?」

 

 グリータが何かに気づいたようだが、その前にバリスタをいじっていたリイドが手を止めて視線を向けてくる。

 

「ゼクードさん! 良かった無事で!」

 

 リイドだけでなくレグナやローグなど他の若い騎士たちもゼクードを見つけて活気のある声をざわめつかせた。

 ゼクードの帰還というだけで凄まじい士気の回復っぷりだった。

 満更でもないゼクードはみんなに優しく語りかける。

 

「心配かけたなみんな。それが例の作戦の【エリザの矢】か?」

 

 向かいのリイドに聞くと彼は頷いた。

 

「はい! 今はバリスタを小――――」

 

「ゼクードお前……どうしたんだその眼!」

 

 いきなり割り込んで来たのはやはりグリータだった。

 みんなゼクードの帰還という興奮でまったく気づかなかったのに。

 レミーベールもそうだったが、気づくヤツは気づくものらしい。

 

「お前も気づくの早いな……」

 

「当たり前だろ。どうしたんだその眼。色が変わってるじゃないか。片眼だって治ってる」

 

 グリータの言葉に他の騎士たちもようやくゼクードの変化に気づいた。

 歓喜のざわめきが戸惑いの色に変わる。

 

「……わかった。正直に言うよ。俺あの後レグに負けたんだ」

 

「な!? お前が……!?」

 

 驚くグリータを筆頭に他の騎士たちも驚愕した。

 みんなやはりゼクードが負けるとは夢にも思ってなかったらしい。

 

「一回殺されて、母さんの血を輸血して蘇生した。俺にも適正があったらしい」

 

「グロリアと同じになったってことか?」

 

「ああ。だけど今はそんなことどうでもいい。まずはレグだ。あいつに【エリザの矢】を撃ち込むんだろ?」

 

 あくまで仕事を優先するゼクードにグリータは虚を突かれる。

 

「ぁ、ああ……そうだ。これでヤツを弱体化できればと思っている」

 

「良い作戦だと思う。俺も同じこと考えてたからな。ただ本当にレグに効くかどうかが分からない。まずは外にいるドレスに試してみよう」

 

「ドレス?」

 

「ディアマード家の一人だよ。訳あってここまで連れて来たけど、もう用済みだ。最後に実験体になってもらって死んでもらおう」

 

【用済み】【実験体】というえげつない単語を言うゼクードに、さすがのみんなも顔をギョッとさせてきた。

 言葉を選ぶべきだったかな?

 

「さらっと悪人みたいなことを言うなよ……」

 

「相手は極悪人だから大丈夫さグリータ。それよりリイドくん。バリスタと【エリザの矢】を一本使わせてもらうけどいいかい?」

 

「いいですよ。ちょうど今バリスタを小型化させて携帯可能のサイズにしてみました。これを」

 

 リイドがバリスタ本体を土台から外して渡してきた。

 必要な場所を残して削れる部位を削って小型化させている。

 

「お、いいなこれ【小型バリスタ】か。これなら今すぐドレスを狙撃できるな」

 

「いえ待ってください。射程が分からないし、ちゃんとまっすぐ飛ぶかも分からないので何発か試し撃ちをしてください」

 

「了解した」

 

 

 ドレスを失い、ゼクードさえも失ったアグリスは、もはや何もかもがどうでもよくなっていた。

 

 レグにエルガンディの人間が逃げた先を聞かれ、アグリスは正直な答えた。

 

「……この先にヨコアナがあるわ」

 

 草原のど真ん中をレグと共に歩くアグリスが告げる。

 アグリスが指した方角を見たレグが腕を組む。

 

「思ったより近い場所にあるんだな」

 

「あんまり近づくと見張りにバレるわよ」

 

「見張りもいるのか。なるほど。それで途中から地上を歩かせたわけか。このオレを」

 

「……もういいでしょう? 私のことは放っておいて……」

 

「そう言うな。ほら見ろ。あそこに居るのはドレスじゃないか?」

 

 ……?

 何を言ってるのコイツ?

 ドレスはゼクードが殺したって言ってたくせに。

 

 アグリスはレグの指す方角を見た。

 そこには見覚えのある金髪の女騎士が、本当に立っていた。

 こんな草原のど真ん中で。

 

「うそ……」

 

 信じられなかった。

 生きてた。

 ドレスが。

 本物? 本物なの!?

 

 冷めきっていた全身に熱が宿り、アグリスは気づけば走り出していた。

 

「ドレス……っ! ドレスー!」

 

 アグリスの声が届いたらしく、ドレスがアグリスを見つけた。

 

「……っ!? アグリスさん!」

 

 いつも無表情だったドレスの顔が明るくなった気がした。

 アレはドレスだ。間違いないと確信したアグリスは両手を広げて彼女に向かって走り続けた。

 

 ドレスもアグリスの方へ走り出していた。

 もう会えないと思っていた絶望の気分が、一気に晴れ渡っていく。

 

 二人の距離があと二歩まで迫った時、背後から現れたゼクードにアグリスは気づいた。

 

 ゼクード!?

 なんで!?

 あいつはレグに殺されたんじゃ!?

 

 ゼクードの手にはバリスタのような物が持たれており、彼はそれをドレスに向けて発射した。

 

 ドスッ!

 

「――っ!?」

 

 背中を撃たれたドレスは目を大きく開けて倒れた。

 

「ドレスッ!」

 

 ゼクード! なんで!?

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