【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第453話【真のラスボス】

 ドレスの狙撃に成功した。

 あとは奴がゾンビ化するかどうかを確認してから排除する。

 

「ドレスーッ!」

 

 倒れたドレスに駆け寄る女の姿があった。

 見覚えのあるソイツは……

 

「アグリスか……一緒に居たなら好都合だ。まとめてやらせてもらう。リイドくん」

 

「はい!」

 

 ゼクードはリイドに二本目の【エリザの矢】を貰い小型バリスタに装填する。

 そしてドレスにすがり泣きつくアグリスに狙いをつけた。

 するとアグリスがこちらに向かって叫んだ。

 

「ゼクード! なんでよ! なんでこんなことするのよ!」

 

 なんで?

 敵だからに決まってるだろ。

 お前もドレスも、俺にとってはいつか排除しなきゃならない討伐対象だったんだ。

 

 利害の一致で協力したことはあったが、それはお前の翼を利用したかっただけに過ぎない。

 

「もとはと言えばお前らのせいなんだよ。全部」

 

 呟き、ゼクードは小型バリスタのトリガーを引いた

 アグリスの眉間に飛んだ【エリザの矢】は、しかし寸でのところでレグに素手で掴まれて止められた。

 

「……っ!」

 

「アグリスをやらせるわけにはいかんな」

 

「ちっ」

 

 まさかレグまで居たとは。

 アグリスが居た時点で気づくべきだった。

 

「作戦は失敗だリイドくん。ヨコアナに下がれ」

 

 リイドに小型バリスタを返しながら言った。

 

「は、はい! ゼクードさんは!?」

 

「レグを抑える。フランベールを呼んで狙撃の準備をさせるんだ。急げ」

 

「はっ!」

 

 リイドは駆け足でヨコアナへ戻って行った。

 すると近くにいたグロリアやセレンたちが来た。

 

「お父さん! レグが!」

 

「わかってる。俺がアイツを抑えるから母さんを連れてヨコアナへ避難していろ」

 

「わかったわ! 気をつけて! 今度は死なないでよ!」

 

「努力する」

 

 この身体で死ぬことってあるのかな?

 そうボンヤリと思いつつ、ヨコアナへ駆け込むグロリアとセレンを見送った。

 

 するとゼクードの隣にナイトが立ち、向かいのレグを見据えた。

 

『……凄まじいのがいるな。ヤツがレグか?』

 

「そうだ。悪いがナイト……カーティスとネオはまだ回復していない。俺とお前だけでやるしかないが、いけるか?」

 

『誰に言っている』

 

「はは……頼もしいな。リィちゃん。今すぐ俺たちを強化してくれ。最初から全力で行く」

 

『え? えっと……』

 

 ゼクードの指示に戸惑うリィ。

 従っていいのか分からないらしく、リィはナイトを見た。

 

『歌えリィ。終わったらすぐに離れろ。ただでは済まんぞ』

 

『わかった! ♪〜』

 

 リィが『全能の歌』を歌い始めた。

 全身から力が漲ってくるのが分かった。

 

 これが『全能の歌』ってヤツか。

 凄いな。本当に力が湧いてくる!

 

「ゼクード・フォルス。まさか生きていたとはな」

 

 近くまで来たレグ・ディアマードが言う。

 

「ああ。お前の確認不足のおかげでな。死体の確認くらいしたらどうだ?」

 

「相変わらず生意気な奴だ。それに……」

 

 レグは鼻をクンクンさせるとニヤリと嗤った。

 

「セレンの匂いが濃くなっているな。さては血をもらって蘇生したか?」

 

「お前を倒すには必要な力だと思ってな」

 

 ゼクードを言うと、リィの歌が終わった。

 すると先に退避していたグロリアがヨコアナから顔を出してリィに手を振る。

 

「リィ! こっちよ!」

『グロリア! うん!』

 

 リィはグロリアに抱かれヨコアナへ避難した。

 それを確認したゼクードとナイトは改めてレグを見据える。

 

「はっは! そうか! 人間を辞めたか! 馬鹿な奴だ。ちょっと血を入れた程度で勝てると思ったか? 本物の心臓を入れているこのオレに!」

 

「やってみなきゃ分からないだろう?」

 

「ならばやってみろ!」

 

 気勢と共に踏み込むレグは大地を爆ぜらせた!

 レグの振るう爪の一閃は鋭く深く、残酷な曲線を空間に刻む。

 その爪の余波が何メートルも離れた岩にヒビを入れる。

 

 しかしゼクードには当たらなかった。

 セレンの輸血で片眼が治ったおかげで視野が広い。

 そしてリィの『全能の歌』による強化も相まってレグの動きを追うことができていた。

 

 それどころか反撃する余裕さえ生まれていた。

 

「『真・竜斬り』!」

 

 地面すれすれの斬り上げ。

 レグの爪を躱した瞬時に斬り返した。

 その斬撃はレグの片腕を吹き飛ばし、レグを驚かせ大きく後退させる。

 

 そこをすかさず追撃したのはナイトだった。

 舌打ちしたレグは斬られた腕をすぐに再生させ、ナイトの爪の猛襲に対応してみせた。

 

「ドラゴンが人間と共闘だと! ふざけるな! なんなんだお前は!」

 

『……お前が死ねばこのふざけた状況も終わる。消えろ!』 

 

 

 遠くでゼクードと黒い人型ドラゴンが、レグと有り得ない速度で戦闘をしている。

 もはや人の踏み込める領域ではない。

 

 ドレスを撃ったゼクードを殺してやりたい気分だったが、あんなところに飛び込んだら一瞬で八つ裂きにされる。

 その現実がアグリスを冷静にさせた。

 

 しかし足元で倒れていたドレスが嘔吐する。

 

「ゲホッ! ゴボッ! ぁ、ぁ、あ! ぐ! あァァあアああアアあ!」

 

 ドレスが全身を痙攣までさせた。

 背中に刺さった矢が鎧を貫通してドレスの体内で破裂したらしい。

 傷口からドス黒い液体が吹き出している。

 

 なにこれ!?

 ドレスの血!?

 いや、違う!

 

 ドレスの血は普通に赤い。

 この黒い液体は別のものだ。

 ドレスは何を撃ち込まれたの!?

 

「ドレス! しっかりして! ドレス!」

 

 痙攣が止まないドレスを必死に揺さぶるアグリス。

 考えてもみればドレスがバリスタ一発で死ぬわけ無い。

 そしてそれはゼクードも知っているはず。

 あのゼクードがなんの考えもなしにこんなちっぽけな攻撃をしてくるはずがない。

 

 やっぱりこの黒い液体は、なにかヤバいやつなのかも。

 

「ぅぅ! あ! あ! アァアあぁああああぁあああ!」

 

 ドレスが立ち上がり、しかし顔の肉は腐り落ちて頭蓋が剥き出しになっていた。

 眼球も蕩け落ち身体の肉も腐敗していく。

 

「ド、ドレス……そんな……」

 

 悪夢だった。

 アグリスにとって誰よりも大切な存在になっていたドレスが、どんどん腐り落ちていく。

 

 絶句し、ドレスから思わず離れたアグリス。

 しかしドレスはアグリスに向かって走り出してきた。

 

「ゔぁああぁあああ! がぁああぁああああぁあああ!」

 

「ひっ!」

 

 ガシッと両肩を掴まれたアグリスは、慌てて噛みつこうとしてくるドレスの顔を抑えた。

 

「やめてドレス! やめてぇえええええ!」

 

 ドレスは聞かない。

 聞こえていない。

 もはやドレスの面影すら無い。

 ただアグリスの肉を頬張ろうとするゾンビと化していた。

 

「ドレス! お願いやめて! 戻ってよ! こんなのイヤァアアアアアアア!」

 

 アグリスは泣きながらドレスを押し返そうとする。

 凄まじい力でアグリスに噛みつこうとするドレス。

 レグに助けを求めようとしたが、レグはゼクードと人型ドラゴンに苦戦している。

 

 ドレスを振りほどくこともできず、徐々に力負けしてドレスの牙がアグリスの肩に迫る。

 もうダメだ。噛まれる。

 そう思った時、ドレスの力が少し緩んだ。

 そして……

 

『あぐ、りす……さ…………ころ…………して……』

 

「っ!? ドレス!? 意識が!?」

 

「ころ……して…………あなた、を……きず…………つけ…………」

 

 ドシュッ!

 

 突如、ドレスの首が吹き飛んだ。

 

「いつまでこんなゴミと喋っている! さっさとここから離れろと言っているだろうが!」

 

 やったのはレグだった。

 

「ゼクードとあのドラゴンは手に負えん!【ブラックノヴァ】を使う! さっさと離れろ! 巻き込まれたいのか!」

 

 ……ドクン!

 

 アグリスの胸の奥で竜の心臓が高鳴った。

 

 ドレスを無造作に殺しておいて、あげくにゴミ扱い。

 

 ドクン! ドクン!

 

「ええぃ! ボケッとするな!」

 

 レグに引っ掴まれ投げ飛ばされた。

 アグリスは草原に転げ回り、うつ向けに倒れた。

 顔を上げてドレスの遺体に目をやる。

 

 首から上がなくなったドレス。

 ついに肉体は液状と化し、跡形もなく溶けてしまった。

 残った彼女の骨は……迫ってきたゼクードに踏まれて……粉々になった。

 

 ドクン! ドクン! ドクンドクンドクン!

 

 ドレスをゾンビ化させ、遺骨さえ踏みにじったゼクード。

 ドレスを無造作に殺してトドメを刺したレグ。

 

 アグリスにとって最後の……たった一人の味方だったドレスを殺した。

 

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!

 

 どいつもこいつも……

 

 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン!

 

 竜の心臓がアグリスの怒りに反応し、激しく脈動する。

 猛る血がアグリスの全身に巡り、その熱は臨界を超えた。

 

「ぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 頭が真っ白になり、全身の毛が逆立ち、叫びは草原を突き抜けた。

 膨大な爆風と熱と衝撃波、紅い粒子が飛散し、それらは草木を瞬く間に焼いていく。

 

 アグリスの周囲は五秒も待たずに火の海と化した。

 それに巻き込まれたゼクードとナイトは大きく後退する。

 

「なんだこれ!? うわっ! 熱っ!」

『もっと下がれゼクード! 焼け死ぬぞ!』

 

 レグと斬り合っていたせいで後退が遅れたゼクードをナイトが抱えてジャンプした。

 高熱の発生源であるアグリスから離れていく。

 

「逃がすわけないでしょ……」

 

 低い声音でアグリスはゼクードとナイトを追撃しようと足に力を込めたが、眼の前にレグが着地してきた。

 

「素晴らしい! ただの母体としか見ていなかったがこれほどの力を隠していたとはな! オレとお前ならば――――」

 

「うるっっっせぇんだよ!!!」

 

 怒声と共に振り抜いた紅い爪がレグを引き裂いた。

 切り口が発火し瞬時に爆発した!

 

「ぴぎゃっ!」

 

 気色悪い断末魔を上げて跡形もなく爆砕したレグ。

 彼の肉片が燃え上がり、再生させずに灰へと化させた。

 

 それを見たゼクードとナイトが息を呑む。

 

「おいおい……嘘だろ……」

『アイツを一撃か……』

 

 アグリスの爪は紅い燐光を発しながら煌めく。

 その爪を立てながら、迫りくる。

 

「殺してやる……どいつもこいつも! どいつもこいつも! みんな! 殺してやる! みんな大っ嫌いだ!!!」

 

 

 

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