【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

444 / 448
第454話【最終戦! ゼクードVSアグリス】

 紅いオーラを全身から発するアグリスは大口を開けた。

 なんだ? と思ったのも束の間。

 アグリスの口内が光ったと思うと、次の瞬間には血のように紅い灼熱のブレスが吐かれた。

 

「いっ!?」

『ちっ!』

 

 ゼクードとナイトはそれぞれ左右に避けた。

 しかしアグリスのブレスの射程は長く、遥か遠くの山に直撃して爆砕した。

 いつかのセレンのブレスとは桁違いに広範囲で超射程のブレスは避けたゼクードとナイトを優に巻き込んだ。

 

「うわあああああああ!」

『くそっ! なんて広さだ! ぐあああああああ!』

 

 お互いに吹き飛び、ゼクードに至ってはオリハルコンの鎧が熱で溶けて皮膚にへばりついてきた。

 

「ぐあああああああああ! 熱っ! く、くそおおおおっ! ああああああああ!」

 

 皮膚が焼ける激痛にゼクードはもがき苦しんだ。

 鎧が赤熱して形を歪にしていく。

 ブレスが止んだかと思うと、のたうち回っている間にアグリスに腹を踏まれた。

 

 ガンッ!

 

「ぐあっ!」

 

「アンタいったいドレスに何をしたのよ! アンタのせいでドレスが死んだ! 全部アンタのせいで!」

 

 怒り狂い、そして泣き叫びながらアグリスは爪をゼクードの肩に突き刺した。

 

「ぐあっ!」

 

「アンタが死ねば良かったのに!」

 

 突き刺した爪を紅く光らせ爆発!

 肉片が飛び散り、ゼクードの左腕が吹き飛んだ。

 

「がああぁあああああああああああああああああ!?」

 

 気が飛かける痛み。

 耳元での爆裂音で鼓膜がやられ、全ての感覚が遠くなる。

 しかしセレンの血がそれをすぐに修復していく。

 

「なんでドレスが死ななきゃいけないのよ! アンタが死ねば良かったのに! アンタさえ! アンタのせいよ! 全部! 全部! 全部!! 全部!!! アンタの!!!!」

 

「勝手なことばかり言ってんじゃねぇええええええ!」

 

 ゼクードは右手に持っていた長剣をアグリスに突き刺した。

 しかしその長剣の一撃はただの打撃となりアグリスを後ろへ吹き飛ばすだけに終わった。

 

 長剣も先程のブレスの熱で刃が溶けて変形してしまっていた。

 歪なブレードは斬れ味を無くしている。

 鎧も皮膚と一体化してしまい、動くごとに激痛が走る。

 

「元はと言えばお前らディアマード家のせいだろうが! 勝手に心臓を入れて、勝手に地元でふんぞり返ってりゃ良かったのに! ドラグーンだの新人類だの! エルガンディに来るから!」

 

「それを受け入れなかったアンタたちが!」

 

「ふざけるな!」

 

 失った左腕を再生させたゼクードは長剣を両手持ちにしてアグリスに接近する。

 アグリスに近づくにつれ熱が高くなり皮膚を焼いていく。

 アグリスに近づくだけで全身が火傷だらけになっていく。

 それらを堪えながら構わず突っ込み一撃をアグリスの顔面に叩き込んだ。

 

 吹き飛んだアグリスは地面を転げ回り、すぐに受け身をとって態勢を整えた。

 しかし次の瞬間ナイトが背後を取っていた!

 ナイトの爪がアグリスの身体を真っ二つにする。

 

『終わりだ』

 

「……私とゼクードの間に入らないで」

 

『!?』

 

 アグリスは真っ二つにされたのに堪えた様子がなかった。

 それどころか先程の顔面にくらった一撃も意に介してない。

 そしてナイトによって切り裂かれた身体は炎によって瞬時に再生した。

 

「『エクスプロード・メギド』」

 

 アグリスが唱え、それは裏拳による一撃と共に放たれた。

 ナイトはアグリスの裏拳をモロにくらい、追撃で魔法の大爆発を受ける。

 吹き飛んだナイトは全身から黒煙を上げて地面に倒れた。

 

「ナイトッ!」

 

 ナイトから返事はない。

 ピクリとも動かない。

 一撃でダウンしてしまった。

 リィの歌で強化されたナイトが一撃で。

 

「ナイト! おい! 嘘だろ! ナイト!」

 

 さすがに信じられないゼクードは何度も叫んだ。

 だがナイトは復活しない。

 迫りくるのはアグリスのみ。

 接近されるとまた熱で皮膚が焼けていく。

 皮膚と一体化した鎧が赤熱して全身に激痛が走る。

 

「ぐぅっ! ぁぁ……っ!」

 

「辛そうねゼクード。でも私はアンタの百倍は辛いのよ! アンタさえいなければドレスは!」

 

「そうかい。だったらあの時の自分を恨むんだな」

 

「……なんですって?」

 

「一人で行動できないからって俺を助けたな? お前の無能さが招いた結果さ。ざまぁ見ろってな!」

 

「このっ! 言わせておけばあああああああああ!!」 

 

 

 地上でアグリスがブレスを撃ち放った頃。

 ヨコアナにいるフランベールたちは大きく揺らされていた。

 

「なんだこの地鳴りは……!?」

 

 地震のような大きな揺れに、洞窟内がパラパラと音を立てて砂や小石などを落とした。

 フランベールたちはベッドで眠る子供たちを庇うように自分の背中を盾にし、降ってくる砂や小石などを防御する。

 

 咄嗟に身体が動いてやった防御。

 母親として我が子を守るための本能だろう。

 

 天井が崩れてこないだろうか? 

 生き埋めにならないだろうか?

 カティア・ローエ・フランベールは同じことを同時に思って息を呑んだ。

 

 しばらくして揺れが止み、3人がホッとした。

 すると部屋の扉が荒々しく開けられ、さらには「フランベールさん!」っと大声で入ってきたリイドのせいで子供たちが泣き出してしまった。

 

 フランベールは一瞬だけ怒りたい気持ちになったが、リイドのあまりの鬼気迫る顔がそれを抑えた。

 先程の揺れと関係があること、そしてただならぬ事態が起こっているとカティア・ローエ・フランベールは察した。

 

「どうしたのリイドくん?」

 

 子供たちの泣き声がこだまする部屋の中リイドは答えた。

 

「フランベールさん! ゼクードさんが呼んでいます! 一緒に来てください!」

 

 その一言でやはりと事態を察したフランベールは、カティアとローエを交互に見てお互いに頷く。

 

(子供たちをお願い二人とも!)

(ああ、子供たちは任せておけ!)

(子供たちは心配無用ですわ!)

 

 とアイコンタクトを済ませ、フランベールは反射的に壁に立て掛けておいた大弓を装備した。

 そしてヨコアナの廊下をリイドと走る。

 ヨコアナの廊下は先程の揺れで何事かとみんながざわめいている。

 

「さっきの揺れはレグの攻撃?」

 

「はい! いまゼクードさんがレグを抑えてくれています。フランベールさんは隙を見てレグに【エリザの矢】を当ててください!」

 

「了解よ。任せて」

 

「【エリザの矢】は残り一発しかありませんが……」

 

「一発あれば十分よ」

 

「さすがです」

 

 元より作戦はカティアから聞いていた。

 あのレグの動きを目で追える自信はないが、ゼクードが居るなら絶対に大丈夫だ。

 彼なら必ず狙撃する隙を作ってくれるはず。

 

 わたしのやることはゼクードくんを信じて必ず当てること。

 当てさえすればレグを倒してくれるはず。

 ヨコアナを発見された以上もう終わりにしないとダメだ。

 

 そう胸に秘めつつ走っていると、ヨコアナの入り口付近にグロリアとセレンがいた。

 グロリアはいつかのリィを抱きかかえている。

 

「グロリア! セレンお義母様も! 良かった無事で!」

 

「お義母さん挨拶はあとよ! いまお父さんが大変なことになってるわ」

 

 グロリアの言葉にフランベールは頷く。

 

「分かってる。すぐレグを狙撃する」

 

「レグは死んだわ。残ったのはアグリスよ」

 

「え!?」

 

 思わぬグロリアの返しにフランベールは驚愕した。

 隣のリイドも驚いており口を開く。

 

「レグが死んだ!? ゼクードさんがやったのか!?」

 

「違う。やったのはアグリスだったわ。あの女、なんかすっごいキレてる」

 

「ど、どういう状況なの?」

 

 さすがのフランベールも困惑した。

 カティアからアグリス追放の件は聞いていた。

 アグリスは必ずレグを頼ってヨコアナの事を喋ると。

 だからレグとアグリスは敵対関係ではないはずなのに。

 

「わかんないけど……あ!」

 

 グロリアがヨコアナの入り口付近にある外への覗き穴を見て驚いた。

 すると同じくその穴を覗いていたリィが暴れ出してグロリアから離れた。

 

『パパ! パパァァァアアアアアア!』

 

「コラ! ダメよリィ! 外に出ちゃダメ!」

 

 入り口を開けて飛び出して行ったリィをグロリアが追い掛けて行った。

 フランベールもその入り口から顔を出して外を見た。

 

 するとそこは火の海となっていた。

 先程の揺れはこれが原因か?

 何かのブレスが撃たれたに違いない。

 

 その遠くではリィの父親である人型ドラゴンのナイトが倒れていたのが見えた。

 

「嘘……あのドラゴンがやられてる……」

 

 ゼクードと同じくらい強いナイトが倒れている。

 その状況が信じられなかった。

 過去にゼクードとネオを同時に相手してゼクードを戦闘不能にし、記憶まで失わせた圧倒的強者。

 

 セレンの時も味方として共闘したが、その時もやはり強く頼もしかった。

 敵でも味方でも恐ろしく強い彼が倒れるなんて。

 

 まさかアグリスにやられたの? と辺りを見渡すとアグリスとやり合うゼクードの姿が見えた。

 二人は炎に囲まれながら戦っている。

 

 これ以上火の手が上がれば視界が塞がれる!

 フランベールはすぐさま大弓を展開し【エリザの矢】を取り出す。

 

「あ、待ってくださいフランベールさん。撃つならこれを使ってください。小型バリスタです」

 

 差し出された小型バリスタだがフランベールは首を振った。

 

「ごめんなさい。大弓で撃つわ。性能が分からないから」

 

「あ……」

 

 射程も何も分かっていない小型バリスタより大弓の方が絶対に当てられる。

 

「そ、それは! しかし……どうやって装填するんですか?」

 

「こうやるのよ」

 

 フランベールは【エリザの矢】を氷の矢を形成して包み込んだ。

 元よりフランベールが扱うのは氷の矢。

 これで【エリザの矢】も弦につがえることができた。

 

 ゼクードがフランベールの様子を一瞥し、ついにアグリスを怯ませてくれた。

 

「そこっ!」

 

【エリザの矢】を内包した氷の矢が撃ち放たれた。

 矢はまっすぐアグリスの顔に飛んでいく。

 龍鱗も纏われていない。

 これなら刺さる!

 

 ジュ……ッ

 

【エリザの矢】はアグリスに当たる前に消えた。

 

「うそ……消えた!?」

 

 あと少しだったのに赤く光ったと思ったら一瞬で消えてしまった。

 何が起こったのだろう?

 

「……よ、溶解してた。溶けたんだ!」

 

「溶けた!? オリハルコンが!?」

 

 リイドの答えに驚くフランベールだが、確かにアグリスの周囲は景色が歪んでいた。

 熱で景色が歪むアレとまったく同じだ。

 

「くそ! 耐熱性がいる! 母さん!」っとリイドは凄まじい速さでヨコアナへ走って行った。

 リーネを探しに行ったらしい。

 

 残されたフランベールは……よく見ればアグリスに接近戦をしているゼクードも鎧が熱を持って赤熱しているのが見えた。

 

 ゼ、ゼクードくん!?

 鎧が……鎧が溶けてる!?

 あれじゃゼクードくんの身体が!

 

 ゼクードの身体がとんでもないことなっていた。

 溶解したオリハルコンがゼクードの肉体を焼いて、かつ同化してしまっている。

 彼の苦しそうな顔がフランベールの眼に焼き付いた。

 ゼクードの危機に気づいてしまったフランベールは気が動転してしまった。

 

 一方で狙撃されたことに気づいたアグリスはフランベールを見つけていた。

 フランベールはゼクードの妻だと知っているアグリスは不敵に嗤う。

 

「アイツは……あはっ! 良いこと思いついた!」

 

 全身から熱気を発したアグリスはゼクードをノックバックさせ、背中から翼を生やして飛んだ。

 

「ぐあっ! 待てアグリス!」

 

「アンタにも味あわせてあげるわ! 大切な人を殺される気持ちをね!」

 

「やめろ! 逃げるんだフラン!」

 

 ゼクードが叫ぶもアグリスはすでにブレスを放っていた。

 気が動転していたフランベールはそのブレスに対して反応が遅れた。

 

 逃げる間もなくフランベールはブレスに飲み込まれた。

 

「フ、フラァアアアアアアアアアアアアアン! 嘘だろオイ!」

 

 ゼクードの絶叫。

 それを見たアグリスがこれまでにないほど高笑いをした。

 

「あっはっはっはっはっは! やってやったわ! さいっこうね! ほらアンタの最愛の妻が死んだわよ! ざまぁみろってなぁあああっ!!」

 

「アグリス……きさまぁあああああああああああ!」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。