【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

53 / 448
第50話【なにそれ詳しく】

 謁見を済ませた俺たちは、ローエさんの案内で妹リーネさんが待っているマクシア家へ来ていた。

 

 やはり貴族ゆえか、人の家を便所扱いするだけあって大きな館だった。

 

 蒼天の真下に建つ、雑さがない白く綺麗な邸宅だ。

 屋根は緑色で、ローエさんの鎧の色とまったく同じである。

 フランベール先生の館より小さいのは住んでる人間の数が少ないからだろう。

 

 ここへ来るまでにローエさんから聞いたが、ローエさんの家族構成は父・母・ローエさん・妹さん・執事の五人暮らしとのこと。

 それでも五人暮らしには十分過ぎるほどデカイけどな。

 

 そしてやはり玄関前の庭も広いこと広いこと。

 煉瓦敷きの道が中心に伸びており、左右にはしっかり手入れされた芝生が広がっている。

 

 牛は……見当たらない。

 当たり前か。

 前にローエさんからミルクを貰ったことあるけど、牧場は別の場所にあるのだろう。

 

 あとフランベール先生の邸宅もそうだったが、ローエさんの邸宅にもS級ドラゴンの被害はないようだ。

 氷の結晶が激突した痕跡などはまるでない。

 

 金持ちの家ほど被害が少ないとは。

 なんか腑に落ちない。

 口には出さんけど。

 

「お帰りなさいまし。お嬢様」

 

 その言葉を発したのは執事服の男性だった。

 正面の門までわざわざ俺たちを迎えに出てくれたようである。

 

「ええセルディス。ただいま」

 

 俺たちの先頭に立つローエさんが笑顔で返した。

 セルディスと呼ばれた執事は綺麗な角度で御辞儀すると、今度は俺たちの方に視線を向けてきた。

 

「皆様。よくぞおいで下さりました」

 

 言われて俺も小さく御辞儀をする。

 フランベール先生もカティアさんも。

 

「会えて光栄です。セルディス様」

 

 俺は本心からそう言った。

 この人が父さんの元部下の一人セルディス様。

 引退こそしてるが、数少ないS級騎士の一人で、俺と同じく【気】を引き出せている達人だ。

 

 たぶん、今でも俺より強いのではないだろうか?

 引退してるのに凄まじい迫力を感じる。

 

「私もですよゼクード様。大きくなられましたね。お話はお嬢様から聞いております。秘薬の件、本当にありがとうございました」

 

 セルディスさんは表情が窺えないほど頭を深く垂れる。

 

「あ、いえ、そんな……当然の事をしたまでです」と言いながら俺は釣られて頭を下げた。

 

「フランベール様も、ご協力を感謝します。本当に危ない目にあったとか……」

 

「いえ! 危ない目にあったのはわたしの未熟ゆえです。それよりリーネさんが回復して良かったです」とフランベール先生も御辞儀しながら答える。

 

「何もかもお二人の御助力のおかげですよ」

 

「セルディスの言うとおりですわ。さぁみなさん上がって。リーネが待っていますわ」

 

 招かれるまま、俺たちはマクシア家の豪邸へ。

 

 

 アーチ状の玄関をくぐった先は広いホールとなっていた。

 城の出入りをしているから高級感のある柱や壁、天井に吊らされているシャンデリアなどに俺が気後れすることはなかった。

 でも。

 

「さすが。綺麗にされてますね」と俺はセルディスさんへ素直な感想を口にした。

 埃一つない気持ちのいい空間だから。

 

「恐縮です。ゼクード様」

 

 廊下を抜けて奥へ進むと、突き当たりにある扉の前でセルディスさんが止まった。

 

「こちらがリーネ様の御部屋となっております」

 

「ありがとうセルディス。あとはわたくしが引き受けますわ」

 

「かしこまりました」

 

 セルディスさんはソッとその場を去って行った。

 動きに無駄がない。

 熟練の執事ってなんかカッコいいな。

 

「リーネ? 起きてますの?」とローエさんが扉をノックした。

 こんこんこんと優しい力加減で。

 妹さんに対する優しさが感じられるノックである。

 

「お姉様ですか?」

 

 お、今のが妹のリーネさんの声か?

 透き通るような綺麗な声である。

 これはもしかしたら姉のローエさんと違っておしとやかで可憐な女性かも。

 

「ええ。ゼクードさんとフランベールさんを連れてきましたわよ」

 

「本当ですか! どうぞ入ってください!」

 

 やや興奮ぎみな声音だった。

 ローエさんは「みなさんどうぞ」と迷わず扉を開いて中へ。

 俺たちも彼女に続いて「お邪魔します」とリーネさんの部屋へ。

 

 そこにいたのはローエさんとそっくりなエメラルドグリーンの瞳をした小柄な少女だった。

 髪は姉ほど長くはなく短めだが、フワリとした曲線を描いているのは似ている。

 

 リーネさんは生地の良い緑のワンピースを着ていた。

 

 ボリューム満点な姉ローエとは対照的に、リーネさんのは驚くほど控えめな身体だった。

 

 いきなりそんなところを見る俺は失礼なのだろうし、変態なのだろうが、まぁそれは置いといて。

 

 俺の目がおかしいのだろうか?

 慎ましい胸が凄く真新しく見えるのだ。

 

 いや、まるで希少なものを見ているような気分になる。

 なんて美しいんだ。

 

 うちの部下たちはみんな揃って【巨】のつく胸をしているので、俺の感覚がおかしくなっているようだ。

 

 街中でもいろんな女性はいるが、ローエさん・カティアさん・フランベール先生レベルはあまりいないし、だいたいみんな普通サイズだ。

 

 そんな三人の【山】に囲まれているからか【壁】(←失礼)の女性がとても希少な存在に映る。

 

 しかし、これはこれで美しい。

 

「ああみなさん。今日はわたしのために御足労頂きありがとうございます」

 

 綺麗な声で、丁寧な口調でリーネさんは言った。

 両手をお腹の元で絡ませ、静かな動作で御辞儀する。

 やはり思ったとおりだ。

 おしとやかで可憐で、そして華奢だ。

 

「わたしはリーネ・マクシアと申します」

 

「ゼクード・フォルスです。初めまして」

「初めまして。フランベール・フラムです」

「カティア・ルージだ。よろしく頼む」

 

「あ、カティアさん! あなたがカティアさんなのですね! 姉からよくお名前をお聞きします」

 

「ん?」

 

「こらリーネ! 余計なことは言わなくていいんですわ」

 

「ふ……どうせ私の悪口でも言ってたんだろ?」

 

「いえ、むしろ……」

 

「リーネ!」

 

「は、はい……。えっと、ゼクード様とフランベール様。お姉様からお話は聞いています。お二人は命の恩人です。本当にありがとうございます!」

 

 笑顔でリーネに言われ、俺もフランベール先生も照れながら頷いた。

 

「それと、ゼクード様」

 

 リーネさんに呼ばれ、手を握られた。

 細くて柔らかい指が俺の手を包む。

 

「お姉様からたくさんお話は聞いています」

 

「え? たくさん?」

 

「ふふ、お姉様がここ最近ず~っとゼクードさんのお話ばかりしていたので、わたしも気になってました」

 

「ちょっ! リーネ!」

 

「リーネさん。その話、詳しく」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。