【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第51話【ローエの恩返し】

「リーネさん。その話、詳しく!」

 

「た、隊長! そういうのはやめてほしいですわ!」

 

「えーだって気になるんですもの。リーネさん詳しく!」

 

「実は──」

 

「ちょ、ちょっとリーネ! やめて! なに!? いったい何を言うつもりなんですの!?」

 

「まぁまぁお姉様。これはゼクードさんにちゃんと伝えておいた方が絶対に良いですよ」

 

「え?」

 

 ローエさんが怪訝な顔をした。

 リーネさんは構わず俺に視線を向ける。

 

「ゼクードさん。お姉様は言ってました。自分が今こうして笑っていられるのは隊長のおかげだって」

 

「!」

 

「え、俺の?」

 

「はい。もしあのときフランベールさんが死んでいたら、自分はもう笑えなかったと、そう言ってました」

 

 言われた俺はローエさんを見た。

 目が合ったローエさんは頬を赤くして視線を逸らす。

 もちろんフランベール先生の視線も。

 

「そして私もそう思います。自分が助かっても、そのために誰かが犠牲になってたら、こんな風には喋れませんでした。だから、お姉様の分も含めて、もう一度感謝を御伝えします。ゼクードさん……本当に、本当にありがとうございました」

 

 リーネさんは深く頭を下げた。

 

 そうか。

 そうだよな。

 フランベール先生が死んでたら、俺だけじゃなくみんな不幸になってたんだ。

 

 そう思うと、改めて間に合って良かったと思う。

 誰一人として欠けなくて本当に良かった。

 

「このご恩は必ず御返し致します」

 

「いえリーネさん。その御言葉だけで十分ですよ。それに恩返しならローエさんがしてくれるみたいですし、ね?」

 

 チラッとローエさんを見ながら言うと、ローエさんは当然と言わんばかりの笑顔を見せてくれた。

 

「もちろんですわ隊長。楽しみにしていてほしいですわね」

 

 笑顔のままウインクしてきたローエさん。

 死ぬほど可愛い……。

 これは期待してもいいのかな?

 

 どんな恩返しをしてくれるのだろう。

 ……案外とドアノブの修理だったりして。

 まさかね?

 

 

「見てくださいな隊長! ドアノブを新調いたしましたわ!」

 

「……」

 

 それは俺の自宅前でのこと。

 恩返しが『ドアノブ修理』という俺の予想がまさかの的中だった。

 

 あぁ、凄いピカピカなドアノブだ。

 自分で直すって言ったのに。

 

「良かったなゼクード」

「良かったねゼクードくん」

 

 カティアさんとフランベール先生が言ってきた。

 二人もこの恩返しが意外だったのか、ちょっと苦笑気味。

 

「というか、なんでドアノブ壊れてたの?」

 

 何も知らないフランベール先生が聞くとローエさんがドキリと身体を震わせた。

 しかしカティアさんが。

 

「実は今朝、隊長の家に泥棒が入ってたんです。そいつがドアノブを破壊したんですよ」

 

「え!? そうなのゼクードくん?」

 

「えっとぉ~……そうですね。はい」

 

 本当はローエさんなんだけどね。壊したの。

 

「何か盗られてなかった? 大丈夫?」

 

「大丈夫でしたよ。カティアさんとローエさんが捕まえてくれてたみたいで被害なしです」

 

 自宅内は荒らされてたらしいが、カティアさんとローエさんが綺麗にしてくれてもいた。

 ありがたやありがたや。

 

「なら良かったわ」

 

「それで今日はどうする隊長? まだ疲れてるんじゃないのか?」

 

 カティアさんに言われて、俺は素直に頷いた。

 

「そうですね。ぶっちゃけまだ眠気残ってるんで、今日はもう一回寝たいです」

 

「それでしたら今日はもう解散ですわね」

 

 

 部下のみんながそれぞれ帰路につくのを見送ってから、俺は新品のドアノブに手を掛けて自宅に入った。

 回しやすい。鍵も掛けやすい。

 やはり新品はイイナー(棒)。

 

 内心ショックを受けている自分がいた。

 お金持ちのローエさんならもっといいお礼をしてくれると勝手に思ってたからだ。

 

 俺は装備を外して私服になり、ベッドに横たわった。

 とりあえず寝よう。

 

 こんこんこん……

 

 ん?

 ノック?

 誰だ?

 

「隊長……ローエですわ」

 

 あれ、ローエさん?

 帰ったんじゃ。

 

「はいはい。今開けますよ~」

 

 俺は鍵を開けてそっと扉を開く。

 するとそこにはいつものローエさんが立っていた。

 なぜかモジモジして顔を赤くしているが。

 

「ローエさん。どうしたんですか?」

 

「あの、カティアさん達はいません?」

 

「え? ええ。もう帰りましたよ」

 

「よかった……お邪魔してもよろしいですか?」

 

「あ、はい。いいですけど」

 

 どしたんだろローエさん?

 

「お邪魔しますわ」と言ってローエさんは中へ入ってきた。

 玄関を閉めると、ローエさんはその扉の鍵を閉めた。

 まるで誰も入ってこられないようにしたようだ。

 

「先程はすみません隊長。でもわたくし、こんなドアノブの修理だけで恩返しが出来たとは思ってませんわ」

 

「え?」と俺はローエさんを見ると、彼女はさらに顔を赤くして俯いた。

 

「その、いろいろ考えたんですわよ? でも隊長が喜びそうなものって、他に分からなくて、何を贈ればいいのか、本当に分からなかったんですわ」

 

「あ、それは、なんか、すみません」

 

「い、いえ! 責めてるわけじゃありませんわ! ただその、隊長は身体を張ってリーネや先生を救ってくれたのだから、わたくしもそれ相応に身体を張らねばと思いましたの」

 

 え、それってつまり……。

 

「で、ですから隊長! 今日の恩返しは『わたくし自身』ですわ!」

 

 とんでもない大胆発言だった。

 しかもローエさんは顔面を真っ赤にして恥じらい、全身を緊張でガタガタと震わせている。

 

 汗もすごい。

 よっぽど自分の発言に恥じらいを感じているようで、彼女の真っ赤な顔から湯気さえ上がっている。

 凄い光景だ。

 

「わた、わ、わたくしで良ければ、好きにして構いませんわよ? きょ、今日だけ!」

 

 だけど、恥じらいながらも必死に恩返しに尽くそうとするローエさんは年上なのに可愛い。

 

「え、と。じゃあローエさん」

 

「は、はい! なんでしょう!」

 

「眠いんで、また膝枕してくれませんか?」

 

「え!?」

 

「ローエさんの膝枕、めっちゃ気持ち良かったんで」

 

「──……そ、それでいいんですの?」

 

 いや、本当はよくない。

 どうせならカティアさんに頼んだようにあんなことやこんなことをお願いしたい。

 

 でもさすがに今はマズイ気がしてきた。

 欲望に任せてカティアさんとフランベールさんを抱いたが、国王さまの急務が入ってからは考えが変わった。

 

 ローエさんにあんなことやこんなことを頼むのは、事が落ち着いてからにしよう。

 

「良いですよ。お願いしまーす」

 

 甘えるような口調で言ってみると、当のローエさんはどこかホッとしたように胸を撫で下ろした。

 

「わかりましたわ隊長。よろこんで」

 

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