【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第52話【保留】

 ローエさんは俺のベッドに座り、膝枕を用意してくれた。

 俺は遠慮なく彼女の太ももに頭を乗せる。

 ふわりとした柔らかい感触が俺の頭を包む。

 

「はぁ~……やっぱりローエさんの太もも凄く気持ちいいです」

 

「ふふ、気に入ってもらえて良かったですわ」

 

 母性さえ感じる優しい笑顔でローエさんはそう言ってくれた。

 お願いしてもいないのに優しく頭も撫でてくれて、思わずローエさんにウットリしてしまう。

 

 そう言えば……誰かに頭を撫でられたのなんて、いつぶりだろう?

 なんにせよ撫でられるのも気持ちいい。

 甘えて良いよ、とローエさんが言ってくれているようでとても。

 

 それにローエさんの女の香り。

 今日はなんだか、いつもより良い匂いな気がする。

 具体的には言えないが、嗅いでて気持ちいい匂いだ。

 

 なんだか凄く興奮する。

 変な気分になってくる香りだ。

 

 なんだろうこれ? 

 

「ん……ローエさん、なんかいつになく良い匂いしますね? なにか香水でも?」

 

「いいえ? わたくし香水なんて使ったことないですわ」

 

 ないんだ。

 凄いな。

 それでもこれだけ甘くていい香りがするなんて。

 

 心なしか今日のローエさんはいつもより肌も綺麗だし調子良さそうに見える。

 なんなんだろうこれ?

 いつもよりローエさんが魅力的に見えてる?

 

「んー、まぁ……んー、そうですよね。この匂いはなんか香水のそれと違いますもんね」

 

「そうなんですの?」

 

「はい。なんかこう、クラッとくるっていうか、ムラッとくるっていうか……」

 

「はぁ……ちょっとよく分かりませんが、それより隊長」

 

「なんでしょ?」

 

「先生とはどの辺まで進展してますの?」

 

「え!? いや、まぁ、そこそこぉ、ですかね?」

 

「キスまでしたのは知ってますのよ?」

 

「なんで!?」

 

「先生から聞きましたわ」

 

 言っちゃったの先生!?

 まぁ俺もカティアさんに口滑らしたから人のこと言えんけど。

 

「やっぱり……怒ってます?」

 

「怒りませんわ。怒れる立場ではありませんもの。隊長と先生の関係に口を出すつもりはありませんわ。ただ……」

 

「ただ?」

 

「先生に先を越された気分ですわ」

 

「え」

 

「わたくしもあなたのこと……好きでしたから」

 

 え、やった!

 

「ローエさん! 本当に!?」

 

「本当ですわ。いつか誰かに嫁ぐなら、あなたのような強い男性が良いと思ってましたもの。いまさら自分より弱い男性に魅力なんて感じませんし……」

 

「じ、じゃあローエさんも!」と俺は起き上がってローエさんの正面に立った。

 

「ローエさんも俺の嫁になってくださいよ! フランベール先生だってローエさんなら許してくれますから!」

 

 そう、フランベール先生ならローエさんを受け入れてくれる。

 これは間違いないのだ。

【あの夜】のあと、二人で話し合ったのだから。

 

 

『ゼクードくん。わたしね……ローエさんとカティアさんのことも好きなの』

 

『ふぇ!?』

 

『あ、一緒にいて楽しいって意味だよ? その、かわいい妹みたいな、そんな感じの』

 

『な、なるほど。びっくりしました』

 

『あの二人も、ゼクードくんのところに来てくれたら本当に嬉しいんだけどなぁ』

 

『え?』

 

『ん、みんなでゼクードくんのお嫁さんになって、家族になるの。きっとこうやって……暖め合える家族になれると思うから』

 

 

 フランベール先生も俺と同じで家族を求めていた。

 先生には生きた家族がいるが、決して暖かい家族ではない。

 だからあんな事を言ったんだろう。

 

「知っていますわ。わたくしも先生にあなたの元へ来てほしいと言われましたもの」

 

「だったら是非! 俺の嫁の一人になってください! 俺、ローエさんたちに不自由させないだけの地位と資金と土地を用意できますから!」

 

「それは知ってますわ。でも、違うんですの」

 

「え?」

 

「あなたの一番になれないのが……わたくし嫌なんですわ」

 

「!」

 

「でも、だからと言って、先生を見ないでわたくしを見てとも言えませんわ。わたくし、先生のことも好きですから。そんなことで傷つけたくありませんの」

 

「ローエさん……」

 

「それに隊長。そもそも一夫多妻という制度は、ドラゴンに騎士である夫を殺された女性やその子供を裕福な男性が救うための制度ですわ。決して男性の欲望を満たすためだけのハーレム制度ではないのですからね?」

 

「え、そうだったんですか!?」

 

 それは知らなかった!

 

「そうですわ。だからこそフランベール先生は絶対にお嫁さんにしてあげるべきですわ隊長。先生があんな家庭のところにいて幸せなはずがありませんもの。救ってあげないと」

 

「それはもちろんです。先生は俺が絶対に幸せにします。だからローエさんも」

 

 するとローエさんは目を閉じて小さく首を振った。

 

「わたくしはダメですわ。諦めてください。わたくしも諦めますから……」

 

 やっぱり、ダメなのか。

 

「ローエさん……」

 

「……ごめんなさい」

 

 ごめんなさいと言われても、こんな素敵な女性を簡単には諦め切れない。

 こうなったら、多少強引でも!

 

「──……ローエさん」

 

「?」

 

「キスして良いですか?」

 

「……ダメ」

 

「キスしたいです」

 

「……ダメ。噛みつきますわよ?」

 

「それくらい我慢します」

 

「……じゃあ嫌いになりますわよ?」

 

 う!

 

「そ、それは……」

 

 本末転倒だ。

 それだけは困る。

 でも、じゃあ、どうすれば……。

 

「隊長……しばらく、時間をくださる?」

 

「え?」

 

「もう少し……考えてみますから」

 

「ローエさん……」

 

「もう少し、待っていてください」

 

「……わかりました。良い返事を待ってます」

 

 そう言って俺はローエさんの隣に座った。

 そのままローエさんの太ももへ頭を乗せて、一息吐く。

 ローエさんはそんな俺に微笑みながら、また頭を撫でてくれた。

 

 気持ちいい。

 

 撫でられるのもそうだが、やはりローエさんの太ももの感触は最高だ。

 

 男性よりも筋肉が少ないと言われている女性の肉体は、とても柔らかくて気持ちいい。

 

 ローエさんの甘い女の香りに包まれて、優しく頭を撫でられて……やっぱりローエさんの膝枕は天国だ。

 

 そう思うと、とてつもない睡魔が襲ってきた。

 これはあの時と一緒だ。

 ローエさんの膝枕で眠ろうとするとすぐに眠れてしまう。

 

 ローエさんに対する安心もあるんだろう。

 俺は眠気で閉じそうになる瞳でローエさんを見た。

 

 ずっと俺を見ていたローエさんは、それこそ眠そうな俺を見て聖母のような優しい微笑みを向けてくれた。

 

「眠いのなら寝ていいんですわよ隊長。遠慮なさらないで」

 

「それじゃ御言葉に甘えます。ありがとう……ローエさん……」

 

 優しく頷いたローエさんは、俺のお腹に手を添えてポンポンとリズミカルに叩いてきた。

 

 まるで赤子を眠らせるような手の仕草だったが、おかげで俺は気持ちよく深い眠りにつくことができた。

 

 

 ゼクードがローエの膝でスースーと寝息を立て始めた。

 こちらを信用し、安心して眠るゼクードの無防備な寝顔はやはり可愛い。

 

 はぁ……やっぱり隊長の寝顔は本当に可愛いですわ。

 

 戦えば誰よりも強いゼクードだが、寝れば年相応の可愛さと幼さがある。

 

 そのギャップにローエはときめいていた。

 

 あまりに可愛いので、ローエはゼクードの頬をプニプニとつついてみた。

 

 意外と柔らかいのだから驚きである。

 

「ん……ローエさん……」

 

「!」

 

 名前を呼ばれて驚いたが、どうやら寝言のようだ。

 

「好きです……」

 

 寝ながら告白された。

 

 クスクスと笑いながら、ローエはゼクードの耳元へ囁く。

 

「わたくしも好きですわ。隊長……」

 

 でも……あなたはわたくしだけを見てはくれない……

 わたくしがあなたの一番になれることはない……

 

「いいですわよね。男は……」

 

 思わず愚痴ぐちを溢こぼしてしまった。

 男性は複数の女性と結婚できるのに、女性はそれを許されていない。

 

 一夫多妻の真の理由を知っているから迂闊な批判はできないが、それでもやっぱりズルいと感じてしまう。

 

 わたくしも複数の男性と関係が持てるのなら持って、ゼクードを嫉妬で狂わせてやりたいですわ。

 

 自分だけの存在にならない苦しみをたっぷりと味わわせてやりたいですわね。

 

 ……って、何考えてるのかしら、わたくし。

 

 思わず溜め息が出た。

 ゼクードの視線を自分だけに向けさせたいと思う反面、

 フランベール先生の事がローエの胸を穿うがった。

 

 あのフランベール先生からゼクードを奪うなんて真似は……やはりできそうにない。

 

 でも、それでもやっぱり……自分もゼクードが好きだ。

 

 先生を傷つけずに、ゼクードと一緒になるには──

 

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