【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第53話【信じてたのに!】

 そして朝になった。

 

 ローエはゼクードのベッドの上で目を覚まし、ゆっくりと身を起こした。

 朝陽が窓から射し込み、小鳥のさえずりが心地良く聴こえてくる。

 

 あれ……わたくし……

 

 ああ……『あの後』そのまま寝てしまったんですわね。

 

 覚醒した脳が昨日の記憶を思い出させ、ローエは隣で眠るゼクードを見た。

 腕枕をしてくれている彼はまだ気持ち良さそうに眠っている。

 彼の腕は逞しく、御世辞にも柔らかくはなかったが、その男らしい硬さはローエに絶対的な安心感を与えてくれた。

 

 おかげで深く良質な睡眠を取ることができた。

 驚くほど全身がスッキリしている。

 

 こんなにも安心して眠ったのは、初めてかもしれない……。

 

 ゼクードを眺めながらローエはそう思った。

 

 さて、彼はどうしよう?

 ……まだ朝も早いだろうし、そっとしておこうか。

 

 ローエはゼクードの頬に優しくキスをして、そのままベッドから降りた。

 

 インナーを着て、ミスリルアーマーを装備し直したローエは、壁に立て掛けておいたマグナムハンマーを手に取り、背に担いで外へ出た。

 

 澄んだ外の空気は美味しく、ローエは思わず深呼吸する。

 清々しい青空を見上げ、少し違和感を感じるヘソの下を撫でた。

 

 なぜここに違和感を感じるのか。

 理由は分かっている。

 温かく、不思議な気持ちになる違和感だ。

 

 しばらくそこを撫でてから、ローエは練兵場へ向かうために街中を歩き始める。

 

 日課の朝練をしなければいけない。

 たぶんカティアも来ているだろうから相手をしてもらおう。

 

「ローエさん。おはよう」

 

 フランベールの声が聴こえてローエは振り向いた。

 そこにはいつもの装備をしたフランベールがこちらに向かって歩いて来ていた。

 

「おはようございます先生。今朝は早いんですわね」

 

「うん。今は騎士学校の仕事もないから朝の特訓に時間を当てられるの」

 

「なるほど」

 

「ローエさんとカティアさんも毎日やってるみたいだったから、負けてられないなぁってね」

 

「おほほ、当然ですわ。毎日やらないとすぐに鈍りますもの」

 

 この女の身体というのは本当にすぐ鈍る。

 弱ったものだ。

 

 そこへいくとゼクードという男は本当に羨ましい。

 朝練なんてしてなさそうなのにあの強さだ。

 男の中でも反則級である。

 

「そうだね本当に。……ところでローエさん。昨日はゼクードくんに何してあげたの?」

 

 え!?

 な、なんで急に。

 

「な、何してって、ドアノブ直しただけですわよ? 先生も見てたでしょう?」

 

「その後のことだよ。ローエさん、わたしとカティアさんがいなくなったらゼクードくんの家に戻ってたでしょ?」

 

 んな!?

 み、見られてた!?

 なんてことなの!

 

「いえ! あれは! その……忘れ物ですわ!」

 

「嘘だね?」

 

「いえいえ! 嘘じゃありませんわよ?」

 

「んー、解散したあと明らかに家とは違う方向に帰っていくから変だなぁって思ってたんだけど」

 んなん!

 バカをやらかしてた!

 そこまで頭が回ってなかった!

 

「カティアさんも同じこと言ってたのよ。『あいつ何処に行くんだ?』って」

 

 く、わたくしとしたことが。

 取り返しのつかないミスを犯していた。

 しかもカティアにまで見られていたとは。

 は、恥ずかしい。

 

 というか、意外と人を見てますわね。

 カティアも先生も。

 気を付けねば。

 

「えっとですね先生……わたくしは本当に忘れ物を取りに戻っただけでしてよ? いや本当に。あの、これ。これですわ。このマグナムハンマーを忘れたんですの」

 

 って言うと、フランベール先生の顔が

『そんなデカイの忘れる方が難しいのでは?』

『がっつり担いで帰ってたよ?』

 と言いたそうな顔をしていたのでとりあえず無視する。

 

「そっか。なんか今日のローエさんはゼクードくんの匂いがするからもしかしてって思ったんだけど」

 

 どんな鼻してますの先生!?

 っていうかゼクードの匂い!?

 それってまさか!

 

「え!? そ、そんなに匂います!?」

 

 言ってから後悔した。

 フランベール先生の顔がニマァ~と、何かを確信したような意地の悪そうな顔になっていたからだ。

 

「その反応。やっぱりそうなんだねローエさん」

 

「ちが、ち、違いますわ! 本当に何もしてませんわ!」

 

「うん。わかった」

 

 ニコニコしながらフランベールが頷いた。

 絶対ウソだ。

 この人、ゼクードとわたくしがラブラブな事をしたと確信してる。

 

「先生! お願いですから信じてください!」

 

「わかってるよー。信じてる信じてるー」

 

 すっごい棒読み!

 そのニコニコやめて!

 なんでそんなに嬉しそうなの!?

 

「あ、あのですね先生! やっぱりおかしいですわよ!」

 

「ナニガ?」

 

「ふ、普通、意中の男性が別の女性とイチャイチャしてたらもっと嫌な顔をするものでしょう?」

 

「うん。そりゃあそうだよ」

 

 あれ?

 あ、良かった。

 この部分は普通の感覚なんだ。

 

「で、でしょう? でしたら──」

 

「でも相手はローエさんでしょ? だったら別に」

 

「いやいやいや……」

 

 ──……んもぅ、この人は本当に困った人ですわ。

 気に食わない女だったならば、迷わずゼクードを奪っていたのに。

 むしろそっちの方がやりやすかったですわ。

 

 ハーレム?

 冗談じゃないですわ!

 ゼクードはわたくしにこそ相応しい男性ですわ!

 彼の妻はわたくし一人で十分ですわ!

 

 って感じで突き放せただろう。

 でもこのフランベールという女はもうね……

 育った環境でこうも考え方が違うのだから恐ろしい。

 

 まぁ、でも。

 そもそもリーネのために身体を張ってくれたフランベール先生だ。

 好きとか嫌いとかそれ以前に、自分にとって彼女はゼクードと同じ恩人なのである。

 

 だからフランベール先生にもちゃんと恩返しをせねばならない。

 そして恩返しのとき、フランベール先生の願いが「一緒にゼクードの嫁になること」なら、わたくしも迷わず割り切れるかもしれない。

 

 やれやれ……ズルい女ですわ。わたくし……

 

「あとカティアさんでも嫌じゃないよ。わたしは」

 

「先生……カティアさんはさすがに無理がありますわ。あの人がハーレムを許すわけないですわよ」

 

「あれ? ローエさん知らない? カティアさんの御家庭も一夫多妻なのよ?」

 

「え!?」

 

 嘘……そんな話、初耳ですわ!

 なんか妹たくさんいるなぁ~とは思ってたが、まさか母親が複数いるとは。

 

 と、ということは!

 カティアもフランベールと同じ感覚を持っているということなの!?

 

 信じられない!

 一番の常識人だと信じてたのに!

 

 

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