【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第60話【ファイナルアタック】

 鈍足に迫りくる超大型のドラゴンに、ローエは戦慄した。

 

 茶色い甲殻と背中に聳える山のような棘(とげ)。

 遠目で見ても分かるそれは城のよう。

 

 一歩……また一歩と巨体を唸らせ、その超大型ドラゴンは【アークルム王国】に近づいてくる。

 

「な…………なんて、大きさですの……!」

 

 今まで見てきたどのドラゴンよりも大きい。

 とんでもないサイズだ。

 あんな巨体では、刃が通るとか通らないとかそれ以前に……そもそも通ったところでダメージになるのか?

 

 いくらゼクードの【竜斬り】でも、あんな巨大な化け物を止められるのか?

 

 ──無理である。

 

 あんなの、なにか特別な兵器でも作らないと太刀打ちなんてできない。

 ましてやこんなボロボロになった【アークルム王国】で迎え撃つなど不可能だ。

 

 ただでさえドラゴンに侵入されてメチャクチャなのに。

 

「ダ、ダメですわあんなの! 逃げるしか!」

 

 思い至ったローエは屋根から別の屋根へ飛び移り、下へ降りていく。

 着地する地点にいたA級ドラゴンを叩き潰し、急ぎゼクードの元へ走った。

 

 しかしその行く手を阻むように二匹のA級ドラゴンが立ち塞がる。

 

「このっ!」

 

 ローエはマグナムハンマーを構え、さらに足を加速させた。

 その時、ローエの隣に赤い影が並走してきた。

 

「!」

「援護する!」

 

 カティアだった。

 頼もしい味方が現れ、ローエは咄嗟に頷く。

 

「左をお願いしますわ!」

「まかせろ!」

 

 互いに敵の火球を避けながら突撃し、

 言われた通りカティアは左のドラゴンをバスターランサーで喉を刺し貫いた。

 

 ローエも敵の顔面を爆砕する。

 

 一撃でA級ドラゴンを仕留めると、ローエはすぐにカティアに視線を向けた。

 

「カティアさん! 大変ですわ! もう一匹のS級ドラゴンが迫って来てますの!」

 

「なんだと!?」

 

「さっきあの高い屋根から確認しましたわ。とんでもない超大型のドラゴンでしたの。今のわたくしたちの装備では、あのドラゴンを止めることは不可能ですわ!」

 

「そんな馬鹿な……いや、しかし! ここで止められなければ、この国が壊滅するぞ!?」

 

「この国は放棄するしかありませんわ! みんなに知らせて【エルガンディ】へ撤退すべきですわよ! 協力してカティアさん!」

 

 鬼気迫るローエの声音。

 カティアは周りに視線を泳がせた。

 

 大勢の崩れた【アークルム王国】の騎士たち。

 彼らが次々とドラゴンどもにやられていく光景が広がる。

 

 こんな状況で2体目のS級ドラゴンを迎え撃つなどできない。

 迎え撃てば、全滅は免れない。

 

 そうカティアは判断したのだろう。

 ローエの提案に彼女は頷いてくれた。

 

「……わかった。先生や他の味方には私から伝えて回る」

 

「お願いしますわ。わたくしは隊長のもとへ急ぎます!」

 

「ああ!」

 

 ローエとカティアは即座に分かれて走った。

 S級ドラゴンと対峙しているゼクードの元へ、ローエは全力疾走する。

 

 そして行き着いたアークルム城の門前。

 ゼクードはまだあのS級ドラゴンと戦っていた。

 

 ロングブレードを構えたゼクードが、一足の踏み込みで消えた。

 かと思うと、赤い鱗の巨大ドラゴンマンの全身からバリバリと火花や鮮血が吹き飛ぶ。

 

 その痛みで咆哮をする巨大ドラゴンマンは、あまりにも速いゼクードを捉えられず空振りを連発している。

 

 どう見てもゼクードが圧倒しているが、決定打を与えられず苦戦しているのはそれこそローエにも見えた。

 

 そもそもローエにとって、ゼクードが瞬殺できないでいること自体に驚きを隠せないのだ。

 

 てっきりもう討伐しているとばかり思っていたのだが。

 

「ゼクード隊長!」

 

 ローエが叫ぶと、ゼクードがこちらに気づいてハッとなった。

 

「ローエさん! 俺に魔法を撃ってください!」

 

「ぇ、え!?」

 

 いきなり何を言っているの!?

 

「ローエさんの最高レベルの魔法を! 俺に撃ってください!」

 

「な、なぜですの!?」

 

「早く! うおっと!」

 

 巨大ドラゴンマンの攻撃をギリギリのところで回避するゼクード。

 それを見て、急かされたローエは考える間はないと判断し、慌てて魔法を唱えた。

 

「【シュトゥルム】!」

 

 風魔法最高レベルの【シュトルム】は、ローエの持てる一番強い魔法である。

 先程の【ハリケーン】を越える超巨大な竜巻を起こす超広範囲な攻撃魔法だ。

 

 体力の消耗は半端ではなく、一発で息が上がる消費量だ。

 おまけに軽々と味方をも巻き込むので、単騎以外での使用は自己規制していた。

 

 それをまさか味方に向けて撃つ日が来るとは思いもよらなかったが。

 

「隊長! いきますわよ!」

 

 手のひらに生まれた緑の閃光。

 それを地面に叩きつけると、一瞬にして強風が巻き起こった。

 刹那に勢力を増して全てを巻き込む竜巻と化した。

 

 巨大ドラゴンマンが目の前に現れた竜巻に驚き、一瞬だけ止まる。

 

「ありがとうローエさん! 【ブラックホール】!」

 

【シュトゥルム】に対してゼクードが【ブラックホール】を唱えた。

 黒い渦が彼の片手に発生し、ローエの【シュトゥルム】を吸収していく。

 

 なるほど!

 そんなこともできるのか!

 

 ローエはここでようやく気づいた。

 切れ味が足りない現状では、この巨大ドラゴンマンには決定打を与えられない。

 しかもローエが見るに、奴はブレスなどの類は得意としておらず、やたら物理的なパンチを繰り出すのみ。

 

 だからゼクードはローエに魔法を頼んだのだろう。

 敵から吸収できなかったから。

 

「ローエさんの風の力! 受け取りました!」

 

 ゼクードのロングブレードが【シュトゥルム】の魔力を帯びて緑に光り輝く!

 

【竜斬り】と【シュトゥルム】の力が合わさった今のゼクードの攻撃力ならば!

 

「はぁ……はぁ……隊長! やっておしまい!」

 

 ローエが声援を贈ると「おお!」と気合いたっぷりのゼクードの返事が来た。

 

 次の瞬間。

 放たれた巨大ドラゴンマンの拳打。

 その伸びた豪腕が、ゼクードの凄絶なる剣技によって微塵となった!

 

 鮮血が派手に飛び散り、何が起きた分からない巨大ドラゴンマンが瞳を見開く。

 敵が激痛を感じて咆哮する前に、ゼクードはすでに奴の両脚を切断!

 

 仰向けに倒れた巨大ドラゴンマンは、両脚と片腕を失った激痛に悲鳴のような雄叫びを上げる。

 

 このまま絶命するかと思いきや、奴は最後の力を振り絞り、その大口から灼熱の炎を吐き出してきた!

 

「な!? こいつ吐けるのかよ!」

 

 驚いたゼクードが声を上げる。

 しかし、なんてことはない。

 

 最後に放ってきた巨大ドラゴンマンのブレスはゼクードもローエもいない空へと放たれ、不発に終わったのだから。

 

 全てを吐き出した巨大ドラゴンマンは、ついに瞳を閉じ、生を止めた。

 

 奴の大量の血が地面に広がっていく。

 

 勝った!

 さすがゼクードである。

 

「はぁ、はぁ……ふふ、さすがですわ隊長」

 

 ローエが駆け寄ると、当のゼクードは空を見上げていた。

 

「? ……どうしましたの隊長?」

 

「ヤバい……」

 

「え?」

 

「降ってきますよ! さっきのブレスが!」

 

「え!?」

 

 ローエも空を見上げた。

 曇り空には赤い光が点々と光、それらは次第に大きくなってゴゴゴゴと雷のような音を轟かせ始めてきた。

 

 ふ……降ってくる、本当に!

 火球の雨が!

 

「ローエ! 俺から離れるなよ!」

 

 言われて間もなく、火球の雨が【アークルム王国】に降り注いだ。

 

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