【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第66話【白いドラゴン】

 しばらく抱き合ったカティアさんとレィナさん。

 妹のレィナさんが落ち着き、ようやく身体を離した。

 次いでカティアさんは姉らしく彼女の頬を優しく撫でた。

 

「もう大丈夫かレィナ?」

 

「はい……ごめんなさい」

 

 たくさん泣いて頬を赤くしたレィナさんが頷く。

 

「いったい何があった?」

 

「実は、空からドラゴンが襲って来たんです!」

 

(やっぱりか)と俺はカティアさんと目を合わせた。

 構わずレィナさんは続ける。

 

「白くて大きいドラゴンでした。たった一匹だけだったのに、みんなそいつにやられて……」

 

 たった一匹でこの脅威か。

 まぁ、群の長を務めるドラゴンなら、当然言えば当然の戦闘力と言えるだろう。

 

 でも、これだけ圧倒的な力があるなら何故だ?

 氷のドラゴンやら翼のドラゴンやら巨大ドラゴンマン、超大型ドラゴンなどなど、そんな群れなんか作らず自分で人間たちをやってしまえばいいのに。

 

 それとも一連の連中とは関係ないのか?

 

「白いドラゴン……やはり五体目のS級がいたか」

 

 カティアさんの言葉に俺は頷き返事をする。

 

「確定しましたね。おそらくその白いドラゴンが黒幕でしょう」

 

 一匹で王国をボロボロにする強さだ。

 ドラゴンの中でも別格な証拠である。

 まず間違いない。

 その白いドラゴンこそ真のS級ドラゴンだろう。

 

【超大型ドラゴン】と【白いドラゴン】。

 とんでもなくヤバいのが二体も残ってしまった。

 この二体に連携を取られたら勝ち目はない。

 早く片方を潰さねば。

 

「ならば隊長。私はもう大丈夫だ。隊長は早く陛下の元へ急いだ方が良い」

 

「わかりました。そうします」

 

 カティアさんもまだ精神的に辛そうだが、妹のレィナさんが側にいるなら大丈夫だろう。

 

 

【エルガンディ王国】の街は、東側がやたらと竜巻の被害が大きかったようで、崩壊した建物の下敷きになった人間が多数いるらしい。

 反対に西側は落雷の被害が深刻だったらしく、街の至るところで黒コゲになった死体があるとか。

 

 なぜそんなに被害に違いが出たのかは分からない。

 ちゃんと調べたかったが、それよりも俺はまず国王さまの元へ急ぐ。

 

 ──が、道の途中で見覚えのある男がいた。

 革の鎧を身につけた彼は腰に剣を携え、片手には革の盾を装備している。

 いわゆる片手剣使い。

 

 A級ドラゴンの火球をくらったら一発でダメになりそうな装備をしている彼はクラスメイトのグリータだった。

 

 彼は学生騎士として街の救助活動の手伝いをしているらしく、瓦礫に埋まった人間の救出に勤しんでいた。

 

「グリータ!」

 

 友達が無事だったことが嬉しく、俺は思わず声を上げて駆けていた。

 

「あっ! ゼクード!」

 

 グリータも俺に気づいて駆け寄ってきた。

 

「良かったグリータ! 無事だったんだな!」

 

「お前の方こそ良かった!」

 

「クラスのみんなは?」

 

 見当たらないから聞いた。

 するとグリータは顔を暗くして首を振る。

 

「……分かんねぇ。自分だけで精一杯だったから」

 

「そ、そうか」

 

 まさか、あいつらまで……。

 いや、クラスメイトのあいつらがそんな簡単にくたばるとは思えないけど、心配である。

 

「っていうかお前……どこ行ってたんだよ。お前がいりゃこんな事態にはならなかったろ」

 

 ん、まぁ、それはどうだろう?

 

「すまん。【アークルム王国】の救援に向かってたんだ。やっと帰ってこれたと思ったら、こんなことに……」

 

「なんで全員で他国に向かったんだよ! お前だけでも残ってれば良かったのに!」

 

 そんな怒鳴らんでも……いや、この場合は仕方ないか。

 

「落ちつけってグリータ。S級ドラゴンが二体同時に【アークルム王国】を狙ったんだ。俺も行かなきゃダメだったんだ。仕方なかったんだよ」

 

「二体? じゃあなんでこっちにもS級ドラゴンが現れたんだ? おかしいだろ?」

 

「それがおかしくないんだ。今回エルガンディを襲ったその白いドラゴンはまさに五体目のS級ドラゴンなんだ」

 

「は……はぁっ!? 五体目って……嘘だろ!?」

 

「いや、本当だよ。今回のドラゴンはやたらと組織的な動きをしていた。だから群を指揮するドラゴンがいるはずだと思ってたんだ。そしたら案の定。やっぱりいたんだよ群の長が。黒幕はその白いドラゴンだと思ってる」

 

「マジかよ……あんな化け物が長とか……、あのドラゴン、ヤバいなんてもんじゃなかったぜ?」

 

「それはこの被害を見れば分かるよ」

 

「いや、そうじゃなくって……あのドラゴンはなんか、天候を操ってたように見えたんだ」

 

 ──さすがに、血の気が引いた。

 

「天候を、操る?」

 

 なんだよそれ。

 本当に生物なのか?

 

「ああ……あいつが襲ってくる少し前に天候が急激に悪化したんだ。風はアホみたいに強くなるし、雷まで鳴り出すし、最悪だったよ」

 

 思い当たるものがあった。

 俺たちがエルガンディを発ったすぐ後。

 凄まじい雨と雷に襲われた。

 

 それはすぐに止んで、実に不自然だったがそうか。

 その白いドラゴンが、近くにいたんだ。

 あの時は急いでいたから気配すら感じられなかったけど。

 

「その白いドラゴンがエルガンディの天から舞い降りて来た瞬間だったな。竜巻が起こって、雷がやたら人に落ちるようになったんだ。そこからはもう一方的だったよ。こっちはパニックで、あっちは高いところから竜巻と雷の連発。いま生きてるのが不思議なくらいの地獄だった」

 

 大きくため息を吐きながらグリータは青い空を見上げてそう言った。

 

 地獄と言うだけあって、確かにその悲惨ぶりはグリータのボロボロの身体が物語っていた。

 先ほどのレィナさんもボロボロだった。

 生き残った人々も例外なく。

 

 よっぽど怖かったんじゃないだろうか。

 

「グリータ……」

 

「なぁ、ゼクード」

 

「ん?」

 

「あの白いドラゴンに、勝てそうか?」

 

 グリータが不安いっぱいの顔で俺に問うてくる。

 超大型ドラゴンでも勝てそうにないのにこれだ。

 みんなして俺に聞かないでくれ……とは、言えない。

 

 みんなが俺を頼りにするのは仕方ないことなんだ。

 

「勝つよ。負けるつもりはないさ」

 

「本気で言ってんのかよ? 天候を操るドラゴンだぞ? 雷とか……どうやって対処するんだよ」

 

「なんだよ? お前さっき俺がいればこんな事態にはならなかったんじゃって言ってくれてたのに」

 

「あれは! その、ちょっとイライラしてたって言うか、流れでそう言ってしまっただけで……その」

 

 わかってる。

 こんな状況で精神的に不安定になるのはむしろ普通だ。

 先が壊れて見えなくて、そして怖くてイライラして、行き場のない不安に押し潰されそうになるんだ。

 

 さっきグリータが俺に怒鳴ったのも、行き場のない不安の発散だったに違いない。

 

 レィナさんだって大泣きしていたんだ。

 死の恐怖に駈られればみんなそんなものだ。

 

 むしろ今、平然としている俺の方がよっぽどおかしいのだろう。

 でも俺は、怖いとか、不安とか、そんなこと言っていい立場の人間じゃない。

 

「わかってるよグリータ。とにかく俺は負けるつもりはないよ。諦めるつもりもない。だから、まかせとけって」

 

「お前……」

 

「俺はS級騎士だから『勝てない』なんて冗談でも言っちゃいけないんだよ」

 

「!」

 

「守りたい人達も手に入れたし、尚更な」

 

「え?」

 

「手を尽くして頑張るよ俺は。だからお前も諦めんなよ!」

 

「ぁ、おい!」

 

 一方的に言い放って俺は城へ向けて走り出した。

 柄(がら)にもない事を友人に言ったせいで恥ずかしさもあったから。

 

 

【エルガンディ王国】の城も酷いやられようだった。

 最初の青いS級ドラゴンの襲撃をくらって城壁に穴が空いていたが、今はもう半壊して城の原型をギリギリとどめているレベルである。

 

 雷や竜巻をたくさんくらったのだろう。

 国王さまは無事なのだろうか?

 

 俺はただひたすら走り、門番に話をつけて【謁見の間】へ急いだ。

 門番の話では国王さまは無事とのこと。

 安心したが、とにかくこの目で確認しないと。

 

「国王さま!」

 

 俺はやっと赤い絨毯を敷かれた【謁見の間】にたどり着く。

 そこには王族の衣装を身に纏った国王さまが玉座にて俺を待っていてくれていた。

 

「おおゼクード! 戻ったか!」

 

 俺を見るや顔を一気に明るくし立ち上がってきた。

 

「国王さま! 御無事で何よりです!」

 

 俺は跪き、心からの言葉を発した。

 何も考えずにそんな言葉が自然と出たのだ。

 自分でもビックリするほど国王さまの無事に歓喜している。

 

 本当に無事で良かった。

 国王さま。

 国王さまがいるなら【エルガンディ王国】はまだ健在だ。

 

「うむ。だが見ての通り……国はこの有り様だ」

 

「白いドラゴンの襲撃を受けたと聞きました」

 

「そうか、聞いたか」

 

「はい。その白いドラゴンは間違いなく今回のドラゴンたちを指揮しているリーダーだと思われます」

 

「……そうだな。それはもう、間違いない」

 

 国王さまは、何やらいきなり掠れるほど声を小さくした。

 その顔は暗く沈み、なにか絶望的な、不穏な空気を感じさせてきた。

 

「……国王さま?」

 

「ゼクード……心して聞いて欲しい」

 

「え?」

 

「あの白いドラゴンは……お前の父フォレッドと相討ちになったはずのディザスタードラゴンだ」

 

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