【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第75話【みんなゼクードの元へ】

 その後、クロイツァーさんは明日のため家に帰って行った。

 一人残った俺は今もまだ、城壁の上で草原を眺めている。

 夜の冷たい風が俺の頬を撫でた。

 

「女騎士は、最初からいない方がいい……か」

 

 強くなるには男の数倍の努力が必要で、そのくせいつかは離脱する。

 割りに合わない。

 狩りは女性の得意分野ではないから。

 

 男性は硬い筋肉の塊だ。

 女性は柔らかい脂肪の塊だ。

 でもそれらには理由があり、性別で分けられた役割があるからだ。

 

 グゥの音もでないほど正論だ。

 そんなことは分かっている。

 クロイツァーさんの言いたいことは分かる。

 

 そう考えるとローエさん・カティアさん・フランベール先生は本当に凄いな。

 

【攻撃魔法】という不幸を背負いながら、

 鍛えるのにも苦労したであろう女性の身体で、

 この国のトップクラスになっているのだから。

 

 男の俺には想像もできない涙ぐましい努力があったはずだ。

 もし彼女たちが男性だったならば、俺はとっくに抜かれていたかもしれない。

 

 だから、そんな彼女たちの努力を無下にするような『女騎士など最初からいない方がいい』という発言には賛同できない。

 するわけにはいかない。

 

 たとえ誰がどう言おうと、俺はローエさん・カティアさん・フランベール先生を大切にするし、味方でいたい。

 

 それにクロイツァーさんは女性を弱者として見ているが、俺に言わせれば、みんな弱者に見える。

 

 過去に偉そうにしていた男の騎士たちも、所詮は父フォレッド頼りだったのなら女性と同じ弱者じゃないか。

 

 大きく溜め息を吐くと、いきなり視界が真っ暗になった。

 

「えっ!?」

「だ~れだ?」

 

 すぐに誰だか分かった。

 目を覆う柔らかいふにふにした手。

 心落ちつく優しい香り。

 そして癒しのある声。

 

「フランベール先生」

「うん正解」

 

 嬉しそうに言いながら、先生は俺の目から手を離した。

 俺は振り向くと、そこには月夜の光で美しさを増したフランベール先生が立っていた。

 

 ベージュの長髪が煌めいて、本当に美しい。

 美しいけど、彼女の顔は、どこか悲しみの色を含ませている。

 

「ボ~ッとして隙だらけだよゼクードくん」

 

「すみません。油断しちゃいました」

 

 あっさり背後を取られたのは事実なので、俺は苦笑して返した。

 

「まだ起きてたんですね」

 

「うん。ゼクードくんに会いたくて」

 

「え?」

 

 あ、もしかして『1年Aクラス』のことを……

 

「……あの、先生。クラスの事なんですが」

 

「ん、大丈夫。……もう知ってるから、大丈夫だよ」

 

 予想外の返事だった。

 まさか知っていたとは。

 

 誰から聞いたんだろう?

 グリータか?

 それとも自分で?

 

「先生……」

 

「酷いよね……みんな良い子だったのに、こんな結末……」

 

「……はい」

 

『1年Aクラス』の担任だったフランベール先生と、その生徒の一人だった俺には、あまりにも重い結末だった。

 

 少し前に大乱闘してバカをやっていたのが、やけに懐かしく感じてしまう。

 

 生徒たちの顔を思い出しているのか、フランベール先生は大粒の涙を溢す。

 

 俺はそんなフランベール先生を慰めようと抱き締めた。

 優しく頭を撫で、俺の胸で先生の涙を受け止めていく。

 

「ありがとうゼクードくん……こうして、泣きたかった……」

 

「いえ」

 

「わたし、家族はリリー姉さんだけ生き残って運が良いと思ってた。でも、クラスのみんなが、こんな……」

 

 リリー姉さんとやらが誰かは分からないが、家族の被害に関しては、先生にとってそれほど深刻じゃなかったようだ。

 

 でも自分の担任していたクラスが、ほぼ9割全滅し、生き残った生徒たちは俺とグリータのみ。

 ほか三人は武器も持てないほどの重体。

 それがよほど堪えたのだろう。

 

 先生と生徒。

 

 みんなが仲の良い、素晴らしいクラスであったことには変わりなかったのだから。

 

 悲しみに暮れる彼女を、俺はしばらく抱き締めていた。

 それから数分後……

 

「あの〜お二人さん? そろそろいいかしら?」

 

「ひゃあ!?」

 

 フランベール先生が驚き、俺から離れた。

 声を掛けてきたのはいつの間にか来ていたローエさんだった。

 彼女の後ろにはカティアさんもいる。

 

「びっくりしたぁ。ローエさんもカティアさんも起きてたんだね」

 

「ええ。どうにも眠れなくてゼクードに会いに来たんですけれど、先生に先を越されてましたわ」

 

 あ、ローエさんも俺に会いに来てたのか。

 嬉しい。

 

「ぁ、そうだったんだ。そんな気を使わなくてもいいのに」

 

 まったくだと思いつつ、俺はカティアさんを見る。

 

「カティアさんも起きてたんですね」

 

「ああ……私も、お前に会いたくてな」

 

 あ、カティアさんまで俺に。

 心の拠り所になるというのは、案外と嬉しいものだ。

 

「いろいろあって疲れたから、お前に慰めてもらおうと思って来たんだ。だが先生に先を越されてしまったな」

 

「ねぇ?」

 

 笑うカティアさんとローエさんにフランベール先生は顔を赤くする。

 

「だ、だから別に遠慮しないで出てくればいいのに。んもぅ……」

 

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