【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
ついに夜明けが来た。
何事もなく、夜明けを迎えることができた。
半壊した【謁見の間】に暖かい日光が差す。
結局、国王はただの数秒も眠ることはできなかった。
だが、それでもいいと思えた。
あとは昼までに人間をまとめ、ミスリル鉱山へ避難するだけ。
例の作戦も、使わないで済むのならその方が良い。
……いや、そうでもないか。
古い価値観の一掃という裏の目的も、例の作戦には込められている。
残酷なやり方だと分かっていても、国を変えるためには仕方のない事だと割り切るしかない。
何よりこれは、あの時に交わした、あの世代の男女の約束事でもある。
──そう思いながらも、結局は何事もなく事が進むことを望んでいる自分もいて難しい。
どうかこのまま、何事もなく──
「国王さま! 大変です!」
願う心を叩くように、王国騎士の声が耳朶を打った。
不安がよぎった。
もはやその声音で分かる。
最悪の予感がする。
やはり来たか。
ドラゴンどもめ。
「どうした!? ドラゴンに動きがあったか!」
「いえ、それが……偵察に出た部隊が未だに戻らないとのことです!」
完全に予想外の報告だった。
「なんだと!? 全部隊がか!?」
「はっ! 南西北東の全部隊が行方不明で帰還せず! ドラゴンにやられた可能性あり! とのことです!」
国王は悪寒を感じて、全身から汗が吹き出た。
ここ【エルガンディ王国】が包囲されている!
奴らは今、まさにこちらに接近してきている!
南・西・北・東の全偵察部隊が戻らないと言うことはつまりそう言うことになる。
逃げる時間を考慮して、かなりの広範囲を偵察させていたのが裏目に出た。
「くそ! 先手を打たれた!」
敵の先手を封じるために出していた偵察部隊なのに、それらがまさか全滅するとは。
予想外にもほどがある。
なぜだ?
なぜ馬に乗った偵察騎士隊がドラゴンを振り切れなかった?
馬より速いドラゴンがいるというのか?
そんなドラゴンなど、思い当たるのはあの青いS級ドラゴンとディザスタードラゴンくらいのはず。
青いS級ドラゴンはゼクードにより討伐された。
ならばやはりディザスタードラゴンか?
だがそれだと南・西・北・東の部隊が全滅したことに説明がつかない。
ディザスタードラゴンが4匹もいることになる。
……S級ドラゴンは、まだたくさんいるということか?
笑えない。
冗談ではない!!!
「全部隊に指示を出せ! 避難を強行する!」
国王は鬼気迫る怒声を張り上げた。
緊張感を高めた王国騎士は「はっ!」と敬礼し、すぐさま走り出した。
「鐘を鳴らせええええ!」
※
初めて四人で寝て、初めて迎える四人の夜明けは、鐘の轟音によって叩き起こされる形になった。
「か、鐘が鳴ってますわ! みんな起きて!」
ローエさんが飛び起きて、壁に立て掛けてあったマグナムハンマーを担いだ。
次いでフランベール先生もベッドから降りて大弓を装備する。
「もうドラゴンが来たみたいね!」
俺とカティアさんも遅れてベッドから降りると、すぐさま武器を装備した。
こんな時のために鎧は着たままだ。
すぐに出られる。
「隊長!」
カティアさんに呼ばれ、俺は頷く。
「行こう!」
俺は眠気の残る瞼を擦りながら家を出た。
カティアさんたちも後に続く。
城から鳴る鐘は、各領地の塔へ伝わり、その塔にある鐘を鳴らす。
鐘の番人のおかげで、俺たちはこうしてすぐに緊急を知り、動けるようになっている。
この仕組みは騎士や市民にとっては命綱とも言えるだろう。
街の石畳を蹴りながら俺は後続のフランベール先生たちに告げる。
「俺たちの任務はドラゴンを王国に近づけないことだ。市民の避難が完了するまで防衛戦を続ける!」
「了解!」
これはもともと国王さまに命令されていたものだ。
ミスリル鉱山は東にある。
そこへ避難する市民たちの護衛は他の王国騎士たちがやることになっている。
俺たちは現れたドラゴンを片っ端から片付けていく。
もし超大型ドラゴンとディザスタードラゴンが現れた場合は──そこだけは、国王さまは考えがあるとの一点張りで教えてくれなかった。
対策は考えてある。
【ドラゴンキラー隊】はただひたすらに王国に近づくドラゴンを倒してほしいとのこと。
あんな化け物相手に対策などあるのだろうか?
でも今は国王さまを信じるしかない。
信じて戦うだけのことだ。
あの国王さまなら信頼できるから。
「隊長! 超大型ドラゴンとディザスタードラゴンが現れた場合はどうする!」
走りながらカティアさんが聞いてきた。
「俺が相手をする。でも国王さまは対策があると言っていた」
「対策? 大丈夫なんですの!?」
「分からない。でもあの国王さまの考えることだ。信用できる。だから何があっても冷静に対処するんだ。いいな!」
「了解!」
三人の女騎士の返事を聞き、俺はゲートへ向かった。