【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第78話【竜の突撃】

 わああああああああああああああああ!

 

 俺はゲートへ向かう途中で、そんな市民たちの悲鳴を聞いた。

 唐突な避難の強行により、市民たちにパニックが起きているのだろう。

 

 いつドラゴンが来るか分からないと何度と念を押されているはずなのに、みな国王さまの避難時間を信じ過ぎていたのかもしれない。

 

 国王さまだって神様じゃないんだ。

 ドラゴンの襲撃がいつなのか完全に予想できるわけではないのに。

 

 幸先の不安を抱えつつも俺は部下を連れてゲートを目指した。

 

 そしてゲートである第一城壁にたどり着いた。

 登った先で俺たちは、少数だが味方の王国騎士たちを見つけた。

 

 みなバリスタや大砲などの配置についている。

 迎撃の準備はとうに出来ているようだった。

 

 その中でもひときわ大きい大砲があった。

 昇った太陽の光に照らされ、その白銀の砲身が煌めいている。

 

 あれはなんだ?

 見たことない大砲だけど。

 

「魔法大砲のリミッターは?」

 

「解除済みです! チャージも完了! いつでも撃てます!」

 

 魔法大砲!?

 あれが魔法大砲なのか!

 

 でも、なんで実物がここに?

 そんな数日で作れるものではないだろうに。

 

 その疑問に答えを欲したが、あるならあるで今は別にいいと割り切った。

 それこそ今はそれどころではないし。

 

「総司令官!」

 

 銀の鎧を装備した騎士。

 見覚えのあるその風貌に向かって俺はそう呼んだ。

 

「おお!【ドラゴンキラー隊】のみなさん!」

 

 銀騎士はこちらに振り返る。

 銀騎士こと総司令官が無事だったことを密かに安堵しながら俺は「敵の数は?」と切り出した。

 

「残念ながらまだ分かりません。ですが、事態は最悪な方に向いています。我々はどうにも、ドラゴンに包囲されているようです」

 

「え!?」

 

 俺は驚き、後ろのローエさんたちも同じ気配を見せる。

 

「偵察隊は何をしていたんだ!」

 

 カティアさんの問いに総司令官は露骨に顔を暗くした。

 

「おそらく……全滅しました」

 

 その一言で、周囲の空気が一気に淀んだ。

 

「全滅って……」

 

 信じがたい事実に俺はそれだけ絞り出す。

 配置についた他の騎士たちを見れば、彼らもすでにそのことを知らされているようで、顔に絶望の色が見てとれた。

 

「西南東北すべての部隊が帰還しませんでした」

 

「そんな……偵察隊はみな馬に乗っていなかったんですの?」

 

 ローエさんの問いに俺はハッとなった。

 

 そうだ。

 馬に乗っていればドラゴンの足に追い付かれることなんてないはず。

 追い付かれるとしたら……──まさか!

 

「いえ、偵察隊はみな例外なく騎馬隊です。彼らがドラゴンを振り切れず全滅したのはおそらく──」

 

「──S級ドラゴンが、四方にいるって、ことですか!?」

 

 俺と同じ結論に至ったらしいフランベール先生が青ざめた顔で言った。

 

「間違いないかと」と総司令官は告げる。

 

 嘘だろ……四方にいるってことは、最低でもあと4匹のS級ドラゴンがいるってことになる。

 

 すでに倒したのはずの青いドラゴン・黒竜・赤いドラゴンマン。

 まだ生き残っている超大型ドラゴン・ディザスタードラゴン。

 

 残っているS級は2匹のはずなのに、また4匹に増えたということなのか。

 なんてことなんだ。

 こっちは数が減る一方だってのに。

 

 国を放棄するという国王さまの決断はやはり間違ってはいなかったということか。

 

「ですので」と総司令官は続けた。

 

「S級騎士のみなさんはここではなく東の方へ移動してください。避難先のミスリル鉱山は東にあります。包囲された今となっては退路を確保することが優先でしょう」

 

 たしかに。

 どの方向にもS級ドラゴンが潜んでいるなら東を優先するのが当たり前だ。

 

 市民の避難さえ完了してしまえば、今回ばかりはこちらの勝ちとなる。

 討伐が目的ではないのだ。

 

「了解しました。でもみなさんは?」

 

「……。我々は、殿(しんがり)です。みなの避難が完了したら西と北の部隊と合流して東へ撤退します。ご安心を」

 

 殿か、なるほど。

 それだけ危険な任務なら、この部隊の顔触れも納得できる。

 若い騎士が一人もいない。

 

 総司令官がいるにも関わらず少数なのも、撤退のしやすさを考慮したものならば納得がいく。

 

「了解しました! どうかご武運を!」

 

 言って去ろうとした直後。

 

「ドラゴンを確認! 前方です!」

 

「なに!?」

 

 一気に場に緊張が走った。

 同時に地面が揺れ始める。

 

 前方を見ると確かに、遠くから一匹だけ影が見える。

 肉眼ではまだ影しか見えない距離だと言うのに地鳴りがしている。

 

 こいつは!

 

「こ、こっちに来る!」

 

 望遠鏡を覗いていた一人の騎士が畏怖に満ちた声を上げた。

 

「巨大なドラゴンがこっち向かっています! 凄い速度です!」

 

「なんだと!?」

 

 巨大なドラゴン……やはり超大型ドラゴンか!

 

 それにこの地鳴りペースの速さ……まさか奴は、走っているのか!?

 あの巨体で!?

 

 地鳴りが大きくなってきた。

 超大型ドラゴンの姿が肉眼でもハッキリ分かるようになるまでそう時間は掛からなかった。

 奴は四足歩行で疾走している。

 まっすぐこちらに向かって。

 

 スケール速度で考えればこの速度は当然なのだが、このままではゲートに突撃される。

 あんな巨体の体当たりを食らえば、いくらゲートでも耐えられない。

 

「あいつ走れたのか!」

 

 カティアさんが驚愕した。

 そして俺も同じ事を思っていた。

 

 走れたのか奴は。

 いやそもそも……なぜ走れないと思ったんだ俺は?

 

 巨体は鈍足なんて、決めつけによる盲点だった。

 くそっ!

 

「止められませんわ! みんな逃げて!」

 

 ローエさんが叫ぶが、総司令官は構わず。

 

「魔法大砲!」と叫び重ねた。

 

 魔法大砲に配置されていた騎士が「はっ!」と応え、突っ込んでくる超大型ドラゴンに砲身を合わせる。

 

「頭に一発お見舞いしてやれ!」

「了解! くらえ!」

 

 超大型ドラゴンはもう目前!

 騎士は魔法大砲のレバーを引いた。

 

 轟音を響かせ発射されたのは巨大な光の砲弾。

 直後に砲身が熱により溶解。

 曲線を描きながら飛ぶ砲弾は見事にドラゴンの頭部に着弾し、大爆発を起こした。

 

 一発で当てた!

 さすがベテランの騎士である。

 

 超大型ドラゴンは悲鳴のような雄叫びを上げた。

 俺たちにも反動で大爆発の衝撃波が襲う。

 

「ぐぅっ!」

「くっ!」

 

 みんな衝撃波に備えて踏ん張った。

 目を閉じているので超大型ドラゴンの様子は見えないが、地鳴りは止まっていた。

 

 やったか!?

 と、淡い期待をして目を開けた。

 

 そこには黒煙に包まれた超大型ドラゴンがいたが、その黒煙の向こうで奴の目がギラリと光った。

 

「まだ生きてる……っ!」

 

 全身が戦慄した。

 あの攻撃を頭部にくらってまだ生きてる。

 

 俺だけでなくローエさんたちや司令官たち、その場にいる全員が息を呑んだに違いない。

 

 黒煙が晴れて、ドラゴンの頭部が見えた。

 竜鱗を貫通し、脳を守る頭骨さえも砕いていた。

 奴の脳は剥き出しである。

 誰が見てもわかるような致命傷だ。

 人間なら、とっくに死んでいるだろう。

 

 なのに奴はまた、走り出した。

 その巨大さ故の生命力か、ドラゴンたる生命力か。

 奴は止まらなかった!

 

「ぜ、全員! 逃げろおおおお!」

 

 総司令官の怒声が響き、みなが城壁のゲート上から離れる。

 次いで超大型ドラゴンがゲートに激突した。

 

 爆音にも似た衝突音が轟く。

 城壁が激震し、俺を含めた全員がよろめいて倒れる。

 第一城壁のゲートは左右の城壁から崩れ落ち、一撃で破砕される形になった。

 

 容易くゲートを突破された。

 残りの第二城壁のゲートはまだ直っていない。

 ガラ空きだ。

 超大型ドラゴンは、もはやなんの障害もなく街に侵入できる。

 

「っ! みんな! 俺に続け!」

 

 俺は立ち上がって咄嗟に叫んでいた。

 その叫びに放心していたカティアたちがハッと意識を取り戻す。

 

 俺は離脱用のロープを握り、城壁を蹴って降りた。

 ローエ・カティア・フランベールも後に続く。

 地面に着地し、ロングブレードを握って走った。

 後続の三人も無事に着地し、疾走しながら各自武器を展開する。

 

 街へ進行を開始し始めた超大型ドラゴンに向かって、四人で加速していく!

 

「奴をこれ以上進行させるな! 全員で行くぞ!」

「了解!」

 

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