【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第82話【全てをぶつけろ!!!】

 

 第一城壁と第二城壁の間で暴れる超大型ドラゴンに、俺たち【ドラゴンキラー隊】と総司令の部隊は未だに苦戦していた。

 

 やつが暴れるごとに無意識に振り回される巨大な尻尾は二つの城壁をたやすく破壊し、街への侵入路を広くしていく。

 

 総司令の部隊もバリスタや大砲をことごとく城壁ごと破壊され、今や彼らの行える支援は一個の大砲と二台のバリスタのみとなっている。

 

 当の【ドラゴンキラー隊】は絶望的な戦況となっていた。

 俺の【竜斬り】でさえまともに通らない超大型ドラゴンの竜鱗。

 

 奴の火球を吸収して【カオス・エンチャント】し切れ味を強化した【竜斬り】でさえも通じなかった。

 

 そんな相手の鉄壁の装甲をローエ・カティア・フランベールが貫けるはずもなく、誰一人として決定打を与えられずにいる。

 

 おまけに凄まじい再生能力。

 先ほど切り落とした奴の指も、色こそまだ整っていないが回復している。

 

 どうしようもなく決定打を与えられない。

 

 だが、決定打を与えられないのは相手も同じ。

 超大型ドラゴンの攻撃はどれも大振りで遅く。

 ちゃんと動いていれば当たることはなかった。

 

 むしろ好き勝手に振り回す尻尾の方が動きが読めなくて脅威である。

 

 こっちは攻撃をバシバシ当てられるが、ダメージにならない。

 あっちは攻撃なぞ効かないが、俺たちを捕まえられない。

 

 まるで手応えのない進展のない戦いを強いられている。

 足止めは出来ているが、このままではマズイ。

 

 なにがマズイのか?

 単純に体力的な問題が先に来る。

 

 人間とドラゴンでは、やはり埋めようのない体力の差がある。

 

 この一匹にかなりの体力を消耗している。

 

 だと言うのに、破壊されたゲート越しにはA級ドラゴンの群れが見えているのだ。

 

 無数のA級ドラゴン。

 いつか見た血の海のよう。

 それは肉眼でも確認できるほどに近くなっている。

 

 包囲されているというのは総司令から聞いていたが、想像を遥かに凌駕する数だ。

 

 このまま接近され、超大型ドラゴンを残したままあんな大群と戦えば間違いなく死者が出る。

 

 人数だって足りてないこの状況では、街への侵入も防げない。

 このままでは、本当にまずい。

 

「総司令! ドラゴンの群れがもうすぐそこまで!」

 

「わかっている! ゼクード隊長! ここは我々が請け負います! あなた方は急いで東側の援護に向かってください!」

 

 怒声にも似た大声で総司令は言った。

 耳を疑ったが、たしかに総司令の判断は正しいのだろう。

 

 おそらく東側のルートでは王国騎士たちがA級ドラゴンの群れから避難民を守るため壁として応戦しているはず。

 S級ドラゴンもあの中に混じっているのなら、一刻も早く俺たちは向かわなければ被害は広がる。

 

 だけどここでこの超大型ドラゴンを残していったら、総司令の部隊はどうやって撤退するのか?

 

 いやそもそもの話、あれだけの人数と火器でどうやって超大型ドラゴンを足止めできる?

 

 俺は総司令に言い返した。

 

「総司令! それはまだできません! せめてこいつだけでも倒さないと!」

 

「同感だ」とカティアさんが俺の隣に着地してきた。

 そして続ける。

 

「こんなのが街中に入ってみろ。一瞬で街が無くなるぞ」

 

「し、しかし! ならば、どうすれば!?」

 

 総司令が焦りの声を発する。

 彼の焦りは痛いほど分かる。

 

 どうする!

 考えろ!

 やつを討伐するとなれば、やはり頭部への直接攻撃しかない。

 

 どの部位を攻撃しても瞬時に回復されるのなら、やつの脳を破壊して息の根を止めるしかない。

 

 だが、前の四人同時攻撃からの流れでは同じ失敗を繰り返すだろう。

 何より魔法大砲の抉り傷が完全に塞がってしまっている。

 さっきのようなアドバンテージはない。

 

 何がいる?

 簡単だ。

 やつの竜鱗と竜骨をたやすく貫通するだけの攻撃力がいる。

 

 どうすれば用意できる?

 また【ブラックホール】で味方の魔法を吸収し、武器に【カオス・エンチャント】をすれば──

 

 ──それはさっきやった。

 そしてダメだった。

 やつの火球をエンチャントしたロングブレードは、もうその効果を失い、纏っていた炎が刃から消えている。

 

 

 一つのエンチャントでは足りないと言うのならばエンチャントの【重ねがけ】はどうだろうか?

 

 闇魔法使いの間では禁じ手にされているエンチャントの【重ねがけ】。

 

 なぜ禁じ手か?

 それは二つ以上の魔法をエンチャントすると、武器がその強化に耐えられなくなり破砕するそうだ。

 

 それを知っていたから俺はまだ【重ねがけ】をやったことはない。

 この父の形見であるロングブレードを壊すわけにはいかなかったから。

 

 だけど今は……一か八か、やってみるしかない。

 誰かの武器を借りるという手もあるが、この場には俺以外でロングブレードを持っている騎士はいない。

 

 ロングブレードじゃないと俺は【竜斬り】ができない。

 攻撃力を落とすわけにはいかないのだ。

 

「親父……ごめん!」

 

 それだけ呟いて、ロングブレードを握り直した。

 そして叫ぶ。

 

「みんな! 俺に魔法を使ってくれ!」

 

「なに!?」

「魔法を!?」

 

 驚きを見せているのはカティアさんとフランベール先生だった。

 俺の【ブラックホール】が味方の魔法も吸収できることを知らない二人である。

 しかし理解しているローエさんはすぐに頷いてくれた。

 

「了解ですわゼクード!」

 

 言うと、超大型ドラゴンが俺たちをめがけて火球を撃ち込んでくる。

 それを避けて、地面に直撃した火球は大爆発した。

 爆風が押し寄せる中、カティアさんは踏ん張りながらローエさんを見る。

 

「くっ! 魔法って、なんの魔法だ! どうする気だ!?」

 

「いいからゼクードを信じて! 彼に向かって最高の魔法を撃つのですわ! いきますわよ!」

 

 有無を言わさずカティアさんを押し込めたローエさんは、右手に緑の光を発する。

 カティアさんとフランベール先生もそれぞれ構えて右手を光らせた。

 

「【アイスレイン】!」

「【プロミネンス】!」

「【シュトゥルム】!」

 

 火・氷・風のそれぞれ最強の魔法を唱え、それを俺に向けて放った。

 

「【ブラックホール】!」

 

 俺の右手から黒い渦が発せられ、飛来する三種の魔力を取り込んだ。

 あまりにも強大な三種の魔力は、吸収した俺の右腕をバチバチンとスパークさせ、痺れさせてくる。

 内側から爆発しそうな、そんな痛みさえも覚えた。

 

「ぐ……カ、【カオス・エンチャント】!」

 

 痛みを堪え、ロングブレードの刀身を撫でて魔力を送り込む。

 

 間もなくロングブレードが虹色の光を纏い、その刀身を大きく、そして長く強化した。

 その光の剣とも呼べる光刃はゼクードの身長を優に越える長さとなった。

 

 凄まじい魔力のほとばしりを感じる。

 なんでも斬れそうな迫力さえある。

 これなら!

 

【限界突破(オーバー)・竜(ドラゴン)斬り】

 

「うおおおおああああっ!」

 

 武器が壊れる前に決着をつける!

 その一心で俺は最後の攻撃に出た!

 

 まずは立てなくするため、両足を斬り落とす!

 

 一瞬で間合いを詰め、超大型ドラゴンの後ろ足を斬りつけた。

 めり込んだ光の刃は、それこそバターを斬るかの如く、やつの後ろ足を両断した。

 

 こんなに簡単に斬れた!

 これなら!

 

「おお!」

「き、斬れた!」

 

 カティアさんとローエさんが驚愕と歓喜の声を上げる。

 

 片足を失った超大型ドラゴンは悲鳴を上げながら倒れた。

 その期は逃すまいとは俺は頭部を目指して走る。

 途中、やつの片手が動き、態勢を立て直そうとしているのが見てとれた。

 

 そうはさせまいと、俺は斬撃を繰り出しその片腕さえも切り落とした。

 片手と片足を切断されれば、さすがのドラゴンももう起き上がれない。

 

 俺は加速した。

 この光の刃なら脳を貫ける!

 

 やつの甲殻を蹴って頭部へのぼり。

 

「とどけえええええええええええええっ!」

 

 勢いつけて光の刃を突き刺す。

 ドラゴンが激痛で頭を振った。

 

 落とされるか!

 もう逃がさない!

 ここで仕留める!

 

 ドシュッと突き刺さった光の刃は竜骨をも容易に貫通し、ついに脳まで刃が──

 

 バキイィン!

 

「なっ!?」

 

 脳まであと少しという所で、父の形見であるロングブレードが限界を越えた。

 わずか一分にも満たない数秒の強化。

 剣は、柄を残して刃だけ木っ端微塵に弾けとんだ。

 

 親父の、剣が……!

 

 長年ずっと使ってきた愛刀が、わかっていたとはいえ、跡形もなく弾け飛んだ。

 

 わかってはいたけと、こんなにすぐ壊れるなんて!

 あと少し、あと少しなのに!

 

「くっそぉおおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 父の形見を犠牲にしても仕留められなかった悔しさ。

 それが込み上がって、俺は腹の底から怒りをブチまけた。

 

「どけぇ! ゼクードォ!」

 

「!?」

 

 カティアさんが頭部へ飛び込んできた!

 

 大盾を捨て、両手でバスターランサーを握る。

 

「この期を逃すか! くらぇええええ!」

 

 カティアさんはありったけの力を振り絞り、バスターランサーを切り傷に突き刺した。

 例漏れずドラゴンが痛みで頭を暴れさせ、掴むものがない俺は振り落とされる。

 

 しかしカティアさんはバスターランサーを離さない!

 

「全火薬解放(フルバースト)だ! 脳ミソ弾けろおおおおおお!」

 

 叫んでトリガーを連続で引き、バスターランサーが大爆発を起こした。

 多段になった爆破が連続で炸裂し、バスターランサーがその威力に耐えきれず爆砕した。

 

「ぐああああっ!」

 

 爆砕したバスターランサーに吹き飛ばされ、カティアも超大型ドラゴンの頭部から落ちた。

 

 バスターランサーを犠牲にした連続爆破の攻撃は、ドラゴンの頭部の傷を大きく抉り広げた。

 もはや脳が剥き出しになるほど抉られた頭部の傷は、ドラゴンを激痛から逃がさず、ひたすら頭を振りまわさせる。

 

 痛がっているだけで、まだ生きている。

 あともう一押し!

 

「【アイス・ジャベリン】!」

 

 攻撃を繋げたのはフランベールだった!

 巨大な氷の槍を召喚し、大弓につがえる。

 

「当たれええええええええっ!」

 

 持てる力の全てを出し切るように、フランベールは氷の巨槍を撃ち放った!

 

 それは、予測不能なほど暴れるドラゴンの頭部に見事命中した。

 しかもゼクードとカティアの作った抉り傷に。

 

 露出した脳に直撃して突き刺さった氷の巨槍は、超大型ドラゴンに断末魔を上げさせた!

 

 それでもまだ浅いのか、ドラゴンが生き絶える様子がない。

 

「ローエさん! お願い!」

 

 フランベールが叫んだ!

 

「はあああああああああああああああああああああああ!」

 

 ローエが飛んだ!

 全身が痺れるほどの覇気を発し!

 渾身の力を込めてマグナムハンマーを握る!

 脳に突き刺さった【アイス・ジャベリン】に狙いを定め!

 

「ぃやああああああああああああああああああああああ!」

 

 打ち込んだ!

 

【アイス・ジャベリン】がドラゴンの脳に深く突き刺さり、そして貫通した!

 

 ドラゴンが悲鳴を上げ、頭部を天へとあおぐ。

 

 悲鳴を上げていたドラゴンの声が一気に枯れた。

 

 ついに!

 

 やっと!

 

 超大型ドラゴンは地に伏せた!

 

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