【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
過去ではたった一体で【アークルム王国】を火の海にし壊滅させたS級ドラゴンの『リザードマン』。
それが今や何十体と世界をうろつく。
そしてカティアたちの目前には六体ものリザードマンが現れた。
本来なら、勝ち目などない絶望的な状況なのだろう。
でもそれは過去の話。
六体中三体がすでにカティアたちの手によって瞬殺された。
カティア・ローエ・フランベールの三人はSS級騎士。
夫であり隊長でもあるゼクードのSSS級には及ばないものの、その実力はすでに過去のゼクードさえも凌駕している。
妊娠による未修行期間(ブランク)さえなければ、SSS級に達していたと言われているほどだ。
「【ドラゴンスティンガー】!」
カティアが踏み台にしているリザードマンから飛び、その技を叫んだ。
技名こそ自分で付けたものだが、これはゼクードから教わった【竜突き】をさらに強化したもの。
カティアの【バスターランサー】に代わる新たなるトリガーウェポン。
オリハルコン製の銃槍【クリムゾングレイス】がリザードマンの喉元に突き刺さった。
竜鱗と竜骨さえ今では簡単に貫通させるカティアの攻撃力。
そして【クリムゾングレイス】の斬れ味。
そしてトリガーウェポンならではの爆破トリガー。
カチンと引き金を引くと、爆破の威力さえ強化されたそれはリザードマンを内側から爆発させ肉片を弾かせた。
残りは二体。
そいつらはカティアが手を下すまでもなく、ローエとフランベールがすでに攻撃に向かっていた。
「【ドラゴンインパクト】!」
叫んだローエも、妹リーネから提供された新武器【ヴェルデリボルバー】に『気』を練り込ませて振り抜いた。
リザードマンの顔面を見事に捉えたフルスイング。
殴ったと同時に引き金をひき爆砕する。
「【ドラゴンストライク】!」
フランベールの声が弾け、ほぼ同時に『気』を纏ったアイスアローが新大弓【ブルーブランド】によって放たれた。
かなりの長距離だと言うのに放たれたアイスアローの威力は真っ直ぐと衰えない。
フランベール自身の技量も相まってリザードマンの脳天を一発でぶち抜いた。
開戦から数分。
六体のリザードマンは全滅した。
二年前は脅威的な強さを誇っていたリザードマンも、今のカティアたちの敵ではなかった。
「まったく。子供がお昼寝してる時に来るのだけはやめてほしいよね」
フランベールの愚痴に「夜も勘弁ですわ」とローエが答える。
みんな育児に苦労している母親だから、その辺の事情は理解し合っていた。
だから端で聞いていたカティアも「そうだな」と笑って同意できた。
すると草でカモフラージュされた地下への入口がガチャリと開き、リーネが顔を出してきた。
しかも慌てた様子で。
「みなさん大変です!」
嫌な予感がする。
カティアは直感的にそう思った。
おそらくローエとフランベールも。
「赤ちゃんが泣き出しました!」
「あ~……」
三人の母親女騎士たちは揃って顔を片手で覆った。
※
「たっだいまああああ! 今行くぞ子供たちぃいいいい!」
鉱山【ヨコアナ】に無事帰還したゼクードは子供がいる部屋へいきなり向かって行く。
足場の悪い洞窟内だと言うのに凄まじいスピードだ。
「おいゼクード! 国王さまに報告!」
「頼んだグリータ!」
「ふざけんなテメェ! 仕事しろ!」
しかしゼクードは行ってしまった。
どんだけ子供好きなんだあいつ。
「義兄さまったら、子供が産まれてから夢中だね」
レィナが微笑ましく言う。
ゼクードがあの三人の女騎士を妊娠させていたのは、当時みんなを驚かせた。
国王に戦力的な意味でお叱りを受けたゼクードだったが、それでもなんだかんだ国王や市民は彼らを祝福した。
子供が産まれるのはめでたいことなのだから。
これだけ人口が減った今ならとくに。
それにあの精鋭の中の精鋭ゼクードの子供だ。
さらにはあの強い三人の女騎士たちの血も引いている。
将来的にも期待できるのは間違いないと、国王さまも目を瞑ったのだろう。
「可愛くてしょうがないんだろう」
笑って言ったのはガイスだった。
そう言えば彼も。
「そう言えばガイスさんももうすぐ産まれるんでしたっけ?」
思い出しを口にしたグリータは、ガイスの嫁の名を思い出した。
たしかリリーベールさん……だったかな?
フランベール先生の姉の。
「ああ。もうすぐらしい」
「やっぱり楽しみにですか?」
レィナの問いにガイスは珍しく照れて頬を掻いた。
「そ、そうだな。存外、心が踊っているよ。だからゼクード隊長の気持ちも、分からなくはないんだ」
「なるほど」
グリータは頷く。
「じゃ、ガイスさんも早くリリーベールさんとこ行ってあげなよ。国王さまへの報告はオレとレィナでやりますから」
「ありがとうグリータくん。感謝する」
「いえいえ」
そしてガイスをも見送り、レィナと二人っきりになった。
もう仕事らしい仕事は報告だけだから、むしろ自分だけでもいいレベルだ。
「最近なんか子供ラッシュだね」
それとなくレィナが言ってきた。
「そうだな」とグリータは返す。
「グリータは欲しくないの?」
「なにが?」
「子供」
「あ〜……まぁ、欲しいけど、ほら、産んでくれる相手がいねぇだろ?」
彼女いない歴=年齢のグリータには、そう答えるしかなく、肩をすくめた。
すると何故かレィナの顔が一気に不機嫌なそれになる。
「鈍感」
「へ?」
「少しは義兄さまを見習ったら?」
「ゼクードを!? なんで?」
「知らない!」
不機嫌な声でそう言ってレィナは別のルートを歩き出す。
「おいどこ行くんだよ。報告は?」
「行ってらっしゃい。アタシはリーネのとこ行ってくるから」
「はぁ!?」
しかし止める間もなく行ってしまった。
まぁ、報告なんて一人でも十分だけど。
ぽつんと一人になってしまったグリータ。
なんか寂しい。
なんでレィナはあの手の話になるとああも不機嫌になるんだ?
いっつもだ。
なんだろ……もしかして本当にレィナはオレのこと。
何度かその思考に至ることはあった。
でも。
「いや、ないな……」
モテたことがないグリータには、そこまで自惚れられる自信はなかった。
※
「ただいまぁ~グロリア! いい子にしてたかぁ~?」
フォルス一家に与えられた洞窟内の大きな空間で、ゼクードは我が子の生肌を堪能していた。
ローエとゼクードの娘【グロリア・フォルス】。
母親に似てエメラルドグリーンの瞳が美しくも可愛い。
抱っこしながらプニプニのほっぺにキスをする。
すると普通に嫌がられた。
ショック。
「おしおしただいまレミーベール。お父さんだぞ~」
娘グロリアをローエに引き渡し、今度はフランベールとゼクードの娘【レミーベール・フォルス】を抱いた。
この子はお父さん好きなのか、すぐにゼクードに笑顔を見せてくれる。
キスしても嫌がらない。
そこは母親に似ているとも言えるかも。
ゼクードはレミーベールの尊さを堪能してからフランベールに返し、ついに一番の問題児であるフォルス家の長男と対面する。
「ただいまカーティス。お父さんだぞ~?」
「……」
無反応。
カティアとゼクードの間に産まれたフォルス家唯一の男の子【カーティス・フォルス】だ。
「いい子にしてたか~? ん~?」
「……」
無反応。
キスしても無反応。
嫌がりもしなければ怒りもしない。
笑いもしなければ泣きもしない。
「……」
「……」
息子とじっと見つめ合う。
ゼクードとそっくりなパープルの瞳がカッコいいのだが、なにせ愛想がない。
ゼクードは仕方なくカティアにカーティスを返した。
そしたらキャッキャッとカーティスは嬉しそうにカティアに笑顔を見せ出した。
ゼクードはすぐさまカーティスを受け取り、また顔を覗き込む。
「カーティス?」
「……」
また無表情に戻っていた。
いつもこうである。
こいつは母親好きらしく、かと思えばローエやフランベール。レィナやリーネにも笑顔を見せる。
でもゼクードやグリータ。
ガイスらなどの男には決して笑顔を見せない。
「カーティスお前……誰に似たんだ?」
「いや、お前だろう」
冷静にカティアが言った。