【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第91話【カエルの子はカエル?】

 過去ではたった一体で【アークルム王国】を火の海にし壊滅させたS級ドラゴンの『リザードマン』。

 

 それが今や何十体と世界をうろつく。

 

 そしてカティアたちの目前には六体ものリザードマンが現れた。

 本来なら、勝ち目などない絶望的な状況なのだろう。

 

 でもそれは過去の話。

 

 六体中三体がすでにカティアたちの手によって瞬殺された。

 

 カティア・ローエ・フランベールの三人はSS級騎士。

 夫であり隊長でもあるゼクードのSSS級には及ばないものの、その実力はすでに過去のゼクードさえも凌駕している。

 

 妊娠による未修行期間(ブランク)さえなければ、SSS級に達していたと言われているほどだ。

 

「【ドラゴンスティンガー】!」

 

 カティアが踏み台にしているリザードマンから飛び、その技を叫んだ。

 

 技名こそ自分で付けたものだが、これはゼクードから教わった【竜突き】をさらに強化したもの。

 

 カティアの【バスターランサー】に代わる新たなるトリガーウェポン。

 オリハルコン製の銃槍【クリムゾングレイス】がリザードマンの喉元に突き刺さった。

 

 竜鱗と竜骨さえ今では簡単に貫通させるカティアの攻撃力。

 そして【クリムゾングレイス】の斬れ味。

 そしてトリガーウェポンならではの爆破トリガー。

 

 カチンと引き金を引くと、爆破の威力さえ強化されたそれはリザードマンを内側から爆発させ肉片を弾かせた。

 

 残りは二体。

 そいつらはカティアが手を下すまでもなく、ローエとフランベールがすでに攻撃に向かっていた。

 

「【ドラゴンインパクト】!」

 

 叫んだローエも、妹リーネから提供された新武器【ヴェルデリボルバー】に『気』を練り込ませて振り抜いた。

 リザードマンの顔面を見事に捉えたフルスイング。

 殴ったと同時に引き金をひき爆砕する。

 

「【ドラゴンストライク】!」

 

 フランベールの声が弾け、ほぼ同時に『気』を纏ったアイスアローが新大弓【ブルーブランド】によって放たれた。

 かなりの長距離だと言うのに放たれたアイスアローの威力は真っ直ぐと衰えない。

 

 フランベール自身の技量も相まってリザードマンの脳天を一発でぶち抜いた。

 

 開戦から数分。

 六体のリザードマンは全滅した。

 二年前は脅威的な強さを誇っていたリザードマンも、今のカティアたちの敵ではなかった。

 

「まったく。子供がお昼寝してる時に来るのだけはやめてほしいよね」

 

 フランベールの愚痴に「夜も勘弁ですわ」とローエが答える。

 

 みんな育児に苦労している母親だから、その辺の事情は理解し合っていた。

 だから端で聞いていたカティアも「そうだな」と笑って同意できた。

 

 すると草でカモフラージュされた地下への入口がガチャリと開き、リーネが顔を出してきた。

 しかも慌てた様子で。

 

「みなさん大変です!」

 

 嫌な予感がする。

 カティアは直感的にそう思った。

 おそらくローエとフランベールも。

 

「赤ちゃんが泣き出しました!」

 

「あ~……」

 

 三人の母親女騎士たちは揃って顔を片手で覆った。

 

 

「たっだいまああああ! 今行くぞ子供たちぃいいいい!」

 

 鉱山【ヨコアナ】に無事帰還したゼクードは子供がいる部屋へいきなり向かって行く。

 足場の悪い洞窟内だと言うのに凄まじいスピードだ。

 

「おいゼクード! 国王さまに報告!」

 

「頼んだグリータ!」

 

「ふざけんなテメェ! 仕事しろ!」

 

 しかしゼクードは行ってしまった。

 どんだけ子供好きなんだあいつ。

 

「義兄さまったら、子供が産まれてから夢中だね」  

 

 レィナが微笑ましく言う。

 ゼクードがあの三人の女騎士を妊娠させていたのは、当時みんなを驚かせた。

 

 国王に戦力的な意味でお叱りを受けたゼクードだったが、それでもなんだかんだ国王や市民は彼らを祝福した。

 

 子供が産まれるのはめでたいことなのだから。

 

 これだけ人口が減った今ならとくに。

 

 それにあの精鋭の中の精鋭ゼクードの子供だ。

 さらにはあの強い三人の女騎士たちの血も引いている。

 

 将来的にも期待できるのは間違いないと、国王さまも目を瞑ったのだろう。

 

「可愛くてしょうがないんだろう」

 

 笑って言ったのはガイスだった。

 そう言えば彼も。

 

「そう言えばガイスさんももうすぐ産まれるんでしたっけ?」

 

 思い出しを口にしたグリータは、ガイスの嫁の名を思い出した。

 たしかリリーベールさん……だったかな? 

 フランベール先生の姉の。

 

「ああ。もうすぐらしい」

 

「やっぱり楽しみにですか?」

 

 レィナの問いにガイスは珍しく照れて頬を掻いた。

 

「そ、そうだな。存外、心が踊っているよ。だからゼクード隊長の気持ちも、分からなくはないんだ」

 

「なるほど」

 

 グリータは頷く。

 

「じゃ、ガイスさんも早くリリーベールさんとこ行ってあげなよ。国王さまへの報告はオレとレィナでやりますから」

 

「ありがとうグリータくん。感謝する」

 

「いえいえ」

 

 そしてガイスをも見送り、レィナと二人っきりになった。

 もう仕事らしい仕事は報告だけだから、むしろ自分だけでもいいレベルだ。

 

「最近なんか子供ラッシュだね」

 

 それとなくレィナが言ってきた。

 

「そうだな」とグリータは返す。

 

「グリータは欲しくないの?」

 

「なにが?」

 

「子供」

 

「あ〜……まぁ、欲しいけど、ほら、産んでくれる相手がいねぇだろ?」

 

 彼女いない歴=年齢のグリータには、そう答えるしかなく、肩をすくめた。

 すると何故かレィナの顔が一気に不機嫌なそれになる。

 

「鈍感」

 

「へ?」

 

「少しは義兄さまを見習ったら?」

 

「ゼクードを!? なんで?」

 

「知らない!」

 

 不機嫌な声でそう言ってレィナは別のルートを歩き出す。

 

「おいどこ行くんだよ。報告は?」

 

「行ってらっしゃい。アタシはリーネのとこ行ってくるから」

 

「はぁ!?」

 

 しかし止める間もなく行ってしまった。

 まぁ、報告なんて一人でも十分だけど。

 

 ぽつんと一人になってしまったグリータ。

 なんか寂しい。

 

 なんでレィナはあの手の話になるとああも不機嫌になるんだ?

 いっつもだ。

 

 なんだろ……もしかして本当にレィナはオレのこと。

 何度かその思考に至ることはあった。

 でも。

 

「いや、ないな……」

 

 モテたことがないグリータには、そこまで自惚れられる自信はなかった。

 

 

「ただいまぁ~グロリア! いい子にしてたかぁ~?」

 

 フォルス一家に与えられた洞窟内の大きな空間で、ゼクードは我が子の生肌を堪能していた。

 

 ローエとゼクードの娘【グロリア・フォルス】。

 母親に似てエメラルドグリーンの瞳が美しくも可愛い。

 抱っこしながらプニプニのほっぺにキスをする。

 

 すると普通に嫌がられた。

 ショック。

 

「おしおしただいまレミーベール。お父さんだぞ~」

 

 娘グロリアをローエに引き渡し、今度はフランベールとゼクードの娘【レミーベール・フォルス】を抱いた。

 この子はお父さん好きなのか、すぐにゼクードに笑顔を見せてくれる。

 キスしても嫌がらない。

 そこは母親に似ているとも言えるかも。

 

 ゼクードはレミーベールの尊さを堪能してからフランベールに返し、ついに一番の問題児であるフォルス家の長男と対面する。

 

「ただいまカーティス。お父さんだぞ~?」

「……」

 

 無反応。

 カティアとゼクードの間に産まれたフォルス家唯一の男の子【カーティス・フォルス】だ。

 

「いい子にしてたか~? ん~?」

「……」

 

 無反応。

 キスしても無反応。

 嫌がりもしなければ怒りもしない。

 笑いもしなければ泣きもしない。

 

「……」

「……」

 

 息子とじっと見つめ合う。

 ゼクードとそっくりなパープルの瞳がカッコいいのだが、なにせ愛想がない。

 

 ゼクードは仕方なくカティアにカーティスを返した。

 そしたらキャッキャッとカーティスは嬉しそうにカティアに笑顔を見せ出した。

 

 ゼクードはすぐさまカーティスを受け取り、また顔を覗き込む。

 

「カーティス?」

「……」

 

 また無表情に戻っていた。

 いつもこうである。

 こいつは母親好きらしく、かと思えばローエやフランベール。レィナやリーネにも笑顔を見せる。

 

 でもゼクードやグリータ。

 ガイスらなどの男には決して笑顔を見せない。

 

「カーティスお前……誰に似たんだ?」

 

「いや、お前だろう」

 

 冷静にカティアが言った。

 

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