遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
入団テストだ。と叫んだサルガスは何故か意味深に笑った後、部屋から出て行ってしまった。
そんなサルガスの行動に、アルバスとエクレシアは戸惑った様な声を上げたが、何ならキットや《スプリガンズ》の者達すらも困惑していた。
そして、何故か部屋を出て行ったサルガス自身も部屋を出て少し歩いてから、何故自分は出て行ったのだろうかと首を傾げ、追ってきたキットの声に振り返るのだった。
「キャプテン。何で出て行っちゃったの?」
「いや、何となくノリでな」
「もー。しょうがないなぁ。それで? キャプテン。エクレシアたちの入団試験はどうするの?」
「そうだな。……よし。なら大穴チャレンジをしよう」
「時間は?」
「……一番小さい砂時計だ」
少しの間考えてから呟くように言われたサルガスの言葉にキットは耳をピンと立てながら飛び跳ねる。
「一番小さな砂時計!? そんなの誰も出来ないよ!」
「出来なきゃ入団は認められないな」
「なに? キャプテンはあの子達の事嫌いなの?」
キットがやや責める様な言葉でサルガスを見上げながらそう訴えたが、サルガスはそんなキットを見てニヤリと笑う。
「逆だ。キット」
「ぎゃく?」
「そう。逆だ。あの人間。アルバスが面白い目をしていたからな。面白い事が起きる気がするんだよ」
「面白い事かぁ」
「あぁ。だからキットもアイツらに協力してやってくれ」
サルガスはそう言うと、手を振ってそのまま去って行った。
キットはそんなサルガスを不思議そうな顔で見ていたが、すぐにサルガスのいう面白さを自分も感じる為にアルバス達の下へ戻るのだった。
キットがアルバス達が居る部屋に戻って入団試験の内容を伝えると、《スプリガンズ》の者たちは楽しそうに部屋の中を飛び跳ね、飛び回り、そのまま部屋から飛び出していった。
「ど、どうしたんでしょうか」
「あぁ、いつもの事だよ。楽しい事をやる時はいつもあんな感じなの」
ケラケラと楽しそうに笑うキットは、笑いながらエクレシアとアルバスの縄をほどいて入団試験の内容を伝える為にエクレシアの手とアルバスの服を掴んだまま部屋の外へ、スプリガンズ・シップ エクスブロウラーの外へと飛び出していった。
そして、エクスブロウラーのすぐ近くにある岩山を勢いよく登りながら二人の入団試験の内容を伝える。
「大穴チャレンジって言うのはね! ほら! あそこに大穴が見えるでしょ!?」
キットは大声で叫びながら走るが、エクレシアはバタバタと走るキットに付いていくのに精一杯であるし、アルバスも服の襟を引っ張られている為、視界など後方にしか開かれていない。
結果、二人には何も届いていないのだが、キットは実に楽しそうにその大穴チャレンジについて語るのだった。
「それでね!? その大穴チャレンジって言うのはさ! この岩山からあの大穴に向かうんだ。それで、辿り着けたら合格!」
「な、なるほどです!」
「でもね、当然ルールがあって、それは時間制限なんだ! 最初に決められた時間以上の時間が掛かったら駄目! 不合格なの! ね!? 難しいでしょ!?」
「そう! ですね!!」
「アハハ! そうだよね! しかも、今回は時間も全然ないんだよ! 一番小さな砂時計だからさ! 日が沈み始めて、完全に沈むまでって感じかな!」
ケラケラと笑いながら、なおも走り続けるキットの横では、入団試験を受ける必要はないのに、今までで一番難しいという言葉を聞いた《スプリガンズ》たちが楽し気に、気合を入れている。
「なぁ、フェリジット妹」
「キット!
「あぁ、キット。それで……あいつ等は何をやってるんだ?」
「アイツら? あぁ、ロッキーくん達? みんな入団試験を受けるんだよ」
「そうなのか?」
「うん。だって、今回の試験はとーっても難しいからね。それを聞いて楽しそうって思ったみたい」
「そうなのか」
アルバスはキットに引っ張られるまま関心した様に《スプリガンズ》たちを見つめ、微かに笑った。
「……楽しそう、か」
「アルバス君も楽しそうですね」
「っ! そう、見えるか?」
「はい!」
エクレシアはキットに手を引っ張られたままアルバスを見て楽しそうに笑う。
そんなエクレシアの言葉と、笑顔にアルバスもまた自分が笑っていると理解して空を見上げるのだった。
キットに引っ張られ、岩山の頂上に来たアルバスとエクレシアはキットと共に遥か下方に見える大穴を見た。
それは地上にあるが、かつてドラグマの上空に見えた物にも良く似ている様に見える。
「……あれは、ホールでしょうか」
「うん。そうだよ。砂漠に生きる《スプリガンズ》たちは、この砂漠で生きていく為に、ホールから出てきた物を拾って、改造してるんだよ」
「そうなんですね……私の生きていた国でもそうでした」
「そうなんだ! まぁ、みんなそうだよね」
「やっぱり……神様はこの世界に生きる全ての人を助けようとしているのですね」
エクレシアはキットの言葉に両手を握り、ホールに祈りを捧げた。
しかし、そんなエクレシアの姿はキットにとって不思議な物に映るらしく、岩の上に座り、両手を頭の裏で組みながら隣に座っているアルバスを見て、小声で話しかける。
「ねぇ、ねぇ」
「……なんだ?」
「カミサマ。って何?」
「なんだろうな。俺にも分からない……でも、きっとそれはエクレシアの大事なモノなんだ」
「そっか」
キットはアルバスの言葉を聞き、エクレシアを一度見てから再びアルバスへと視線を戻した。
そして、クスっと笑って、口を開いた。
「アルバスは優しいんだね」
「そうか?」
「うん。そうだよ。だってアルバスはエクレシアの大事な物を大事にしたいんでしょ?」
「あぁ……そうだな」
アルバスはこちらの声も聞こえない程、熱心に祈っているエクレシアを見て、静かに目を閉じながら笑った。
その表情を見て、キットは耳をピンと立たせつつ、器用にも岩の上で左右に揺れながらニヒヒと笑う。
「何笑ってるんだ」
「いやいや。だってさ。気づいちゃったから」
「気づいた?」
「ニヒヒ。アルバスはエクレシアが好きなんだ」
「あぁ、まぁ……そうだな」
「あり?」
キットは岩の上で意外そうな顔をしながら、特に照れている訳でもないアルバスを観察する。
しかし、どれだけ見つめてもアルバスは平静なままだった。
「なぁーんだ。シュライグと同じかぁ」
「どういう意味だ?」
「からかい甲斐がないってコト!!」
「そうか」
アルバスは憤慨するキットにフッと笑うと、まだ祈っているエクレシアへと視線を映した。
照れる事など何も無いのだという様に。
キットはそんなアルバスを見て、へッと笑った後、自分も同じ様にエクレシアへと視線を向けた。
そう。彼女も気になったのだ。いつか義兄になるであろうシュライグと同じ目をした少年アルバスが、想いを寄せる少女がどんな少女なのかが。
「……」
「……」
「……」
そして、全員が静かに思い思いの時間を過ごしているその時、不意に誰かのお腹が空腹を知らせる様に、周辺に響き渡った。
その余りにも大きな音にキットはややビックリしながらアルバスを見るが、平然としており、自分では無いと訴えている様でもあった。
しかし、アルバス以外にはあり得ないと思っているキットはアルバスに声を掛けようとしたが、そんなキットの声を遮ったのは誰でもないエクレシアであった。
「も、申し訳ございません。お恥ずかしいところを」
「へ?」
「そろそろ良い時間だからな。飯を食べに行くか」
「はぃ。そうですね……」
「へ? へ?」
「何をしてる。キット。降りるぞ。飯を食う場所を教えてくれ」
「えぇー!?」
岩山ではキットの大声が響き渡り、その大声に《スプリガンズ》たちは驚き、またその後の食事でご飯をいっぱい食べるタイプのエクレシアを見て、更に驚きの声を上げるのだった。