遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
夕食を食べ終えたエクレシアは、やや離れた場所で遠くにあるホールをジッと見つめているアルバスの傍に行くと、その隣に座ってアルバスに寄りかかった。
「アルバス君」
「……どうした? エクレシア」
「あの、ですね……実は」
「実は?」
何やら重い空気を出しながら何かを必死に告げようとしているエクレシアにアルバスは顔に疑問を浮かべながら、エクレシアの言葉に耳を傾けた。
そして、そんなアルバスにエクレシアは意を決したように、砂漠へ降りる際に知ってしまった事実を伝える。
「私、聖痕の力が無くなってしまったんです……!」
目をキュッと閉じながら、告げられたエクレシアの言葉にアルバスは小さく安心したように息を吐くと、エクレシアの手を握った。
「分かった。なら、俺がもっとしっかりエクレシアを守らないと駄目だって事だよな」
「ちが、違うんです!」
「違う?」
「そうではなくて……! 私も、アルバス君の力になりたいんです。でも、聖痕の力が無くなってしまったら、私、どうすれば良いか分からなくて」
「なんだ、そんな事か……」
「なら! 新しい力を手に入れれば良いんだよ! エクレシア!」
「キットちゃん……?」
アルバスがエクレシアを慰める為の言葉を言おうとした瞬間、二人の話を聞いていたキットが後ろから叫びつつ割り込んだ。
そして、エクレシアの隣に座ると、エクレシアを挟んだ向こう側に居るアルバスにも笑いかける。
「ね? アルバスもそう思うでしょ?」
「……あぁ」
アルバスとしては、正直エクレシアに無理をして欲しくないという想いがある為、別に新しい力など得なくても良いと思っているのだが、キットの提案でさっきまで暗かったエクレシアの顔が明るくなるのを見れば、否とは言えない。
というワケでキットの提案を受け入れて、アルバスとエクレシアはキットの工作室へと向かうのだった。
キットは工作室で色々な道具をエクレシアに見せながら、いかに入団試験が難しいかを語る。
「ホールまでの距離を考えると、普通に歩いても結構な時間が掛かっちゃうよ。見えててもね。しかも砂漠を歩くってなったら、半日くらいは掛かるんじゃないかな」
「な、なるほど」
「だから、時間までに辿り着く為には……」
「空を飛ぶ必要がある」
「ご名答!」
キットの問いかけにアルバスが応え、キットは嬉しそうにアルバスを指さした。
そして、空を飛ぶ為にはどういう方法が良いかといくつかの道具を示しながら語る。
しかし。
「多分これじゃあ途中で落ちる」
アルバスはキットが示した道具を見て、淡々とそう言い放つのだった。
どこか冷たさを感じる様な言葉であったが、キットはそんなアルバスに嫌な顔一つせずニヤリと笑った。
「ふ、ふふふ」
「キットちゃん?」
怪しく笑い始めたキットにエクレシアは怯えた様な声を上げたが、キットは何も気にせず、そのまま腰に手を当て背を逸らしながら笑うのだった。
そしてひとしきり笑うと二人に付いてくる様に言って、スプリガンズ・シップ エクスブロウラーの内部にある大型格納庫へと向かい、ソレをアルバスとエクレシアに見せる。
「二人はドラゴンって見た事あるかな!? 私は一度だけあってさ。リズねえちゃんと森で隠れて生活してた時に、見たんだ」
キットはその巨大な機械の塊を撫でながら遠い昔を思い出す様な目で語り続けた。
「空を飛ぶ巨大な姿は鳥とも似てなくてね。飛びながら羽ばたくだけで、近くの木々が飛んでいきそうなくらい揺れてたんだ。私たちも危なかったけど、その時に助けてくれたのがシュライグで、アレがドラゴンっていう生き物だって教えてくれたのも、シュライグなの」
キットは穏やかな微笑みを浮かべたままアルバスとエクレシアを見つめる。
「ねぇ。アルバス。それにエクレシア。二人は不思議な力を持ってるんでしょ? なら、この子を動かせるんじゃないの?」
「……ちょっと見ても良いか?」
「モチロン!」
キットはアルバスに操縦席を示すと、アルバスは案内されるままそこに座り、巨大な機械を動かす為の操縦桿を触る。
そして、いくつか計器を触ってから一つの結論を出した。
「このままじゃ動かないな」
「どこか壊れてるってコト?」
「違う。燃料が無いんだ」
「ネンリョー」
「この機械を動かす為の力、なんだが……いや、エクレシア!」
「は、はい!」
アルバスとキットの話を聞き流しながら機械を触り、その冷たく固い感触を楽しんでいたエクレシアは不意に名前を呼ばれ、飛び跳ねながら返事をする。
そして、アルバスの後ろにある副操縦席に座る様にと言われ、そこに座るのだった。
「エクレシア。俺はお前が居た国で、一度お前に力を借りている」
「……そう、なのですか?」
「あぁ。その力は俺の中にある竜化の力を強くした。だから、エクレシア。もう一度その力を貸してくれ」
「……」
エクレシアはアルバスの言葉に目を丸くして、自分の手のひらを見つめた。
そして、両手をキュッと握りしめて、アルバスへと再び視線を向ける。
「もし、私にその様な力があるのならば、是非。やらせてください」
「……決まりだ」
エクレシアの言葉にアルバスは笑って頷き、キットは良く分からないまま、サルガスの言っていた「面白い事が起きる気がする」という言葉を思い出して、くぅーッと両手を伸ばし、二人の肩を叩きながら笑うのだった。
キットがアルバスに渾身の発明品を託してから数日。
遂に入団試験の日が訪れた。
が、アルバス達は既に《スプリガンズ》の面々と長い時間を過ごしており、試験がなくとも仲間と認識されている。
しかし、それでもキャプテンであるサルガスが入団試験を設定した以上は、それを乗り越えるまでは仲間では無いのだ。
「……」
「っ、アルバス君」
「大丈夫だ。エクレシア。キットの発明と、俺の腕、そしてエクレシア自身の力を信じろ」
アルバスの言葉に不安そうな顔をしていたエクレシアは、自分の頬を叩いて気合を入れると、託されたキットの魂に乗り込む。
「ふふ。気合十分と言ったところだな。お前らもどうだー! アルバスやエクレシアに負けんなよ!」
「当然だぜ! キャプテン!」
「優勝は俺達ダー!」
「飛ぶぜ飛ぶぜぇー!」
サルガスの声に応えた【スプリガンズ・ブラザーズ】はロッキーやピードたちの色違いの体で、飛び跳ねながら、バンガーの色違いである兄弟の背に乗る。
そして、いつでも飛べるのだと、バンガーの様に足元で火花を散らし、炎を吹き出せる様に準備するのだった。
「キット! 砂時計の準備はどうだー!」
「オッケーだよ。キャプテン!」
「よっし、ならみんな! 準備は良いな!」
サルガスの合図で、キットは巨大な砂時計の軸に取り付けられた取っ手を握り、それを回す。
それから砂時計が丁度平行になった所で止めると、サルガスへ視線を送るのだった。
「よーい、スタート!!」
そして、キットはサルガスの合図を聞いて砂時計を完全に反転させて、即座に飛んでいくキットの魂であり、アルバスとエクレシアとの友情の証である【
「いっけー! スプリンドー!」
キットの声に応えたスプリンドは、【スプリガンズ・メリーメイカー】から飛び出したミサイル型の《スプリガンズ》たちが砂漠に落ちながら爆発し、空中でも爆発しているのを避けながら空を切ってホールへと飛んでいく。
「ホールが見えた! エクレシア!」
「はい! むむむ、力を送り込んでいます!」
「あぁ、見えてる! 加速するぞ!」
「お願いします!」
そして、アルバスの言葉を合図としてスプリンドはさらに爆発する様に加速しながら、《スプリガンズ》たちが届かぬ先へ、一直線に向かい、ホールへと飛び込むのだった。