遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第12話【スプリガンズ・ブーティー】

結論から言えば、アルバスとエクレシアの《スプリガンズ》入団試験は合格だった。

 

しかしその為の犠牲は大きく、キットが長い時間をかけ少しずつ作り上げていった鉄駆竜(てっくりゅう)スプリンドは完全に壊れてしまったのである。

 

しかもそんなスプリンドを、エクレシア達を追ってホールへと来たキットが目撃してしまった為、場は何とも言えないものになってしまった。

 

立ち尽くすキットの前には地面に激突し、見るも無残な状態になったスプリンドがあり、アルバスとエクレシアはそんなキットの背にどんな言葉を掛けたら良いのか分からず、まずは頭を下げて謝罪するのだった。

 

「ごめんなさい。キットちゃん」

 

「……すまん」

 

アルバスとエクレシアの謝罪する声を聞いて、キットはハッと自分を取り戻すと、急いで目元を拭い振り返った。

 

「そ、そんなに気にしないでよ! 物はいつか壊れるんだからさ! そんな事より、アルバスとエクレシアに怪我が無くて、無事入団試験に合格したって方が……だいじで……「キットちゃん!」っ、エクレシア……!」

 

エクレシアは涙ぐんでいるキットを抱きしめると、かつてドラグマでもそうしていた様に聖女としてキットの想いに耳を傾け、その心に寄り添うのだった。

 

そんなエクレシアとキットを見て、アルバスもまた己に出来る事をしようと《スプリガンズ》達に協力を願い、スプリンドをスプリガンズ・シップ エクスブロウラーまで持って帰ろうとするのだった。

 

しかし、ここで思わぬ幸運が全員の前に降りかかる。

 

地面に大きく埋まっていたスプリンドを掘り出した所、ぽっかり空いた穴の向こう側に大量の宝があったのだ。

 

無論ここでいう宝というのは、《スプリガンズ》たちが砂漠で探している物であり、ドラグマが神の恩恵だと崇めているホールの向こう側からやってきたモノたちの事である。

 

「うぉぉぉおおお!! キット! 見ろ!! 大量の宝だ!」

 

「スプリンドが俺たちに恵みをもたらした!」

 

「キット! キット!!」

 

エクレシアに抱き着いて泣いていたキットは訳も分からぬまま、エクレシアと共に《スプリガンズ》達に持ち上げられ、天に祭り上げられた。

 

そして、繋いだ手の先にいるエクレシアを見つめ、今度こそ本心からの笑顔を浮かべるのだった。

 

 

 

入団試験が終わり、アルバスたちのお陰で大量の宝物を手に入れた《スプリガンズ》達は、アルバスとエクレシアを歓迎する意味でも、二人を中心としてパーティーを開いていた。

 

そして、キットの作ったスプリンドを見事に操ったアルバスは英雄の様な扱いとなり、多くの者達がアルバスと語り合うべく近付いていくのだった。

 

そんな中、最も早くアルバスの元へたどり着いたのは、スプリガンズ・ロッキーである。

 

「よぅ! アルバス! お前すっげぇな! アイツは誰が何やっても動かなかったのによ!」

 

「相性が良かったんだよ。俺の力とエクレシアの力が上手く合致した」

 

「会った時に使ってた奴か」

 

アルバスの言葉に、すぐ後ろに立っていたスプリガンズ・バンガーが最初に会った時の事を思い出し、頷きながらそう口にした。

 

「あぁ」

 

「すげぇモンだなぁ!」

 

「ってことは、またアレを直せば、飛べるって事か!」

 

「あぁ。同じものが出来れば可能だと思う」

 

「ふっふっふ! ふーっふっふ!!」

 

アルバスが笑みを浮かべたまま答えた言葉に反応する様に、やや大げさな笑い声が周囲に響いた。

 

それは今回、アルバスとエクレシアを入団に導いたスプリンドを作り、さらにはスプリンドを失いながらも、多くの宝を手に入れた《スプリガンズ》の……そしてアルバスやエクレシアの仲間、キットであった。

 

「甘い! 甘いよアルバス! このキット様が同じ物を作る訳が無いじゃないか! 次に作る時は今回見つかった欠点を改良し、より凄い奴を作るに決まってるじゃない!」

 

「……そうか」

 

何の影もなく、朗らかな笑顔でそう告げるキットにアルバスは小さく笑いながら頷き、何か手伝えることがあればと協力を申し出るのだった。

 

そして、キットは「それだけじゃないよ」と告げ、彼女を呼ぶ。

 

「エクレシア!」

 

「はい!」

 

キットの声に応えながら皆の前に姿を現したエクレシアの手には大きな竜の頭の骨があり、それを天高く掲げている。

 

「それは?」

 

「はい! これはおそらくドラゴンさんの頭の骨だという話で、これをキットちゃんが私の武器に改造して下さるそうです!」

 

「そんな事が出来るのか?」

 

エクレシアの言葉を確かめる様にアルバスはキットへと視線を送り、キットはアルバスの反応に誇らしげな顔をしながら頷いた。

 

「当然! 私に不可能は無いよ! エクレシアの力は大穴で見つかったこの竜の頭と相性が良くてね。上手く力を伝達する事が出来るみたい」

 

「これで、アルバス君のお役に立てますね!」

 

エクレシアのぽわぽわとした笑顔に、アルバスはやや困った様な顔をしたが、エクレシアが喜ぶのなら良いかと笑い、大きく頷くのだった。

 

 

 

それから《スプリガンズ》のパーティーはどこまでも続き、彼らの語らいは夜通し続く。

 

「それでよ。俺らの体を作ったのもキットなんだぜ?」

 

「そうなのか。という事はロッキーたちはキットの子供って事か?」

 

「あー。違う違う。俺らはこの鋼鉄の体を動かしてるだけだ。ホレ」

 

ロッキーがケラケラと笑いながら体の一部を取り外すと、中から黒く小さな毛玉の様な物が飛び出してきて、ロッキーの鋼鉄の体の上で飛び跳ねる。

 

「俺らは元はこんな体でよ。外で活動する時には、こうやって外身を動かして戦うんだよ!」

 

「そうなのか。ロッキーは機械の妖精だったんだな」

 

「ヨウセイ!? なんだそれは!」

 

「精霊って事さ。自然が生み出した命って事だな」

 

「ほー。アルバス。お前詳しいんだなぁ。俺らもそんな事は知らなかったぜ」

 

「まぁ、俺もそんなに詳しいワケじゃない。それにさっきまで忘れてたからな」

 

「忘れてた?」

 

「そう。俺はこの世界に落ちてくる前の記憶が無いんだ。でも、少しだけ思い出したよ。精霊の事。昔友達に教えてもらった事」

 

「トモダチから教わったのか。それじゃちゃんと覚えてねぇとな!」

 

「……あぁ。もう忘れないさ」

 

「何々? 面白そうな話してるじゃん! 私にも教えてよ」

 

「私も興味あります!」

 

アルバスがロッキーに語っていた話に、キットやエクレシアが飛び込んできて、アルバスに抱き着きながら話の続きを乞うた。

 

そして、どうやらそれはキットやエクレシアだけではなく、周囲の者達も同じで、ピードもサルガスも、バンガーもブラザーズも興味津々でアルバスに注目しているのだった。

 

そんな風に多くの者達に囲まれ、注目されているアルバスはやや恥ずかしそうにしながらも続きをゆるりと語ってゆく。

 

「この世界には六つの大きな力があって、その力の影響を受けて生まれた存在を精霊って言うんだ」

 

「六つ、ですか?」

 

「あぁ。火、水、風、土、光……そして闇。この力は精霊だけじゃなくて俺やキット、エクレシアも持ってる力だ。目には見えないけどな」

 

「じゃあアルバスは何の力を持ってるの? その友達の精霊に聞いたんでしょ? 教えて、教えて」

 

「俺は闇だ。それと、友達は精霊じゃなくて、その精霊の使い手だ」

 

「精霊の使い手! なんか凄そう!」

 

「実際凄い奴らだったよ。一緒に居ると不思議と力が湧いてきたり、もう戦えないとダウンしてたのに、すぐ立ち上がれる様になったりとかな」

 

「凄い人たちだったのですね」

 

「あぁ。だけどまだ修行中らしくてな。旅の途中だからって別れてそれ以降は会ってないな」

 

「……また、会いたいですか? アルバス君」

 

「出来るならな」

 

「なら、会いに行きましょう! いつか! また!」

 

「……エクレシア」

 

「私も、アルバス君のお友達に会ってみたいです! ……駄目ですか?」

 

「いや。駄目じゃないさ。そうだな。また、いつか」

 

アルバスは空の向こうにある今は見えないホールを頭に描き、目を閉じた。

 

「あ、ズルいよ! 私も会ってみたい! 精霊使いだなんて、なんか凄そうだし!」

 

「俺も! 俺らみたいな奴が居るなら興味あるぞ!」

 

「俺様と戦える奴が居るかもしれないな!! 燃えるぜ!!」

 

ワイワイと騒ぐ皆を見て、アルバスは穏やかな笑みを作りながら頷いた。

 

「ふふ。アルバス君。楽しみですね」

 

「あぁ。そうだな」

 

エクレシアと、騒がしいけれど楽しい《スプリガンズ》達と、アルバスはいつまでも終わらない宴を楽しむのだった。

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