遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第13話【ドラグマ・ジェネシス】

アルバス達が《スプリガンズ》への入団試験に挑戦している頃、教導国家(きょうどうこっか)ドラグマでは一人の少女が教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)より聖女の証を授けられ、新たな聖女として国民の前に立っていた。

 

新たな聖女の誕生に国民たちは湧き上がり、これで聖女エクレシアを取り戻せると喜び勇む。

 

そう。666代目の聖女が誕生するまで、ドラグマの国民たちは聖女エクレシアが野蛮な異教徒に攫われたと悲しみ嘆いていたのだ。

 

しかし、そんな憂鬱な日々も今日で終わりである。

 

そう。何故なら教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)よりお告げがあったからだ。

 

666代目の聖女が生まれた事で、ドラグマは遂に永遠の繁栄が約束された国になり、もはや何も怯える必要は無いと。

 

そして、聖女エクレシアの捜索にも聖女であり、騎士であるフルルドリスが騎士テオ、騎士アディンと共に向かっており、取り戻すのは時間の問題であると発表した。

 

これにより、ドラグマの国民たちは希望に続く未来を夢見て、今日も笑顔で過ごしているのだった。

 

しかし……そんなドラグマという国の終わりはすぐそこまで来ていた。

 

 

 

国を見下ろす教会の最上階。

 

祈りの間にて教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は、いつもの様に教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマから聞こえてくる声と話をしていた。

 

『それで? マクシムス。エクレシアはどうなったのかしら』

 

「状況変わらず。現在もフルルドリスたちが追っています」

 

『そう。それで? いつ頃見つかるのかしら』

 

「分かりません。何せどこへ行ったのかも不明なのですから」

 

『あの子が降りてくる時も近いというのに……!』

 

ブツブツと誰に聞かせるでもなく呟き始めたその声に、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)はため息を吐きながら、窓のある方へ行き、そこから見える遥かな空の先を見据える。

 

何を考えているのか。その表情は仮面に隠されて分からない。

 

だが、それでもその身に纏う気配はどこまでも落ち着いており、澄み切っていた。

 

しかし、そんな教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の空気は、教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマから聞こえて来た声を耳にした事で霧散してしまうのだった。

 

『……! あの子が、来るわ』

 

「なっ、まだ約束の時は「はじめまして……とでも、言うべきかな」っ!?」

 

教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマから放たれた言葉に驚き振り向いた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は、背後から聞こえて来た声に、窓から離れながら頭を下げた。

 

「……」

 

『アルベル! アルベルなのね!?』

 

「えぇ。そうですよ。母上は……体を亡くされたのか」

 

『私はアルベルとは違い、脆弱な人の身ですからね。仕方のない事だわ』

 

「……そうですか」

 

『ふ、ふふ。悲しんでくれるのね。優しい子。でも心配しないで。器はもう見つけているから。私もすぐに体を手に入れるわ』

 

「それは良かった」

 

アルベルと呼ばれた少年は、教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマから聞こえる声と和やかに会話を楽しんだ後、先ほどから無言で跪いている男、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へと視線を向ける。

 

短く乱雑に切られた髪と、鋭く細められた赤い双眸は、本来なら温かさを感じる様な色彩であるというのに、アルベルの瞳からは一切の温度を感じない。

 

ただ、冷たく教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)を見据えていた。

 

「それで? 僕の聖女(エクレシア)はどこに居るんだい? 教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)

 

そして、放たれる言葉は実際に重さを感じているかの様に教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へ降り注ぐ。

 

「申し訳ございませんが、ここにはおりません」

 

「ふぅん? じゃあいつ戻るの?」

 

「それは……」

 

「それは? 何かな。街に降りているというのなら、僕が迎えに行こうじゃないか。さぁ、場所を教えてくれ。マクシムス」

 

「……」

 

怒りが込められた言葉に、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は僅かに体を床に降ろしながら、小さくうめき声を上げる。

 

そして、アルベルの言葉に答えられないでいる教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)に代わり、教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマから一つの答えが告げられた。

 

『あの子よ。あの呪われた子がエクレシアを奪って行ったの』

 

「……なに?」

 

その言葉がアルベルに届いた瞬間、空気が変わった。

 

和やかさも、冷たさも何処かへ消え失せて、燃え滾る様な怒りがアルベルから吹き上がる。

 

「あのクズが、地上に居るのか」

 

『そうよ。ホールから降りて来たの。そして、ドラグマを破壊して、エクレシアを連れ去ったわ』

 

「あぁ、そうか。そういう事か。随分とふざけた事をしてくれるじゃないか。意趣返しのつもりか。名無しめ」

 

アルベルは怒りのままにすぐ近くにあった壁を破壊する。

 

そして、怒りに燃える赤い瞳で教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)を見据えると、一つの命令を下した。

 

「マクシムス!! ホールを開け! 《烙印》の力を解放する!!」

 

アルベルの言葉に教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は頷き、立ち上がった。

 

それからすぐにバルコニーへと向かい、天に向かって両手を広げ、言葉と共に力を天に向かって解き放つ。

 

「【凶導の福音(ドラグマータ)】」

 

 

 

その言葉は、言うなれば……終わりが始まる合図である。

 

今まで穏やかな白の世界にあった教導国家(きょうどうこっか)ドラグマには、天に開いた大いなるホールから(あか)の光が降り注ぎ、家を、人を、世界を(あか)に染めてゆく。

 

その光が世界に与える影響は、おぞましく恐怖に満ちたものだった。

 

まず、(あか)の光に照らされた人は、その身に刻まれた聖痕が暴走し……個性を、存在を塗りつぶされ、劇場によって役割が与えられた。

 

ある者は笑い続ける【喜劇(きげき)のデスピアン】へと姿を変え、ある者は悲しみ続ける【悲劇(ひげき)のデスピアン】へと姿を変えたのだった。

 

それはまさにその人の在り方を踏みにじる様な行為であったが、抵抗出来る人間も、それを否と言える人間もいなかった。

 

国民は皆等しく、これから始まる劇場の舞台役者として定められていく。

 

 

 

そして、国民を全て塗り替えた後、(あか)の光は収束され教会へと降り注ぎ、教会は白い壁を破壊しながら生まれ変わった。

 

その名も【烙印劇城(らくいんげきじょう)デスピア】

 

狂気の世界に飲まれた者達が喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。

 

もはや数刻前の清廉な国はどこにもなく、今ここにあるのはホールより降り注いだ悪意によって闇に覆われた世界だ。

 

「ふふ、ふはは、ハハハハ!! 力を感じるよ! この国に集められた力が今、僕の手の中にある!!」

 

アルベルは【烙印劇城(らくいんげきじょう)デスピア】から世界を見下ろして、笑う。

 

犠牲となった人も、国も、全てを嘲笑うかのように、アルベルは笑い続けた。

 

そして、ひとしきり笑って落ち着くと、仮面を取り出しそれを自分の顔に付ける。

 

「さて。準備も出来た。まずはこの世界から余計なものを消そうか」

 

「はい」

 

「それで? マクシムス。僕の花嫁(エクレシア)がどこに行ったのか、見当はついているのかい?」

 

「えぇ。神の意思に従わぬ異教徒共。鉄獣戦線(トライブリゲード)と共に居ると思われます」

 

「ふむ。野蛮な獣か。良いだろう。ではまず身の程知らずの獣から処理してやる。神たる僕の意思に逆らった罪を、その命で償わせてやろう……!」

 

「では、まず獣共を呼び寄せるとしましょうか」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)はそう言い放つと、かつては平和なドラグマで、争いなど知らぬ世界に生きていた民達を狂気で塗りつぶして死をも恐れぬ軍隊に変える。

 

そして、その兵たちに鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達が潜む森へと向かわせるのだった。

 

命令はただ一つ。

 

森を全て焼き払う事である。

 

無論鉄獣戦線(トライブリゲード)もただ見ているだけという事は無いだろう。

 

止めようとする。

 

しかし、死への恐怖を持たない彼らを止める事は出来ない。

 

そうなれば、森を焼かれた鉄獣戦線(トライブリゲード)は報復の為にここへ来るはずだ。

 

狂気が支配する世界。デスピアに。

 

それが全ての終わりへ繋がる序曲となる。

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は始まってしまった物語にため息を一つ零しながら、静かに変わり始めた世界を見つめるのだった。

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