遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
アルバス達が《スプリガンズ》への入団試験に挑戦している頃、
新たな聖女の誕生に国民たちは湧き上がり、これで聖女エクレシアを取り戻せると喜び勇む。
そう。666代目の聖女が誕生するまで、ドラグマの国民たちは聖女エクレシアが野蛮な異教徒に攫われたと悲しみ嘆いていたのだ。
しかし、そんな憂鬱な日々も今日で終わりである。
そう。何故なら
666代目の聖女が生まれた事で、ドラグマは遂に永遠の繁栄が約束された国になり、もはや何も怯える必要は無いと。
そして、聖女エクレシアの捜索にも聖女であり、騎士であるフルルドリスが騎士テオ、騎士アディンと共に向かっており、取り戻すのは時間の問題であると発表した。
これにより、ドラグマの国民たちは希望に続く未来を夢見て、今日も笑顔で過ごしているのだった。
しかし……そんなドラグマという国の終わりはすぐそこまで来ていた。
国を見下ろす教会の最上階。
祈りの間にて
『それで? マクシムス。エクレシアはどうなったのかしら』
「状況変わらず。現在もフルルドリスたちが追っています」
『そう。それで? いつ頃見つかるのかしら』
「分かりません。何せどこへ行ったのかも不明なのですから」
『あの子が降りてくる時も近いというのに……!』
ブツブツと誰に聞かせるでもなく呟き始めたその声に、
何を考えているのか。その表情は仮面に隠されて分からない。
だが、それでもその身に纏う気配はどこまでも落ち着いており、澄み切っていた。
しかし、そんな
『……! あの子が、来るわ』
「なっ、まだ約束の時は「はじめまして……とでも、言うべきかな」っ!?」
「……」
『アルベル! アルベルなのね!?』
「えぇ。そうですよ。母上は……体を亡くされたのか」
『私はアルベルとは違い、脆弱な人の身ですからね。仕方のない事だわ』
「……そうですか」
『ふ、ふふ。悲しんでくれるのね。優しい子。でも心配しないで。器はもう見つけているから。私もすぐに体を手に入れるわ』
「それは良かった」
アルベルと呼ばれた少年は、
短く乱雑に切られた髪と、鋭く細められた赤い双眸は、本来なら温かさを感じる様な色彩であるというのに、アルベルの瞳からは一切の温度を感じない。
ただ、冷たく
「それで?
そして、放たれる言葉は実際に重さを感じているかの様に
「申し訳ございませんが、ここにはおりません」
「ふぅん? じゃあいつ戻るの?」
「それは……」
「それは? 何かな。街に降りているというのなら、僕が迎えに行こうじゃないか。さぁ、場所を教えてくれ。マクシムス」
「……」
怒りが込められた言葉に、
そして、アルベルの言葉に答えられないでいる
『あの子よ。あの呪われた子がエクレシアを奪って行ったの』
「……なに?」
その言葉がアルベルに届いた瞬間、空気が変わった。
和やかさも、冷たさも何処かへ消え失せて、燃え滾る様な怒りがアルベルから吹き上がる。
「あのクズが、地上に居るのか」
『そうよ。ホールから降りて来たの。そして、ドラグマを破壊して、エクレシアを連れ去ったわ』
「あぁ、そうか。そういう事か。随分とふざけた事をしてくれるじゃないか。意趣返しのつもりか。名無しめ」
アルベルは怒りのままにすぐ近くにあった壁を破壊する。
そして、怒りに燃える赤い瞳で
「マクシムス!! ホールを開け! 《烙印》の力を解放する!!」
アルベルの言葉に
それからすぐにバルコニーへと向かい、天に向かって両手を広げ、言葉と共に力を天に向かって解き放つ。
「【
その言葉は、言うなれば……終わりが始まる合図である。
今まで穏やかな白の世界にあった
その光が世界に与える影響は、おぞましく恐怖に満ちたものだった。
まず、
ある者は笑い続ける【
それはまさにその人の在り方を踏みにじる様な行為であったが、抵抗出来る人間も、それを否と言える人間もいなかった。
国民は皆等しく、これから始まる劇場の舞台役者として定められていく。
そして、国民を全て塗り替えた後、
その名も【
狂気の世界に飲まれた者達が喜び、怒り、哀しみ、楽しむ。
もはや数刻前の清廉な国はどこにもなく、今ここにあるのはホールより降り注いだ悪意によって闇に覆われた世界だ。
「ふふ、ふはは、ハハハハ!! 力を感じるよ! この国に集められた力が今、僕の手の中にある!!」
アルベルは【
犠牲となった人も、国も、全てを嘲笑うかのように、アルベルは笑い続けた。
そして、ひとしきり笑って落ち着くと、仮面を取り出しそれを自分の顔に付ける。
「さて。準備も出来た。まずはこの世界から余計なものを消そうか」
「はい」
「それで? マクシムス。
「えぇ。神の意思に従わぬ異教徒共。
「ふむ。野蛮な獣か。良いだろう。ではまず身の程知らずの獣から処理してやる。神たる僕の意思に逆らった罪を、その命で償わせてやろう……!」
「では、まず獣共を呼び寄せるとしましょうか」
そして、その兵たちに
命令はただ一つ。
森を全て焼き払う事である。
無論
止めようとする。
しかし、死への恐怖を持たない彼らを止める事は出来ない。
そうなれば、森を焼かれた
狂気が支配する世界。デスピアに。
それが全ての終わりへ繋がる序曲となる。