遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第14話【烙印開幕(らくいんかいまく)

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の計略通り、住処としている森を焼かれた事で、鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士たちは怒りのままに、かつて教導国家(きょうどうこっか)ドラグマと呼ばれていた国を急襲した。

 

およそドラグマの騎士らしくない凶行に、シュライグは罠の気配を感じていたが、怒りに燃える仲間たちを抑える事が出来ず、遂に鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達は教導国家(きょうどうこっか)ドラグマ改め、凶導国家(きょうどうこっか)デスピアに奇襲を仕掛け、その異様な光景に戸惑いながら立ち尽くしてしまうのだった。

 

かつてあった美しい白い街は、まるで血をまき散らしたかの様などす黒い赤に染まり、人々も変わり果てた姿となっていた。

 

「……なんだ、これは」

 

「シュライグ。マズいんじゃないか? これは」

 

「あぁ。どうやらその様だな。総員撤退だ! そして、まずは情報を……」

 

シュライグが既に街の中へ入り込んだ仲間たちにそう声を掛けたのだが、次の瞬間……何人かの仲間が何者かに切り裂かれ崩れ落ちた。

 

「っ!?」

 

「……」

 

シュライグが視線と共に銃口を向けた先には一つ目の様な仮面を付けた怪しげな者が立っており、両手の指から伸びた鋭い爪には今まさに傷つけた鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士たちの血が付いている。

 

「何者だ! お前は!」

 

「……」

 

そして、その者はシュライグの問いには答えず、地を滑る様に走ると、鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士たちを順に切り捨てていくのだった。

 

「これ以上は……! やらせるな!」

 

凍り付く戦士たちの中から飛び出した鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士フラクトールは馬の体を走らせて、同じ様に動けるケラス、ナーベルと共に凶行の主へと向かった。

 

だが……彼らの銃や剣は赤き凶劇へ届く前に、白き鎧に阻まれた。

 

「アレは……フルルドリスか!?」

 

「それにしては様子がおかしいぞ! シュライグ!!」

 

鎧はおよそ人間離れした動きをしながら、咆哮と共にフラクトール達へ突っ込み、力技で彼らを吹き飛ばす。

 

さらに追撃をしようとするが、その攻撃はルガルによって阻まれ、また両手の爪を輝かせた凶劇の主はシュライグが足止めをする。

 

「俺たちが抑えている隙に! 撤退しろ!! 今はとにかく退くんだ!! このままでは全滅する! フェリジットォ!!」

 

「分かってる! ここは私が先導する!」

 

シュライグは歯を食いしばりながら、凶劇の主と戦い、ルガルの援護をしながら撤退を手助けをする。

 

そしてフェリジットもまた、退路に現れたデスピアの兵隊へ銃口を向け、走るのだった。

 

 

 

そんな鉄獣戦線(トライブリゲード)たちの必死な抵抗を遥かな高みから見下ろしている者たちが居た。

 

そう。教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)とホールから来た少年アルベルである。

 

「ふぅん。獣にしてはまぁまぁやるみたいだね」

 

「その様ですね」

 

「それで? エクレシアは?」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は投げられた問いをそのまま背後にある教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマへと向けた。

 

いや。ドラグマがデスピアへと変わった様に……かつては白き像であったソレも今は二匹のドラゴンが絡み合う生きた呪物と化している事を考えれば、もはやその名前も相応しくは無いだろう。

 

【デスピアン・プロスケニオン】

 

愚者が踊り狂う舞台という名のそれは、ホールから溢れた光を受けた事で、正しく本来の役割をこなし始めた。

 

デスピアという国を舞台にして、鉄獣戦線(トライブリゲード)という役者を絶滅させるという凶劇を、観客であるアルベルや教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へと見せるのだ。

 

そして、もう一つの舞台へと向かっていた者が、ホールを通り帰還する。

 

『戻りましたよ。アルベル』

 

「おかえり。どうかな。その体は」

 

『えぇ。多少の違和感はあるけれど、問題なく動かせるわ』

 

人の体を模した様なソレは、多くの命を混ぜ合わせ、その呪いを一つの体として生み出した様な存在であり、翼の様な部分にある目は落ち着きなく、様々な場所を見ている。

 

黒と赤に染められたその化け物は見ているだけで正気を失う様なおぞましい存在であるが、ここにその程度の光景で正気を失う者などいない。

 

故に、かつて教導枢機(きょうどうすうき)テトラドラグマに宿っていた精神が操る【デスピアン・クエリティス】と呼ばれる悪魔とも平然と話をするのだった。

 

『しかし、悪い知らせです。アルベル。獣たちの巣に貴方の物(エクレシア)は居ませんでした』

 

「そっか。まぁそうだよね」

 

『あら。意外と落ち着いていますね』

 

「まぁね。僕もこれから王になるんだし。余裕って奴を持つべきだと思ってさ」

 

『そうなのね。素敵よ。アルベル』

 

「ふ、ふふ。それにしても……思っていたよりもよく動くじゃないか。マクシムス。ホールの力で勝手に動き出してビックリしたけどさ」

 

アルベルは嗤いながら、地上を見下ろし鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士と戦っている二人の悪魔を見据えた。

 

「かの鎧には聖痕の力で強化されたフルルドリスの力と意思が焼き付いています。それがホールからの力を得て己の意思で動き始めたのでしょう」

 

「ふぅん。なるほどね。でも皮肉なモンだね。もうここにドラグマは無いのにさ……消えた過去を見つめて戦う騎士。さしずめ【凶導の白騎士(ドラグマのアルバス・ナイト)】って所かな」

 

『ふふ。良き名ですね。アルベル』

 

「王としてこういう事も経験しないといけないからさ。ま、練習だよ」

 

『えぇ。えぇ。素晴らしい心掛けだわ』

 

「それで? あそこにも居るけど、【デスピアの凶劇(アドリビトゥム)】の方はどう? 使える?」

 

『それなり。という所かしら。悪くはないけれど、獣に囲まれると対処できない所は駄目ね』

 

「まぁ、元がただの人間だし。そんなモンかな」

 

アルベルは両手の爪を砕かれ、シュライグに吹き飛ばされたデスピアの凶劇(アドリビトゥム)を見て、鼻で笑った。

 

所詮はただのお遊びであるのだと言うように。

 

「デスピアの凶劇(アドリビトゥム)が敗北した事で、凶鳥のシュライグ(きょうちょうのシュライグ)が自由になりました。デスピアンと凶導の白騎士(ドラグマのアルバス・ナイト)だけでは抑えきれないでしょう。逃げられますね。追手を出しますか?」

 

「あー。良いよ。別に。どうでも良い。逃がしちゃって」

 

「……よろしいのですか?」

 

「あぁ。問題無いよ。エクレシアも居ないみたいだし。いつまでも獣に構っていても仕方ないしね」

 

アルベルは嗤いながらそう告げ、その言動に僅かな疑問を抱いた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)に、デスピアン・クエリティスの体に宿る邪悪な意思クエムは撤退してゆく鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士を見ながら悪意ある言葉を語る。

 

『アルベルは白の世界の王となる存在。ならばこの世界では神に等しい存在でしょう? そんな素晴らしい神に逆らった罪は、その血を完全に絶やす事でしか償えないわ』

 

「……非戦闘員に手を出したのですね」

 

『私には違いが分からないもの。それに、ただ獣たちを囲んで森を燃やしただけだから、殺したのは私じゃないわ。あんな場所に生きてるのが悪いんでしょう?』

 

クエムは教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の言葉に嘲笑で返し、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は遥か遠方で生まれた炎が多くの種族を焼いている姿を想像してため息を吐いた。

 

「でも困ったな。獣の所に居なかったとなると、エクレシアはどこに居るんだろう」

 

『そうね。本当に困ったお姫様だわ』

 

「ま。でも……しょうがないね。ゆっくり探すとしよう。この世界を綺麗にしながらさ」

 

アルベルはクエムと共に笑い、その声はデスピアの国中に響き渡った。

 

 

 

そして、ボロボロになりながらも、何とか拠点に戻ってきたシュライグ達は、全てが焼かれ、奪われた多くの命を前に、ただ絶叫を上げる事しか出来なかったのである。

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