遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第16話【烙印凶鳴(らくいんきょうめい)

赫灼竜(かくしゃくりゅう)マスカレイドへと変貌したアルベルが空に咆哮した影響は世界中に広がり、様々なものに影響を与えていた。

 

それは森で戦いの準備をしていた鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達や、大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)に住まう相剣師(そうけんし)達や、その下層部に住まう氷水(ヒスイ)の者達も同様であった。

 

彼らは皆一様に空を見上げ、何かあったのかと語る。

 

そして、凶導国家(きょうどうこっか)デスピアから遠く離れた大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダで、キットの発明を手伝っていたエクレシアも、世界が揺れる気配に顔を上げる。

 

「ん? どしたの? エクレシア」

 

「いえ……今、誰かが泣いている様な声が聞こえまして」

 

「泣いてる声? 私には聞こえなかったケド」

 

キットは狭い部屋の中で窓の向こうをジッと見つめているエクレシアを見て首を傾げる。

 

しかし、エクレシアはそんなキットに何ら具体的な回答が出来ぬまま曖昧に笑って、再び作業に戻るのだった。

 

「そう言えば今作っている物はどういうモノなのでしょうか?」

 

「ん~? あぁ、これはね。エネルギーを見つける為の装置」

 

「エネルギーを見つける……ですか?」

 

「そ。ほら、前にスプリンドをアルバスとエクレシアが飛ばしたでしょ? その時に二人が不思議なエネルギーをスプリンドに注いでたじゃない。だから、同じ様なエネルギーが見つかれば、スプリンド改め、ベアブルムを動かせる様になるんじゃないかなーって考えてさ」

 

「……なるほど」

 

エクレシアは手元の機械を弄るキットを見ながら感心したように頷き、キットに言われた通りの作業を行いながら呟いた。

 

「キットちゃんは、凄いですね」

 

「うぇ!? 突然なに!?」

 

「私、キットちゃんが羨ましいです。こうやって何かを作る事が出来る特別な力があって」

 

エクレシアが手元を見つめながら言った言葉にキットは目を丸くしながらエクレシアを見た後、吹き出した。

 

弄っていた部品を机の上に置いて、お腹を押さえながらケラケラと笑う。

 

「あはははは、エクレシア! それ、本気で言ってるの!?」

 

「と、当然です! 私は、キットちゃんを尊敬していて」

 

「ひーひー! お腹いたい!」

 

「キットちゃん! 私、真剣なんです!」

 

「真剣なら、なおさら面白いよ。エクレシアは、本当に面白い子だなぁ」

 

キットは笑いすぎて目に溜まった涙を指で払い落しながら、姉であるフェリジットによく似た顔でエクレシアを見つめる。

 

浮かんでいるのは可愛い妹であるキットを慈しんでいる時のフェリジットと同じ表情だ。

 

「私は特別なんかじゃないよ。まだ子供だからっていうだけで戦場から遠ざけられただけの子供なんだ。ドラグマで聖女様なんて呼ばれてたエクレシアが凄いと思う様な人間じゃないよ」

 

「それは……! 違います。聖女だと言われていたのは聖痕のお陰で」

 

「私は違うと思うな」

 

エクレシアの反論を、キットは軽くあしらうと椅子に深くもたれかかりながら静かに語る。

 

「エクレシアやアルバスと一緒にご飯を食べて、話をして、お風呂に入って、寝て。分かった事があるんだ」

 

「な、なんでしょうか」

 

「エクレシアって、ホントに世間知らずって奴だよね」

 

「えっ」

 

「やっぱり自覚無かったんだ。こりゃ相当お姫様みたいな生活してたんだなぁ」

 

キットはうんうんと頷き、エクレシアはかつての生活と今の生活を比べて頬を赤く染めた。

 

かつてドラグマで、身の回りの事を全て従者にやってもらい、自分はただそれを見ているだけだった生活が頭に蘇る。

 

強い羞恥心から思わず謝罪しようとしたエクレシアであったが、そんなエクレシアの謝罪が零れる前に、キットが笑いながら口を開いた。

 

「みんなね。エクレシアには感謝してるんだよ」

 

「あのっ、ごめんなさ……え?」

 

「ドラグマの事はよく知らないけどさ。エクレシアが聖女って呼ばれてたのは何となく分かるよ」

 

「そうなの、ですか?」

 

「うん。だってエクレシアは優しいモン。困っている人を見つけると飛んで行ってさ、何か出来る事はありますかっ!? って聞くでしょ? それが自分には出来ない事でも一生懸命手伝おうとしてくれて……見てて嬉しいんだよ」

 

「……」

 

「だからさ。エクレシアはそのままでも十分に凄い人なんだと思うよ。《スプリガンズ》のみんなだってエクレシアの事は大好きでしょ?」

 

「……はい。そう言ってくださいます」

 

「ならそれが全部でしょ」

 

エクレシアは、嬉しさと恥ずかしさが入り交じり、自らの胸を両手で押さえながらポロリと涙をこぼした。

 

そんなエクレシアを見て、キットはニカッと笑う。

 

「でも、それでも……私はもっと、強くありたい」

 

「ならさ。アルバスの力になろうよ」

 

「アルバス君の?」

 

「そ! だってエクレシアはアルバスの事が好きなんでしょ?」

 

「はうっ」

 

先ほどまでとは違う理由で頬を染めながら動揺するエクレシアにキットはニヤニヤと笑い、エクレシアの腕を指で突いた。

 

「突然どうしたのかにゃ~? エクレシアちゃんは~」

 

「いえ、あの、その……アルバス君はとても良い人で、その、いつも困っていると助けてくれて」

 

「知ってるよ? でも、アルバスはいつもエクレシアを見てるからさ。『いつも困っていると』助けてくれるんじゃないかにゃ~?」

 

「ひゃうっ」

 

もはや夕日よりも赤くなったのではないかと思われるエクレシアは両手で顔を隠しながら奇声を上げる。

 

そんなエクレシアを見て、キットは楽しくなってきたのかツンツンと体を突きながらアルバスとの関係を問い詰めるのだった。

 

 

 

しかし、そんな二人のイチャイチャは外から聞こえてきた警報によって中断される。

 

「っ!?」

 

「エクレシア!」

 

「はい!」

 

キットはエクレシアと共に部屋の外へ飛び出すと、すぐにスプリガンズ・シップ エクスブロウラーの管制室へと向かう。

 

そして、警報を出したであろうロッキーに状況を聞くのだった。

 

「何があったの!?」

 

「マズいゼ。キット」

 

「どうしたんだ」

 

そしてロッキーが状況を語る前に、《スプリガンズ》達のリーダーであるサルガスも部屋に入ってきてロッキーへと視線を向けた。

 

サルガスやキット、そしてエクレシアや《スプリガンズ》の者達が集まってきた事でロッキーは、重い口を開きながら状況を伝えるのだった。

 

「【覇蛇大公(はじゃたいこう)ゴルゴンダ】が動き出したみたいダゼ」

 

「なんだと!? まだ前の戦闘からは時間が経ってないんだぞ。何があったんだ」

 

「サッパリだゼ。どうする? キャプテン」

 

「どうすると言われてもな。こっちもまだエクスブロウラーの修理が終わってないから戦闘は出来ないぞ」

 

「じゃあ決まりだね。逃げようか」

 

「に、逃げるだと!? このキャプテンサルガスが!! そんな事するかっ! 戦うぞ!」

 

「あ、しまった」

 

「キットぉ~」

 

「ごめんってば」

 

ワナワナと震えるサルガスを見て、ロッキーはその原因であるキットへ文句を言い、キットは両手を合わせながら謝るのだった。

 

そして、サルガスはロッキーに命じるとモニターにゴルゴンダの姿を映し、戦う方法を考え始める。

 

しかし、モニターに映る映像を見て、サルガスも、ロッキーもキットもエクレシアも目を見開く事になった。

 

何故なら、モニターにはゴルゴンダの巨大な蛇の姿だけでなく、一人の少年が映っていたからだ。

 

「……っ! アルバス君!?」

 

砂漠をフラフラと歩いているアルバスは、ホールを喰らい続けるという影響から淡い光を発している巨大な蛇に向かって行く。

 

「マズいぞ! エクスブロウラーを動かせ! アルバスを援護する! そしてぇー! このキャプテーン! サルガスの力を見せつけてやる!」

 

サルガスの声に応えエクスブロウラーは動き始めたが、エクスブロウラーがアルバスの元に辿り着くよりも前に、異変が起こった。

 

不意にアルバスが両手を天高く掲げると、その体から力を溢れさせた。

 

それはアルベルがデスピアで使った力、赫の烙印(あかのらくいん)とは似て非なる力。

 

ホールの向こう側にある白の世界の竜王、白き竜王(アルバス)から受け継いだ力――【白の烙印(しろのらくいん)

 

アルバスは烙印の力によりその身をドラゴンへと変貌させてゆく。

 

しかし、以前までのソレとは違い、アルバスはドラゴンに変じてから苦しそうに息を吐き、空に咆哮する。

 

烙印竜(らくいんりゅう)アルビオン】

 

エクレシアは地上に降り立ったそのドラゴンを見て、息を呑みながら両手で口を隠す。

 

そして、アルビオンはひとしきり咆哮した後、眼前の敵に向かって襲い掛かるのだった。

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