遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
突如として暴れ始めたゴルゴンダはフルルドリスが放った雷に打ち抜かれ、その動きを止めた。
これで命を奪った訳ではないが、当分動くことは出来ないだろう。
その為、フルルドリスは落ち着いてエクレシアを探す事が出来ていたのだが……当のエクレシアは安全な場所になどはおらず、未だ敵意を周囲に向けている獰猛なドラゴンの前に立っているのだった。
「アルバス君」
エクレシアはアルバスこと、アルビオンに話しかけるが、戦いの気を纏い、周囲の砂漠を燃やし続けているアルビオンは何の返事も返さない。
ただ、正面に立つエクレシアを見下ろすだけだ。
その瞳には、親しみなどは一切含まれておらず、まるで周囲に居る全てを敵だと思っているようでもある。
「アルバス君。戦いは終わりました」
「……」
「一緒に帰りませんか。キットさんやサルガスさん。ロッキーさんやピードさん達の所へ」
エクレシアはアルビオンに向かって一歩踏み出す。
が、アルビオンはそんなエクレシアに対して、エクレシアの体と同じくらい巨大な手を振り下ろして遠ざけようとするのだった。
アルビオンの行動で礫の様に飛び散った砂が、エクレシアの服や肌を浅く切り裂き、高熱で熱せられた砂は皮膚を焼く。
そのあまりの痛みにエクレシアは顔をしかめながら、砂の上に倒れるが、それでもエクレシアはこの場から逃げる様な事はせず、ジッとアルビオンを見つめた。
「アルバス君。アルバス君は私の事が、嫌いになってしまったのでしょうか」
立ち上がり、痛みに涙が零れそうになっても振り払い、微笑みを作ってエクレシアは立ち上がる。
いつかの時、全てを失い孤独であったエクレシアにアルバスが寄り添ってくれた事を思い出し、今度は自分の番なのだと、怯える心を抱きしめて顔を上げる。
「私は、アルバス君の事が大好きです」
エクレシアの真っすぐな言葉に、その瞳に、傷つきながらも美しいその姿に……アルビオンは少しだけ気圧された。
エクレシアは自分の胸を右手で押さえながら必死にアルビオンへ訴える。
自分の想いを。
そして、今日までの日々を。
「私は! 本当はずっと怖かったんです。ずっと教会の中で過ごしてきて、外へ行くのだって護衛の人が大勢いて、本当の意味で一人になった事は無かったから……!」
「だから、アルバス君が私の我儘を聞いてくれて、傍に居てくれて……手を握ってくれて! 私、本当に、安心出来て、嬉しかったんです!」
「アルバス君。私は、弱い人間です。聖痕を失えば何も出来ず、キットちゃんに協力して貰うまではただの足手まといでした」
「アルバス君に助けられて、支えられて、それで何とか生きている様な……お荷物なんです」
「でも、そんな私でも、何かアルバス君のお役に立ちたいんです」
「支えられるばかりじゃなくて、私もアルバス君を支えたい!」
「助けられるばかりじゃなくて、私もアルバス君を助けたい!!」
「共に生きてゆきたいんです。貴方と……」
エクレシアは一歩、また一歩とアルバスに歩み、語り掛ける。
言葉を一つアルバスに向ける度に、エクレシアの想いが言葉だけでなく、涙としても零れていたが、それはアルビオンが作る灼熱の世界に焼かれ、地面に落ちると同時に蒸発していった。
息をするのも苦しい様な世界で、それでもエクレシアはアルビオンに手を伸ばす。
そう。まるでアルビオンを抱きしめる様に両手をアルビオンの前で広げた。
「アルバス君。もう私と話もしたくないというのなら、私はそれでも構いません」
「ですが、どうか……今日までの感謝を貴方に、返したい」
「だから……アルバス君」
「最後にもう一度だけお話を……」
エクレシアはアルビオンまであと一歩という所まで迫ったが、周囲を囲む炎と、アルビオン自身が放っている炎で全身を……そして体の内部も焼かれ、痛みか、苦しみから体をふらつかせてしまった。
静かに、音もなく崩れ落ちてゆくエクレシアに、アルバスは咄嗟に手を伸ばした。
自らが放っていた怒りの炎を消し、そっとエクレシアを抱きとめる。
まだ熱を発していた体はエクレシアを焼くが、それでもエクレシアはアルビオンが自分を受け止めてくれた事に気づき、微笑みを浮かべた。
そして、アルビオンの手の上に涙を零しながら、アルバスを見上げる。
「アルバス君」
「私、アルバス君の事が大好きです」
「貴方が
「
「
「貴方だから、私は共に生きてゆきたい」
エクレシアは想いを全て打ち明けると、そのままアルビオンの手の上で意識を失った。
そんなエクレシアをアルバスは大切な宝物でも扱うかの様に抱き上げると、周囲の炎から守る為に包み込み、体を寄せるのだった。
言葉はない。
だが、どんな言葉よりもアルバスの想いは真っすぐにエクレシアへ向けられていた。
それが届いたのか。
エクレシアもまた意識を失ったまま微笑みを浮かべるのだった。
未だ残るアルバスの熱を感じて……。
アルバスの身を包んでいた炎が消えた事で、周囲の砂漠を燃やしていた炎も時間と共に消えていった。
キット達は、炎が消えた事でアルバスの元へ走り、傷だらけのエクレシアを救出する。
その際に、フルルドリスがアルバスへ刃を向けようとしたが、そんなフルルドリスにアルバスが無抵抗であった事。
そして、エクレシアを守る様にしていたことから、フルルドリスは冷静さを取り戻し、暴走した事を詫びるのだった。
それから、フルルドリスはエクレシアを抱きかかえて、エクスブロウラーまで走り、残されたテオとアディンはキットらと共にゆるりとエクスブロウラーを目指して歩いていった。
無論テオはエクレシアが乗ってきたという 試作品スプリンドⅡ型を担ぎながらだ。
「重くない?」
「んー? あぁ、余裕だよ。余裕。俺は《教導騎士団》最強の男だからな」
「元。を忘れてますよ。テオ。……それに、最強というのならフルルドリスの方が強かったでしょう」
「力なら負けてねぇ」
「負けず嫌いですねぇ」
「まぁな」
テオとアディンは昔と変わらない態度で軽口を叩き合いながら、砂漠の上を歩き、キットとも語らう。
「しっかし、エクレシアも随分と見違えたなぁ。まさか一人であんな危ない場所に行くとは」
「昔は違ったの?」
「あぁ。まるで違ったな。な? アディン」
「えぇ。昔のエクレシアは、引っ込み思案で、いつもフルルドリスの陰に隠れて、小さくか弱い子でした」
「そうなんだ。今とは全然違うね」
「そうだな。良い女になった」
「……テオ。その発言はフルルドリスに報告させて貰いますよ」
「おい!! 何でだよ!」
「迂闊な発言は命を縮めると学びなさい! この脳筋!」
テオは試作品スプリンドⅡ型を担いだまま、ハハハと笑うアディンを追いかけ、そのままエクスブロウラーへと走る。
そんな二人を見て、また面白い人たちが増えたなとキットは笑いながら二人の背中を追うのだった。
「待て! アディン! フルルドリスにその手の冗談は本気でやばい!」
「これもフルルドリスの留飲を下げ、アルバス少年が無事エクレシアと添い遂げる為……テオ。貴方の犠牲は忘れませんよ!」
「素直に説得すれば良いだろ!」
「それが出来れば苦労はありません! 若者の未来の為、礎となりなさい! テオ」
「勘弁してくれ!」
その後、アディンは当然の様にフルルドリスへ先ほどの話を伝え、テオは砂漠の海で空から降り注ぐ雷をひたすらに避け続ける事になるのだった。