遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第20話【烙印の気炎(らくいんのきえん)

ゴルゴンダが暴れ、アルバスがアルビオンへと変貌してから数日が経った。

 

アディンの力や、キット達の治療の甲斐もあり、エクレシアは再び歩き出す事が出来る程度には回復した。

 

が、服の下には多くの火傷のあとが残っており、かつてドラグマに居た時の様な美しく透き通る様な肌は失われてしまったのだった。

 

「……すまない。エクレシア。私がもっと早く来ていれば」

 

「お姉様が気にする様な事は何もありませんよ」

 

「しかし、こんなにも傷だらけになって……」

 

フルルドリスは腕に残る火傷のあとを撫でながらエクレシアに語り掛けるが、エクレシアは気にした様子は見せず、あっけらかんと笑うのだった。

 

しかし、フルルドリスの悲し気な顔を見て、ハッと思い出したかの様に呟く。

 

「あ、でも……アルバス君は気にするでしょうか。傷が醜いと思うでしょうか……」

 

目を伏せながらエクレシアが語った言葉に、フルルドリスもテオもアディンもまるで石像の様に固まった。

 

三人の理由はそれぞれ違うが、エクレシアの発した言葉が原因という事だけは同じであった。

 

そして、そんなエクレシアの言葉によるダメージからいち早く現実へ戻ってきたフルルドリスは笑顔でエクレシアの手を取る。

 

「大丈夫だ。どの様な傷が付こうと、エクレシアの心は変わらない。綺麗なままだ。それを嫌う奴は居ないよ」

 

「……お姉様」

 

「怖がることはない」

 

「ありがとう、ございます」

 

「それに……もし万が一という事があれば、私がそのアルバス君とやらを『説得』しよう。何も問題はない」

 

フルルドリスがエクレシアの目尻に浮かんだ涙を指で払いながら笑顔で放ったその言葉に、テオとアディンは心の中で祈りを捧げた。

 

どうか、そのアルバス君とやらがフルルドリスの逆鱗に触れ……説得という名の拷問を受けない様にと。

 

ただ、神に祈るのだった。

 

 

 

それから、フルルドリスは久しぶりにエクレシアと姉妹らしい会話を楽しみ、エクレシアも久しぶりに姉であるフルルドリスに甘えた。

 

しかし、エクレシアもまだ万全ではなく、話疲れたのか熱が出てきてしまった為、フルルドリスはエクレシアに眠る様に言ってから部屋を出るのだった。

 

そして、部屋を出てから騎士らしい表情になり、『アルバス君』の元へ向かう。

 

「あ! フルルドリス! エクレシアはどう?」

 

「あぁ。多少熱があるが、問題は無いだろう。療養すれば治るはずだ」

 

「良かった!」

 

キットの無邪気な微笑みを見て、フルルドリスは昔のエクレシアを思い出しながら微笑んだ。

 

が、すぐに凛々しい顔になるとエクスブロウラーの中で小さく丸まっているアルバスへと視線を向ける。

 

「アルバス……といったな。少し私と話せるか?」

 

「……」

 

アルバスからの言葉はない。

 

だが、起き上がりジッとフルルドリスを見つめる姿からは話をする意思が感じられた。

 

「助かる」

 

フルルドリスはアルバスの意思を受け取って、軽く礼を言ってから近くの椅子に座り、アルバスへと視線を向けた。

 

「それで、だ。アルバス。実はな、お前に頼みがあって来たんだ」

 

アルバスはフルルドリスの言葉に首を傾げた。

 

「あぁ……頼みというのはな。エクレシアが動ける様になったら、相剣師(そうけんし)達が住まう秘境へ向かって欲しいという話なんだ」

 

「そーけんし?」

 

「そう。心を剣に写し、武器とする事が出来る者たちだ。かの地で修行すれば自らの中に眠る力を制御する事も可能だろう」

 

「それって」

 

「そうだ。その地へ行けば、エクレシアは力を取り戻す事が出来るし……アルバス。お前が人の姿へ戻る事も可能だろう」

 

「っ! アルバス!!」

 

フルルドリスの話を聞いていたキットは満面の笑みでアルバスの体を揺らし、アルバスもまた目を見開いてフルルドリスを見つめた。

 

しかし、その希望に満ちた目は、すぐ暗闇に覆われる事になる。

 

「それに……何よりも、今のままではエクレシアが危ないのだ」

 

「……っ!?」

 

「エクレシアが、危ない!?」

 

フルルドリスはキットやアルバスにジッと見つめられながら、自らの手を握り、エクレシアが居なくなってからの旅路を語った。

 

「私たちはドラグマを出てすぐに、鉄獣戦線(トライブリゲード) の里へと向かった。しかし、その途中で聖痕が焼き付く様な感覚があり、力を使えなくなったのだ」

 

「……」

 

「それから力を取り戻す為に相剣師(そうけんし)達が住まう秘境へと向かった。しかし、その地で空へ響き渡る様な声を聞いたんだ」

 

「声?」

 

「あぁ。憎しみや恨み、そして渇望が混じった叫びだ」

 

かつて聞いた声を思い出し、思わず右手を震えさせるフルルドリスに、アルバスもまたゴルゴンダと戦う前に聞いた声を思い出す。

 

身の内に入り込み、暴れ狂う様なあの声と力を。

 

「そして、その声はエクレシアを求めていた」

 

「エクレシアを? なんで、そんな事が分かるの?」

 

「失われていたと思われた聖痕から声が聞こえたんだよ。エクレシアを探せ、王に捧げろ。とな」

 

「俺も聞いたぜ」

 

「私もです」

 

フルルドリスの言葉にテオやアディンも頷き、キットはその声が亡霊の様な姿をしている事を想像して身を震わせた。

 

「王とやらが何者かは知らんが、そんな訳の分からない奴にエクレシアは渡せない。だが、エクレシアは未だ聖痕の力に大きく支配されている。だから、エクレシアの力を制御する為に相剣師(そうけんし)達が住まう秘境へ行き、相剣(そうけん)の力を身につけて欲しいんだ。分かるな? アルバス」

 

「……!」

 

「助かるよ。アルバス」

 

アルバスが大きく頷いたことで、フルルドリスは安心した様に笑った。

 

しかし、そんなフルルドリスの姿を見て、今日までの過保護な姿はどうしたのかとキットはフルルドリスへ言葉を向ける。

 

「お姉さんは付いていかないの? お姉さんが居た方が安心じゃない?」

 

「それは出来ない」

 

「……なんで! だって、お姉さんが居た方がエクレシアも安心するよ! また離れ離れじゃあエクレシアが可哀想だ」

 

「嬢ちゃん。悪いが、俺たちはこれから危ないところへ行かなきゃいけねぇんだよ」

 

「……一緒じゃダメなの?」

 

「あぁ。駄目だ。俺たちはエクレシアに傷ついて欲しくないからな」

 

「えぇ。そうですね。エクレシアは大切な妹ですから」

 

「っ」

 

「だから、エクレシアにはまた会おうと伝えてくれ。全てが終わったら、今度は何のしがらみもない、ただの姉妹になろう……とな」

 

「……エクレシアに直接言いなよ」

 

「悪いな。キット。私はそれほど強くは無いんだ。話せばまた共に居たくなってしまう。だから、もうお別れだ」

 

「っ! 必ず! 必ず、また会おうね! フルルドリス! アディン! テオ!」

 

「あぁ」

 

「当然です」

 

「今度会う時は、シュライグやフェリジットも一緒だ」

 

「うん……!」

 

テオが笑いながら言った言葉に、キットは涙ながら頷き、そして彼らはこの地を離れてゆく。

 

キットはこの別れに、かつて姉であるフェリジットと別れた日の事を思い出し、いつまでも泣き続けるのだった。

 

 

 

そして、キットの前にはもう一つの別れが迫っていた。

 

「……もう行くの?」

 

「はい。アルバス君の事も心配ですし。私も力を得られるのなら、欲しいですから」

 

キットの前で微笑むエクレシアは、以前よりもずっと強くなった様に見える。

 

だが、それでもフルルドリス達が出ていったと聞いた時は、どこか寂しそうな顔で彼らが去った方を見ていた。

 

まだ弱い。

 

でも、それでも彼女たちは前へ進むのだ。

 

「エクレシア。アルバス。元気でやれよ」

 

「はい! キャプテンさんも!」

 

「あぁ。寂しかったらまた会いに来ると良い! 俺たちは仲間だからな!」

 

「はい!」

 

エクレシアはそろそろ時間だとアルバスの背に乗り空へと舞い上がる。

 

「エクレシア……! また、また会おうね! 必ず!」

 

「はい! 約束です!! キットちゃん!」

 

「絶対だからね!! エクレシア!」

 

キットの声にエクレシアはアルバスの上から大きく手を振り、遥か遠くの空を目指して飛び始めた。

 

去って行く友にサルガスが右手を振り上げると、《スプリガンズ》達が自らの体から出ている導火線に火を付けて、空へと舞い上がり、大空に様々な色の花を咲かせる。

 

そして、キットも涙を振り払って、ギリギリで完成させた新型の駆動機械【鉄獣戦線 塊撃のベアブルム(トライブリゲード かいげきのベアブルム)】に乗り、砂漠の上を走りながら飛んで行くアルバスとエクレシアを見送るのだった。

 

「エクレシアー!! アルバス―!! 元気でねー!!」

 

「……!!」

 

もはや遠い空の向こうへ行ってしまったエクレシアの声は届かず、キットには豆粒の様な姿しか見えないが、それでもキットはベアブルムの上で微笑んだ。

 

また会うという約束を胸に抱いて、友が去った遠い空をいつまでも見つめているのだった。

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