遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第22話【瑞相剣究(ずいそうけんきゅう)

赤霄(セキショウ)に案内されるまま建物の中に入ったエクレシアとアルバスは、大きく荘厳な部屋に入ると、そこで見上げるほど大きな男の前に通された。

 

座っている状態でもアルビオンとほぼ同じくらい大きなその男は、エクレシアとアルバスを静かな目でジッと見つめる。

 

承影(ショウエイ)。フルルドリスの妹だ」

 

「……そうか」

 

承影(ショウエイ)と呼ばれた男の目は静かな水面の様であり、どこまでも透き通った空の様でもあった。

 

そして、エクレシアとアルバスへと静かに語り掛ける。

 

「よくこの大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)まで来たな。白の聖女(エクレシア)。それに白き世界より来た竜王の子(アルバスのらくいん)よ」

 

「アルバス君の事を知っているのですか!?」

 

「無論だ。赫の烙印(あかのらくいん)を受け継ぐ少女、エクレシアよ」

 

赫の烙印(あかのらくいん)?」

 

「そうだ。かつて白の世界で命を落とした赫の聖女(あかのせいじょ)が持っていた、白の烙印(しろのらくいん)とは似て非なる力だ」

 

エクレシアは承影(ショウエイ)が何を言っているのか理解できず、首を傾げたが、承影(ショウエイ)は詳しく説明する様な事はなく、そのまま話を続けた。

 

赫の烙印(あかのらくいん)白の烙印(しろのらくいん)が交われば、真なる竜王の力が目覚めるが、今のお前たちはまだその領域に立っていない」

 

「……」

 

「故に、まずは力を見定める純鈞(ジュンキン)!」

 

承影(ショウエイ)が名を呼んだ事で、奥から四つ足の獣が現れ、その白く輝く角を光らせながらエクレシアとアルバスを見据えた。

 

「今より【相剣瑞獣(そうけんずいじゅう)純鈞(ジュンキン)】の力により見極めを行う」

 

「見極め……!」

 

「そうだ。お前たちの力が、善に向かうのか。悪に向かうのかを見定める。悪に向かう者に力を授ける訳にはいかない」

 

承影(ショウエイ)がそう言った瞬間、純鈞(ジュンキン)の角から光が溢れ、それがエクレシアとアルバスに当たり、二人の体を輝かせる。

 

エクレシアは僅かに白を混じらせた金色に。

 

そして、アルバスは燃える様な赤い色に光る。

 

「……ふむ」

 

「えと……」

 

赤霄(セキショウ)氷水(ヒスイ)の者たちを呼べ、コスモクロアの元へ二人を送る」

 

「いきなり氷水(ヒスイ)とは、良いのか? 承影(ショウエイ)

 

「問題ない。この私、【相剣大公(そうけんたいこう)承影(ショウエイ)】が認めよう」

 

「分かった。では連絡を取ってくる」

 

赤霄(セキショウ)は軽く挨拶をすると部屋から出て行ってしまった。

 

遺されたエクレシアとアルバスはどうすれば良いのか分からないまま、キョロキョロと周囲を見渡してしまう。

 

「……落ち着け。エクレシア。アルバス」

 

「あ、あの、ごめんなさい」

 

「謝る様な事ではない。お前たち二人はこの世界の希望になる可能性がある。己の心を見極め、相剣(そうけん)の力を手に入れろ」

 

「っ、は、はい!」

 

言われている言葉の意味は殆ど分からずとも、相剣(そうけん)の力を手に入れる為にこの地へ来たエクレシアとアルバスにとって、承影(ショウエイ)の言葉はそれを肯定するものであり、嬉しさが顔にも現れる。

 

感情を顔に出す。

 

そんな未熟な二人を見て、承影(ショウエイ)は心の中で微笑みを浮かべながら自身の未来を考えた。

 

そして起こる事が分かっている波乱と、食い止める為の策も考えるのだった。

 

 

 

承影(ショウエイ)の居る部屋で待っていたエクレシアとアルバスは、赤霄(セキショウ)が帰ってきた事で、共に居る存在に目を向けた。

 

透き通る様な水の体と、女性の様に柔らかく微笑むその者を。

 

「あら。初めましてかしら。私は氷水(ヒスイ)のアクティ。水に魂を宿した精霊よ。だからもしかしたら前にも会ってるかもね」

 

「アクティさん。私はエクレシアと申します。こちらはアルバス君です」

 

「そう。エクレシアにアルバス」

 

アクティはふわり、ふわりと浮く様に歩き、エクレシアの前まで来るとその手をキュッと握った。

 

突然の行動にビックリするエクレシアであるが、不思議と不快な気持ちはない。

 

まるで水浴びをしている様に、どこか安らぐ様な気持ちを感じるのだった。

 

「エクレシア。そう。貴女がエクレシアなのね?」

 

「……アクティさん?」

 

「水を通して貴女の事が視えるわ。貴女は水浴びが好きなのね。ふふ。昔の貴女は水浴びばかり」

 

「えと」

 

「水には全ての記憶が残っているわ。貴女と触れ合った水は全てね。だから、どれほど昔でも私には視えるの。フルルドリスと一緒に水に触れて、笑う貴女が見えるわ」

 

「……お姉様」

 

エクレシアは懐かしい事を思い出す様に微笑み、アクティもまた、そんなエクレシアを見て微笑むのだった。

 

 

 

そして、アクティはアルバスの記憶も視ようとしたが、生憎とアルバスはこの世界に落ちてからの記憶しかなく、あまりにも強く焼き付いているエクレシアとの思い出ばかりを語ってしまい、エクレシアを赤面させてしまうのだった。

 

それから、話を無理矢理中断させたエクレシアに頼まれてアクティは氷水(ヒスイ)達の住まう場所【氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドル】へと案内する事になる。

 

イニオン・クレイドルは大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)の雪が溶けて集まった、世界で最も美しい水が集まる場所であり、全ての始まりが集まる場所でもある。

 

水の中だというのに、呼吸が出来る不思議な世界で、エクレシアとアルバスはアクティの背を追うように水の中を進んでゆくのだった。

 

「ここは私たち氷水(ヒスイ)の世界。心も体も全てが見える場所。原初の世界。透明な世界だわ」

 

アクティの言葉通り、水に潜ってからのエクレシアとアルバスは言葉で会話をしていた時よりもずっと心が近くなり、何も語らずとも心が通じ合ってゆく。

 

そして、それはアクティに対しても同じであり、またこの世界に住まう他の氷水(ヒスイ)達も同じであった。

 

「あら。アクティ。随分と可愛らしいお客様ね」

 

「そうなの。可愛いでしょう? エクレシアとアルバスよ」

 

「そう。あなた達がそうなのね。私は【氷水(ヒスイ)のティノーラ】歌と踊りのティノーラよ。私が踊り出すと、みんな気になって出てくるの。素敵でしょう?」

 

「ティノーラ」

 

「ほらね」

 

ティノーラは無表情の様な感情の見えない顔で揺れると、多くの氷水(ヒスイ)を呼びながら水の中で踊り続けた。

 

その美しい姿にエクレシアもアルバスも見惚れてしまう。

 

そして、ティノーラに別れの言葉を渡し、水底へと進んでゆくエクレシア達は、そこで静かなる氷水(ヒスイ)と出会う。

 

「あら。今日は少し騒がしいわね」

 

「あの、ごめんなさい! 私……」

 

「知っているわ。エクレシアとアルバスでしょう? 私は【氷水(ヒスイ)のトレモラ】。ここで流れてゆく魂を見送っていたわ」

 

大きな水の塊に座っているトレモラは、長い三つ編みを揺らしながら頬に手を当てて小さく息を吐く。

 

疲れているのか、呆れているのか、表情からは見えないが、エクレシア達を邪見に扱っている訳では無いようだった。

 

ただ、エクレシア達が来る前と変わらず、大きな水の流れを見て、いくつかの魂を拾っては自分が座っている水の塊に取り込んでゆく。

 

その行為にどんな意味があるのかエクレシアには見当もつかなかったが、あまり邪魔をするのも良くないと、アクティと共にトレモラの元から離れてゆくのだった。

 

「あら。もう行くのね。人間はせわしないわ」

 

「え、あの」

 

「気にしないで。コスモクロアとエジルはこの奥よ」

 

無表情のまま手を振るトレモラに手を振りながら、エクレシアはアクティと共に氷水(ヒスイ)の主が住まう場所へと行くのだった。

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