遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第24話【相剣暗転(そうけんあんてん)

エクレシアとアルバスが氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドルに向かってから数日が経った。

 

しかし、二人はそれから一度も地上へ戻ってきてはいない。

 

その事実が相剣軍師(そうけんぐんし)龍淵(リュウエン)を苛立たせていた。

 

エクレシアと親しい訳ではない龍淵(リュウエン)が何故これほど苛立っているのかと言えば、彼には一つの野望があるからだ。

 

そう。

 

それは、この世界の支配や破壊という様な即物的な野望ではない。

 

ただ、古き友との約束であり、世界を正す野望である。

 

「……さて、どの様に動くべきか」

 

龍淵(リュウエン)は一人呟きながら、大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)の情勢を伺っていた。

 

まずは承影(ショウエイ)純鈞(ジュンキン)が居るであろう相剣(そうけん)の間。

 

そして、大霊峰全体を管理すうる為に、見回りの状況を確認している赤霄(セキショウ)とその弟子泰阿(タイア)

 

さらに泰阿(タイア)と共に大霊峰全体の見回りをしているであろう龍淵(リュウエン)の弟子莫邪(バクヤ)だ。

 

一人、一つとゆっくり遠見の鏡で確認していた龍淵(リュウエン)であったが、そのどれにも異常はなく、安堵と苛立ちを同時に感じながら己の部屋に視線を戻す。

 

が、そこで違和感を感じた龍淵(リュウエン)は自らの相剣(そうけん)を驚くべき速さで抜き、それを構えながら、空間を睨みつけ、言葉を投げつけた。

 

「何者だ。名を名乗れ」

 

静かで冷徹なその言葉は、聞く者の体を震わせる様なものであるが、その侵入者はその程度で怯える様な事はない。

 

空間に赤き亀裂を入れると、そこから這い出てくる様に姿を見せるのだった。

 

「……見慣れぬ者だな。名を名乗れ」

 

再び龍淵(リュウエン)は右手に持った自らの金色に輝く相剣(そうけん)を握りしめながら、侵入者であるデスピアの凶劇(アドリビトゥム)に問う。

 

しかし、返答はなく、そのまま斬り捨てようとした……。

 

だが、デスピアの凶劇(アドリビトゥム)が開いた世界の歪の向こう側から懐かしい声が聞こえ、攻撃の意思を捨てるのだった。

 

「随分と久しぶりになってしまいましたね。龍淵(リュウエン)

 

「お前だったか」

 

龍淵(リュウエン)は歪の向こう側からこちら側へやって来た教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)を見て、敵意を消しながら手に持った相剣(そうけん)も消す。

 

「お前がここに来るとはな。計画が動き始めたという事か? まだ猶予はあると思ったが」

 

「えぇ。本来はその予定だったのですが、少々予定外な事が起こりましてね」

 

「想定外な事?」

 

「上の世界から来たんですよ。白の竜王の子供が」

 

「ほぅ」

 

「しかも、それであの子が外の世界へ出てしまいましてね。今も何処にいるか分からないのですよ」

 

龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の言葉にフッと笑うと、緩やかに口を開いた。

 

「その子というのは、エクレシアという名前ではないのか?」

 

「っ! 知っているのですか?」

 

「あぁ。つい先日の事だが、こちらに来た。相剣(そうけん)の力を得る為だと言ってな」

 

相剣(そうけん)の力を……」

 

龍淵(リュウエン)の言葉に、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)はやや考え込む様な仕草をしてから、ふむと言葉を漏らす。

 

そして、一つの言葉を龍淵(リュウエン)に向けた。

 

「では、我らの計画も早めるとしましょうか」

 

「良いのか? あの少女は」

 

「えぇ。こうなった以上は仕方ないでしょう」

 

「そうか。では私も始めるとしようか」

 

龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の言葉に頷くと、自席へと向かい、いくつかの道具を手に取った。

 

そして、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)へ向き直ると笑う。

 

「では、私はエクレシアと白の烙印を手にれるとしよう」

 

「お任せします。私も計画を進めるとしましょう」

 

「あぁ、分かった」

 

龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)はそれぞれ軽く会話を交わした後、それぞれの場所に向かおうとした。

 

しかし、教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)が再び赤い亀裂の向こうへ向かおうとした瞬間に、龍淵(リュウエン)はその背に声を掛けた。

 

「そういえば、フルルドリスが相剣(そうけん)の力を手に入れて、そちらに向かったぞ」

 

「そうですか。分かりました」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は仮面の中で笑うと、そのまま亀裂の向こうへと帰ってゆくのだった。

 

その背中を龍淵(リュウエン)は静かに見送り、自らも部屋を出て外へ向かう。

 

 

 

龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の密談は誰にも見つからない場所で行われた。

 

しかし、そう思っていたのは二人だけであり、二人の密談はアルベル達によって監視されていた。

 

「やれやれ。困ったものだね」

 

「アルベル?」

 

アルベルは空中に映した龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の密談を見ながら、笑みを浮かべる。

 

そんなアルベルを見て、クエムは首を傾げた。

 

「あぁ。裏切者のね。動きを見ていたんだ」

 

「裏切者ですって!?」

 

「そうだよ。って言っても、裏切者っていうのもまた違うのかもしれないけどね」

 

アルベルは窓際に座り、静かな笑みを浮かべながら遠い空を見据えた。

 

そして、これから先どうするか考えながら、小さく息を吐き出す。

 

「でも、状況はあんまり良くないね。こっちはまだエクレシアの居場所を見つけていないワケだし」

 

「私が、動きましょうか?」

 

「いや……その必要はないよ」

 

「……」

 

「僕が行く」

 

「そんな! 危険よ! アルベル!」

 

「まぁまぁ。僕の花嫁なんだから、僕が迎えに行くべきだろう?」

 

アルベルは心配だと声を上げるクエムに、何でもない事だという様に言葉を返し、右手を軽く振った。

 

「貴方は王じゃない。王なら、命令を下して配下を動かすべきじゃないかしら」

 

「確かにね」

 

「っ! そうでしょう!?」

 

「でもさ。僕は王である前に一人の男だからね。男なら格好いい所を見せたいだろう?」

 

少年の様に笑うアルベルに、クエムは言いづらそうに言葉を濁し、語り始めた。

 

「でも、あの子は、カルテシアじゃないわ」

 

「知ってるよ。今はエクレシアっていう名前なんだろう?」

 

「名前だけじゃない。貴方と過ごした時間も何も、覚えていないのよ」

 

「まぁ、しょうがないと思うよ。何せ転生って奴をしたんだしね」

 

「……」

 

「でも、僕と会えば、話をすれば思い出すだろう? それが愛って奴じゃないかな」

 

フフフと楽しそうに笑うアルベルに、クエムは非常に困って言葉を詰まらせてしまった。

 

それはそうだろう。

 

まだアルベルはエクレシアと会った事も話した事も無いのだ。

 

だからこそ、ある意味で想像だけの存在としてエクレシアを作り上げてしまっている。

 

カルテシアを失った日に削り取られた己の心を埋めようと、カルテシアの延長戦にエクレシアが存在すると信じている。

 

それが、何か悪い事に繋がるのではないかと、ただ……クエムは恐ろしいのであった。

 

「アルベル。もしも、もしも……よ?」

 

「うん」

 

「もし、エクレシアが貴方の事を思い出さなくても、落ち込まないで」

 

「……」

 

「エクレシアも色々とあったから、もしかしたら記憶が戻らないかもしれないの。今のあの子は普通の子だから……」

 

「あぁそういう事か」

 

「アルベル?」

 

「なら、大丈夫だよ」

 

アルベルはカラッとした少年らしい笑顔で微笑み、クエムの不安を吹き飛ばす様に明るい言葉を放った。

 

「僕だって全てが全て上手くいくとは思っていないさ。記憶は……まぁ、最悪は諦めるよ」

 

「……そう」

 

「でも、そうだね。確かに記憶が戻らない可能性はあるか……なら、うん。早く会った方が良いかもね」

 

アルベルは自分をそう納得させると、エクレシアの居る場所へ向かう準備をする。

 

そして、おそらくは龍淵(リュウエン)がその居場所を知っているのだろうと、再び監視を始めるのだった。

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