遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第25話【氷水浸蝕(ヒスイシンショク)

相剣軍師(そうけんぐんし)龍淵(リュウエン)教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)との密談を終えてから、相剣師(そうけんし)達が住まう屋敷の中を歩き、弟子を探していた。

 

そして、ちょうど赤霄(セキショウ)泰阿(タイア)との定例会議を終えた莫邪(バクヤ)を発見し呼び止める。

 

莫邪(バクヤ)

 

「師匠? 何かありましたか?」

 

「いや……なに」

 

龍淵(リュウエン)は非常に珍しく笑みを浮かべながら莫邪(バクヤ)へと手を伸ばす。

 

その瞬間、莫邪(バクヤ)は何もしていないというのに、自らの相剣(そうけん)顕現(けんげん)した事に驚き、目を見開いた。

 

「なっ!?」

 

「フン……久しく、忘れていたな」

 

龍淵(リュウエン)は自らの手に握られている莫邪(バクヤ)相剣(そうけん)を眺めながら鼻を鳴らす。

 

「どうして……師匠」

 

「未熟者め。説明してやらねば理解出来んか」

 

「……っ」

 

「所詮は何の才も持たぬ者。何か目覚めれば使ってやっても良かったがな。所詮ゴミはどれだけ磨いてもゴミか」

 

龍淵(リュウエン)は冷たく莫邪(バクヤ)を見下ろすと、莫邪(バクヤ)相剣(そうけん)を振り上げた。

 

武器を奪われた莫邪(バクヤ)龍淵(リュウエン)の攻撃を防ぐ手段はなく、このまま切り裂かれてしまうかと思われた。

 

だが、無意識に涙をこぼした莫邪(バクヤ)を見て、龍淵(リュウエン)は溜息を零すと、今莫邪(バクヤ)の中にある疑問に答える事にした。

 

「全ては策略だ。心の全てを見せれば氷水(ヒスイ)の者達が私を警戒するだろう。故に、我が心を二つに分け野望を見えぬ様にしたのだ」

 

「……野望」

 

「そう。野望だ。だが……この先をお前に教える必要はない。ここで死ぬお前には……」

 

龍淵(リュウエン)は振り上げた相剣(そうけん)莫邪(バクヤ)に振り下ろした。

 

が、その刃は莫邪(バクヤ)を傷つける事はなく、ギリギリと飛び込んできた泰阿(タイア)によって防がれる。

 

「っ!? な、何をしておられるのか! 龍淵(リュウエン)殿!」

 

泰阿(タイア)か」

 

「屋敷の中でこの様な狼藉は……」

 

「お前と話している暇はない。失せろ」

 

龍淵(リュウエン)は、左手に握った莫邪(バクヤ)相剣(そうけん)泰阿(タイア)相剣(そうけん)と拮抗させたまま右手に、金色の相剣(そうけん)を生み出し、泰阿(タイア)を斬り捨てた。

 

泰阿(タイア)!」

 

「……に、げろ……莫邪(バクヤ)!……ぐっ」

 

龍淵(リュウエン)に斬られ、血で白く美しい床を汚しながら、泰阿(タイア)莫邪(バクヤ)に叫んだ。

 

しかし、その言葉を最期に泰阿(タイア)龍淵(リュウエン)にトドメを刺されてしまった。

 

無様に、よろけながら走って逃げる莫邪(バクヤ)を見て、龍淵(リュウエン)はもはやここに用は無いと、床を砕きながら空へ跳び、そのまま大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)の最奥にある氷水(ヒスイ)たちの住まう場所、氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドルを目指すのだった。

 

 

 

大霊峰(だいれいほう)の雪解け水が集まり出来た巨大な透き通る湖に龍淵(リュウエン)は飛び込むと、右手に金色に輝く相剣(そうけん)、そして左手に紫に輝く相剣(そうけん)を握りながら一気に水底まで突き抜けてゆく。

 

水面から降り注ぐ光が、平穏な氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドルを照らしていたが、龍淵(リュウエン)が武器を手にしながら現れた事で騒然となり、慌ただしく氷水(ヒスイ)の者達が動き回っていた。

 

そして氷水(ヒスイ)を代表してアクティが武器を構えたまま動かない龍淵(リュウエン)の前に立ち事情を聞く。

 

龍淵(リュウエン)。いったい誰の許可を得て、この地に、っ……え?」

 

「邪魔だ」

 

龍淵(リュウエン)の前に立ち緊張しながら話しかけていたアクティであったが、直後、龍淵(リュウエン)の刃によって切り裂かれ、水に戻ってゆく。

 

「なんて事を!?」

 

「コスモクロア! 龍淵(リュウエン)が!」

 

「やれやれ。騒がしい事だな」

 

龍淵(リュウエン)は慣れない武器を持ちながら、自分を警戒する氷水(ヒスイ)を見下ろし、傲慢に言葉を投げつける。

 

「エクレシアを差し出せ。そうすれば、お前たちを許してやろう」

 

「……エクレシアに何をするつもり!?」

 

再び人の姿を取り戻したアクティに龍淵(リュウエン)は冷たい視線をぶつけた。

 

「下らん問いだな。それを知ったところでお前たちに出来る事は何も無い」

 

「そうね。私たちじゃあ貴方の相剣(そうけん)に対抗出来ないわ」

 

「分かっているのなら……」

 

「そう! 私たちなら……ね!!」

 

龍淵(リュウエン)!!!」

 

「っ!? 赤霄(セキショウ)だと!?」

 

水面に激しく着水しながら飛び込んできた赤霄(セキショウ)は刃を構えたまま空中を落下する様な速度で水底まで落ちてくると、そのまま龍淵(リュウエン)に刃を振り下ろした。

 

だが、当然龍淵(リュウエン)はその刃を右手の相剣(そうけん)で受け止める。

 

しかし、赤霄(セキショウ)の攻撃に合わせて、氷水(ヒスイ)の者たちも攻撃を仕掛けてきた為、龍淵(リュウエン)は体勢を崩してしまう。

 

「チッ」

 

「逃がさんぞ! 龍淵(リュウエン)!」

 

赤霄(セキショウ)は勢いのまま水底を破壊する勢いで相剣(そうけん)を振り下ろし、龍淵(リュウエン)は上手くそれを受け流し、距離を取ろうとするが、氷水(ヒスイ)の者たちがそれをさせまいと攻撃を繰り返し、龍淵(リュウエン)の居場所を制限する。

 

「何故裏切った! 何故泰阿(タイア)を斬った! 龍淵(リュウエン)!!」

 

「それを貴様に答える義理はない!」

 

両手に握られた相剣(そうけん)赤霄(セキショウ)の猛攻を受け流そうとする龍淵(リュウエン)であったが、龍淵(リュウエン)を集中させまいと氷水(ヒスイ)の攻撃は苛烈になり、受け流す事も厳しくなってゆく。

 

そして遂に、赤霄(セキショウ)の攻撃によって龍淵(リュウエン)は弾き飛ばされ、壁に激しく叩きつけられた。

 

龍淵(リュウエン)。降伏しろ。もはやお前に勝ち目はない」

 

「……勝ち目はない、か」

 

「あぁ。この状況ではもはやお前に出来る事は何もない」

 

「出来る事がない。勝ち目がない。屈服するしかない。その様な言葉は気が狂う程に聞いてきた言葉だ」

 

龍淵(リュウエン)……?」

 

龍淵(リュウエン)は、赤霄(セキショウ)の言葉にも答えぬまま立ち上がり、相剣(そうけん)を構えぬまま静かに水面へと視線を移した。

 

その奇妙な行動に、赤霄(セキショウ)氷水(ヒスイ)の者たちも警戒しながら、龍淵(リュウエン)の先を待つ。

 

「俺は、空が好きだったんだよ。青い、どこまでも透き通る様な空が好きだったんだよ。赤霄(セキショウ)。だから取り返したいと思ったんだ」

 

「青い空ならば、あるだろう。どこにでも」

 

「違う」

 

「っ」

 

「俺が愛した空は汚された……あの空に刻まれた呪いによって穢されたのだ」

 

龍淵(リュウエン)……!」

 

「俺は、全てを取り戻す。力を手に入れ、白の世界を滅ぼし、俺の愛した美しき世界を取り戻すのだ……!」

 

龍淵(リュウエン)は目を見開き、両手の相剣(そうけん)を合わせ、世界を光で包み込んだ。

 

直視できない眩い光で覆われた氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドルは、次の瞬間光を切り裂く黒い閃光によって切り裂かれ、激しく水をかき回しながら崩れてゆく。

 

龍淵(リュウエン)!!」

 

「もはや俺は止まらん。赤霄(セキショウ)承影(ショウエイ)。お前たちの命を奪うとしても」

 

龍淵(リュウエン)……いや【相剣大邪(そうけんだいじゃ)七星龍淵(シチセイリュウエン)】は漆黒に染まった相剣(そうけん)を振るい、赤霄(セキショウ)を彼の相剣(そうけん)ごと斬り捨てた、

 

そして、水面からゆっくりと降りてくる相剣大公(そうけんたいこう)承影(ショウエイ)へと視線を向ける。

 

龍淵(リュウエン)

 

承影(ショウエイ)

 

静かに見つめ合う二人は、ボロボロの氷水底(ヒスイテイ)イニオン・クレイドルの中で見つめ合い、そしてぶつかるのだった。

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