遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
聖女エクレシアの朝は早い。
……という様な事はなく、エクレシアは朝陽が昇ってもベッドの上でゴロゴロと寝返りを打ち、女官が起こしに来ても顔を枕に押し付けて唸り声をあげるだけであった。
そんなエクレシアに、女官たちは慣れた仕草でベッドから起こすと服を着替えさせ、聖女として清く正しい姿に見える様に見た目を整えてゆく。
それから女官たちは普段通りの姿となったエクレシアを部屋の外へ追い出すと、聖女様の部屋も整えていった。
部屋を出たエクレシアは、流石にもう目を覚ましており、まずは祈りの間で両手を握り合わせて神への祈りを行うのだった。
そして、朝の祈りが終わったエクレシアは朝食を食べ、目的もなく教会の内部を歩いていたのだが、廊下の先にフルルドリスの姿を見つけて呼びかけながら走るのだった。
「お姉様……!」
「あぁ、エクレシア。おはよう」
「お、朝から元気だな? エクレシア」
「エクレシア様、だ。言葉遣いには気を付けろ。テオ」
「アディン。お前は相変わらず固いなぁ」
騎士フルルドリスしか見えていなかったエクレシアは、フルルドリスの陰に隠れて見えていなかった二人の騎士に、足を止めながら勢いよく頭を下げる。
「おはようございますっ! テオ様! アディン様!」
「おはようございます。聖女エクレシア様」
「お。良い朝だな。エクレシア」
「エクレシア様! だっ!」
やや神経質そうなやせ型の青年【
そんな二人の、いつもと変わらない姿にエクレシアは口元を右手で押さえながらクスクスと笑う。
姉の様に慕っているフルルドリスが最も信頼する騎士仲間であるテオとアディンは、エクレシアにとっても信頼できる人間たちであり、フルルドリスが姉であるならば、二人は頼りになる兄の様な存在であった。
そして、四人はそこでいつもの様に世間話をしていたのだが、すぐに中断する事となった。
何故なら、四人にもハッキリと分かる様な異常が聞こえてきたからだ。
「……!? これは、爆発音」
「どうやら異教徒共が攻めてきたみたいだな」
「テオ!」
「分かってる。フルルドリス。エクレシアを頼む」
「あぁ。分かっている」
テオとアディンは爆発音がした方に向かうべく騎士団の待機所へと向かう。
そんな二人に、エクレシアはフルルドリスに手を握られたまま声を掛けるのだった。
「テオ様! アディン様! どうか、お気をつけて!」
「任せろ!」
「すぐに戻ってきます!」
走り去る二人の背をエクレシアはいつまでも見つめていたが、フルルドリスに手を引かれた事で教会の奥へと移動を始めた。
「お姉様……」
「二人なら心配は要らないさ。テオもアディンも強い。それに聖痕の力は異教徒の力を弾くからな。負ける事などあり得ないよ」
「そう、ですよね」
エクレシアは一度も戦場に立った事はなく、異教徒も
だからこそ、そんな恐ろしい存在に立ち向かう《教導騎士団》の事が心配なのだが、己に出来る事は何もないと、神に彼らの無事を祈る事しか出来ないのだった。
エクレシアが教会の奥でテオやアディン……そして《教導騎士団》や国民の無事を祈っている頃、ドラグマに奇襲を仕掛けた者たちは、爆破した壁の上に立ちながらドラグマの街並みを見下ろしていた。
「シュライグ! 目標は?」
「あの奥に見える建物だ。あの奥に例の像があるハズだ」
「オッケー。じゃあ真っすぐに行ってぶっ壊すだけだね」
「無茶をするなフェリジット! キットが泣くぞ!」
「そのキットが泣かない世界の為よ。命を捨てるくらいの覚悟が必要なんだ!」
フェリジットと呼ばれた女性は爆発で汚れたゴーグルを拭うと、細長い銃剣を構えて、迫りくるドラグマの騎士に向かって発砲する。
彼女は
そんな彼女の呼び名は【
「ルガル。フェリジットの援護を頼む」
「分かったぜ。シュライグ」
そして、顔を覆うマスクを付けながら、彼ら
二人は、先行するフェリジットに襲い掛かろうとするドラグマの騎士に刃を向け、一人、また一人と無力化してゆくのだった。
目指すべき場所はドラグマの中央にある教会であり、祈りの間にある
「そこで止まれ! フェリジット!!」
ドラグマの騎士を倒しながら突き進んでいたフェリジットは、空から響いた声に足を止め後方に飛びながら先ほどまで自分が居た場所を見れば、巨大な武具を右手に纏ったテオが勝気な笑顔を浮かべながら地面を破壊しつつ着地する所だった。
後一瞬下がるのが遅ければ大きなダメージを負っただろうが、敵であるハズのテオが攻撃を教えた為、フェリジットにダメージは無い。
「さぁ、俺が来たからには快進撃はここで終わりだぜ。大人しく帰りな。フェリジット」
「……馴れ馴れしく名前を呼ぶな。鉄槌のテオ」
「良いじゃねぇか。俺とお前の仲だ」
「どんな仲だ!!」
怒り、声を上げるフェリジットに、テオはへッと笑うと、視線をシュライグへと向けた。
「なぁ、シュライグ。頭の良いお前なら分かるだろ? 俺たちに聖痕がある以上、お前たちの攻撃は届かない。いずれは疲弊し、敗北し、殺される。なら……」
「テオ」
「っ」
「お前やアディン、フルルドリスのみが敵であったのならば、和解の道もあっただろう」
「……シュライグ」
「だが、お前の後ろに! あの邪神が居る以上! 我らは退けん!! あの邪神像を破壊しホールへの入り口を閉じねば、奴の欲望に世界が壊される!! 故に! 我らは、あの教会にある全てを破壊する!」
「お前があそこをぶっ壊そうってんなら、俺は退けねぇよ! あの場所にはエクレシアが! フルルドリスが居るからな! それをお前に壊させるわけにはいかねぇ! アディン!」
「あぁ!! 聖痕よ! テオに加護を!」
陰に隠れて話を聞いていたアディンはテオの言葉を合図として、支援の奇跡をテオに対して使用し、自らも戦闘を行える様に準備する。
そして、アディンの支援を受けたテオは怒りに拳を握りしめながら、同じく激しい怒りを拳に秘めて飛び掛かるシュライグと空中でぶつかるのだった。
「シュライグ!!」
「テオ!!」
テオとシュライグ。
退けない理由を持った二人がぶつかり合い、その余波がドラグマの騎士を、そして
「みんな! シュライグに続け!」
「おぉー!!」
「迎え撃て! 聖女様に近づけるな!! 前へ進め!!」
叫ぶフェリジット、そしてアディンの声に応え、ドラグマの騎士と
そして、その戦いの影響か、空にぽっかりと空いた大穴……ホールの向こう側で何かが蠢き、それがゆっくりと地上に向けて動き始めるのだった。
しかし、まだ誰も気づかない。
ドラグマの市民たちも、ドラグマが誇る《教導騎士団》も、
そして教会にいる
未だ、誰も……気づいてはいないのだった。