遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
デスピアの
無論このまま神とやらを討ちたい気持ちもフルルドリスにはあったが、このまま一人で戦い続ける事が危険だという事もよく分かっていた。
敵の正体が分かり、さらには敵の中心に居るであろう一人を倒した。
既に十分すぎる戦果だ。
このまま戦っても待っているのは死だけ。だから逃げるという判断は非常に正しい。
そう。問題があるとするならば、その判断がもはや遅すぎるという事だけなのだ。
「……」
フルルドリスはデスピアの
静かすぎる。
先ほどまで戦闘を行っていて、敵であるフルルドリスがまだ国の中枢近くにいるというのに、周囲から異様なほど気配を感じない。
「なんだ……それに、これは」
そんな静寂の中、フルルドリスの耳に一つの音が届いた。
それは教会が鳴らす鐘の音である。
その気持ち悪さに、フルルドリスはこれ以上留まる事は危険と判断して、即座に地面を蹴り、飛ぼうとした。
しかし、そう。
既に全ては遅すぎるのだ。
跳び上がったフルルドリスの前に現れたデスピアン・クエリティスは両手を広げてフルルドリスの行く手を遮ると、そのまま巨大な腕を振り下ろしてフルルドリスを地面に叩きつける。
「っ!? なんだ、あの化け物は!? どこから現れた!?」
『ふ、ふふ、フルルドリス。駄目じゃない。ちゃんと儀式には参加しなきゃ、騎士でしょう?』
「お前は……何者だ」
デスピアン・クエリティスはフルルドリスを大通りの中央に叩き落とした後、フルルドリスの正面に降り立って、不気味な声で語り始めた。
その声から感じる悪意に、フルルドリスは武器を構えながら精神を集中させる。
『何者か。なんて質問に意味は無いわ……でも、そうね。答えてあげる』
次の瞬間、デスピアン・クエリティスは両手を高く振り上げて、それらを呼んだ。
ゆっくりとフルルドリスの両側を歩く一団は皆が皆、喪服を纏い、黒いフードを被って顔を隠しながら歩いていた。
そして、フルルドリスのすぐ背後からやや小さな棺桶を担いだ者達が現れ、フルルドリスの前にその棺桶を置く。
開かれた棺桶の中に居た少女を、フルルドリスは知らない。
だが、この場において、この意味不明な行動が理解出来ず、ただただ周囲を警戒する事しか出来ないのであった。
『663の聖女達よ。また一つの魂が混ざり合う。かつて失った聖女の魂を呼び戻すために……まずはこの聖女の魂を【
「……663の聖女、だと?」
フルルドリスの疑問に応える様に周囲の者達のフードがめくれ、虚ろな目でジッとフルルドリスを見つめる少女達の姿が現れた。
その少女たちはフルルドリスが生まれる前にドラグマに居た聖女達なのだが、その事実をフルルドリスが知る事はない。
だが、この状況が危険である事は嫌という程理解していた。
「っ!」
しかし、フルルドリスが逃げようとすると、近くに居た聖女達がフルルドリスの体にしがみつき、その体をここに縛り付けようとする。
まるで自分たちと同じ犠牲者を求める様に。
「離せ!」
そしてフルルドリスもまた、エクレシアの様な幼い少女たちを切り捨てる事も出来ず、そのまま拘束されてしまうのだった。
「……あぁ」
「っ!?」
フルルドリスが何とか逃げようともがいている頃、悪意は遂にその姿を現した。
魂が奪われ、抜け殻となった肉体が……動き始める。
「本当に長かったわ。これでようやく私も、あの子の為に動けるのね」
棺桶の中に入っていた体が一人で動き始め、指を動かし、腕を動かして、棺桶に手を付いて自分の体を支えながら立ち上がる。
未だ慣れていないのか、体が震えているが、それでもその体は確かに誰かの意思で動いていた。
「はじめまして。と言った方が良いのかしら。フルルドリス。私は……そうね。【
「……」
「早速で悪いけど。貴女にはデスピアン・クエリティスの一部になって貰うわ。ねぇ? 665番目の聖女さん」
「お前は、お前たちは何をするつもりだ」
「何をって決まっているじゃない。愛する我が子にこの世界と、アルベルを愛し続け、決して滅びない。アルベルの前から絶対に居なくならない聖女をプレゼントするのよ」
「そんな、下らない計画にエクレシアを巻き込むというのか!!」
「巻き込む訳じゃないわ。逆よ。エクレシアが計画の中心なの。どちらかと言うと、貴女達がおまけね」
「くっ」
「そんなに暴れても無駄よ。彼女たちは聖女の魂だけど……その体はもはや普通の少女じゃない。デスピアン・クエリティスの一部だもの」
そして、デスピアン・クエリティスの体のあらゆる場所にある目がジッとフルルドリスを見つめるのだった。
まるでこれから仲間となる存在を受け入れるかの様に。
「さぁ、フルルドリス。迎えに行きましょう。エクレシアを」
「……」
「そんなに睨まないで。貴女たちもエクレシアの中で永遠に存在できるし、エクレシアもアルベルと永遠に存在出来るのだから、最高に幸せじゃないかしら」
「ふざけるな……!」
フルルドリスは拘束されたまま身を乗り出して、クエムこと
だが、その行為に意味はなく、フルルドリスはそのまま闇の中に囚われてしまうのだった。
エクレシアを手に入れる為の餌として……。
フルルドリスが
その援軍というのは……。
「君達は……!」
「無事か! アディン!」
「シュライグ! 君達こそ無事だったのか! 君達の隠れ家は全て燃えたと聞いたが」
「あぁ。燃えたさ。だが、全てを失った訳じゃない。戦えぬ多くの者達は、生き残った。直前に立ち寄った巨大なドラゴンが住めるようにと作った地下の隠れ家に逃れてな……!」
「そうか……!」
アディンは敵でありながら、親しくなった者達の無事を喜び、シュライグもまた、たった三人で無謀にもデスピアへ挑んだ勇者たちを救うべく、仲間たちと共にデスピアの
「テオ! 生きてる!?」
「ぁ……あぁ、生きてるぜ。フェリジット。すまねぇな」
「別にこの程度。怪我が治ったら返してくれるんでしょ?」
「もちろんだ」
多くの血を流し、意識は消えかかっていても笑うテオにアディンは安心しながら、デスピアの内部へと視線を向けた。
先ほどからずっと嫌な予感がしているのだ。
「シュライグ。デスピアの内部へ向かう事は可能ですか? テオは無理ですが、私は……」
「フルルドリスの事なら分かっている。既にナーベルが内部に向かっている」
「そうですか」
「そういう訳だ。お前らまずはここを離れるぞ」
「えぇ。分かりました」
ルガルの言葉に応え、アディンはテオをフェリジットとは逆側から支え、共にデスピアから逃げるのだった。
しかし、新たな
そして、シュライグ達が計画しているデスピアへの反攻作戦に参加する事になる。