遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第31話【烙印の剣(らくいんのつるぎ)

アルバスこと黒衣竜(くろごりゅう)アルビオンはアルベルこと赫灼竜(かくしゃくりゅう)マスカレイドを倒した後、同じ様に龍淵(リュウエン)に向かって突撃した。

 

しかし、長く相剣(そうけん)を操り、実力を隠しながら戦っていた龍淵(リュウエン)にとってアルビオンの攻撃は速いだけの児戯に等しい。

 

故に容易くかわされてしまうのだった。

 

しかしそれでも龍淵(リュウエン)相剣(そうけん)もまた、アルビオンを捉える事が出来ない以上、戦いとしては成立する。

 

どちらがどちらかを仕留める事が出来れば勝ち、という戦いは。

 

しかし、二人きりの戦いはそう長くは続かなかった。

 

何故なら、この場にはアルビオンと龍淵(リュウエン)の者たちも存在するからだ。

 

例えば、龍淵(リュウエン)に敗北し、傷つきながらもまだ戦う意思を消していない承影(ショウエイ)

 

そして、龍淵(リュウエン)に裏切られながらも、師を止めようと水の中に飛び込んできた莫邪(バクヤ)もそうであった。

 

承影(ショウエイ)様!」

 

莫邪(バクヤ)か」

 

「はい! 私も戦いに参加させて下さい!」

 

「それは構わないが……お前は相剣(そうけん)を失ったのだろう? それでは戦場に立てん」

 

「それでも!!」

 

「……」

 

「それでも友であった泰阿(タイア)赤霄(セキショウ)様を斬った師を、龍淵(リュウエン)様を倒したいのです」

 

「そうか」

 

承影(ショウエイ)莫邪(バクヤ)の言葉に頷くと、傷ついた体で立ち上がり、使命を託す。

 

莫邪(バクヤ)よ。お前に我が力を託す」

 

承影(ショウエイ)様のお力を……? でも私には承影(ショウエイ)様の相剣(そうけん)は」

 

「あぁ、扱えぬだろうな」

 

承影(ショウエイ)の言葉にやや傷つきながらも莫邪(バクヤ)は己の未熟故だと自分を叩き、前を見た。

 

そして、言葉の続きを待つ。

 

「だが、力を振るうばかりが全てではない。莫邪(バクヤ)。この力をかの者に、アルバスに」

 

「アルバスに……?」

 

莫邪(バクヤ)は天を仰ぎ、ギリギリの戦いをしているアルビオンと龍淵(リュウエン)を見た。

 

確かに今の状況で最も龍淵(リュウエン)を倒す可能性があるのはアルビオンである。

 

ならば、と莫邪(バクヤ)は覚悟を決めた。

 

承影(ショウエイ)様。その任務。私が必ず果たして見せます!」

 

「……頼もしいな」

 

「お任せ下さい!」

 

承影(ショウエイ)は残る命を全て莫邪(バクヤ)に託し、数百年ぶりの笑顔を浮かべて逝った。

 

残された莫邪(バクヤ)は溢れる力を握りしめて、涙を振り払いなが立つ。

 

そして、空を見上げながら呟いた。

 

承影(ショウエイ)様。泰阿(タイア)赤霄(セキショウ)様。向こうの世界でもまた、よろしくお願いします。龍淵(リュウエン)様の事は、私が連れてゆきます故……では、行きます!!」

 

莫邪(バクヤ)相剣(そうけん)の屋敷から持ってきた普通の剣を手に、龍淵(リュウエン)へ向かって飛び込んだ。

 

姿は見えずとも、未だ残っている氷水(ヒスイ)たちの無念もその身に宿して、莫邪(バクヤ)は水の中をどんな生き物よりも疾く駆けた。

 

そして手に持った剣を龍淵(リュウエン)に振り下ろす。

 

「っ!? 莫邪(バクヤ)だと!?」

 

龍淵(リュウエン)様! その首! 貰い受ける!」

 

「くっ! これは!?」

 

莫邪(バクヤ)。動き続けて、止まったら危ない』

 

『水の流れに逆らっちゃ駄目』

 

『ふふ。龍淵(リュウエン)。貴方に莫邪(バクヤ)は捕まえられないわ』

 

「コスモクロアが消えれば氷水(ヒスイ)共も消えるはずだ! 何故まだ存在している!」

 

もはや姿は殆ど見えないが、それでも薄く水に溶け込んで存在している多くの氷水(ヒスイ)たちが莫邪(バクヤ)に力を貸し、莫邪(バクヤ)は自分でも信じられない様な鋭い速さで動き、全てを打ち倒す力で動いていた。

 

しかし、それでも。

 

それでも莫邪(バクヤ)の狙いは自分の手で龍淵(リュウエン)を倒す事ではない。

 

無論、このまま倒したい気持ちはあるが、何度か打ち合って理解した。

 

理解してしまった。

 

自分の手では龍淵(リュウエン)を仕留める事は出来ないと。

 

だから……。

 

「そこ、だっ!!」

 

龍淵(リュウエン)様……!!」

 

「なっ、莫邪(バクヤ)……! 貴様、何故避けなかった」

 

龍淵(リュウエン)様の剣が、鋭かったから」

 

莫邪(バクヤ)龍淵(リュウエン)相剣(そうけん)をその身に受けて、血を吐き出す。

 

血に濡れた震える手で、呆然と莫邪(バクヤ)を見ている龍淵(リュウエン)相剣(そうけん)を握りしめるのだった。

 

「こうして、貴方の心に触れて……分かる。あの厳しい言葉は、全て、私の為に」

 

「違う」

 

「娘の様に、思っていて下さったのですね」

 

「違う……! 私は、全ては野望の為に」

 

「だから、私に心を預けて下さった」

 

「私は!! 違うのだ……! 友を殺し、お前たちを手に掛けた私は、薄汚い裏切者だ。私を想ってはならん! 莫邪(バクヤ)

 

莫邪(バクヤ)は、龍淵(リュウエン)の手を掴んだまま、やや離れた場所から状況を伺っていたアルビオンに視線を向ける。

 

そして、血に濡れた美しい顔で微笑みながら、承影(ショウエイ)から託された力をアルビオンに氷水(ヒスイ)たちを通して受け渡すのだった。

 

この世界をずっと見つめ続けて来た男の魂を。

 

そんな男と共に、この世界の平穏を護り続けて来た女の願いを。

 

アルビオンはその身に受けた。

 

承影(ショウエイ)とコスモクロア。

 

二つの魂がアルビオンの中で混ざり合い、一つの刃として完成する。

 

燃え滾る様な意思を、氷様な信念で閉じ込めて、命を奪う為の武器ではなく、救う為の力として導く。

 

相剣(そうけん)として形を成すのではなく、相剣(そうけん)と一つになる事で、アルバスの剣は頂に到達した。

 

氷剣竜(ひけんりゅう)ミラジェイド】

 

アルバスの竜化と承影(ショウエイ)相剣(そうけん)氷水(ヒスイ)の力によって繋いだ究極の力――

 

世界を終わらせる事も、守る事も出来るその力で、アルバスは龍淵(リュウエン)へと向かう。

 

咄嗟に龍淵(リュウエン)莫邪(バクヤ)から相剣(そうけん)を引き抜き、構えたが、力なく水底へ落ちてゆく莫邪(バクヤ)を無意識に目で追ってしまった。

 

それは拾った子が、何の力も持っていない事を知った時、自身の相剣(そうけん)を二つに割って、与えた時の感情に似ていた。

 

利用するのだと言い訳をして、自分の心を騙して……この最も大事な瞬間にすら足を引っ張っている。

 

「……あぁ」

 

だが、不思議と龍淵(リュウエン)に後悔は無かった。

 

龍淵(リュウエン)は自分に向かって飛んでくるミラジェイドの力を感じながら目を閉じた。

 

思い出すのは、今日という日まで共に歩んできた友、承影(ショウエイ)達の姿だ。

 

「マクシムス」

 

そして、共犯者である教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の名を呼び、天を仰いだ。

 

自分の体が氷に覆われていく中で、何もせず、ただ言葉を落とす。

 

「確かにお前の言う通り……娘は可愛いものだな」

 

龍淵(リュウエン)という男が最期に落とした言葉を拾ったものはいない。

 

ただ、多くの者を巻き込んだ戦いが終わりを告げ、全ての元凶が氷の中で静かにその命を終わらせただけだ。

 

この戦いで何かを得た者は居ない。

 

だが、それでも……全てを失った者達は、また新たな明日へ……。

 

 

 

「大した力だな。名無し……! それが、王の力か!!」

 

嗚呼。

 

ようやく一つの戦いが終わりを告げたというのに、この静寂の世界で、一人の男がまだ立ち上がろうとしていた。

 

まだ憎しみを吐き出そうとしていた。

 

イニオン・クレイドルの瓦礫を吹き飛ばし、赫灼竜(かくしゃくりゅう)マスカレイドが咆哮を上げる。

 

新たな戦いを始める為に。

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