遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第32話【烙印融合(らくいんゆうごう)

地の底から帰ってきたかの様な咆哮を上げた赫灼竜(かくしゃくりゅう)マスカレイドは空に舞い上がり、氷剣竜(ひけんりゅう)ミラジェイドへと迫る。

 

しかし、氷剣竜(ひけんりゅう)ミラジェイドの力は凄まじく、マスカレイドはどうやっても太刀打ちする事は出来ないのだった。

 

『もう止めろ! こんな事! 意味がない!』

 

「意味がないだと!? この僕の存在を否定するのか!!」

 

『そうじゃない! こんな戦いを続けても、悲しみが広がるばかりで、誰も嬉しくないって言ってるんだ!! エクレシアだって!』

 

「お前がエクレシアを語るな!!!」

 

全身を傷つけながらもマスカレイドは翼を広げて空を舞う。

 

炎を吐き出し、ミラジェイドに打ち消されながらも、それでもと爪で切り裂こうと迫った。

 

何一つ届かないのだとしても、それでもマスカレイドは、アルベルは! 挑み続けた。

 

「ぐっ! 僕は……!」

 

『もう終わりだ』

 

ミラジェイドはマスカレイドを水底に叩き落とすと、冷たい息を吐いた。

 

空からマスカレイドを見下ろし、戦いを止めろという。

 

その視線が、その態度が、アルベルを見下しているその全てがアルベルにとって憎むべき物であり、全てを破壊したくなる衝動の源であった。

 

故に。

 

だからこそ。

 

アルベルは怒りをその胸に宿して、かつて共にあった女(カルテシア)が最期にアルベルへ託した力を解き放った。

 

 

 

神へと至る人の力(カルテシアの祈り)

 

 

 

アルベルの為だけに託された願い。赫の烙印(あかのらくいん)

 

その力によってアルベルは……赫灼竜(かくしゃくりゅう)マスカレイドは神の領域へと、白の竜王の領域へと至ろうとしていた。

 

憤怒を力にして、カルテシアの願いを抱えて、眼前の全てを焼き払う神の炎を放つ竜。

 

神炎竜(しんえんりゅう)ルベリオン】

 

世界の全てを破壊してなお消えぬ炎を宿した神なる竜だ。

 

「……名無し、お前に奪われた全てを僕は、取り戻す」

 

『奪われた……!?』

 

「この場所をお前の終焉の地にしてやろう!!」

 

ルベリオンは今までとは比較にならない程の疾さでミラジェイドに迫ると、氷の刃で出来た翼を噛み砕き、さらに上昇する。

 

そして、遥か上空から氷水(ヒスイ)の楽園ごと滅ぼすとでも言わんばかりに密度の濃い炎を吐き出し、ミラジェイドに向けるのだった。

 

だが、ミラジェイドも見ているだけではない。

 

ルベリオンの炎を受け止めると、それを切り裂き、炎を放っているルベリオンをも切り裂く。

 

その斬撃の鋭さにルベリオンは悲鳴の様な咆哮を上げるが、止まる様な事はなく、上空から急降下して、ミラジェイドの首を食い千切らんと迫るのだった。

 

二匹のドラゴンは激しくぶつかり合い、その戦いは上空へと昇って行く。

 

「エクレシアは僕の物だ!!」

 

『エクレシアは物じゃない! 生きている人だ! エクレシアの生きる場所はエクレシアが決める!』

 

「ならば僕に寄越せ! お前の居る場所を! エクレシアの隣を!」

 

『勝手な事を言うな! 俺は、エクレシアの為に生きると決めたんだ! お前みたいな奴に渡せるか!!』

 

噛みつき、切り裂き、燃やし、叩きつける。

 

二匹のドラゴンは互いの存在を示しながら、一つの場所を求めて奪い合う。

 

どうやっても同じ瞬間、同じ場所には存在できないミラジェイドとルベリオンは真反対の位置に立っているというのに、同じ想いを叫び続けていた。

 

ただ一人の少女を求めていた。

 

だが、やはりというべきか。

 

どれほどの執念でソレを求めていたとしても、ルベリオン……アルベルにとってカルテシアは遥か遠い昔の人だ。

 

記憶だって必死にアルベルが求めているから保っているだけ。

 

どこか遠い。

 

更に言うのであれば、カルテシアとエクレシアは違う人間なのだ。

 

それはほんの少し話しただけのアルベルでも分かってしまう様なハッキリとした物だった。

 

故に……。

 

『俺はエクレシアと共に生きてゆくと誓ったんだ!!』

 

「ぐっ! あっ……」

 

この世界に来て、記憶もなく、頼る者もなく、何も持たない少年アルバスが、出会い、二人で育んできた想いには勝てなかった。

 

ボロボロで、全身から赤い血を流しながら、それでもミラジェイドは、アルバスは愛を叫んでアルベルに勝利した。

 

『エクレシア……!』

 

空に向かって咆哮しながら落ちてゆくルベリオンから、その向こうで今まさに起き上がろうとしているエクレシアへと視線を移し、アルバスはエクレシアの元へ行こうとした。

 

未だドラゴンの姿から人間に戻れてはいないが、それでもそんな自分でも共に居たいと言ってくれた人だから。

 

『エクレシア!!』

 

だが。

 

「……行かせるか!! これ以上!!」

 

『お前、まだ!?』

 

地上に向かって落ちていたハズのルベリオンはもはや飛ぶことすら難しい様な体で飛行し、アルバスの背中に噛みついた。

 

そしてその背中を焼きながら呪いを振り撒いてゆく。

 

「お前が、落ちるんだ。僕じゃない。お前が!!」

 

『いい加減にしろ! 俺は……!』

 

もはや瀕死の状態を遥かに超えた状態になってもなお戦いを止めない二匹のドラゴンは、そのまま空でもつれ合い、ぶつかり合い、混ざり合ってゆく。

 

自分が何処か、敵が何か。腕が足が、思考が言葉が……!

 

何が自分で、どれがアイツか分からない様な世界の中にアルバスとアルベルは巻き込まれてゆくのだった。

 

それは、おそらくは《烙印》の力が暴走し起こっている現象であったが、その状態を正確に把握している者はいない。

 

何故なら、当事者であるアルバスとアルベルすらも自分たちがどうなっているのか分かっていないからだ。

 

 

 

そして、二匹のドラゴンは遥かな上空で混ざり合い、新たなる混沌の存在として再誕した。

 

世界を憎む感情と、この世界を救いたいと願う想い。

 

相反する二つの想いと願いと力が混ざり合って、白の烙印(しろのらくいん)赫の烙印(あかのらくいん)は限界を超えた一つの生命体をこの世界に誕生させた。

 

いや、誕生させてしまった。

 

その名も【深淵竜(しんえんりゅう)アルバ・レナトゥス】

 

二人の中に存在する世界への絶望と、愛する少女への想いを核として、それ以外の全てがただの力となり、その身の内で暴れまわった。

 

『僕は、エクレシアが俺の、世界は、それでも、愛は、憎しみの中で』

 

自分が何を言っているのか。

 

どうなりたいのか。

 

何を願っているのかも分からず、ただアルバ・レナトゥスは叫んだ。

 

空に向かって咆哮し、雲を消し飛ばしながらも、その力を世界中に向けて解き放ってゆく。

 

ただ一人。

 

エクレシアだけが傷つかない様にと、エクレシアを視界に収めながら、それ以外の全てに憎しみをぶつけてゆくのだった。

 

それはまさに終焉という言葉が相応しく、アルバ・レナトゥスの放った攻撃で、山は削り取られ、森は焼かれ、砂漠は吹き飛ばされて砂煙をあげる。

 

逃げ場などもはやどこにも無いだろう。

 

何故なら自らの目的すら分からなくなってしまった一匹のモンスターが世界の全てを焼き尽くすべく暴れまわっているからだ。

 

この荒ぶるモンスターを止められる者はただ一人しかいない。

 

世界の命運は今、アルバスとアルベルが求める少女……エクレシアに託されようとしていた。

 

 

 

しかし、そんなエクレシアにもまた別の危機が迫っていた。

 

そう。

 

デスピアでフルルドリスを捕えた者達が、エクレシアをも捕らえるべく空間を歪ませて現れていたのだ。

 

「アルバス君……! あの光、どうなっているのでしょうか」

 

「聖女」

 

「聖女エクレシア」

 

「いえ。今はそんな事を考えている場合では無いですね」

 

「聖女、捕まえる」

 

「……私も、負けません! 一緒に戦いましょう! アルバス君!」

 

戦いは、未だ終わる気配を見せない……。

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