遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第35話【分かつ烙印(わかつらくいん)

アルバスは自らの精神と、肉体が壊れては混ざり、修復されては、壊れるという混沌の世界で、それでも自分の魂を守りながら戦っていた。

 

そしてそれはアルベルも同じであり、二人は一匹のドラゴンの中で怒りをぶつけ合いながら戦い続ける。

 

しかし、その戦いも終わりの時が迫っていた。

 

そう。一匹のドラゴンの中から見えている外の景色に変化が生じたからだ。

 

エクレシアが、デスピアの者たちに向けて歩いている。

 

武器も持たず、戦う意思も示さずに、地獄へ向かおうとしている。

 

『どうやら僕の勝ちの様だな。名無し! 例えここでお前に力を奪われても! 僕はエクレシアを手に入れる!! そうさ! 所詮破壊しか出来ぬ力に始めから興味は無い!! 僕が求めたのはエクレシアだけだ!!』

 

『そんな……! そんなのは俺だって同じだ! 力なんて、要らない!! ただ俺はエクレシアを!』

 

『だが、お前は今からエクレシアを失う!』

 

『そんなこと! させるもんか!!』

 

『何をするつもりだ!! 力は混ざり合っているんだぞ! まともな形で戻れるかも分からない!!』

 

『それがどうした!! 俺はエクレシアの所へ……!! 行くんだ!!』

 

そして、アルバスは叫びと共に、右手に掴んだ氷剣(ひけん)の力を鋭い武器にして、中心核を切り裂いた。

 

瞬間、激しい痛みがアルバスを襲い、アルベルの叫びとアルバ・レナトゥスの叫び声が世界に響き渡った。

 

しかし、それと同時にアルバ・レナトゥスの中心核が崩壊し、アルバスはそこから投げ出される。

 

「っ! エクレシア……!」

 

アルバスは勢いよく投げ出された結果、地面にぶつかり激しく転がりながら全身を傷つけたが、すぐに立ち上がり、エクレシアの元へと駆けた。

 

ただ一途に、信じ続け、想い続けた愛の元へ。

 

「エクレシア!!!」

 

そして、叫ぶ。

 

様々な想いを混ぜ合わせ、ただひたすらに愛を求めた。

 

この地に落ちてから……いや、生まれた時から孤独であった魂を癒してくれて、傍に居てくれて、求めてくれた人を。

 

その名前を。

 

ただアルバスは叫んだ。

 

「行くな! エクレシア!!」

 

アルバスの声が届いたのかエクレシアは振り返り、俯きながらアルバスの名を零す。

 

「……アルバス君」

 

その声が、エクレシアが自分に振り向いてくれた事が嬉しくて、アルバスは頭から血を流しながら進み続けた。

 

周りに敵が居るが、知った事ではない。

 

右手に握りしめた氷剣(ひけん)がアルバスの魂に反応して輝いているのだ。

 

戦える。

 

例えここで命を落とすのだとしても、エクレシアを決して地獄へは送らせないと。

 

アルバスは強い覚悟でエクレシアを見つめた。

 

しかし、そう。

 

おそらくはそれがいけなかった。

 

エクレシアはアルバスと通じ合って、アルバスの想いを正確に理解してしまったのだ。

 

故に……。

 

「来ないで下さい」

 

「……エクレシア?」

 

エクレシアは必死に思考を巡らせて、アルバスを止める方法を考える。

 

このまま進み続けた先の未来をエクレシアは望まないから。

 

「困るんです」

 

「何を言ってるんだ。エクレシア」

 

「私は! 昔、両親に捨てられました。それでも、 教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)に拾われて、幸せだったんです」

 

震える声を隠す様に、両手で強く服を握りしめて、エクレシアはアルバスに言葉を向けた。

 

「だから、そんな幸せな世界を壊したアルバス君が……アルバス君が、きらい、でした」

 

「……」

 

「嫌いなんです!! アルバス君の事が!! だから、もうお別れです!」

 

「エクレシア、俺は」

 

「もうアルバス君の声なんか聞きたくないんです! 傍にも居て欲しくない!! 何処かへ行ってください!」

 

必死に、いっそアルバスに嫌われてしまおうと叫んだエクレシアの言葉にアルバスは酷く傷ついた顔をしながらエクレシアを見つめた。

 

エクレシアの言葉の意味が、その心が見つからずアルバスは戸惑った様にエクレシアの周囲へと視線を走らせる。

 

そして、そんなアルバスを絶望の底へ叩き落とす様に空から一人の少年が降りてくる。

 

満身創痍でありながら、余裕の笑みを浮かべた少年アルベルが。

 

「どうやら、力もエクレシアも、全てを失った様だね。名無し……いや、灰燼(かいじん)のアルバスとでも言うべきかな」

 

地面に降り立って、横からエクレシアを抱きしめて笑うアルベルにアルバスは怒りのまま睨みつけるが、アルベルの隣にいるエクレシアが何の抵抗もしない事がアルバスの心を突き刺した。

 

「これが当然の結果なんだよ。力だけしか持たない偽物め。僕こそが本当の白き竜王(アルバス)。王となるべき存在だ」

 

「……アルバス?」

 

アルベルが叫んだ言葉に、愛した人の名がある事に気づき、エクレシアは顔を上げた。

 

その救いを求める様な目にアルベルは微笑みながら言葉を返す。

 

「そうさ。僕が本物の白き竜王(アルバス)だ。教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)から聞いているんだろう? 君を迎えにこの世界へ来た。僕が来る前にアイツが来たが、君が本当に待っていたのは僕さ」

 

「そう、だったんですね。私の白き竜王(アルバス)様」

 

アルベルはエクレシアを抱きしめて、エクレシアも抵抗しないままアルベルに体を預ける。

 

その全てがアルベルの心を満たし、憎しみと怒りに支配されていた心を浄化していった。

 

「そういう訳だ。このままここで消してやろう。名もなき愚かな者よ」

 

白き竜王(アルバス)様」

 

「ん? どうしたんだい? エクレシア」

 

「私、早く安心できる場所に行きたいです。こんな所ではなく、心から安心出来る場所に。だから早く行きましょう? この様な人たちはもう放っておいて。少しでも早く二人きりになれる場所へ行きたいです」

 

「っ! そうか! エクレシアがそう望むのなら……まぁ良いだろう。所詮力を失ったお前に出来る事など何もない。そのまま惨めに生きて、惨めに死ね」

 

アルベルはエクレシアを強く抱きしめると、ホールを作り出しその向こう側へと消えた。

 

そして、デスピアの軍勢もまたアルベルと共にホールの向こう側へと消えてゆくのだった。

 

 

 

残されたアルバスは地面に膝をついて、地面に手を付きながら拳を握りしめて地面を殴りつける。

 

「ア、アルバス。エクレシアの言葉は、エジルやお前を守ろうとして……」

 

「守られた!!」

 

「っ! アルバス?」

 

「俺の力が無いから! 俺が弱いから!! 俺じゃエクレシアを守れないから……くそぉ……」

 

ボロボロと涙を零しながら、アルバスは地面を殴りつけ、ただ苦しみのままに叫んだ。

 

怒りはある。

 

自分に対しての怒りだ。

 

憎しみはある。

 

エクレシアにあんな事を言わせてしまったことだ。

 

憎むべき敵に、差し出してしまった己自身に対して強い憎しみが湧き上がる。

 

だが、それ以上に、やはりあの少年アルベルへの憎しみが強かった。

 

「……っ! アルベル」

 

怒りに燃えた瞳でアルベルの消えた場所を睨みつける。

 

だが、そんな強い怒りに染まったアルバスに、純鈞(ジュンキン)に背負われたままのエジルが近づいて、頭にチョップを落とす。

 

「っ!」

 

「冷静になれ。アルバス」

 

「……エジル」

 

「確かにエクレシアを奪われたのも、この場所で多くの哀しみがあった事もエジルたちの力が足りなかったからだ」

 

「……」

 

「だが、心に邪を宿せば相剣(そうけん)は鈍る。その輝きを失うだろう」

 

アルバスは右手に握りしめていた氷剣(ひけん)を見つめて、瞳を閉じた。

 

未だ氷剣(ひけん)には多くの願いが宿っている。

 

「母様も、承影(ショウエイ)もお前に未来を託した。だが、二人が視た未来は、憎しみをぶつけ合う物では無かっただろう?」

 

「……あぁ」

 

「エクレシアは強い。あんな奴らには負けない」

 

「あぁ」

 

「だから、強くなろう。エクレシアを取り戻せる様に。この世界を邪悪な奴らに渡さない為に」

 

「あぁ!」

 

アルバスは涙を振り払って立ち上がり、自分の胸に手を当てながら、真っすぐにエジルを見つめた。

 

瞳に宿るには怒りでも憎しみでもない。

 

黄金の輝く魂だ。

 

そう。まだアルバスは折れていない。

 

負けていない。

 

「……エクレシア。必ず迎えに行く」

 

そして、遠くの空を見つめ、アルバスはそう自らに誓いを立てるのだった。

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