遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第38話【セリオンズ・クロス】

円盤闘技場(えんばんとうぎじょう)セリオンズ・リングにて順調に勝ち進み、二回戦目も突破したサルガスは、キット達《スプリガンズ》を率いて今日も闘技場へと足を踏み入れていた。

 

既に伝えられている本日の対戦相手は、《セリオンズ》達のナンバー2である【セリオンズ“リリー”ボレア】だ。

 

《セリオンズ》達の王。キングであるレギュラスに勝るとも劣らない実力者である。

 

「貴方がサルガスね」

 

「あぁ!」

 

「直接見ると、特別大きいとか、良い部品を使っているという事は無いみたいね。性能ではアインにも劣っている様に見えるわ」

 

「性能なんか関係ねぇ! 大事なのは心だ! 俺の体は、キットの願いと俺たちのこれまでが全部詰まってるんだ!! 負ける訳がねぇ!!」

 

「……ふふ。面白いわね」

 

ボレアは本当に、心の底から面白い物を見たとでもいう様な顔で笑うと腕を組みながら棘の付いた鞭を複数展開し、戦闘状態へと移行する。

 

そしてサルガスもまた、両手を握りしめて構えながら合図を待つのだった。

 

『両者準備は整った様だァァァアアア!! 決闘(デュエル)開始ィィィイイイ!!』

 

「ではまずこちらから仕掛けさせて貰うわ」

 

「来い!!」

 

司会の声とほぼ同時に動き出していたボレアは鞭をしならせながらサルガスへと伸ばし、勢いよく叩きつける。

 

だが、サルガスは鞭によるダメージをものともせずに、拳を振りかぶって、地面を踏み砕きながら前に飛び込むとボレアへと迫った。

 

「あら。頑丈なのね」

 

「それが取り柄だ! そしてェ!!」

 

ボレアの正面まで迫ったサルガスは勢いよく地面に拳を叩きつけて、リングを砕きながら飛び散る破片でボレアにダメージを与えようとする。

 

「それはもう知ってるわ」

 

「なにっ!?」

 

しかし、ボレアは器用にも鞭で破片をサルガスへはじき返しながら視界を塞ぎ、サルガスの両手両足を鞭で絡めとるのだった。

 

「ぐっ! こんなもの!」

 

「無駄よ。力が入る様には縛っていないもの。それに……」

 

「うぉっ!?」

 

無数の鞭で容易くサルガスを空中へと持ち上げたボレアは明るい声でサルガスに抵抗の無意味さを教えるのだった。

 

「どう? これで力を出す事も出来ないでしょう?」

 

「うぉぉお!!」

 

「無駄よ」

 

何とか鞭から抜け出そうとサルガスがもがくが、鞭は少しも緩む事なくサルガスを責め立てるのだった。

 

これで終わりかとボレアが気を抜いた時、サルガスに変化が現れた。

 

『キャプテーン!!』

 

『負けるなキャプテン!!』

 

リングの外から聞こえるキット達の声に、サルガスの両目が光り、今までとは比べ物にならない力を発揮し始めたのだ。

 

それはまさに性能ではない力であり、サルガスの格上であるボレアの拘束を引きちぎる結果を導き出した。

 

「……あり得ない」

 

「当然だ!! 俺様はキャプテーン! サルガスッ!! 不可能な事など何もない!!」

 

「そう」

 

「じゃあ、今度はこっちの……!」

 

「降参するわ」

 

ボレアの拘束から解放され、一気に攻撃に転じようとしていたサルガスであるが、ボレアが急遽負けを宣言した為、急ブレーキを掛けてその場に留まる。

 

「なっ、なん!?」

 

「キャプテン・サルガス。貴方には資格がある」

 

「資格だとぉ?」

 

「そう。キングへ挑む資格よ。サルガス」

 

「っ!! キング!」

 

その言葉にサルガスは喜びを感じて両手を叩きながら、正面を見据えた。

 

そう。ボレアの向こう側に見える大きな存在を見つめる。

 

「あらあら、もう私の事は眼中にないのね。嫉妬しちゃうわ」

 

『おぉーっと!? ここでいきなりだが、次の試合の発表だぁぁあ!! 挑戦者!! キャプテン・サルガスが挑むのは!! セリオンズ・リング最強の……キング!! 【セリオンズ“キング”レギュラス】だぁぁあああ!!!』

 

司会の声に反応し、ボレアの奥から悠々と歩いてきたその戦士は、リングに上がると、実に楽しそうな声でサルガスへと語り掛ける。

 

「お前がサルガスか」

 

「あぁ。そういうお前がキング・レギュラスか」

 

「そうだ。まぁ、一応この闘技場でキングをやってるがな。それは気にしなくても良い」

 

「……どういう意味だ?」

 

「戦士が……リングに上がれば称号や名声など関係ない。何故ならこの場において大事な事は勝つ事だけだからだ。強さのみが、リングでは求められる」

 

「……」

 

「無論その強さにも色々な種類はあるが、本質は変わらん。勝つ為の強さだ。そうだろう? サルガス」

 

「あぁ。その通りだ」

 

サルガスはレギュラスの物言いに、笑うと、拳を強く握りしめて言葉を返した。

 

そしてサルガスの気合が十分だという事を確認してレギュラスも笑う。

 

「では、改めて名乗ろう! 俺はレギュラス!! お前を倒し、最強を証明する為に来た!!」

 

「俺はサルガス。お前を倒し、頂点。チャンピオンになる為にここに立っている!!」

 

「良いだろう!!」

 

レギュラスは闘志を溢れさせ、リングを砕きながら気合を入れていく。

 

そしてサルガスは既に高まっている気合を更に膨れ上がらせていった。

 

「一応聞いておくが! サルガス!! 時間を置かなくても大丈夫か!?」

 

「必要ない!! 今の俺が怖いのなら、明日以降にしてやっても良いがな!!」

 

「ワハハ! 良い覚悟だ!! スプライト共め。戦士の事を何も分かっていない」

 

「スプライト……?」

 

「神を気取る面白くない連中さ。お前を倒す為にボレアから俺への連戦を仕掛けたんだがな……逆に最高の戦士を生み出す事になってしまった!!」

 

「嬉しそうだな」

 

「当然だ!! キングなどという地位を与えられ!! 戦えない日々は、死の世界と何も変わらなかったぞ!! 退屈は、戦士の劇薬だ!!」

 

「分かるぜ! 俺様も一番嫌いなのは退屈だ!!」

 

「「……」」

 

二人は闘志を燃やし続け、それが最高潮に高まった瞬間、司会の合図もなしに飛び出した。

 

ほぼ同時に地面を蹴った二人はそのまま拳を互いにぶつけ合わせながら、火花を散らしてゆく。

 

「これがアインやユールを下した一撃か!! 素晴らしい!! 素晴らしいぞ!! サルガス!!」

 

「お前こそ、アイツらの王なだけあるぜ!! とんでもねぇ重さだ!!」

 

すぐ背後には奈落があるのではないかと思わせる様な二人の攻防は、一切の後退をせず、ただ前に、前にと拳を振るいながら進もうとする。

 

その目の前に立つ障害を叩き壊し、先へ進むのだという意思が込められた重い一撃であった。

 

しかし、その一撃は一撃で終わる事はなく、二発、三発と放たれてゆく。

 

常人であればすぐにでもダウンしてしまうであろう猛攻を繰り返すサルガスとレギュラスは、一瞬のうちにダメージを積み重ね、そしてそれ以上のダメージを相手に与えてゆく。

 

部品が吹き飛ぼうが構わない。

 

腕が曲がろうが構わない。

 

装甲がひしゃげても、精密な部品が壊れても構わない。

 

ただ一撃。

 

ただ一瞬。

 

目の前に立つ強大な男を砕く事が出来たのなら、それが最高の瞬間なのだと、サルガスとレギュラスは叫んでいた。

 

言葉ではない声で。

 

その拳に込められた想いで殴り合っていた。

 

 

 

そして――

 

「これで終わりだ……!! サルガスッ!!」

 

二人は最高の気分のまま、この時間を永遠にする為の一撃を放つ準備をする。

 

「俺様の勝ちだ!! レギュラスッ!!!」

 

レギュラスの放った一撃はサルガスの頬を貫き、レギュラスの放った一撃もまたサルガスの頬を貫く。

 

クロス・カウンター

 

人間同士が行うボクシングというスポーツで名づけられたその一瞬の攻防は、勝者の分からぬまま両者ダウンという結果を導いたのであった。

 

『キャプテーン!!』

 

サルガスは意識が閉ざされていく中、最後に泣きながら自身の名を呼ぶキットの顔を見るのだった。

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