遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第3話【天底の使徒(てんていのしと)

それはまるで天が落ちてくるかの様な光景であった。

 

鉄獣戦線(トライブリゲード)の襲撃を受けて混乱しているドラグマ国内に、新たな混乱を呼ぶべく天から今、一体の巨大な塊が地上へ落ち、激突した。

 

その衝撃は、その塊――ドラゴンの下敷きとなった家屋を枯れ葉の様に容易く押しつぶし、更に落下した衝撃で周辺の民家もいくつか吹き飛ばして破壊する程であった。

 

その衝撃音は、ドラグマ国内に鳴り響き、戦闘中であった鉄獣戦線(トライブリゲード)の者達や、《教導騎士団》の者達も何事かと、そちらの方へ僅かに意識を向ける。

 

だが、それも一瞬の事で、すぐに目の前の敵を思い出し、戦闘を継続するのだった。

 

故に、その地上へと落ちたドラゴンについて意識を集中させることが出来たのは、ドラグマ国内の中でも最も高い位置に配置された教会の者たちであり、その教会内の最も高い祈りの間にいた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)もその一人であった。

 

「……約束の時、ですか? まだ一年ほど早い様ですが」

 

『いいえ。マクシムス。アレは違うわ』

 

「ほぅ?」

 

『あれは王の子ではない。あれは白き竜王(アルバス)の子ではなく、庶子の子。薄汚い娼婦の子だわ』

 

「【アルバスの落胤(らくいん)】……ですか」

 

『ふふ。そうね。生まれるべきじゃなかった呪われた子よ。マクシムス。あの呪われた子を捕まえなさい』

 

「アレを捕まえる? 既に市街地の一部を破壊しているアレを? 冗談でしょう。国民にどれだけの被害が出るか」

 

『あの子は王の鍵を持っている。と言っても?』

 

「……っ!?」

 

『あの子の力をアルベルに渡す事が出来たのなら、もうフルルドリスもエクレシアも用済みだわ。自由に生きていく事が出来る』

 

「……」

 

『それを貴方も望んでいたのでしょう? なら答えは一つじゃないかしら』

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は祈りの間から、真っすぐにドラゴンを見据えて仮面の奥で歯を食いしばった。

 

『あの呪われた子を捕らえ、その力を私に、そしてアルベルに捧げなさい! 教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)

 

「……分かりました」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)は人を呼ぶと、その者にいつもの様な優しい声ではなく、厳しい態度と声で命令を告げた。

 

「騎士フルルドリスに命を! あのドラゴン……【灰燼竜(かいじんりゅう)バスタード】を無力化し、捕らえる様にと」

 

「ハッ!」

 

「そして、エクレシアにも装備を整える様に伝えて下さい。フルルドリスが離れた場合、何が起きるか分かりませんからね」

 

「承知いたしました!」

 

そして、全ての命令を終えた教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)』はため息と共に祈りの間から見える巨大なドラゴンへと視線を移すのだった。

 

どうか、全てが無事に終わって欲しいと祈りながら。

 

 

 

聖女エクレシアを護る事が最大の使命であるフルルドリスは、まず自身の装備を整えて、白いドレスを身にまとったエクレシアの手を握りながら安全な場所を目指して避難を行っていた。

 

しかし、そんなフルルドリスを見つけた従者の一人はフルルドリスの名を呼び、足を止めさせる。

 

「フルルドリス様! エクレシア様! お待ちください」

 

「なんだ! 私は今、忙しい」

 

「いえ。それが……教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)より命令が下されました」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)から、命令?」

 

「は、はい」

 

従者からの言葉に、フルルドリスは訝し気な顔をしたが、すぐに先ほど見えたモノの事を思い出す。

 

「アレか」

 

「はい。教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)より灰燼竜(かいじんりゅう)バスタードを無力化し、捕らえる様にと」

 

「無力化し、捕らえる?」

 

目をスッと細め、従者を見つめるフルルドリスに従者は怯えた様な声を出した。

 

しかし、すぐにエクレシアがフルルドリスの手を握る事で、フルルドリスの怒りは内側へと隠されるのだった。

 

「……分かった。それが教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)の命令であるならば従おう。エクレシアを頼んだぞ」

 

「はい!!」

 

教導の大神祇官(マクシムス・ドラグマ)からの命令を受けたフルルドリスは既に整えていた装備のまま、ズンズンと壁の方へ向かってゆく。

 

「フ、フルルドリス様? どちらへ?」

 

「無論あのドラゴン……バスタードを討ちに行く。そういう命令だろう?」

 

「いえ、ですが」

 

エクレシアも心配そうにフルルドリスの後に付いて歩き、バルコニーへと出た。

 

そして、フルルドリスと共にドラグマの国内を我が物顔で歩き、炎を吐いて燃やしているバスタードを見据えるのだった。

 

「お姉様」

 

「エクレシアはここを離れるなよ。怖かったら奥に隠れていても良い。怖いものは全て私が追い出そう」

 

「……はい」

 

フルルドリスはエクレシアの頬に手を当て、聖痕の刻まれている額に口づけを落とすと、そのままバルコニーを飛び出して教会の壁を滑りながら、適度な高さで壁を蹴り、バスタードに向かって飛ぶ。

 

バスタードもフルルドリスの存在に気づき、顔を上げて炎を口から吐き出した。

 

しかし、フルルドリスは持っていた大剣で炎を防ぎながら、バスタードの近くへと降り立った。

 

無論、その衝撃で足場とした家は破壊され、フルルドリスは屋内に飛び込む事になったが、すぐに壁を破壊しながら外へと飛び出してバスタードの姿を探す。

 

「奴め、良い反応をする」

 

フルルドリスが家と家の間を走りながらバスタードの姿を探している時に、バスタードもまたフルルドリスの姿を探しており、両者が互いの姿を見つけたのはほぼ同時の事であった。

 

「そこだ!」

 

バスタードはフルルドリスに向かって炎を吐き、フルルドリスは地面を蹴りながら空へと舞い上がり、上からバスタードを切り裂こうとする。

 

が、バスタードの動きは早く、フルルドリスの攻撃を腕で受け止めると、そのまま横に振るい、フルルドリスを遠くへ弾き飛ばすのだった。

 

ここまでに行われた幾度かの攻防で、フルルドリスもバスタードも互いを強敵と判断し、より集中して相手を見据える。

 

生半可な攻撃は無力化できない。それはフルルドリスもバスタードもよく理解していた。

 

しかし、だからこそ両者は慎重になり、必殺のタイミングを探す。

 

 

 

「……正面からでは厳しいか」

 

フルルドリスとバスタードの睨み合いだが、最初に動いたのはフルルドリスであった。

 

彼女はバスタードとは違い、小柄な人の身である利点を活かして剣を背負い、家と家の間を走り、バスタードから見えぬ場所へ移動する事にした。

 

聖痕の力が無くとも、超人の領域に到達しているフルルドリスは風の様に入り組んだ町を走り、バスタードの死角へと移動してゆく。

 

しかし、バスタードとてそれをただ放置する事はせず、フルルドリスが移動しようとしている先を予測し、その場所へと炎を吐いてフルルドリスを見つけようとする。

 

「……っ! そこ、だ!!」

 

その攻撃が良かったのか、はたまたこれもフルルドリスの作戦なのか。

 

バスタードが放った炎の中をフルルドリスは剣を正面に構えて真っすぐに突き進み、見事バスタードの眼前へと移動した。

 

無論それをバスタードも黙って見ているだけではなく、自分の炎でフルルドリスの鎧が焼けている事、そしてフルルドリスの疲れを察して、更なる炎をぶつけるべく大きく息を吸い込んだ。

 

これが直撃すればフルルドリスもただでは済まないだろう。

 

だが、しかし。

 

この瞬間こそフルルドリスが望んでいたモノであった。

 

聖痕の力を使い、天より雷の力を呼び起こして、それを剣に纏わせる。

 

そう、これこそフルルドリスが必殺の瞬間に放つ……彼女が持つ最大の技。

 

「【ドラグマ・パニッシュメント】!!」

 

フルルドリスの一撃にバスタードは左目を切り裂かれ、同時に全身を雷に焼かれながら、空に咆哮した。

 

痛みか、怒りか……はたまた別の感情か。

 

それはフルルドリスにも、戦いを見守っていた者達の誰も分からない。

 

だが、一つ確かな事はこの必殺の一撃でもバスタードを完全に無力化する事は出来なかったという事である。

 

バスタードは残された右目で、バスタードに背を向けているフルルドリスに向かって最後の一撃を放った。

 

そのバスタードの巨大なドラゴンの右手はフルルドリスの体を捉え、フルルドリスの体を遠い場所へと吹き飛ばした。

 

バスタードの攻撃を受け、いくつかの家を破壊しながら飛んで行ったフルルドリスの行方は分からない。

 

だが、バスタードもまた、その一撃を最後に空へ炎を吐きながらゆっくりと地上へ落ちてゆくのだった。

 

巨大なバスタードの体が落ちたことで、周辺には地響きが起こり、またその衝撃でいくつかの家屋が倒壊する。

 

更に、バスタードが放ち続けた炎は勢いを増して、周囲を燃やしているのだった。

 

勝利したのはバスタードか、フルルドリスか。

 

勝利者は不明のまま、静かに両者の争いは終わりを迎えるのだった。

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