遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第39話【セリオンズ・スタンダップ】

少女とサルガスの出会いは、それほど劇的な物では無かった。

 

男として、戦士として戦い通じ合った友であるシュライグが、どこぞの人間たちと戦争をするというので、想い人であるフェリジットの妹を預けに来たのだ。

 

『やだ。やだよ! 里に残ってる人だっているじゃない。戦えないけど、手伝ってる人だっている!』

 

『でも子供はみんな避難させたわ。だから貴女も』

 

『私は子供じゃない!! リズねえちゃんと一緒に戦える! シュライグの役に立てる!!』

 

涙を浮かべながら必死に訴える少女に、シュライグもフェリジットも困っており、サルガスはしょうがないと口を挟む事にした。

 

『あー。嬢ちゃん』

 

『嬢ちゃんじゃない!! 私はキット! 鉄獣戦線(トライブリゲード)の戦士! 鉄獣戦線(トライブリゲード) キットだ!!』

 

『そうか。鉄獣戦線(トライブリゲード)キット。俺様はスプリガンズ・キャプテン サルガスだ。まぁ、まずはよろしく。だな』

 

サルガスはキットに手を差し出して笑う。

 

敵意を感じないサルガスにキットは、おずおずと右手を差し出して握手をした。

 

『おし。これで俺様とキットは親友だ』

 

『しん、ゆー?』

 

『そうだ。対等な仲間って事だな。キットが困ってたら俺様が助けてやるし。俺様が困ってたらキットが助けてくれ。出来るか?』

 

『……出来る、けど』

 

『そうか。なら、まずはここで俺様の手伝いをしてくれねぇか?』

 

『……サルガスは、何をしてるの?』

 

『俺様は……あー、まぁ、そうだな。ここでシュライグ達の手助けができるモンを探してるんだ。まぁ、シュライグの手伝いだな』

 

『シュライグの! 手伝い!?』

 

『そうだ。なぁ? シュライグ』

 

『あぁ』

 

サルガスの意図を理解したシュライグは微笑みながら頷き、そしてフェリジットも同じ様に頷く。

 

『なぁ、キット。キットもここで俺様と一緒にシュライグの手伝いをしちゃあくれねぇか?』

 

『っ! ……でも、私は、リズねえちゃんと』

 

『まぁ、キットがお姉ちゃんの傍を離れたくないっていうお子ちゃまなら、無理には言わねぇがな』

 

『私はお子ちゃまじゃない!!』

 

『なら、どうする?』

 

『良いよ! サルガスと一緒に、ここでシュライグの手伝いをする!!』

 

『そうか。嬉しいぜ』

 

サルガスはニカッと笑うとキットを抱き上げて肩に乗せる。

 

『わ、わわ……高い』

 

『おっと怖がりのキットには厳しかったか?』

 

『こ、怖がりなんかじゃないよ! ただ、ちょっとビックリしただけ』

 

『そっか。ならよく捕まってろ』

 

『……うん』

 

キットがキュッと捕まるのを感じながらサルガスは一歩一歩歩き、高台から大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダを見渡した。

 

『わぁ……』

 

『どうだ? 広いだろう?』

 

『うん』

 

『これでも、この広い世界じゃあほんの一部なんだぜ?』

 

『そう、なんだ』

 

『俺様も、シュライグも、この世界を、俺様達が生きる場所を守る為に戦ってる』

 

『……うん』

 

『だからな。キットもいつか大きくなって、俺様達と一緒に守ってくれ。大事な物を』

 

『うん!』

 

サルガスは頭の横から聞こえてくる涙を滲ませた様な声にカラカラと笑いながら、キットと共に歩むことにするのだった。

 

 

 

シュライグやフェリジットと別れ、ロッキーやピード達と出会う。

 

 

 

砂漠で徒歩なんて危険だし、遅いとキットは移動にも居住にも使えるスプリガンズ・シップ エクスブロウラーの設計を始めた。

 

 

 

《スプリガンズ》全員で作り上げたエクスブロウラーで砂漠を走り、覇蛇大公(はじゃたいこう)ゴルゴンダと戦い、お宝を探す。

 

 

 

いつしかキットは《スプリガンズ》に居る事が当たり前になり、多くの時間を《スプリガンズ》達と共に過ごしてきた。

 

 

 

そして、エクスブロウラーの上で、キットはサルガスと共に遠くを見ながら、口を開いた。

 

『懐かしいな。キャプテンは覚えてる?』

 

『何をだ?』

 

『私が初めてキャプテンと会った時の事』

 

『あー。キットがびーびー泣いてた日の事だな』

 

『そんな事してないよっ!』

 

キットは手に持ったスパナでサルガスの足を軽く叩きながら、笑う。

 

二人の間には、出会った時には無かった気安さがあった。

 

それは二人が積み重ねてきた時間が生み出した信頼であり、キットが昔よりも成長したという事でもあった。

 

『私ね。ホントは分かってたんだ。キャプテンの嘘』

 

『……』

 

『でも、キャプテンがシュライグみたいに温かかったから。甘えたの』

 

『良いんじゃないか? 子供は大人に甘えるんもんだ』

 

『そうだね。まぁー! キャプテンは大人って感じじゃないけど! 本体はこーんなに小さいし!』

 

『俺様の本体はこの輝く鋼鉄の体だッ!!』

 

『ふふ。じゃああの黒くてちっちゃなのはキャプテンの心かな?』

 

『心……か。まぁ悪くないんじゃないか?』

 

サルガスは腰に手を当てながらガハハと笑い、キットを抱き上げて肩に乗せる。

 

『……キャプテン』

 

『なんだ?』

 

『キャプテンは居なくならないでね』

 

『心配するな。俺様は居なくなったりしない』

 

『……』

 

『心配になったら俺様の名前を呼べ。キット。お前の声が聞こえたら、俺様は何処へだって駆けつける。だから……』

 

『キャプテン……!』

 

 

 

『お願い』

 

『帰ってきて……!』

 

『キャプテン!!!』

 

「はっ!!!」

 

サルガスは、リングの外から、必死にリングを叩き叫ぶキットの声に意識を取り戻した。

 

レギュラスの放った一撃で完全に失われていた意識が繋がり、再起動を始める。

 

「う、うぉぉおおおお!!! 誰だァ!! キットを泣かせてる奴はァ!!」

 

『キャプテン……! 良かった』

 

「はん? 俺様はいったい……?」

 

大歓声の中で目を覚ましたサルガスは周囲を見渡しながら記憶の整理をするが、立ち上がろうとしているレギュラスを見て、全てを思い出す。

 

「そうだ! 俺様はここでレギュラスと戦ってたんだった!!」

 

「ふ、ふふ……気の抜ける様な事を言いながら、よく動くものだな。サルガス」

 

「当然だ。俺様はキャプテーン! サルガス!! 俺様を呼ぶ声がある限り、どんな時でも! どんな場所でも!! 俺様は負けねぇ!!」

 

『キャプテン……!』

 

涙を混じらせた様なキットの声を背に、サルガスは拳を突きあげながら己を示した。

 

そんな姿にレギュラスはフッと笑いながら、その場に座り込み、サルガスに応える。

 

「……俺の負けだ」

 

「もう良いのか?」

 

「あぁ。もう十分だ。十分楽しませてもらった。最高の時間だったよ。サルガス」

 

「そうか」

 

「ただ、まぁ。また退屈な時間が来るのかと思うと憂鬱だがな」

 

「なら」

 

「ん?」

 

サルガスはレギュラスの言葉を受けて、右手を差し出しながら笑う。

 

「なら、俺様達と一緒にトレジャーハンターでもするか? 楽しいぜ。見上げる様な巨大な蛇と戦ったり、荒れ狂う砂漠の大気と戦う様な生活はな」

 

「それは、実に楽しそうだな」

 

レギュラスはサルガスの想いに応えながら手を掴み、立ち上がろうとした。

 

しかし、そんな二人に遥か上空より声が落ちてくる。

 

『認めない! こんな結果は認めないぞ!!』

 

「なんだ、この声は」

 

「スプライトか!」

 

『僕の作った闘技場で、最強の戦士が負けるなんて、ダメダメ! ぜーったいに駄目! 認めない!!』

 

その蒼き雷の様な光を放つ異形の者は人の様な姿を示しながらサルガス達の前に現れるのだった。

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