遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】 作:とーふ@毎日なんか書いてる
蒼き雷の様な光を放つ異形はサルガス達の前に降りてくると腰に手を当てて、語り始めた。
『僕はさ! ここでイッチバーン偉いの!!』
「ほう」
『そんな僕の作ったキングが負けた! これはゼーッタイに!! 認められないの!!』
「なら、どうする?」
『決まってるじゃん! 僕が勝って! ゼーンブ無かった事にするんだよ!』
その蒼き雷の様な異形は細い両腕を前に出し、素人の様な構えを取ると、サルガスに突っ込んでいった。
サルガスは一瞬驚いた様に固まったが、すぐに腕を差し出して、まずは蒼き異形の拳を止めた。
のだが、サルガスの大きな手にぶつかった瞬間蒼き異形は完全に固まってしまった。
『う』
「ん?」
『うぁぁああー! いたいよぉぉおお!!』
「お、おぅ、大丈夫か?」
蒼き異形は目らしき場所から火花を散らしながら空中を転げまわる。
そしてリングの上空へ舞い上がると、再び地面に落ちてきて、痛みを全身で訴えた。
その哀れな姿に、サルガスは思わず手を出してしまうが、その手はレギュラスによって制された。
「レギュラス……?」
「油断するな。サルガス。ただの子供の様に見えるかもしれないが、連中は神を自称するだけあり、その力はこんな物じゃない」
「そうなのか?」
サルガスはレギュラスの言葉に警戒を強めるが、目の前で暴れている蒼き異形は、正直なところただの子供にしか見えないのだ。
「お前の言葉を疑いたくないが……本当か?」
「あぁ」
真面目な顔で空中を転がる蒼き異形を見つめるレギュラスに、サルガスは緩んでいた気をまた引き締めて蒼き異形を見つめるのだった。
そして、サルガス達が無言になった頃、ようやく蒼き異形は痛みが消えたのか目の様な場所から火花を散らしながら起き上がった。
『く、くぅ、やるじゃないか』
「まだ何もやってないが」
『うるさーい! 僕をこんなに痛めつけるなんて、お前は凄い奴だ! そうだろ!?』
「そうか?」
『そうなの!!』
まるで子供の様に癇癪を起す蒼き異形にサルガスは何だか昔のキットを思い出してしまい、頭をかきながら蒼き異形の前に立った。
「あー。そうだな。俺様は強い! 何せ俺様はキャプテーン! サルガス!! あのキングをも打倒した圧倒的な強者だ! しかし、そんな俺様でも、お前との戦いはギリギリだったぜ。もう少しで敗北していたな」
『そうなの!?』
「あぁ。もうボロボロさ。今にも膝を付いてしまいそうだ。お前はどうだ? まさか、まだ動けるのか?」
『当然じゃない! 僕は偉いんだから!』
「そ、そうか。ならお前の方が強くて偉いんだろうな。流石だぜ……あー、えっと。お前の名前はなんて言うんだったか?」
『僕はブルー! 【スプライト・ブルー】だよ!』
「そうか。ブルー。お前が最強だ」
『おぉぉー! おー!! 僕が!! 最強!!』
「そして、一番偉い」
『いえーい!! 僕が一番えらーい!! そうだよね! 当然! 当然!!』
気分が良くなったのか、腰に手を当てながらぴょんぴょん飛び跳ね喜ぶブルーを見て、サルガスはやや微妙な気持ちになってしまうのだった。
そして、サルガスはブルーの動きを見守っていたのだが、飛び跳ねて喜ぶブルーに声をかける者が上空から現れた。
先ほどブルーが現れた時と同じく、セリオンズ・リングの上空にある発光体から何かが生まれる。
それはブルーと同じ様に雷の様な光を放ちながら人型になるのだった。
しかし、ブルーとはいくつか違う点があった。
それは雷の様な光が赤い色をしている事や、頭らしき場所にある雷がブルーとは違い、両側に降りる髪の毛の様に見える事。
そして何よりも、その赤い存在がブルーの放つ少年の様な声とは違い、少女の様な声を発している事だろうか。
『もう! ブルー! 何簡単に騙されちゃってるのよ!』
『なんだよ。レッド。僕のどこが騙されてるっていうんだ。僕は偉いし、最強なんだよ?』
『それが騙されてるって言ってるのよ! もう! しょうがないわね! アタシが代わりに話すわ! ブルーは引っ込んでて!!』
その少女の様な姿をしたレッドと呼ばれた赤い異形に、サルガスはやや警戒しながら少女を正面から待ち受ける。
『アンタ!』
「おう!」
『ブルーは簡単に騙せてもね! アタシは騙せないわよ!!』
「そうか! まぁ、確かに頭良さそうだもんな」
『そう? そうよね。うんうん。アンタ! よく分かってるじゃない!』
「おう! 見てすぐに分かったぜ!」
サルガスは酷く慣れた方法でレッドの心の内側へと入り込んだ。
それは個性的な《スプリガンズ》や、シュライグ達を通して知り合った
『ふーん。アンタ! 中々見る目があるじゃない! アタシはレッド! 【スプライト・レッド】よ!』
『だろ? ほら、僕の言った通りじゃないか』
『うっさいわねアンタは。私はアンタと違ってチョロくないから』
『チョロチョロだった癖によく言うよ』
ブルーは呆れた様な声を上げながら、レッドを茶化し、レッドはそんなブルーに怒りをぶつける。
それは神と呼ぶにはあまりにも幼い存在に見え、サルガスは何とも困ってしまうのだった。
しかしそんなサルガスに、真実の恐怖を教える為か、背中から突如として声が聞こえた。
若い男の様な声が。
『いけませんねぇ。ブルー坊ちゃんとレッドお嬢さんをたぶらかすのは』
「っ!?」
『こんにちは。私は【スプライト・ジェット】と申します。貴殿はキャプテン・サルガス殿でお間違いありませんかね』
「あ、あぁ!」
『では、出会って早々申し訳ございませんが、消えて頂きましょうか』
「なにっ!?」
ジェットと名乗ったその白き雷の様な光を放つ異形の存在は、ブルーやレッドよりも大きな体をしており、青年の様な姿と声でコートをはためかせながら、サルガスを容易く吹き飛ばした。
咄嗟にサルガスは腕を交差して、ジェットの攻撃から自分の身を守ったが、それでも衝撃を消す事は出来ず、リングの外まで飛ばされてしまう。
『ちょっとジェット―! いきなり何するのよ! サルガスはアタシの物よ?』
『そうだそうだ! 僕のサルガスだぞ!』
『やれやれ。ブルー坊ちゃんもレッドお嬢さんもしょうがないですねぇ。そんな容易くたぶらかされては。玉座は遠いですよ』
『なっ! 僕は王様になる!!』
『いや、だからそれが難しいって言ってんでしょうが』
『えー!? なんでー!?』
『ふむ。まだまだ幼さが消えませんな。ブルー坊ちゃんもレッドお嬢さんも』
『何でアタシもなのよ! アタシは立派なレディでしょうが!!』
『やれやれ』
リングの外へ吹き飛ばされたサルガスは何とか立ち上がろうとしながら、リングの上で繰り広げられている《スプライト》達の茶番を見据えるのだった。
油断していた訳じゃない。
警戒は続けていた。
その上で、気づけなかった。
それがサルガスには酷くショックな事であった。
「くそ……! 情けない」
「キャプテン! 大丈夫!?」
「あぁ。心配かけたな。俺様は大丈夫だ」
半泣きで駆け寄ってくるキットの頭を撫でながらサルガスは何とか立ち上がり、自分を吹き飛ばしたジェットを見据えた。
「……っ」
『おや。まだ立てるのですか。思っていたよりも頑丈ですね。では、こちらも次の一手を打つとしましょうか』
ジェットはそう言うと、手を天高く掲げるのだった。