遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第4章
第46話【烙印の獣(らくいんのけもの)


デスピアの中央にある教会の屋根の上で、アルベルはカルテシアと共に遠く地平の向こうにある砂漠を見ていた。

 

自分の中にあるアルバスから奪い取った力が、砂漠の向こうにいる何かと共鳴しているのだ。

 

それが何かなど考えるまでもない。

 

「……性懲りもなく、また僕のカルテシアを狙うつもりか。名無しめ」

 

「アルベル?」

 

「あぁ。カルテシアは心配しなくても良いよ。ちょっと戦争をね。するだけさ」

 

「……戦争。この世界にも争いがあるのですね」

 

「そうさ。争わずにはいられない奴が居るからね」

 

「分かりました」

 

カルテシアは微笑みを浮かべると両手を広げ、天に掲げながら祈りの歌を口ずさむ。

 

赫の烙印(あかのらくいん)よ。(いにしえ)に封じられた力を呼び起こせ」

 

「これは……!」

 

カルテシアの声に応えて、空からいくつかの巨体が二人の前に落ちてくる。

 

それは《烙印》の力に飲まれ、深淵の獣(ビーステッド)になってしまった者達だ。

 

まずは全身を鎖により拘束され、封じられている赤きドラゴンへとカルテシアは視線を向けた。

 

「【深淵の獣(ビーステッド)マグナムート】」

 

次に紫のドラゴン。

 

「【深淵の獣(ビーステッド)サロニール】」

 

そして、黒きドラゴン。

 

「【深淵の獣(ビーステッド)バルドレイク】」

 

最後に蒼きドラゴンへと顔を向け、その頬を撫でながら微笑んだ。

 

「【深淵の獣(ビーステッド)ドルイドヴルム】」

 

四体のドラゴンは、カルテシアの声に応え、空に咆哮すると全世界へその力を示す。

 

圧倒的な赫の烙印(あかのらくいん)の力を。

 

その主が帰ってきたことを。

 

「これは、凄いな……!」

 

「ふふ。これだけじゃありませんよ。アルベルが戦場へ行くのでしたら私も参ります」

 

カルテシアは両手を胸の前で握り合わせ、一本の剣を生み出すとそれを軽く振るい、力を込めて斜めに振り下ろした。

 

瞬間、そこにホールが生まれ(あか)き力がカルテシアを包み込んで、背中からステンドグラスに似た翼を作り出す。

 

そして、その翼はそのままカルテシアの背中から外へと抜け出して一匹のドラゴンへと姿を変えた。

 

表面がドロドロに溶け、おぞましい体をしながらも眼光は鋭く虚空を睨んでいる……多くの恨みと絶望が形をなしているドラゴンだ。

 

「……はぁ、はぁ。【赫焉竜(かくえんりゅう)グランギニョル】」

 

「グラン、ギニョル……!」

 

荒い呼吸を繰り返しながらドラゴンを生み出したカルテシアはアルベルに微笑み、その頬を撫でる。

 

「これで私も力になれますよ」

 

「それは……」

 

「どうしたのですか? アルベル。嬉しくはありませんか?」

 

「複雑な気持ちだ」

 

自らの頬に当てられたカルテシアの手を握り、アルベルは悲し気に目を伏せた。

 

カルテシアを失った時の事を思い出し、苦し気に息を吐く。

 

「正直な所。戦場に君を連れて行きたくない。このまま安全な所に……っぐ、って! 何をするんだ!」

 

「困った人ですね。貴方は」

 

カルテシアはブツブツと呟くアルベルの頬を指で突き、その言葉を無理矢理止めた。

 

そして、怒りのままにカルテシアに掴みかかろうとするアルベルからふわりと離れると、両手を背中で組みながらあどけない笑顔で微笑む。

 

「貴方が私を失いたくない様に。私も貴方を失いたくないのです。遠く離れた場所から貴方の無事を祈っていろ。というのは少々残酷ではありませんか?」

 

「それは……そうかもしれないが」

 

「そうでしょう。そうでしょうとも。という事ですから、私も同行させていただきますね」

 

「駄目だ」

 

「えぇえええ!? そこは『分かったよ。カルテシア。お前に背中を預けたゼ! 相棒!』っていう流れじゃないんですか!?」

 

「そんな事いう訳無いだろう。お前はこのままここに居ろ」

 

「もう! なんて分からず屋なんですか! ねー! みんなもそう思いますよねー!」

 

カルテシアが怒りを示しながら深淵の獣(ビーステッド)達に同意を求めると、深淵の獣(ビーステッド)たちは皆一様に頷き、カルテシアの言葉が正しいのだと吼えた。

 

呆れた忠犬具合である。

 

いや、この場合忠竜か。

 

「君らがどれだけ吼えようが、これは決定事項だ。カルテシア。君はここに残れ。深淵の獣(ビーステッド)たちは、カルテシアを守るか……僕らと一緒に来て敵の侵入を阻止するか。まぁ好きな方を選びなよ」

 

アルベルの主を無視した言葉に深淵の獣(ビーステッド)達は怒りに震え、不満を吐き出したが、アルベルはその威圧する咆哮を、まるでそよ風でも受けている様な顔で軽く流すと、深淵の獣(ビーステッド)達が一瞬作り出した静寂に視線で深淵の獣(ビーステッド)達を黙らせた。

 

王という言葉が良く似合う風格で。

 

「別に君らがどれだけ吼えようが構わないけどね。戦場に行けばカルテシアが傷つく可能性がある。それは理解しているんだろうね」

 

その鋭い言葉に深淵の獣(ビーステッド)達は戸惑い、互いに見つめ合いながら困った様に話を始めた。

 

どうやらその会話はカルテシアにとって非常に都合が悪い物であったらしく、カルテシアは焦りながら深淵の獣(ビーステッド)達を説得しようと、わたわたと語り掛けるのだった。

 

「皆さん! 惑わされてはいけません! 私は見ての通り強いので、戦場へ行っても何の問題もありませんよ!」

 

手に持った剣をブンブンと振り回しながら、強さを訴えるが、深淵の獣(ビーステッド)達は悩まし気に唸り声を上げる。

 

カルテシアを見つめる深淵の獣(ビーステッド)達の視線に信頼の色は無かった。

 

「どうしたんですか!? 私を見て下さい! 強そうでしょう? どうですか! って! 何故私から目を逸らすんですか! こっちを見て下さい!」

 

遂に深淵の獣(ビーステッド)達はカルテシアから目を逸らし、意味もなく空へと視線を向け始めた。

 

その行動に裏切りの気配を感じたカルテシアは、深淵の獣(ビーステッド)達に近づいて、体をバンバンと叩きながら訴える。

 

「こっちを見て下さい! 何故目を逸らすんですか!」

 

しかしどれだけ訴えても深淵の獣(ビーステッド)達はカルテシアを見る事はなく、挙句の果てには寝たフリを始めてしまうのだった。

 

「おーきーてー! くーだーさーいぃー! まだお昼寝をするには早すぎますよっ!」

 

「どうやら決まった様だね。そういう訳だから、カルテシア。君は戦場に行かず、ここで待っているんだ。良いね?」

 

「嫌です!」

 

「うん。物分かりが良くて嬉しいよ」

 

「嫌だって言ってるじゃないですか! アルベルのイジワル!」

 

「さて。何のことやら。じゃあ、後は頼んだよ。深淵の獣(ビーステッド)諸君」

 

言うだけ言って屋根から下へ飛び降りたアルベルに、カルテシアは付いていこうとしたのだが、後ろからドレスが引っ張られ、屋根の上に倒れてしまう。

 

「あいたっ! 何をするんですか!? 誰ですか!? 今、私の服に悪戯をした悪い子は!」

 

カルテシアはプンプンと怒りながら、深淵の獣(ビーステッド)達を見るが、皆視線を逸らして自分ではないと首を振るのだった。

 

その様子にカルテシアはまた怒り、お説教をする。

 

しかし、そうやっている内にデスピアの軍勢は戦いの準備を始め、デスピアから出ていこうとしているのだった。

 

「良いですか? 悪戯をするのが悪いと言っている訳ではないのです。時を場合を考えて下さいと言っているんです。分かりますか?」

 

 

 

そして、屋根の上で深淵の獣(ビーステッド)達と遊んでいるカルテシアを置き去りにし、アルベルは戦場へ向かう。

 

今度こそ、アルバスを亡き者にするために。

 

カルテシアに触れる可能性のある者を消し去る為に。

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