遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第47話【決戦(けっせん)のゴルゴンダ】

あれから、アルバスにとって長い時間が経った。

 

そう。エクレシアがアルバス達を守る為に、自分を犠牲にした時から、アルバスにとって長い、長い時間が経っていた。

 

あの時からアルバスは、奪われた痛みを胸に、ひたすら己を鍛え続けていた。

 

エクレシアを取り戻す為に。

 

もう二度と、あんな悲しい顔をエクレシアにさせない為に。

 

「……あれか」

 

アルバスはただ一人、大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダで、空を飛ぶデスピアの悪意と、地上を進む軍隊を見据えた。

 

そして、遥か遠くからゴールド・ゴルゴンダに向けて進む者達を見ていたアルバスは、一人軍団の中から飛び出して空を飛んできた者に目を向ける。

 

「一人か!! 名無し! 寂しい物だな。王の力を失ったお前に付いてくる者など居ないという事か!」

 

「エクレシアはどうした」

 

「こんな場所に連れてくる訳が無いだろう!」

 

「……なら、エクレシアはあそこか!」

 

アルバスはアルベルから視線を外し、遥か遠くのデスピアがある方へと視線を向けた。

 

しかしその視線の意味を理解して、アルベルが激昂しながら、叫ぶ。

 

「まだ分不相応にもカルテシアを狙うか。汚らわしい。カルテシアは僕の物だ! お前の物じゃない!」

 

「エクレシアはカルテシアなんて名前じゃない!!」

 

「フン! まだそんな事を言っているのか。まぁ良い。どの道お前はここで終わりだ……!」

 

「俺は、エクレシアを諦めない!!」

 

アルバスは蒼く輝く氷剣(ひけん)を握りしめて叫んだ。

 

そのアルバスの燃える様な瞳に、アルベルは血が滲む程に歯を食いしばって苛立ちを示す。

 

そして……。

 

「お前さえ居なければ! 僕はカルテシアとあの陽だまりの中に居られたんだ! お前さえ! 居なければ!!」

 

「くっ!」

 

怒りのままにアルバスへ竜化しながら突っ込んだアルベルは、その巨大な手でアルバスを捕まえようとするが、アルバスの体は流水のごとく、滑らかに動いてアルベルの攻撃をかわしてゆく。

 

そして、アルベルの目を狙おうとして刃を振り下ろした。

 

しかし、その刃はギリギリのところでかわされ、アルバスの氷剣(ひけん)は空気を切り裂いて終わる。

 

「っ! この!」

 

「……やれる!」

 

「舐めるな!!」

 

アルベルは咆哮と共に炎をアルバスに向かって吐き出した。

 

しかし、長くエジルと共に修行を繰り返してきたアルバスにその程度の攻撃は通用しない。

 

アルバスは向かってくる炎を氷剣(ひけん)で切り裂いて、何事も無かったかの様に地面に降り立つのだった。

 

そして、油断なくアルベルを見据え次なる攻撃へと体を動かしてゆく。

 

その姿に。

 

王の力を奪われてもなお、真の王たる自分に挑むその態度に。

 

アルベルは激しい怒りを感じた。

 

憎しみを、恨みを、絶望を!

 

「ぐっ! あぁあああ!! 力を! もっと力を!!」

 

アルベルは怒りを全身から吹き出して、空に向かって吼えると、いくつものホールを展開した。

 

そして、ホールから力を手に入れ、自らの中にある王の力を肥大化させてゆく。

 

アルベルの体は、力の増大に合わせて巨大化してゆき、アルバスを見下ろす様な姿へとなってゆく。

 

そして、白の烙印(しろのらくいん)赫の烙印(あかのらくいん)の力を合わせたアルベルは、遂に深淵の向こうに眠る力すら取り込んでいくのだった。

 

深淵の獣(ビーステッド)ルベリオン】

 

人のまま深淵の向こうへと到達したアルベルは、竜の力を纏った人の様な姿となり、世界に降り立つ。

 

全てはアルバスをこの世から消し去る為に。

 

全てはカルテシアと自分の未来を阻む全てを討ち滅ぼす為に。

 

アルベルは、先へと進み始めた。

 

 

 

しかし、そんなアルベルの覚悟を遠くの街で感じ取っていた者が居た。

 

そう。カルテシアである。

 

深淵の獣(ビーステッド)と遊んでいたカルテシアは、この地に新たな深淵の獣(ビーステッド)の力が舞い降りた事を感じ、遥か遠くの空を見た。

 

そこには天に届く様な巨大な姿を持ったドラゴンがおり、その強大なエネルギーで雲が雷雲の様に雷を放っていた。

 

「あれは……まさかアルベル? でも、どうして深淵の獣(ビーステッド)の力を」

 

一人疑問を口にしたカルテシアであったが、その疑問に答える者は居ない。

 

何故なら、デスピアの街で自らの意思を持っている者はもう残されていないからだ。

 

しかし、そんなカルテシアにどこからか声が届く。

 

『エクレシア』

 

「っ!? 誰ですか!?」

 

その声は微かで、風の震えた様な音だったのではないかと思う程に小さな物だった。

 

しかし、カルテシアには確かに聞こえたのだ。

 

『エクレシア。私の声が聞こえるか? エクレシア』

 

「この声は、お姉様……? いえ、私に姉なんて……違う、私は」

 

頭の中から聞こえるいくつもの声に、カルテシアは頭を抱えながらうずくまった。

 

荒い呼吸を繰り返しながら、動かなくなってしまったカルテシアに深淵の獣(ビーステッド)達が何事かと近づいてくるが、そんな彼らに言葉をかける余裕もなく、カルテシアは声に気持ちを奪われる。

 

『貴女の事は幼い頃からよく知ってるわ』

 

『思い出して。貴女自身の事を』

 

『エクレシア!』

 

「この声は……私は……!」

 

そして、カルテシアは屋根の上で意識を失い、カルテシアの中に眠る小さな魂はそっと目を覚ますのだった。

 

 

 

彼女の一番古い記憶は、通りの間にある小道から見つめる人々の流れだった。

 

親もなく、ただ一人で生きていた少女は、膝を抱えながらジッと歩いてゆく人を見続けていた。

 

その行為に何か意味があった訳ではない。

 

ただ、その少女にとってその光景が憧れであった事は確かだった。

 

父が娘を肩車して笑っている。

 

母が娘と手を繋ぎながら笑っている。

 

娘は両親に囲まれながら幸せそうに笑っている。

 

そんな光景が。

 

その姿がその少女にとってはどうしようもなく眩しく、手の届かない宝物の様な光景であった。

 

『またこんな所に居たのか?』

 

「……」

 

そして、そんなその少女を呼ぶ声が聞こえ、その少女はそっと顔を上げた。

 

そこにはその少女しか見えない半透明の少女がおり、その少女に果物を渡して笑う。

 

『食べな。美味しいよ』

 

「……うん」

 

『もー。果物だけじゃ駄目よ。もっと色々な物を食べなきゃ』

 

『そうですよ。何事もバランスが大事なんですからね』

 

その少女の周囲でワイワイと話し始めた少女たちは、皆半透明で人には見えない姿をしていたが、間違いなくここに存在している者達だった。

 

生まれてすぐに捨てられたその少女が今日、この瞬間まで生きる事が出来た理由。

 

それがこの少女たちであった。

 

そして……いつもと何も変わらないそんなある日。

 

その少女の運命は大きく変わる事になる。

 

「君。こんな所でどうしたの?」

 

それは普段その少女と共に居る少女たちと同じ様な気配を持った少女だった。

 

「……だれ?」

 

純粋に、悪意なく、その少女を見つめる目に、その少女は首を傾げながら言葉を返した。

 

「私はフルルドリス。君は?」

 

「私は……エクレシア」

 

エクレシアの名前を聞いて、フルルドリスは満面の笑みで頷くと、エクレシアの前に手を差し出す。

 

「……?」

 

「一緒に行こう?」

 

「どこに」

 

「温かい所。それと美味しい物が食べられる場所!」

 

フルルドリスの言葉に、エクレシアは僅かに戸惑ったが、ずっと憧れていた人の手が目の前にある事に強い興味を持った。

 

そして、おずおずとフルルドリスの手に右手を伸ばし、触れる。

 

「ん!」

 

「わ……!」

 

「じゃ、行こ!」

 

エクレシアの手を強く握りしめると、フルルドリスは勢いよく歩き始めた。

 

その強い力にエクレシアは振り回されていたが、繋いだ手の温かさは、エクレシアの心に小さな火を灯すのだった。

 

「エクレシア」

 

「……お姉様」

 

そして、エクレシアは歩み始める。

 

『聖女』としての道を。

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