遊戯王OCGデュエルモンスターズ【白の物語】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第49話【氷水大剣現(ヒスイダイケンゲン)

覇蛇大公(はじゃたいこう)ゴルゴンダについて詳しく知る者は、この世界にどれだけ居るだろうか。

 

多くの者は、大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダの主であるという事や、ホールの力を喰らい生きているという事しか知らないだろう。

 

だが、そう……ゴルゴンダは生まれた時からゴルゴンダであった訳ではない。

 

ゴルゴンダがゴルゴンダと呼ばれる前、彼は確かに一人の人間であった。

 

 

 

遠い昔の話だ。

 

未だこの世界が争いに満ちていた頃、彼は一人の相剣師(そうけんし)として世界の在り方に憂いで居た。

 

人間は教導国家(きょうどうこっか)ドラグマの内部で権力争いを繰り返し、多くの無垢な少女の命が失われてゆく。

 

獣人や獣たちはまだ鉄獣戦線(トライブリゲード)など結成しておらず、種族同士の争いを繰り返していた。

 

大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダでは、盗賊団が生まれ、治安は悪化の一途をたどっている。

 

世界は未だ、暗闇の中に居た。

 

「師匠……!」

 

「ようやく追いつけました」

 

龍淵(リュウエン)承影(ショウエイ)

 

大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)の最も高き山の頂で、独り遥か遠い空の彼方を見ながら未来を憂いでいた男は、弟子たちの声に目を閉じて大きなため息を零す。

 

「随分と登ってくるのが遅かったな。そんな事で相剣師(そうけんし)の未来を担えるのか?」

 

「いや、師匠が早すぎるだけですよ」

 

龍淵(リュウエン)の言う通りです。我らはもはや風より早く走る事が出来るのですから」

 

「こんな老いぼれに勝てない様では話にならんわ」

 

「うぉーい! お前ら、早すぎ……だっ!」

 

赤霄(セキショウ)!」

 

「ふっ、迎えに行ってやれ。承影(ショウエイ)

 

「はい!」

 

承影(ショウエイ)は師匠の指示に従い崖の様な山を滑り降りて、赤霄(セキショウ)の元へ向かいその肩を支える。

 

赤霄(セキショウ)もまた、承影(ショウエイ)に感謝を告げながら頂まで登ってくるのだった。

 

「師匠……! 俺も到着しました」

 

「よし。よくやったな」

 

三人の若き相剣師(そうけんし)達の師は、ボロボロで疲れ果てた弟子たちの満たされた顔を見て笑い、また遥か遠い彼方を見据える。

 

「お前たちの様に、支え合い、手を取り合う事が出来るのであれば。共に未来を目指す事が出来るのなら、この世界にも光が生まれるやもしれん」

 

「光……ですか?」

 

「そう。未来を照らす光よ」

 

師は彼らに振り返りながらニヤリと笑う。

 

そこには一欠けらの悪意もなく、ただ純粋に未来を想う老人の姿があった。

 

「師匠。私は必ずその未来を開いて見せます」

 

「っ! 俺もです!」

 

「俺もだぜ! 師匠!」

 

「ふっ、青いな。だが、それもまた良し! お前たちはそのまま未来へ進んで行け」

 

この日、若き相剣師(そうけんし)三人は世界を照らす光を夢に見て、それぞれの道を歩み始めた。

 

 

 

しかし、この一月後、若き相剣師(そうけんし)達を一つの絶望が襲う。

 

「何!? 氷水(ヒスイ)達が襲撃を受けている!?」

 

「あぁ。彼女たちも抵抗しているが、状況はあまり良くない。既にイニオン・クレイドルは崩壊状態だ」

 

龍淵(リュウエン)の言葉に承影(ショウエイ)は苛立ちを示すと、すぐに自らの相剣(そうけん)を生み出しながら、氷水(ヒスイ)の楽園に向けて走り始めた。

 

「どこへ行く! 承影(ショウエイ)! 師匠はここで待っていろと!」

 

「待ってなどいられるか! コスモクロアはまだ氷水帝(ヒスイテイ)になったばかりなんだぞ! なのに! こんな!!」

 

「っ!」

 

「お前はここで待っていろ龍淵(リュウエン)!」

 

承影(ショウエイ)の言葉に、龍淵(リュウエン)は一瞬迷った様な顔を見せたが、師の様な笑みを浮かべると自らも相剣(そうけん)を生み出して、承影(ショウエイ)の隣を走る。

 

龍淵(リュウエン)! お前……!」

 

「師匠も言っていただろう? 共に手を取り、歩む先に未来の光はあると」

 

「……そうだな!」

 

そして、二人は氷水(ヒスイ)の楽園に飛び込んで、ホールの向こう側からやってきた悪意と戦った。

 

しかし、二人が加勢に来た所で状況は変わらず、白の世界から来た者達によって氷水(ヒスイ)の楽園は壊滅状態になってしまい、龍淵(リュウエン)承影(ショウエイ)も立つことすら難しい状況になってしまうのだった。

 

「……ぐっ、すまない。コスモクロア」

 

承影(ショウエイ)……! 私こそごめんなさい。こんな事に巻き込んでしまって」

 

「いや、助けに来て、この様な姿を晒している様ではな……むしろこちらこそ申し訳なく思う」

 

承影(ショウエイ)とコスモクロアは互いに慰め合いながらも、待ち受ける運命に覚悟を決めた。

 

天を覆う強大な力に、自らの死を覚悟したのだ。

 

しかし、まだ龍淵(リュウエン)は諦めていなかった。

 

痛みに震える体をそれでも奮い立たせて、相剣(そうけん)を支えにしながら起き上がる。

 

「どうした……! 承影(ショウエイ)! この程度の傷で、もう泣き言か!」

 

「……龍淵(リュウエン)

 

「私はまだ諦めていないぞ。まだ、この美しき世界を……! あの様な者達に奪われてなるものか……!」

 

龍淵(リュウエン)は空を睨み、そこに居る巨大な竜を見た。

 

白き圧倒的な力を持った竜を。

 

この世界を我が物にしようと、氷水(ヒスイ)に襲い掛かる悪意へと叫んだ。

 

「この世界は!! 私が守る!!」

 

だが、白き竜は龍淵(リュウエン)の叫びにも大した興味は示さず、先ほどまでと同じ様に全てを破壊する為の一撃を準備する。

 

龍淵(リュウエン)は雄たけびと共に水の中を駆けあがり、白き竜へ迫った。

 

しかし、そんな龍淵(リュウエン)よりも早く水の中を駆けた者が居た。

 

それは龍淵(リュウエン)の師であり、相剣師(そうけんし)達、そしてこの世界の守護者であった。

 

彼は血を吐きながら、それでも白き竜の懐へ飛び込み、一撃を加えてから更に白き竜と共に空へ舞い上がる。

 

そして、白き竜を倒す為に限界以上の力を求めて、ホールの向こう側にある力を自らの物にし始めた。

 

「師匠!!」

 

龍淵(リュウエン)は空の上で人の姿から変じてゆく師匠を見て、叫んだ。

 

しかしその声は届かず、師はそのまま白き竜と共に大霊峰相剣門(だいれいほうそうけんもん)を離れ、遥か遠く大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダへと落ちてゆくのだった。

 

その日から、大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダには一匹の巨大な蛇が生まれ、ただ力を喰らう心なきモンスターへとなった。

 

龍淵(リュウエン)承影(ショウエイ)はそれから幾度か大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダへと足を運んだが、師と話をする事は叶わず、いつしか師に会う事も止めていくのだった。

 

だが、この日、承影(ショウエイ)龍淵(リュウエン)にはそれぞれ違う想いが生まれた。

 

承影(ショウエイ)は世界を守る為には、結束の力こそ重要と考え、氷水(ヒスイ)や未だ争いを止めぬ者たちとの対話を始めた。

 

そして、龍淵(リュウエン)は結局白き竜を撃退したのは力だと考え、より大きな力を求める様になっていった。

 

 

 

それから時は流れ、二人の道は違えたままぶつかり合い、互いに氷水(ヒスイ)の楽園で命を落とした。

 

しかし、氷に閉ざされたその奥で、龍淵(リュウエン)の指が僅かに動く。

 

遠くから聞こえてくる人では無い物に落ちてしまった師の声を聞いて、既に死した体が意思の力だけで動き出そうとしていた。

 

全ては世界を守る為に。

 

正しく生きる者達が、この美しき世界の中で生きていける様にと。

 

そう願った男の躯が動き始める。

 

「……」

 

そして、龍淵(リュウエン)と呼ばれた男は氷に体を封じ込められたまま、氷水(ヒスイ)の楽園より大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダへと氷水(ヒスイ)の力を借りて一瞬の内に移動した。

 

「……っ!?」

 

その異変に気付いたのは、氷水(ヒスイ)の主であるエジル・ギュミルであったが、全ては遅かった。

 

氷に封じ込められたまま死していた龍淵(リュウエン)は、何かに導かれる様に覇蛇大公(はじゃたいこう)ゴルゴンダによって喰われ、その体を一つにしてゆく。

 

人であり、竜であり、相剣師(そうけんし)であり、神の頂へと手を伸ばした男へと変貌してゆく。

 

この世界を汚す全てを破壊する為に!

 

「マズイ!! アルバス!! 逃げて! ソイツは!」

 

エジルの叫びが届くよりも前に咆哮を上げ、動き始めた意識なき虚ろな世界の守護者は雄たけびを上げながら、白き竜と同じ匂いのするアルバスへと襲い掛かった。

 

完全なる不意打ちにより、アルバスはここで終わりかと思われた……が、その呪われし顎を食い止めた者が現れた。

 

 

 

そう。

 

暗い水底で、生まれたばかりの氷水(ヒスイ)と死した氷水(ヒスイ)の狭間で、龍淵(リュウエン)承影(ショウエイ)の……。

 

そして、コスモクロアと氷水(ヒスイ)達の過去と想いを知った少女は、コスモクロアの力を借りる形で、大砂海(だいさかい)ゴールド・ゴルゴンダに顕現する!!

 

全てを捨てて、それでも穏やかな世界を求める哀れな【深淵の相剣龍(しんえんのそうけんりゅう)】を止め、全てに決着を付ける為に、死の世界から記憶だけを頼りに戻ってきた少女が操る一つの力。

 

氷水艇(ヒスイテイ)エーギロカシス】

 

コスモクロアと承影(ショウエイ)の力を受け継ぎ、数多の願いを体に宿して少女は飛ぶ。

 

自らを娘と呼んだ師を、父の様な人を止める為に。

 

『今度こそ止めます! 私の手で!! 龍淵(リュウエン)様……いえ、父上!!』

 

そして、二つの強大な力は周囲に破壊の嵐を巻き起こしながら正面からぶつかり合うのだった。

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